第18回台北電影獎受賞式レポート
今年の長編劇映画のノミネート作品は、世界でも国内でもプレミアとなったのが『樓下的房客』だけというのがはっきり言って残念でした。その他は既に公開された作品がほとんどで、『菜鳥』など昨年の台北電影節のオープニング作品です。新作でも時期的に間に合わないとかクォリティの問題など色々事情もあるでしょうが…。
新作をいち早く見られるというのは映画祭の大きな楽しみですから、その期待に応えた『樓下的房客』が観客賞を受賞したのは納得の結果で、昨年の記録的ヒット作『我的少女時代』が金馬奨に続いて無冠だったのも、公開から1年近く経っているので"いまさら感"も大きく作用しているのでしょう。
一方この台北電影獎では毎年強さを魅せるドキュメンタリー部門ではやはり斬新なものが多く、昨年ようやく『酔・生夢死』が5年ぶりに奪還したものの、今年はまたドキュメンタリーが100万元を持っていくのでは…というのが、業界筋のもっぱらの噂だったようです。
もちろん5部門制覇の『只要我長大』は良い映画です。一貫して原住民の世界を描き続けるタイヤル族の陳潔瑤(ラハ・メボウ)監督の製作者魂、丁寧な演出で笑わせたり泣かせてくれますし、新人賞をとった10人の子供たち、特にメインの3人は生き生きとして魅力的です。ただ、斬新さという点においてはドキュメンタリーの『日曜日式散步者』『河北臺北』『翡翠之城』『蘋果的滋味』などの方が上回っていたのではないかと思います。
しかし、今年の授賞式の楽しみは数日前に発表された豪華なプレゼンター陣でした。中でも10年ぶりにメインキャストが揃った『九降風(九月に降る風)』の鳳小岳(リディアン・ヴォーン)、張捷(チャン・ジエ)、紀培慧(テレサ・チー)、沈威年(シェン・ウェイニェン)、初家晴(チュー・ジャーチン)、林祺泰(リン・チータイ)、邱翊橙(毛弟)には震えました。
『失控謊言』の主役である王柏傑(ワン・ボージエ)は兵役中のため会場には来るが登壇はしないと聞いていたのですが、いざ本番になると、メンバーの男子たちが客席に迎えに行って連れてきてしまいました。このゆるさが台湾的で素敵ですね。
10年ぶりに揃った9人、授賞の前に毛弟のスマホで集合写真を自撮りする微笑ましいひと幕があり、これまた台湾らしい楽しさです。
9人の中の出世頭である鳳小岳と王柏傑の格好良さは見慣れていてもゾクゾクしますが、最近仲良しの張書豪(チャン・シューハオ)主演ドラマに出ている張捷も男っぷりが上がっていました。現在はあまり台湾にいないらしい初家晴もすっかり大人の女性に、そして毛弟がお兄ちゃんの王子(プリンス)に劣らない男前に成長していたのにびっくり。背も伸びたのではないでしょうか。
プライベートでは年に一度は集まっているということを林書宇(トム・リン)監督から聞いていたのですが、こうして公的な場でのそろい踏みは10年ぶり。素敵でした。
個人賞は、『菜鳥』で内面の複雑な気持ちと揺れ動く感情表現が評価された簡嫚書(ジエン・マンシュー)が助演男女優賞、助演男優賞は『菜鳥』『樓下的房客』『降生十二星座』(短編)の三作がノミネートされていた莊凱勛(キヤッシュ・チュアン)が予想通りの受賞。該当作は『菜鳥』で、警察官という立場と一人の人間としての葛藤を細やかに演じたという審査員の評価でした。
今年は石頭(ストーン)と共に電影大使もつとめている許瑋甯(アン・シュー)は、ホラー映画『紅衣小女孩』とサスペンス映画『失控謊言』、短編映画『世紀末的華麗』の三作対象で主演女優賞を獲得。ここ数年の飛躍的な活躍ぶりを見ていると当然の結果だと思えます。
特に『失控謊言』ではかなり難しい役どころで"女の怖さ"を見事に表現していたと思いますが、審査員からも異なる役を多様な演技で見せ、潜在能力を高く評価されました。こちらのプレゼンターは、任達華(サイモン・ヤム)と張榕容(チャン・ロンロン)でした。
主演男優賞は、本人もかなり驚いていた黄河(ホアン・ハー)。『紅衣小女孩』で平凡なサラリーマンを外見から内面、小さな動作に到るまで細やかにリアルな役作りをしたことは容易ではないというのが授賞理由です。昨年の主演男優賞授賞者李鴻其(リー・ホンチー)と李烈(リー・リエ)プロデューサーから名前を呼ばれると、目と口を大きくあけて一瞬固まっていたようにも見えました。予想だにしていなかったので何も準備をしていないと言っていましたが「僕の人生で最も重要な3人の方に感謝します。一人目は易智言(イー・ツーイエン)監督、二人目は易智言(イー・ツーイエン)監督、3人目も易智言(イー・ツーイエン)監督です」というコメントが印象的でした。
毎年書いていますが、台北電影節は新しい才能を発掘しサポートするという意図が強く出ているのが特徴の映画祭です。
黄河の主演男優賞や『只要我長大』の陳潔瑤監督がまさにそれであり、期待値を見極め未知数に賭ける姿勢が台湾映画の発展に貢献していることは過去の受賞作やその作り手や演技者を見れば明らかです。
※2016台北電影節に関するこれまでの記事。
2016/07/17
第18回台北電影獎、『只要我長大』が100万元大賞と長編劇映画賞、監督賞、新人賞、編集賞の5冠!主演男女優賞は黄河(ホアン・ハー)と許瑋甯(アン・シュー)!
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2016/07/181005-9ed0.html
2016/07/12
第18屆台北電影奨は豪華プレゼンター陣、『九降風(九月に降る風)』のキャストたちも!
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2016/07/18-1ba6.html
2016/07/05
2016年台北電影節「國際新導演競賽」で『只要我長大』が観客賞!
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2016/07/2016-703e.html
2016/06/30
第18回台北電影節開幕、オープニングは『樓下的房客』のワールドプレミア!
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2016/06/18-c27c.html
2016/06/05
2016台北電影節、セットチケット発売で石頭(ストーン)と許瑋甯(アン・シュー)出動!
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2016/06/2016-024a.html
2016/05/24
2016年台北電影節「國際新導演競賽」ノミネート発表!
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2016/05/2016-d1ae.html
2016/05/18
2016年台北電影節のアジア映画、ラインナップ一部発表!
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2016/05/2016-e50c.html
2016/05/14
2016台北電影節、オープニングは『樓下的房客』、杜琪峰(ジョニー・トー)『三人行』がクロージング!
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2016/05/2016-99f1.html
2016/05/10
2016年台北電影獎ノミネート発表!
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2016/05/2016-6627.html
2016/05/06
2016年台北電影節の電影大使は石頭(Stone)と許瑋甯(アン・シュー)!
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2016/05/2016stone-d36b.html
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