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2014/11/24

第五十一回金馬獎レポート、受賞式&プレスセンター編

1124jinma21昨年50周年を迎えた金馬獎は、51回目の今年、新しい一歩ということで「初めて」をキーワードに受賞式が構成されました。Ellaの作品賞にちなんだオープニングパフォーマンスの後、司会の黄子佼(ミッキー・ホアン)とEllaがこれまで主席をつとめてきた侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督からバトンタッチされた張艾嘉(シルビア・チャン)、初めて金馬賞にノミネートされた中国のトップ女優鞏俐(コン・リー)、中華圏以外で初めて主演男優賞にノミネートされた永瀬正敏などの例を挙げ、鈕承澤(ニウ・ チェンザー)については、『軍中樂園』で初めて監督作品に自ら出演していない、と言って場内大爆笑。

1124jinma22金馬奨史上最年少で初の主演男優賞を獲得した阮經天(イーサン・ルアン)と郭書瑤(グォ・シューヤオ)によりデザイン賞と美術賞が発表された後、早くもオリジナル楽曲賞ノミニーのパフォーマンスパート1になり、香港映画『掃毒』より「心照一生」をRubberBandが披露しました。
続くドキュメンタリーと助演女優奨のプレゼンターは2001年の『愛你愛我』で共演した張震(チャン・チェン)李心潔(リー・シンジエ)。『軍中樂園』から陳意涵(チェン・イーハン)と萬茜(ワン・チエン)が助演女優奨にノミネートされていましたが、軍配は萬茜に上がりました。萬茜の涙が美しかったです。

1124jinma23撮影賞、編集賞、音効賞は、『失魂』で夫婦を演じたものの共演シーンがなかった戴立忍(ダイ・リーレン)と陳湘琪(チェン・シアンチー)がようやく二人で並び発表。そして、この三つの賞を全て『推拿』がさらっていきました。
その後オリジナル楽曲賞ノミニーのパフォーマンスパート2、『KANO』の「小鳥さん」を、ユニフォーム姿の選手達曹佑寧(ツァオ・ヨウニン)、張弘邑(チャン・ホンイー)、鄭秉宏(チェン・ビンホン)、周俊豪(チョウ・ジュンハオ)、鐘硯誠(ジョン・ヤンチェン)、陳勁宏(チェン・ジンホン)、陳永欣(チェン・ヨンシン)が歌い踊ります。

1124jinma24そこに表れた近藤兵太郎監督を演じた永瀬正敏が「集合!」と叫びます。
「お前達どこの学校だ?」
「僕たちは台湾の嘉農です」
「練習に行ってこい!」と檄を飛ばし選手達がワイワイと楽しそうに去って行く…という小芝居に続き永瀬正敏による『KANO』の作品紹介、心に沁みる永瀬正敏の言葉とバックに流れる映画のシーンで、またあの感動が蘇ってきます。

1124jinma25次は、一昨年の主演男優と主演女優コンビ劉青雲(ラウ・チンワン)と桂綸鎂(グイ・ルンメイ)による短編映画賞と助演男優賞の発表です。激戦の一つと言われる助演男優賞では、『軍中樂園』の陳建斌(チェン・ジェンビン)が選ばれました。
続いて脚本賞にノミネートされている李檣(リー・チアン)が『黄金時代』を紹介し、
オリジナル楽曲賞ノミニーのパフォーマンスパート3で『後會無期』の「平凡之路」をシンガーソングライターの朴樹(ボー・シュー)が披露しました。

1124jinma26視覚効果賞とアクション賞は審査員でもある馮徳倫(スティーブン・フォン)と楊丞琳(レイニー・ヤン)。すっかり監督業に専念している馮徳倫が、初めて楊丞琳のMVを演出したという縁でのコンビです。
作品賞のノミネート作紹介の三つ目は蔣勤勤(ジャン・チンチン)による『一個勺子』。そして李烈(リー・リエ)と馬志翔(マー・ジーシアン)が発表するオリジナル脚本賞と脚色賞です。オリジナル脚本は台北電影賞に続いて『行動代號:孫中山』が獲得、易智言(イー・ツーイエン)監督は貧富の格差を高校生の視点から描いたこの作品の社会的意義を語り、それが評価されたことの喜びに目を潤ませていました。それを見ていた桂綸鎂(グイ・ルンメイ)と陳柏霖(チェン・ボーリン)のふたりの姿を何度もテレビカメラが映し出し、恩師の受賞に二人とも涙を浮かべた素敵な笑顔で祝福していました。

この後今年亡くなった映画人を偲ぶコーナーで、林志炫(リン・ジーシュアン)「流金歲月」をしっとりと歌い上げました。

1124jinma27年度台灣優秀映画人には毎年数人ノミネートされるのですが、今年は最初から一人で、世界一心臓が強く、資金繰りに長けているプロデューサーと言われる黃志明(ジミー・ホアン)の受賞が決定していました。このプレゼンターは、一緒に制作することの多い鈕承澤(ニウ・チェンザー)と魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)両監督。ふたりはあまり仲が良くないという風評があり、それを逆手に取った演出が面白かったです。そして、魏徳聖が黃志明に「あなたはなかなか台湾に帰ってこないから、これにサインしてからでないとトロフィーを渡さない」と、懐から二枚の書類を出しました。これは果子電影の支払いに関する本物の書類のようで鈕承澤が背中をかがめて、そこを台にしてサインするという図に場内大爆笑でした。

