鍾孟宏(チョン・モンホン)監督インタビュー
今年の台北電影節で最優秀長編劇映画を受賞した「第四張畫(The Fourth Portrait)」は、トロント、釜山、スペインなど各国の映画祭に出品されますが、台湾では10月22日から公開されることになりました。この映画は、父親とふたり暮らしの少年が、父親の死をきっかけに、別れた母親の元へ引き取られることになり、そこでの継父や年上の友達との出会いによる彼の内面を描いていく内容です。
本当に素晴らしい映画で、台北電影節での受賞後すぐにでもインタビューしたかったのですが、監督は北京でCM撮影だった為、9月1日に時間をいただいて取材することができました。
インタビューは監督のオフィスで行いましたが、このオフィスがとってもオシャレなのです。実は、台北で時々一緒に仕事をしている友人の映画会社がすぐ近くなので、以前見に行ったことがあり、外観だけでも素敵でした。今回もこの友人の会社に通訳を依頼し、監督のオフィスに伺いました。ところがオフィスの前に来て通訳さんが名刺を忘れてきたことに気づき、あわてて取りに帰りました。私はそこで待っていたのですが、きっと中から私の姿が見えたのでしょう、監督がわざわざ出てきて下さったのです。
「すみません、今通訳が来ますから。」と走ってくる彼女を指さしながら、なんとか中国語で伝えました。
監督の案内でオフィスの二階にお邪魔すると、広い空間に応接兼打ち合わせスペース、家具や調度はシンプルだけどオシャレ。編集をする部屋もあるそうです。「何飲む?」と聞かれたので「水でいいです。」と言うと、「烏龍茶入れましょうか。」と監督。もちろん、ありがたくお言葉に甘えましたが、なんと、監督自らお湯を沸かし始めました。
そう言えば、この二階には誰もいません。恐縮至極でしたが、お湯が沸くまでしばし雑談。私にとって「第四張畫(The Fourth Portrait)」は台北電影節で一番の映画だったと言うと、即「二番目は?」と聞かれました。台湾出身の名カメラマン李屏賓(リー・ピンビン)と彼の仕事を追ったドキュメンタリー映画「乘著光影旅行-(Let the Wind Carry Me)」だと答えましたが、この作品が獲得した100万元大賞を逃したのがとても悔しかったみたいでした。「乘著光影旅行-(Let the Wind Carry Me)」の姜秀瓊(チャン・シューチュン)のご主人とは、丁度授賞式の時に北京で一緒に仕事をしていたとかで、「結果を聞くなり、彼を殴ってやった。まだ入院してるよ。」などと、笑わせてくれます。
監督が入れて下さったお茶はとても美味しく、「監督はお茶を入れるのが得意なのですか?」と聞くと、「いや、そんなことはないけどしょっちゅうやっているから。」と言うのです。奥様もお仕事で忙しいことが多く、家事も一緒にやるし、子供の世話もする良い旦那様であり、良きパパ。・・・なんて素敵なんでしょう!
さて、インタビューは、監督が映像の仕事を始めるきっかけから伺いました。
そして、監督のデビュー作であるアメリカで撮ったドキュメンタリー「醫生(Doctor)」に出てくる13歳で自ら命を絶った少年の描いた絵が、今回の「第四張畫(The Fourth Portrait)」に使われています。
この作品のキーワードとなる絵は、一枚目が死んだ父親の顔、二枚目が友達のイメージ、三枚目が夢に出てきた兄、という風に少年の心象風景を表しています。四枚目は学校で課題として出された自画像なのですが、これは実際に映画の中には出てきません。
この二枚目の“友達のイメージ”=少年の生殖器が、そうなのです。他の絵はスタッフの合作だということでした。
主人公の少年を演じた11才の畢曉海(ビー・シャオハイ)は、台北電影節で歴代最年少で主演男優賞を受賞して話題になりましたが、彼を見つけるまでの経緯、他の出演者である戴立忍(ダイ・リーレン)、郝蕾(ハオ・レイ)、納豆などについて、また演出についてなど長時間にわたって伺うことができました。
前作「停車」にも出演した戴立忍(ダイ・リーレン)は、「監督の作品では、何故僕はいつも悪い奴なのか」と言われたそうですが、この役を演じられるのは彼しかいないと思っていたそうです。
途中、「ちょっと録音を止めて」と言って公表できないエピソードなども語ってくれたり、この映画の「撮影」でクレジットされている「中島長雄」とは、実は監督の別名だということも教えてもらいました。台湾では監督を呼ぶときに姓+導演(監督)の「導」が一般的なので、「鍾導」と中国語の発音が同じところから「中島」にしたそうです。「長雄」は特に意味はなく、イメージでつけた名前だとか。
おもしろいですねぇ・・・本当に有意義な取材でした。
いま、台北ではマスコミ試写が始まり、映画会社から毎日のようにリリースが届いています。この秋の注目作、そして年末の台湾金馬奨の有力候補作になると思いますが、日本でも見られるチャンスがあると良いのですが・・・日本の映画会社の皆さま、興味を持たれたらぜひご一報下さい。資料をお送りします。
作品については、以下をご参照下さい。
予告編
http://www.youtube.com/watch?v=VdK-Ji5mxXE
「アジアンパラダイス」の台北電影節の記事
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2010/07/post-18b5.html
オフィシャルブログ(中国語)
http://blog.sina.com.tw/atom
FaceBook(中国語)
http://www.facebook.com/4portrait
鍾孟宏(チョン・モンホン)監督の会社「甜密生活製作」(中国語)
http://creamfilm.com.tw/
このインタビューは、台湾での公開のにあわせ、10月18日から3週にわたって「アジアンパラダイスPodcast」で配信します。
ちょっと先になりますが、ぜひお聞きになって下さい。
「第四張畫(The Fourth Portrait)」
製作:普少千
監督:鍾孟宏(チョン・モンホン)
脚本:鍾孟宏(チョン・モンホン)塗翔文
撮影:中島長雄
美術:趙思豪
音声:杜篤之
編集:羅時璟
出演:畢曉海(ビー・シャオハイ)
戴立忍(ダイ・リーレン)
郝蕾(ハオ・レイ)
納豆
關穎(テリー・クァン)
配給:原子映像
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