台湾映画紀行〜彰化2『あの頃、君を追いかけた(原題:那些年,我們一起追的女孩)』
シリーズ2016台湾映画紀行の最終回は、「彰化」を舞台にした青春映画『あの頃、君を追いかけた』をお届けします。
2011年、人気作家九把刀(ギデンズ)の自伝小説を映画化した本作は、台湾で社会現象を巻き起こす大ヒットを遂げ、本作でデビューした柯震東(クー・チェンドン)は一躍スターに!陳妍希(ミシェル・チェン)のミューズぶりは多くの男子のハートを射止めました。
台北電影節では監督の九把刀が「国際青年監督コンペ」で観客賞、金馬奨では柯震東が新人賞を獲得ほか数々の受賞歴があり、台湾映画歴代興行成績の第4位、香港では、チャウ・シンチーの『カンフー・ハッスル』の記録を塗り替えて、最近まで中国語映画の歴代興収ナンバーワンの座を占めていた青春映画の佳作です。
九把刀の故郷である彰化はもちろんこの映画のロケ地なので、今回は八卦山大佛以外は取材時間僅か1時間という制限の中、タクシーで6箇所を制覇しました。
最初に行ったのは、主人公たちがたむろする「阿璋肉圓」。もうここはロケ地のメッカで屋根の看板はフィルムデザインの場面写真、店の前には悪ガキたちの等身大立て看板ありと映画一色、もともと人気店なのでこの時も大勢の客で賑わっていました。
そのすぐ近くにロケ地ではありませんが、九把刀の実家である明功薬局があります。薬剤師のお父様が経営していて、中に入ると全員サイン入りの映画のポスターパネルがお出迎え、九把刀のポスターや著書などが薬と一緒に置かれています。写真を撮らせてもらいたかったので、名刺を出してご挨拶するとご両親はにこやかに対応して下さいました。前に取材に来た日本人の話などいろいろ聞かせて下さり、タクシーの運転手さんに「もう時間がないよ」と迎えに来られてしまうくらい話し込んでしまいました。
次は陳妍希と彎彎が放課後に行くという設定の「八寶冰」。ここは永楽街商圏という繁華街で、彰化市内で最も賑やかなエリアだそうです。ファッション、アクセサリーはじめ小吃などお店がいっぱい。
「八寶冰」にも映画のポスターや雑誌の記事の切り抜きなどが貼ってあり、聞くとオーナーご夫妻は実際に映画にも出演していたそうです。映画では彼女達はドリンクを買っていましたが、この日はとても暑かったので紅豆冰(氷あづき)を購入、時間がないのでもちろんタクシーの中で移動しながら食べたのですが、美味しかった!
自転車に乗った柯震東が朝ご飯を買うのが「早餐車」と呼ばれる車、成功路の台灣銀行付近にとまって販売しているようですが、何せ私たちが行ったのは午後なのでもう車はなく、看板だけがありました。映画の中では背景が違うので、たぶん場所もここではないのだと思いますが、残り香だけ。(^O^)
そして、柯震東が賭けに負けて丸坊主にしに行った「美光理髮廳」。看板はうしろの三文字がはげ落ちていて「美光 」と…。
中を見せてもらいたかったのでお店の方に名刺を渡し目的を話したら、当時のことをいろいろお話ししてくれました。
撮影の時は理髪台が3つあったそうですが、今は2つになっています。お話しを聞いた男性は映画には出演しなかったそうで、そういえば映画の中では柯震東にクロスをかけるのは女性でした。
主人公たちが通っていた精誠高中は、九把刀の母校でもあります。行く途中に通学路として映画の中に出てくる中華陸橋を渡りましたが、タクシーを降りて写真を撮る時間がなかったのが残念です。
学校は正門の警備員さんに言うと入れてくれ、外観と校庭だけ雰囲気を味わってきました。みんなが朝礼をしていた校庭や国旗掲揚台、主人公たちが掃除をしていた木の下のベンチは、校庭のトラックのすぐ横にありました。(写真のアングルは映画と違いますが)