続いては、田豐(ティエン・フォン)の終身成就獎をこれまた大ベテランの孫越(スン・ユエ)がプレゼンターをつとめ、場内は全員が起立して讃えました。

1124jinma28オリジナル楽曲賞ノミニーのパフォーマンスパート4は、『香港仔』の「目的地」を黃耀明(アンソニー・ウォン)@人山人海が披露。
楊祐寧(ヤン・ヨウニン)陳妍希(ミシェル・チェン)がオリジナル楽曲賞と音楽賞を発表した後、秦昊(チン・ハオ)による『推拿』の紹介、スペシャルゲストの張學友(ジャッキー・チュン)が七年ぶりに出す北京語アルバム「沒說出口的感謝」から「用餘生去愛」を歌いました。プロモーションとあわせた、金馬奨の見事なプレゼンターオファーということでしょうか。場内はしんと静まり、歌神の世界を堪能したようです。

1124jinma29新人賞のプレゼンターは、陳柏霖(チェン・ボーリン)とily Collins、語学センスのある陳柏霖の英語力はなかなかのものでした。受賞したのは『推拿』の張磊(チャン・レイ)で、呼び声の高かった曹佑寧(ツァオ・ヨウニン)は残念。
続いて『白日焰火(薄氷の殺人)』の作品紹介を、主演の廖凡(リャオ・ファン)が行い、張學友(ジャッキー・チュン)がプレゼンターをつとめる新人監督賞は、『一個勺子』の陳建斌(チェン・ジェンビン)が個人賞二つ目のトロフィーをゲットしました。

1124jinma210侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督と鞏俐(コン・リー)が発表した監督賞では、『黃金時代』の許鞍華(アン・ホイ)監督が金馬奨三回目の受賞を果たしました。
プレスセンターでのコメントです。
「受賞できた事にとても驚きました。とても嬉しいです。この映画はとても撮りたいテーマでしたがかなり実験的なものでしたので、困難を極めました。脚本は映画らしさに溢れていたのでどう撮るかを真剣に悩み、未だにこの脚本に書かれたクリエイティブな部分をすべて掘り起こす事が出来ていないのではと思っています。でも、受賞により作品が受け入れられたという事で、とても励まされました」

1124jinma211いよいよ注目の主演男優賞です。プレゼンターは郭富城(アーロン・クォック)と章子怡(チャン・ツィイー)。台湾、香港、中国、日本と国際色豊かな顔ぶれの中、『一個勺子』の陳建斌(チェン・ジェンビン)が受賞。助演男優賞、新人監督賞とこの主演男優賞で三つ目の個人賞獲得、すごいです。
「この映画はこっそり撮影し、宣伝もしていません。でも映画祭で紹介され、その上こんなにたくさん賞もいただいて金馬奨に感謝しています。これで私の映画に注目してもらえるので、映画館で公開された時にたくさんの人に見てもらいたいです。金馬奨での受賞で多くのサポートをしていただけたと思っています」
とプレスセンターで受賞の喜びを語りました。

1124jinma212主演女優賞は、李康生(リー・カンシェン)と許鞍華(アン・ホイ)監督。1999年の『千言萬語』が懐かしいですね。
陳湘琪(チェン・シアンチー)の名前が発表された時、プレスセンターは拍手と大歓声でした。この地味な映画を見ている記者やカメラマンはそう多くはないと思いますが、台湾映画がようやく獲得した二つ目のトロフィーということでの喜びでしょう。私は心の中で彼女の受賞を願っていたので、とても嬉しかったです。本当に見事な演技でしたから。
そして、長年コンビを組んできた李康生(リー・カンシェン)からトロフィーを授与されるのは、感激のシーンでした。
プレスセンターで大きな目からポロポロ涙を流しながら、喜びを噛みしめるように語りました。
「ありがとうございます。映画の公開日は金馬奨のノミネートが公表された日でした。上映前、観客の皆さんに感謝の言葉を述べている時に、主演女優賞を台湾に残して下さい!と言われました。私はその言葉を実行出来ました、私は台湾映画を愛しています、皆さんありがとうございました。メディアの皆さん、様々な形で『迴光奏鳴曲』と私をサポートして下さり、ありがとうございました」

1124jinma213最後の作品賞は、金馬奨主席の張艾嘉(シルビア・チャン)と審査委員長陳冲(ジョアン・チェン)が発表、中国映画『推拿』が獲得しました。
婁燁(ロウ・イエ)監督のコメントです。
「私のスタッフ、今日ここに共に来られなかった役者や投資会社にこの喜びを伝えたいです。金馬奨、そして皆さん、ありがとうございます。去年金馬奨の審査員として参加した時、実は編集が一番困難な時期で、皆出口が見えない状態にありました。でも、審査員をすることで編集室から出て、様々な映画を見たことで帰ってから完成させることが出来ました」

1124jinma214このように、今回は『推拿』の七冠をはじめ中国映画の圧勝に終わり、台湾は『KANO』は国際批評家連盟賞と観客賞、主演女優賞を『迴光奏鳴曲』の陳湘琪(チェン・シアンチー)が、易智言(イー・ツーイエン)監督の『行動代號:孫中山』がオリジナル脚本賞を獲得したのみということで、翌日の台湾の報道では中国映画の奮闘よりも『KANO』が6部門ノミネートにもかかわらず本賞をひとつも獲れなかったことがニュースになっていました。
様々な憶測もありますが、審査員の一人である台湾の陳玉勳(チェン・ユーシュン)監督はこんなことを語っていると台湾のメディアが伝えています。
「台湾映画は今回の結果を受け止め、反省材料にしなければならない。台湾映画の環境は(大陸より)恵まれている。市場は小さくて予算も少ないけれど、何より創作の自由があるのだから」

※第五十一回金馬獎に関する記事

第五十一回金馬獎、陳建斌(チェン・ジェンビン)と陳湘琪(チェン・シアンチー)が主演男女優賞に!(受賞一覧)
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2014/11/post-ccff.html

第五十一回金馬獎レッドカーペットレポート
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2014/11/post-ebae.html

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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