2016年の中国映画を振り返る
今年のヒット作の上位を見てみると、鄭保瑞(ソイ・チェン)監督の安定のシリーズになってきた『西遊記之孫悟空三打白骨精(邦題:西遊記 孫悟空 vs 白骨夫人)』。林超賢(ダンテ・ラム)監督と彭于晏(エディ・ポン)コンビの『湄公河行動(邦題:メコン大作戦)』、劉偉強(アンドリュー・ラウ)王晶(ウォン・ジン)鍾少雄(ビリー・チョン)共闘監督の『澳門風雲3』、鹿晗(ルハン)と井柏然(ジン・ボーラン)がダブル主演で李仁港(ダニエル・リー)監督の『盜墓筆記(邦題:タイム・レイダーズ)』。
このベスト5、全て香港の監督による作品です。
中国映画と香港映画の境目がますますわからなくなっていますが、資金は中国、人は香港という図はハッキリしています。
これに続くのは、成龍(ジャッキー・チェン)主演映画でアメリカとの合作『絕地逃亡』(監督はレニー・ハーリン)、張一白(チャン・イーバイ)監督のラブストーリー『從你的全世界路過』、薛曉路(シュエ・シャオルー)監督で湯唯(タン・ウェイ)主演の『北京遇上西雅圖之不二情書』ですが、やはり大バジェットの作品が目立ちます。
これまでランクインしていた青春映画は姿を消していますが、東京国際映画祭の関連企画「2016東京・中国映画週」でも数本紹介されたように健在です。
また、12月16日から公開になったアメリカとの合作で張藝謀(チャン・イーモウ)監督の『長城(邦題:グレートウォール)』はすでに6億元(約101億円)を突破、金馬奨で監督賞を受賞したヒットメーカー馮小剛(フォン・シャオガン)監督の『我不是潘金蓮』も5週目にしてまだベスト10内ですから、最終的にどれくらいの数字になるのか興味深いところです。
映画賞の方は、金鶏奨が百花奨と合体して偶数年は百花奨、奇数年に金鶏奨という形になったので、今年は一般投票の百花奨になり、作品賞に選ばれたのは曹保平(ツァオ・バオピン)監督の『烈日灼心』(2015年)でした。
そして、上海国際映画祭の金爵奨では劉傑(リウ・ジエ)監督、董子健(ドン・ズージエン)主演の『徳蘭』(2015年)がグランプリ、曹保平(ツァオ・バオピン)監督作品『追凶者也』の劉燁(リウ・イエ)が主演男優賞に輝きました。この『追凶者也』は中国南東部の小さな町で起きた殺人事件を描いた作品ですが、主人公をはじめ事件に巻き込まれて翻弄される人々と警察の追跡劇がとてもおもしろく、笑いもあり素晴らしい映画でした。
金馬奨で作品賞を獲得した張大磊(チャン・ダーレイ)監督の『八月』と、上海国際映画祭で撮影賞の『皮縄上的魂』は張楊(チャン・ヤン)監督の力作ですが、現地では映画祭のみで一般公開はまだです。
金馬奨の主演女優賞で周冬雨(チョウ・ドンユー)と馬思純(マー・スーチュン)がダブル受賞で話題になった曾國祥(デレク・ツァン)監督の『七月與安生』は1億7千万元弱、東京国際映画祭で芸術貢献賞、金馬奨で范偉(ファン・ウェイ)が主演男優賞に輝いた梅芳(メイ・ファン)監督の『不成問題的問題(邦題:ミスター・ノープロブレム)』は現地で来年3月公開予定だそうですが、どんな評価が下されるのか楽しみです。
興行収入と「賞」がリンクしないのは世の常ですが、ヒットしなくても海外の映画祭で上映される作品に秀作が多く、楽しませてくれてありがとう、と言いたいです。
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