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2016/08/20

台湾映画紀行〜彰化1『父の初七日』

0820fuhou1台湾映画紀行〜雲林に続いては、同じく台湾高鐵(新幹線)の新駅「彰化」編です。
まずは、『父の初七日(原題:父後七日)』。
この映画は林榮三文學獎のエッセイ部門でグランプリを獲った劉梓潔(エッセイ・リウ)の原作を映画化した作品で、2010年に台湾で公開、台湾の地方の葬儀を通して描かれる涙あり笑いありの人間ドラマです。口コミで話題が広がりこの年1780万元という興行成績で『モンガに散る(原題:艋舺)』に継ぐ第二位というヒットを飛ばし、日本ではアジアフォーカス福岡国際映画祭で上映、2012年に一般公開されました。

本作は台北電影奨で脚本賞、張詩盈(チャン・シーイン)が助演女優賞を獲得、金馬奨では作品賞、助演男優賞、助演女優賞、張詩盈が新人賞、脚本賞、年度台灣傑出電影、年度台灣傑出電影工作者という7部門ノミネートで、吳朋奉(ウー・ポンホン)が助演男優賞、劉梓潔が脚本賞を受賞しました。

0820fuhou2舞台となったのは、原作者の劉梓潔の故郷である彰化の田尾という田舎町。台北で働く阿梅は父の訃報を聞き帰郷、葬儀を仕切る道士に言われるまま弟と二人で葬儀をめぐる喧騒と混乱の中で古い風習に戸惑い翻弄されます。
台湾の地方ならではの風習は厳粛でありながら滑稽さも同居し、暦によって決められた野辺送りまでのあたふたする7日間。やがて少し落ち着いた頃に突然襲ってくる喪失感と父への思い…愛する人の死を受け入れ、明日への一歩を踏み出していくヒロインの姿にいつしか見ている自分も感動の涙が落ちてくるのを気づく、という秀作です。

0820fuhou3劉梓潔の脚本は緩急織り交ぜテンポがよく、登場人物のキャラクターを生かしそれぞれの俳優の特性を引き出しつつも絶妙なバランスで仕上げる王育麟(ワン・ユーリン)監督の手腕が見事です。
吳朋奉が演じた道士は常に人の死と向き合う仕事だからこそ、自然と人間の本質が見え本人曰く"実は詩人"という設定がおもしろく、彼の詩に表されるユーモアと真理にうなります。

また、脚本などスタッフとしてのキャリアがあるものの、演技はこれが初めてというヒロインの王莉雯(ワン・ウェイリー)が新鮮。映画製作を良くわかっているということと、美人ではないことが等身大のキャリアウーマン像をリアルにし、観客が親近感を持てるだと思います。
さらに、道士の恋人で葬儀社を共同経営しながら泣き女や多くの役割を担う張詩盈が秀逸、とても良い女優さんで個人的にも大好きです。舞台を中心に活躍していて映画は本作が初、王育麟監督の次の作品『龍飛鳳舞』や『寶米恰恰』などでもいい味出しています。

0820fuhou4原作者で脚本・共同監督も担当した劉梓潔の故郷である田尾は、人口3万人強の農村で、園芸農家が200以上ある花や苗の栽培で知られる所です。特に「電照菊」と呼ばれる夜間照明で浮かび上がる菊は美しく、夜空の星と共に幻想的な雰囲気を醸し出しています。映画の中でも、「電照菊」の畑で道士と親戚の青年が人生について語り合うシーンが印象的。
葬儀が行われる霊堂は介護施設の三合院(伝統的な建築様式)を借りて撮影したそうで、映画公開後は多くの人が訪ねてきたそうです。

『父の初七日』のDVDは、配給会社マクザムのオンラインショップでも発売しています。
http://www.maxam.jp/products/detail/360/

今回ロケ地へは行かれなかったので、王育麟監督にチャットで色々伺い、彰化でお薦めのグルメも教えてもらいました。

北斗の「肉圓」
肉圓は台湾語でバーワンと言い、肉まんの具がぶにゅぶにゅのデンプンの皮に包まれたものと言ったら良いでしょうか。彰化にはたくさんお店がありますが、王育麟監督はここを薦めてくれました。
http://048871349.tranews.com

大元の「麻糬」
中身はあずきやピーナツ、タロイモなどの餅菓子…と思ったら、肉と野菜、野菜と豆というしょっぱい系も。美味しそうです。
http://www.da-yuan.com.tw/

「奶油酥餅」
サクサクしたパイ生地のような皮にクリームが入っている奶油酥餅は、「裕珍馨」という店が有名のようです。
http://www.yjs.com.tw/aboutStoryInfo.php?story=1

Lugang1「鳳眼糕」
これは鹿港の老街で100年の歴史がある玉珍齋でという店で、今回行って来ました。
古典的な美人の切れ長の眼に似た形のらくがんで、とても上品な味。日本統治時代に日本人が好む精緻なお菓子を希望されて考案したものだそうです。

彰化縣鹿港鎮民族路168號
http://www.1877.com.tw

Lugang2鹿港の老街と言えば有名な観光地で、高鐵の彰化客運のバスで彰化駅から約30分、台中駅からも出ています。
清の統治時代には台湾の三大港のひとつとして繁栄していましたが、第二次大戦後に港としての機能が停止して一時は寂れたものの、1980年代から観光地としてまた賑わいを取り戻しました。
天后宮や龍山寺などの廟や寺院、名所である「九曲巷」をはじめ曲がりくねった道が多く、古いたたずまいがとても素敵。狭い路地を歩いていると突然の静寂でタイムスリップしたようで、そこを抜けるとまた喧噪が戻ってくる…不思議な気分を味わえる街です。

Lugang3喧噪の中で特に賑わっていたのがこちらのお店「玉津香牛舌餅」、港が栄えていた頃に長持ちするので船で持って帰ることができるため、とても、重宝されたそうです。
牛舌餅というと宜蘭の名物ですが、宜蘭とは差別化をねらい店主が考案した薄いものをブランド化。アイスクリームをのせた冷たいサクサク感も人気だそうです。
彰化縣鹿港鎮民生路30號


Lugang4くねくねした路地に並ぶ古い建物のひとつ「怡古齋人文茶館」では、レトロなカフェ「阿舍茶楼」で名物の香ばしい味でとろみのある「麺茶」が味わえます。
小麦粉に砂糖、ゴマなどをきな粉色に炒めた麺茶粉にお湯をさして飲むドリンクですが、とろみがあるのでスプーンを使います。
炒める時には小麦粉+ラード、小麦粉+ピーナツ油の二種類、どちらもホットとアイスがあり、夏は緑豆や仙草、粉粿(さつま芋の粉で作ったゼリー)がトッピングされたかき氷バージョンも。

Lugang5カフェスペースのとなりには小麦粉で作る人形「麺人」の工房があり、阿舍茶楼のオーナーのお父様である施教鏞さんが伝統の技を駆使した作品がずらり。お菓子と言うより芸術品です。中には故宮博物院の白菜や角煮もありました。
予約すれば麺人作りのDIYもできるそうです。
彰化縣鹿港鎮埔頭街6號

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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