アジアンパラダイス

本作は先日東京国際映画祭で上映されましたが、香港から台湾に来たタクシー運転手が麻薬の取引に巻き込まれるという、鍾孟宏監督独特のブラックユーモアがたっぷり詰まった"男のドラマ"です。
東京には鍾孟宏監督と運び屋を演じた納豆（ナードゥ）が来日して色々な話を聞かせてくれましたが、金馬影展では納豆（ナードゥ）と戴立忍（ダイ・リーレン）を除くメインキャストが勢揃い。特に主役の許冠文（マイケル・ホイ）の登場には、会場が大きく沸きました。

許冠文は劇中では人生に失敗しトラブルに巻き込まれ、妻からも疎まれるタクシードライバー役ですが、実際には金馬奨の主演男優賞にノミネートされたのも、長年支えてくれた夫人のおかげだと感謝していました。
また、今回の出演の経緯は自ら監督する新しいコメディの脚本を書いていてなかなか筆が進まずスランプに陥っていたとき、「思いがけず一本の電話をもらった。それは台湾でタクシードライバーの役をやらないかというものだった。人生はこんなものだね」ということだったそうです。

しかし撮影は一路順風とはいかずに、あるシーンで北京語の発音が問題でNG100回ということがあったそうです。さすがに許冠文も頭にきて終わった後監督と口をきかなかったそうです。
さらに、クランクアップして香港へ帰る準備をしていたら監督からご飯食べようという誘いがあり、「そこで、撮り直ししたい部分があるから、もう一日残って欲しいと言われた」と、苦労話を披露してくれました。
完璧主義の鍾孟宏監督らしいエピソードですが、その甲斐があり金馬獎では作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞を含む8部門にノミネートされています。

上映後のQ&Aでは、司会者がキャスト紹介で「●●監督」と呼ぶように、この映画には多くの監督が出演しています。この日欠席だった戴立忍、『四枚目の似顔絵』に続いて医師役の陳玉勳、凄まじいリンチを受けるシーンがある陳以文、そのリンチを行う吳中天など、いかにすごいキャスティングであるかを、あらためて認識させられます。

観客からは日本でも聞かれたエンディング曲に谷村新司の「昴」を使った理由についての質問があり、「大陸に行った時にテレサ・テンが歌うこの歌を聞いてとても心を惹かれた。あとでオリジナルを聞いてみると歌詞がとても良くこの映画にピッタリだと思った」と答えていました。
また、本作では前述のようにかっこいい男達の映画ですが、なぜ監督の映画には女優があまり出ないのかという質問には「いつも必ず聞かれることで、さっきも取材で答えたので明日の新聞に載るだろう、それを見て下さい」と、司会者泣かせの回答でした。

『一路順風』は、11月18日から台湾で一般公開になります。

※『一路順風（邦題：ゴッド・スピード）』に関するこれまでの記事

2016/10/29
東京国際映画祭、台湾映画『ゴッド・スピード（原題：一路順風）』鍾孟宏（チョン・モンホン）監督＆納豆インタビューとQ&A
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2016/10/qa-f226.html

2016/10/01
第五十三回金馬獎ノミネート発表！台湾の「一路順風」が8部門で最多！
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2016/10/8-0207.html

2016/08/12
2016台北金馬影展オープニングは鍾孟宏（チョン・モンホン）監督の『一路順風』！
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2016/08/2016-09bd.html

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