大阪アジアン映画祭レポート「雨夜 香港コンフィデンシャル」舞台挨拶、Q&A
今回は、Newレポーター西本有里さんの記事です。西本さんは台北在住10年、もと映画会社社員で、昨年から「アジアンパラダイス」の活動をサポートして下さっています。
3月13日、九条シネ・ヌーヴォにて、残念ながら今回受賞を逃しましたが、香港という街の特質を非常にうまく捉えた秀作「雨夜 香港コンフィデンシャル」の舞台挨拶及びQ&Aが行われました。
上映前の舞台挨拶には、マリス・マルティンソンス監督、主演の桃井かおりさんとアンドリュス・マモントバスさんが登場され、簡単な挨拶を行いました。東京へ急ぎ戻る桃井さんは上映後のQ&Aに参加できない旨を伝えた後、「せっかく日本人の私が出演しているのに、日本での上映が決まらず、何の助けにもなれていなくて申し訳ないと感じていたのですが、やっと日本で上映できて本当に嬉しいです。実はこの映画はどうしても日本人の方たちに見てもらいたかった。中国人の妻の役なので、序盤は広東語ばかりですが、徐々に日本語を入れて行き、だんだん日本人になって行きますから、その変化を楽しんで下さい」と挨拶されました。
マリス・マルティンソンス監督、主演のアンドリュス・マモントバスさんとのQ&A、最初の質問は、昨年まで3年間香港に住んでおり、映画の広東語と香港の映像にとても癒されたという男性から。
Q:この映画で話される言語は、広東語がメインとなっていますが、なぜ日本人の桃井さんが主演で参加され、日本語も使われたのか?反対にリトアニア出身のアンドリュスさんの母国語であるリトアニア語は出てきませんでしたが、どうしてでしょうか?言語について監督のお話を伺いたいです。
マリス監督:映画の撮影には様々な国の人たちが係わっていた為、6つの言語(広東語、日本語、リトアニア語、ラトビア語、ロシア語、英語)が飛び交う現場でした。その中で香港で普通に話されているだろうと思われる英語、広東語、日本語の3つのみを使用したのは、ラトビア語やリトアニア語を入れると複雑になりすぎると思ったからです。
Q:香港とラトビアの合作で、そこに桃井さんが出演されているという非常に珍しい映画だと思いますが、この映画成立の経緯をお聞かせ下さい。
マリス監督:この映画の発端は2008年の上海映画祭で桃井さんと出会った事に始まります。前作の『Loss』が上海映画祭で音楽賞と監督賞を得た際、審査員を務められていた桃井さんが私たちの作品を気に入って下さり、もしこれから日本人の俳優が必要であれば是非使ってね、と言って下さったのです。ですからこの映画の脚本は初めから桃井さんを念頭に置きながら、東京で起こるストーリーとして書き始めたのですが、何かしっくり来ない・・と脚本を棚上げにしていたのです。そして2009年、映画祭の為に訪れた香港で、自分のストーリーはこの街であれば生きてくる!と閃き、脚本の設定を香港に変えた事でこの「雨夜 香港コンフィデンシャル」が誕生しました。
Q:桃井さんと出会われた『Loss』はどのような映画ですか?
マリス監督、アンドリュスさん:個性的な6人の人々が出会う、詩的で悲しみを伴ったロマンチックな映画です。この映画はリトアニアとアイルランドで撮影しました。実はアイルランドには多くのリトアニア人が移住しているのです。そういった意味で、この映画も違う文化を持つ人たちの繋がりや架け橋といった事を描いていると言えます。
Q:映画の中で二人のランさんが出てきましたが、一人に「ジャスミン」という名前をつけたのには何か特別な意味がありますか?最近ジャスミン革命という言葉もあるので何か意図があったのでは?と気になりました。
A:たまたまだと思います、でも無意識の内に革命を起こしたいという意思が伝わってしまったかもしれません。(笑)
香港で脚本を書いていた時に、登場人物の名前を考えるのが大変で、「ジャスミン」という名前を聞いて、これはなかなかいい名前だと単純に決めたのです。でもとてもよい質問をして頂いたので、これからQ&Aの時にあなたの質問を使いたいと思います。
ということで、次の作品を見る為にABCホールへ移動してしまった為、最後まで聞くことができず、以上のみのリポートになってしまいすみません。ただ、Q&A全体でとても印象に残ったのが、マリス監督とアンドリュスさんの連携です。マリス監督がうまく英語で表現できない場面があると、監督がリトアニア語でアンドリュスさんに相談、それを受けてアンドリュスさんが監督の言葉を繋いでいく・・・。ここからも2人の撮影時の共同作業の様子が垣間見られ、とても興味深いQ&Aでした。(レポート西本有里)
作品詳細については、大阪アジアン映画祭の作品紹介ページをご覧下さい。
尚、写真は3月11日のQ&Aの時のものです。
★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。
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