第52回金馬獎頒獎典禮〜受賞式・プレスセンター編
幕開けは司会者の黃子佼(ミッキー・ホアン)と林志玲(リン・チーリン)らによる今年の話題作を盛り込んだお馴染みのパフォーマンス。中でも今年最大のヒット作『我的少女時代』のシーンでは、ヒロインに扮した林志玲のところへ王大陸(ワン・ダールー)が登場しての掛け合いがありました。
「こんなに成長しちゃったの?」と言うヒロイン林志玲に、「いや、こっちだよ」と王大陸がスクリーンを指すと、そこには言承旭(ジェリー・イエン)のシーンが写し出され…。このネタ、まだ使われるのですね。(^o^)
そして本物のヒロインを演じた宋芸樺(ツォン・イーホア)が主題歌「小幸運」を歌いました。
最初の授賞は、任達華(サイモン・ヤム)がプレゼンターで最優秀視覚効果と最優秀アニメーション。それぞれ『智取威虎山3D』と『麥兜.我和我媽媽』が獲得しました。
続いて乱彈阿翔(ルアンタン・アーシャン)の『青田街一號』の主題歌「糾纏」が披露され、最優秀美術の『華麗上班族』と最優秀デザイン『刺客聶隱娘(黒衣の刺客)』が鄧超(デン・チャオ)から手渡されました。
『太陽的孩子』の主題歌「不要放棄」は黄裕翔(ホアン・ユーシャン)のピアノ伴奏による舒米恩・魯碧(スミン・ルピ)の心に染み渡る歌唱で、場内はうっとり。
最優秀記録映画と最優秀助演女優は郭富城(アーロン・クォック)と林嘉欣(カリーナ・ラム)がプレゼンター。記録映画は中国の『大同』、助演女優は『醉‧生夢死』の呂雪鳳(ルォ・シュエフォン)が獲得しました。
郭富城主演の『踏血尋梅』の主題歌「漆黑的海上」を丁可(ディン・カー)が歌った後、張震(チャン・チェン)とハ・ジウォンが最優秀短編映画と最優秀助演男優のプレゼンターとして登場。短編映画は台湾の『保全員之死』、助演男優は『踏血尋梅』の演技で香港の白只(バイ・ジー)が受賞しました。
アジア各国の映画に出演している張震は韓国語でもやりとりして、「もし僕たちが共演することになったら『刺客聶隱娘』の続編がいいね、じゃあゆっくりアクションやってみよう」と、スローモーションの武侠シーンを見せてくれて場内大爆笑でした。
続いて『還珠格格』のテーマにのってプレゼンターの蘇有朋(アレック・スー)と林心如(ルビー・リン)が登場すると場内は笑いと拍手でかなりの反応、懐かしいふたりの共演ドラマについての想い出話もあり、盛り上がりました。
そして『刺客聶隱娘(黒衣の刺客)』が最優秀音響効果と最優秀撮影をさらっていきました。
今年は『華麗上班族』がノミネートされていることもあるからでしょう、パフォーマンスゲストには陳奕迅(イーソン・チェン)が招聘されました。楊丞琳(レイニー・ヤン)がデュエット相手をつとめて、『インファナル・アフェア』の「被遺忘的時光」、『恋する惑星』の「夢中人」、『將愛』の「因為愛情」、『あの頃、君を追いかけた』の「那些年」、「君さえいれば〜金枝玉葉」の「追」、「さらば我が愛〜覇王別姫」の「當愛已成往事」をメドレーで聞かせてくれました。
後日ネットで様々な批評が上がりましたが、確かに楊丞琳も頑張ってはいたものの陳奕迅の相手は荷が勝ちすぎていたことは否めません。
次のプレゼンター、九把刀(ギデンズ)と柯震東(クー・チェンドン)が登場すると、場内は大爆笑。九把刀の爆発頭とヒゲは、自分たちはスキャンダルとドラッグ問題で世間を騒がせた「更生人」であるという自虐ネタの見事な自己演出です。
「僕たちふたりの人生は映画の脚本のように紆余曲折があった」と言って、最優秀オリジナル脚本を賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督の『山河故人』に、最優秀脚色は萬瑪才旦(ペマツェテン)監督の『塔洛』にトロフィーを渡しました。
授賞式の前に発表されたふたつの賞、終身成就獎は、全員起立で李麗華(リー・リーホア)を迎え、成龍(ジャッキー・チェン)から贈られました。
