『盜命師』李啟源(リー・チーユエン)監督インタビューin台北!
映画の内容については、既報のように配給会社からのリリースをもらっていたのでおおよそのことは把握していたので、とても楽しみでした。
そして実際に見てみたら、これが期待を上回る出来映えだったのです。
宣伝戦略としてはビジュアルや予告編など最近ブームのサスペンスタッチを前面に打ち出していますが、実は素晴らしい人間ドラマでした。
まず、台湾では珍しい臓器売買と鳩レースというモチーフに着目したポイントから聞くと、どちらも台湾ではあまり描かれていないものであったということでしたが、この二つを融合させたストーリーテリングは見事としか言い様がありません。
臓器移植を待つ患者の多さに比べてドナーが少ないことは世界中の問題で、この裏で暗躍する組織や人々がいることもよく知られています。
一方の鳩レースは世界各国で行われていますが、台湾ではスタート地点が海上というのが特徴だそうです。そして、このレースにからむ賭博行為が行われているのも事実です。
この鳩レースのシーンは撮影許可が下りるのに半年もかかり、船に乗れるスタッフは3人と限られていたため、監督とカメラマン2人が乗船して監督自身もカメラを回したと言っていました。10万羽の鳩が一斉に船から飛び立つのはワンチャンス、それをしっかり写さねば、という緊張のシーンだったそうです。
「この撮影許可が下りなかったら、また撮れなかったら、CGに頼るしかないと思っていたが、そうなったらとても後悔したでしょう。本物を見せることができることになって、本当に良かった」
と、しみじみおっしゃっていました。
この甲斐があって、本当に迫力ある美しい映像です。
本作の登場人物たちはこのふたつにからみ、そこには金儲けではなく深刻な問題を抱えて苦悩しています。
その苦悩は"愛"ゆえであること、誰もが持つ明と暗、善と悪の間の葛藤が見る者の心に深く突き刺さります。
これまで新人を主役に起用することが多かった李啓源監督は、今回王陽明(サニー・ワン)と陳庭妮(アニー・チェン)という若手スターを使っていますが、それぞれの新しい一面を引き出し、二人もまた見事に監督の要求に応えています。
陳庭妮は、隣のお姉さん的な親近感が気に入ったことと、台湾語に問題がなかったことを起用の理由に挙げていました。
王陽明の全身刺青は有名ですが、本作ではそれをうまく使っていたり細かいところでもなるほど…と、唸らせてくれます。
主役2人のほかに、ベテラン勢のキャスティングもこの映画の厚みに貢献しています。
光と影を演じ分ける喜翔(シ・ーシャン)、コメディのイメージが強い廖峻(リャオ・ジュン)の一転したシリアスさ、陸弈靜(ルー・イーチン)は少ない出番ながらも相変わらずの存在感で、重要な場面を支えています。
そして、やはりメインキャストの中に監督の教え子である新人が起用されていました。蔡思韵(ツァイ・スーユン)という若い女性ですが、難しい役を好演していました。
良く練られた脚本、繊細な人物描写、美しい映像、展開の面白さ、『盜命師』はこの秋公開の秀作です。
この李啓源監督のインタビューは、後日Podcastで配信します。
『盜命師』
監督:李啟源(リー・チーユエン)
出演:王陽明(サニー・ワン)、陳庭妮(アニー・チェン)、喜翔(シ・ーシャン)、廖峻(リャオ・ジュン)、陸弈靜(ルー・イーチン)
音楽:半野喜弘
台湾配給:牽猴子整合行銷股份有限公司
10月6日から台湾で公開
※これまでの『盜命師』に関する記事
2017/08/08
李啟源(リー・チーユエン)監督の新作台湾映画『盜命師』10月に台湾で公開!
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2017/08/10-b178.html
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