第54回金馬獎〜プレスセンター受賞者編
今年の金馬獎は、既報の通り二年ぶりに台湾映画の圧勝に終わりました。
特に後半に『阿莉芙』『大佛普拉斯』『血觀音』が出てきて、これが金馬奨で大健闘し、『大佛普拉斯』は10部門ノミネート中黃信堯(ホアン・シンヤオ)の新人監督賞、撮影賞、脚色賞、最優秀オリジナル音楽賞、最優秀オリジナル楽曲賞の5部門制覇。
楊雅喆(ヤン・ヤージャ)監督の『血觀音』は作品賞、惠英紅(カラ・ワイ)が主演女優賞、文淇(ウェン・チー)の助演女優賞、観客賞で、惠英紅は香港の人ですが、文淇は台湾生まれの北京育ちです。
そして助演男優賞が『阿莉芙』の陳竹昇(チェン・ジューシェン)、新人賞に『強尼.凱克』の瑞瑪席丹(ルイマー・ジータン)が選ばれたことでも台湾勢の奮闘ぶりがよく表れています。
審査員の講評によると、作品賞も『大佛普拉斯』と『血觀音』が最後まで競って1票差で
『血觀音』の受賞が決まったそうです。
審査委員長の呉念真(ウー・ニエンチェン)が言うように、この二作はこれまでの台湾映画とは異なり新しい時代に入ったことを象徴しています。
『大佛普拉斯』は社会の低層で生きる人と金持ちとの差を新しい映像表現で見せ、台湾語を使うことでリアリティと親近感を出し台湾アイデンティティが強く伝わりました。
『血觀音』は、80年代を舞台にある女性家族と政財界の癒着を通して、人間の弱さと強さを濃厚に描き出しています。
主演男優賞に輝いた『老獸』(中国)の涂們(トゥー・メン)は、あらくれダメ親父を圧倒的な存在感で演じ、他の候補とは大差を付けての受賞だったそうです。
「今回、一緒にノミネートされた俳優の皆さん、ノミネートされたこと自体が皆さんの才能と実力を示しています。受賞できたのは運がよかっただけ。審査員の皆さん、ありがとうございました」と、見かけとは違いとても謙虚なスピーチでした。
アクション女優から演技派へと見事に転身した惠英紅(カラ・ワイ)、今回の『血觀音』での主演女優賞受賞は大きな意味をもったようで、名前を呼ばれてガッツポーズをしていたのが印象的でした。
「実は席で座っている時、リラックスしたふりをしていました。その後私の名が呼ばれてからずっと息切れがしていて手は少しふるえ、ちょっとめまいがします(笑)。今までずっと受賞できませんでしたが、夢が叶った今日のこの機会に感謝します。これからは欲張ることなく、また皆さんが惠英紅はすごいと思ってくださる役を演じたいと思います」
助演男優賞の陳竹昇(チェン・ジューシェン)は、『阿莉芙』で女性になったものの叶わない思いに身を焦がすドラック・クイーン・パブのママ役は出色の演技でした。主演した『大佛普拉斯』で演じた最下層のホームレスと同じ人とは、全く思えないほどです。
「頭の中が真っ白です。審査員の方が私を評価してくれたことに、本当に感謝します。今回の役作りでは、友人であるモデルの陸明君(ルー・ミンジュン)に女性の立ち居振る舞いのレッスンをしてもらいました。そしてプレゼンターの陳玉勳(チェン・ユーシュン)監督と林美秀(リン・メイショウ)は、人生で大事な兄と姉のような存在でもあり、恩人でもあります」と、台湾語をまじえてのスピーチでした。
天才少女と呼ばれる文淇(ウェン・チー)は、『嘉年華』の主演女優賞とダブルノミネートで「どっちも欲しい」と言って話題になっていた恐るべき14才。『血觀音』では“少女”と“女”の二面を見事に表現して驚かされました。
「今(泣かないように)必死にコントロールしていることころです。自分がこんなに暗い役を演じるなんて全然知らずにいましたが、とてもラッキーだったと思います。それに楊雅喆(ヤン・ヤージャ)監督が演じる前に『君の成熟や安定した面は好きじゃない。中二病なところが好きなんだ (笑)』と言ってくれました。監督にとても感謝しています」
新人賞に輝いた『強尼.凱克』の瑞瑪席丹(ルイマー・ジータン)は、レバノンと台湾のハーフで、台北電影節でも新人賞を獲得しています。
「今回はとてもラッキーでした。監督は勇敢にも2回お会いしただけで私を起用することを決めました。カメラテストもなく、直接撮影に入りました。これからも演じることへの熱意を持ち続け、役者として成長し続けることができたらと思います。アクションやちょっとクレージーで難しい役をやってみたいです」
今年の新人監督賞候補は充実の顔ぶれでしたが、やはり頭一つ出ていた『大佛普拉斯』の黃信堯(ホアン・シンヤオ)が受賞。新人とは言え、台北電影奨で二度も100万元大賞を獲得している猛者です。
「二つも金馬獎を獲れるなんて思ってもいませんでした。金馬奬、そして審査員の皆さん、鍾孟宏(チョン・モンホン)監督と葉如芬(イエ・ルーフェン)プロデューサーに感謝します。鍾孟宏監督は、自分の全作品の興行成績の合計よりも『大佛普拉斯』のほうが良いとよく言われます。 (笑)新しい監督に多くのチャンスを与え、支援してもらいありがたいです」
監督賞は『嘉年華』の文晏(ウェン・チャン)、受賞スピーチで「台湾で抽選に関係なく1月に公開されることになった」とうれしそうに言っていたのが印象的でした。
そして「実は脚本を書いている時、この映画が中国を含めたくさんの人に見てもらえる機会があるとは思っていなかったので、昨日中国での上映が決まり、今日この奨をいただくことができ、特にうれしく思います。この映画は本当に社会の問題をはらんでいるので、皆さんに見ていただけるのはとても意義があることです」
(翻訳協力:二階堂里美)
※第五十四回金馬獎に関するこれまでの記事
2017/11/30
第54回金馬獎レッドカーペット!
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2017/11/54-c332.html
2017/11/26
第五十四回金馬獎は台湾映画『血觀音』『大佛普拉斯』が大奮闘!
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2017/11/post-6f43.html
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