そして、年度台灣優秀映画人は朱延平(チュー・イエンピン)と張艾嘉(シルヴィア・チャン)から侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督に渡されました。
杜琪峰(ジョニー・トー)監督の『華麗上班族』はミュージカル仕立てで羅大佑(ロー・ターヨウ)が音楽を担当していますが、その中から主題曲「何必呢」を陳奕迅(イーソン・チェン)の生歌ではなく、歌にあわせて宝塚の男役のように男装した林志玲がオフィスに見立てたセットでダンサーと一緒に踊ります。なかなか素敵でした。
新人賞は大本命の『醉‧生夢死』の李鴻其(リー・ホンチー)、陳奕迅からトロフィーが渡されました。台北電影節で主演男優賞と新人賞をダブル受賞していますが、金馬の重みはまた格別という感じでした。
最優秀アクションと最優秀編集は審査員でもある桂綸鎂(グイ・ルンメイ)からそれぞれ『師父』と『醉‧生夢死』に贈られました。
そして、最優秀オリジナル音楽と最優秀オリジナル楽曲は、惜しくもノミネートされませんでしたが『百日告別』に主演した石頭(シートウ)と許瑋甯(アン・シュー)がプレゼンターを担当。『百日告別』の龔鈺祺 (蘇打綠 - 阿龔=アコン)がノミニーだったので緊張するという石頭でしたが、オリジナル音楽は『醉‧生夢死』に、オリジナル楽曲は『太陽的孩子』の「不要放棄」が選ばれました。
その後は今年亡くなった映画人を悼む「永遠の微笑み」コーナー、陳建斌(チェン・ジェンウー)がプレゼンターをつとめる最優秀新人監督の発表と続きます。
新人監督は『路邊野餐』で中国の26才という若さの畢贛(ビー・ガン)が、前日の国際映画批評家奬とダブル受賞を果たしました。
最優秀監督は李安(アン・リー)監督と舒淇(スー・チー)がプレゼンターです。ここでも『刺客聶隱娘(黒衣の刺客)』強し!侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督、1989年の『悲情城市』、1995年の『好男好女』に続き3度目の受賞となりました。
どちらも海外からの評価も高い監督ですが、欧米でも活躍する李安、台湾映画界を牽引する侯孝賢、道は違っても台湾の至宝であることは変わりません。
いよいよクライマックス、最優秀主演男優は日本からのゲストで『刺客聶隱娘(黒衣の刺客)』の出演者でもある妻夫木聰がプレゼンターをつとめました。彼の通訳は司会の林志玲、台本があったにせよ見事にその役目を果たしていました。
結果は『老炮兒』の馮小剛(フォン・シャオガン)、北京でコンサートに出演のため来られない為監督の管虎(グァン・フー)がメールで送られてきたメッセージをスマホを見ながら代読しました。
最後のパフォーマンスゲストは李宗盛(ジョナサン・リー)、『油麻菜籽』の同名主題歌を聞かせてくれ、後日台湾の各メディアは「金馬奨のクオリティを救った」と大絶賛していました。
混戦だったという最優秀主演女優は、李康生(リー・カンシェン)と陳湘琪(チェン・シアンチー)がプレゼンター。張艾嘉(シルビア・チャン)監督の映画「20.30.40」になぞらえて李康生の言葉遊びで紹介されるノミネート者たちは、その年齢がらみのネタに笑ったり複雑な表情をしたり拍手したり…。これも李康生のキャラならではでしょう。
受賞した『百日告別』の林嘉欣(カリーナ・ラム)は、本当にうれしそうでした。
最後の最優秀作品賞のプレゼンターは、審査委員長の陳國富(チェン・グォフー)とベテラン女優の徐楓(シュー・フォン)。『刺客聶隱娘(黒衣の刺客)』の大勝利が決定しました。
2011年の『セデック・バレ』以来の台湾映画がこの賞を奪還、台湾映画人達の喜びが会場内にも満ち満ちていました。
以下、プレスセンターでの主なの受賞者のコメントです。