そして彰化のシンボル八卦山大佛。1956年に建造されたこの大仏は鉄筋コンクリートつくりで高さ約22メートル、中は廟になっています。階段で4階まで様々な仏像を見ながら上がると、息はゼイゼイ。
映画の中では、柯震東と陳妍希が校庭のベンチで夜中に大仏に行くとキョンシーが出るという噂について話すシーンで、大仏の前をキョンシーがぴょんぴょん行進します。他愛のない噂話ですが、キョンシーがヤクルトのカラボトルを踏んで転び、次々とコケていく図が笑えます。
最近はスカイウォークという遊歩道ができて、観光客がたくさん訪れています。
映画には関係ないのですが、このスカイウォークをおりてすぐのところに「黑公雞風味餐廳」というレストランがあります。文字通り鶏料理が人気の店で、養鶏から始めて1992年にヒノキ作りのレストランを開店したそうです。黒い羽根の地鶏は変種ですが、これを売りにして自家製野菜と共に様々な料理を出しています。大仏に近いこともあって。週末には2500人くらいの客がが訪れると言います。
彰化縣花壇鄉聽竹街50號
その他、ロケ地に近い彰化駅のそばにある老舗レストラン「丐幫滷味」は、看板メニューの滷味(ルーウェイ)が人気。隠し味の漢方薬が入った醤油ベースのスープで豆干やミミガー、鳥のハツなどをじっくりと煮込んでいます。店内で食べるのはもちろん、テイクアウト用のオードブルもあります。
この店も、日本統治時代のバロック建築で、2階のアーチ型のバルコニーからは彰化駅が見えます。
彰化縣彰化市中正路一段478號
台湾に多く残る日本統治時代のバロック建築をリニューアルして店舗にしたところはたくさんありますが、ユニークなのがピザ・レストランの「Pizza Factory-員林店」。彰化市街から離れた員林という所ですが、もともと銀行だった建物をリノベーションしたそうで看板がそのまま残っています。銀行時代の大きな金庫を厨房にし、創意工夫されたメニューはどれも素敵。少しずついろいろなピザをいただきましたが、季節限定のマンゴーピザは頬が落ちそうな美味しさでした。
オーナーは33歳の美女、もと女優ではないかと思うくらいの美貌なので聞いてみると、某航空会社のCAだったとか。
彰化縣員林鎮中山路一段822號
『あの頃、君を追いかけた』(原題:那些年,我們一起追的女孩)
地方都市の高校生達が社会人となるまでの約10年間を、主人公2人の可笑しくて切ない“初恋”を主軸に描かれていく。
舞台は台湾中西部の町、彰化。頭の中はアレでいっぱい。将来のことを真剣に考えたこともない高校生コーチンと個性豊かな仲間たちは、くだらない悪戯で授業を妨害する毎日を過ごしていた。担任からお目付け役を仰せつかった女生徒シェンを疎ましく思いながらも、次第に胸がざわつき始め…。
原作・監督・脚本:九把刀(ギデンズ・コー)
出演:柯震東(クー・チェンドン)、陳妍希(ミシェル・チェン)
2011年台湾公開、2013年日本公開
配給:ザジフィルムズ、マクザム、Mirovision
ⒸSony Music Entertainment Taiwan Ltd.
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コメント
冒頭でコートンが自転車で朝食をピックアップするのは場所の設定としては台灣銀行前あたりで、実際にそのあたりに朝食の屋台も出ています。わたしもそこに行ったのですが、明らかにロケ地ではないですよね。セットかと思っていましたが、最近になって画面にちらっと見えている看板から検索してたどっていくと、グーグルマップでロケ地らしき場所が少し外れた場所で見つかりました。こんど彰化に行くときには訪ねてみようと思います。
投稿: 香港フリークOno | 2016/09/22 20:49