台北より最新映画レポート「乘著光影旅行」
4月30日より公開になった、ドキュメンタリー映画「乘著光影旅行-(Let the Wind Carry Me)」を、初日に見て来ました。
この作品は、台湾出身の名カメラマン李屏賓(リー・ピンビン)と彼の仕事を追ったもので、監督はかつて「牯嶺街少年殺人事件」で助演女優賞にノミネートされた姜秀瓊(チャン・シューチュン)と、香港で活躍する關本良(グァン・ブンリャン)。演技から演出に転身した姜秀瓊(チャン・シューチュン)は、楊德昌(エドワード・ヤン)、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)らに師事し、2008年に撮った短編映画「跳格子」は、台湾のみならず、フランスや韓国でも高い評価を受けた女性監督です。
一方の關本良(グァン・プンラン)は、王家衛(ウォン・カーウァイ)ほか多くの香港の監督と仕事をし、最近は「宅變」「渺渺」など台湾映画でもその手腕を発揮しています。
李屏賓(リー ピンビン)は、1985年に「童年往事-時の流れ」で初めて侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督に起用され、以後、ほとんどの撮影を担当しています。
他にも、王家衛(ウォン・カーウァイ)の「花様年華」、トライ・アン・ユン監督の「夏至」、周杰倫(ジェイ・チョウ)監督・主演の「言えない秘密」など数々ありますが、日本映画でも「春の雪」や「空気人形」、今月22日から公開になる「トロッコ」、さらには「ノルウェイの森」も公開が待たれています。
見かけはひげ面のいかつい感じで、近寄りがたい雰囲気、とてもあの繊細な映像表現をする人とは思えませんが、このドキュメンタリーを見て、その謎が解けました。ロスアンゼルスにいる妻子、台北に残した年老いた母親に対する愛の深さに感動。
また、風にそよぐ葉を「ダンス」と表現、「踊って!もっと踊って」とファインダー越しに語りかける優しい眼と少年のような表情に、この名カメラマンの奥深さを見たような気がします。
2006年から追った李屏賓(リー ピンビン)の仕事ぶりだけでもワクワクしますが、そこに垣間見られる実生活と彼の本質。ドキュメンタリー映画を、ネイティブではない言語の字幕で見るのはけっこう大変ですが、そこは姜秀瓊(チャン・シューチュン)と關本良(グァン・プンラン)の腕でしょう、巧みな構成、緩急の付け方のうまさで、最後まで引っ張られました。
ドキュメンタリーでも大ヒット作が数々生まれる台湾映画界に、またひとつ素晴らしい作品の誕生です。
「乘著光影旅行」公式サイト http://www.letthewindcarryme.com/
★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。
| 固定リンク
コメント