最優秀作品賞『刺客聶隱娘(黒衣の刺客)』
舒淇(スー・チー)「歴史的な記念すべき瞬間になったと思います。この作品に参加できて私自身とても光栄に感じており、監督を誇りに思います。皆さらに努力をしますし、監督もさらに励むでしょう。(笑)」
張震(チャン・チェン)「監督とは二度目になりますが、この作品が素晴らしい成績を残せて本当に嬉しいです。今日この場に立てて感動しています。監督は映画に対して熱い情熱を燃やされており、プロフェッショナルであり、真摯な方です。多くの後輩は侯監督から学ぶべき所がたくさんあります」
最優秀主演女優賞 林嘉欣(カリーナ・ラム)『百日告別』
「全く予想していなくて、10数年前に助演女優賞、新人賞を獲ったときと同じでとても混乱しています。今回はすごく運が良かったと思っています。撮影に入る前に父を亡くしましたが、撮影の期間中父が天国から私を見守ってくれていたと感じています。父がいなくなった事に向き合う中で、父は私に大きな力を与えてくれ、この役を演じる上で大きな勇気を与えてくれました」
最優秀主演男優賞 馮小剛(フォン・シャオガン)『老炮兒』
(電話をつないで)「本当にありがとうございます。この賞は本来であれば監督の管虎に渡すべきだと思っています。私は監督を信頼し彼の指揮のもと演技を行っただけですから。監督はこの物語を長く温めていて、彼の記憶を撮ったものです。ありがとうございました」
最優秀監督賞 侯孝賢『刺客聶隱娘(黒衣の刺客)』
「皆さんありがとうございます。私は数年間金馬奨の主席を務めていましたが、現在世界的に見て中華圏の映画祭の中で最も重要な映画祭になっています。更にもっと良くしていきたいですね。皆で一緒に頑張りましょう。そして私はこれからも撮れなくなるまで撮り続けます。」
最優秀オリジナル脚本賞 賈樟柯 『山河故人』
「これまで17年間映画の仕事をして来ましたが、認められた事はあまりなかったので今回の受賞はとても重要です。ほんとうに嬉しいです。皆さんありがとうございます。私は40を過ぎて自分の感情や家族、今まで見過ごして来た想いを見つめ直しました。友人から強く勧められて書き始めたのですが、毎晩色々な事を思い返し、想像しながら書くという作業はとても特別で忘れがたい創作過程でした。自分が体験したたくさんの感情を掘り起こす作業はこれまでとは異なり、心と感情が揺り動かされる創作過程となりました」
最優秀助演男優賞 白只 『踏血尋梅』
「とても興奮しています。そして他の出演者の皆さんと共に金馬奨に来られた事に感謝しています。この映画では素晴らしい共演者や先輩が役柄に入り込む手助けをしてくれました。でもどのように役柄から抜け出すかは教えてくれませんでした。この役柄には独特の個性があるので、家に戻ってゆっくり休み、別の役柄を演じる事で抜け出せると思います。更に素晴らしい映画作品でまた皆さんにお会いできるよう頑張ります。ありがとうございます」
最優秀助演女優賞 呂雪鳳 『醉‧生夢死』
「とても嬉しいです。私はこの歳ですが、今が最も幸せな時間だと確信を持って言えます。私は大物俳優ではないのに、メディアの皆さんが注目して下さりありがとうございます」
(実は、たいへんだったシーンの撮影の時のことを詳細に話し、8分くらいあったのですが、リアルすぎるのでお礼のコメントだけ掲載しました)
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第52回金馬獎頒獎典禮〜レッドカーペット編
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第五十二回金馬獎は台湾映画が圧勝!作品賞は「刺客聶隱娘(黒衣の刺客)」
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