« 台湾映画『52Hzのラヴソング』のBlu-ray&DVDが8月2日に発売! | トップページ | Podcast 第13回大阪アジアン映画祭大阪スターアワード受賞の杜汶澤(チャップマン・トー)インタビュー! »

2018/04/21

台湾映画上映&トークイベント〜台湾映画の"いま" 第二回『コードネームは孫中山(原題:行動代號:孫中山)』超満員!

0421dm台湾文化センターで実施した台湾映画上映&トークイベント〜台湾映画の"いま" 第二回『コードネームは孫中山(原題:行動代號:孫中山)』は、申し込み開始数分で満席になるという人気でしたが、高い参加率で会場は超満員でした。
台湾では台北電影節と金馬賞で脚本賞を受賞、2015年の大阪アジアン映画祭ではグランプリと観客賞をダブル受賞し、公開が熱望されている作品です。本イベントのアンケートでも上映リクエストが多く、上映後のアンケートでも高い満足度となりました。


0421event1本作は易智言(イー・ツーイエン)10年ぶりの監督作品で青春映画ですが、キュンとする恋とか可愛い女の子とかは出てきません。ひたすら貧乏な男の子達が孫文の銅像争奪戦を繰り広げる中で、台湾の貧困や社会のゆがみをユーモアを交えて描いています。
映画の中で描かれるクラス費も払えない何人もの子たち、これは誇張ではなく、経済格差の大きい台湾ではこういった貧困家庭が少なくありません。
貧困の要因のひとつとして、単身家庭が多いということが挙げられます。台湾は離婚大国と言われるほど離婚率が高く、生活苦に悩まされる父親、あるいは母親だけの家庭が多いのが現状です。ここに雇用や社会保障の問題もからみ、貧困問題の解決はなかなか難しいようです。
主人公たちもこのような家庭のため、銅像を盗もうという行動に出てしまいます。
易智言監督は、厳しい現実の中でもどこかほんわかとしたキャラクター設定の阿左と、シリアスな小天という二人を対比させながらこういった問題提起をしています。
でも、ここにユーモアを盛り込んで映画全体が暗く悲惨な印象になるのを避け、この少年達に希望の光を閉ざさない結末にしてあるのは、監督の暖かい心情によるところだと思います。

0421event2本作のキャストは、主演の詹懷雲(ジャン・ファイユン)と魏漢鼎(ウェイ・ハンディン)をはじめ、少年達はすべて監督のスカウトとオーディションで選ばれ、平均年齢は当時18才弱でした。
詹懷雲と魏漢鼎のケンカのシーンは長回しで撮っていますが、この理由としては、ふたりがケンカをして力尽きることで、貧困がもたらす出口のない現状に対する無力感を出したかったからだそうです。

イベント実施にあたり、易智言監督からムービーメッセージをいただきました。

この主役2人は、その後それぞれ1本映画に出ました。
詹懷雲は2016年に沖縄国際映画祭で上映された林依晨(アリエル・リン)主役の『我的蛋男情人(邦題:マイ・エッグ・ボーイ)』で林依晨の卵子の役、魏漢鼎は2016年『再見,在也不見(Distance)』で陳柏霖(チェン・ボーリン)の少年時代を演じました。
ふたりとも今は大学で勉強に専念していて、監督は本人達が自分で進路を決めるまで、見守っていると言っていました。

0421event3本作のメインキャストは新人ですが、特別出演の顔ぶれが豪華です。李千娜(リー・チエンナ)、張孝全(チャン・シャオチュアン)、監督の教え子である張書豪(チャン・シューハオ)と黃河(ホアン・ハー)も出ています。
特に張孝全(チャン・シャオチュアン)は、『藍色夏恋』の時に地下鉄でスカウトしたのですが、出演には到りませんでした。その後彼は台湾を代表する俳優の1人になり、今回は監督がオファーして特別出演という形で易智言監督作品に出演を果たしました。
監督は
「彼は様々な役にトライしてやり遂げている。特に、どの役でも彼は演じることを楽しんでいる。役者は時に気の進まない役柄も演じなければならないが、彼はどんな役でもそこに楽しみを見つける。そこが凄いところだ。今回の警備員の役も、出番は少ないが非常に難しい役だが見事にこなした」
と絶賛していました。

0421event4反省文を書かせる教師役の張書豪はちょうど兵役を終えた時で、台湾の学校では軍人に近い教師がいることから、兵役の体験をここに生かしたと言っていました。
また、黄河が演じた電車の中の背景的な乗客は、もともとエキストラを使おうと思っていたそうですが、やはりチラ見したりする微妙な感じを出すのはプロでないと難しいということで、急遽呼んで演じてもらったということです。

この映画で易智言監督が高校生役を全部オーディションで決めたように、台湾映画ではオーディションやスカウトでキャストを探すことが多いのです。
日本のように養成機関を持った大手芸能事務所がない為、俳優を目指す子はその第一歩としてモデル事務所に入るか、演劇科のある高校で勉強します。製作側は、そういう学校やモデル事務所に声をかけてオーディションに参加してもらうほか、インターネットで公募したり、街中でスカウトという形で探します。
易智言監督の『藍色夏恋』は、桂綸鎂(グイ・ルンメイ)も陳柏霖も西門町で、先述のように張孝全は地下鉄でスカウトしました。

こうやってスターが生まれてくる台湾で、では、いまいったい誰が人気なのか。これはよく聞かれるのですが、いつも答えは決まっています。「今、テレビや映画に出ている人」。
最近は国民の義務である兵役の期間が短くなったため、兵役で人気が落ちるということはなくなりました。
しかし、それに変わるように大陸へ進出するスターが増えたため、かつてアイドルドラマの主役をしていた人たちは台湾での露出がほとんどなくなりました。

0421event5そんな中で、台湾映画で頑張っている俳優達をご紹介しました。
まず呉慷仁(ウー・カンレン)。いま、一番の売れっ子と言って良いでしょう。36才になりますが、映画でもドラマでも受賞続きで、今年8月に『引爆點』という公社会派ミステリーの新作が公開されます。
デビューが28才と遅めだったため、本人は全力疾走しなければ…ということでとにかく忙しい人です。
来月、台湾文化センターで上映する『淡水河の奇跡(原題:鮮肉老爸)』は、80年代アイドルに扮していますが、家族の愛と絆を描いたとてもおもしろい作品です。

0421event6次は黄健偉(ホフン・ジエンウェイ)。こちらも36才。舞台経験も豊富な主役も脇役もする演技の巧い俳優で、ドラマ『麻醉風暴』に主演して人気急上昇です。いわゆるイケメンではないですが、監督からのオファーが絶えません。
昨年台湾でインタビューした時に、終わったら「これから妻が仕事なので、育児を交代しなければならず、お先に失礼します」と言って帰って行きました。奥様は女優の蔡亘晏(ツァイ・ガンイエン)さんなのですが、いい旦那様であり、いいパパだなぁと感動してしまいました。

0421event7そして、莊凱勛(カイザー・ジュアン)。37才。去年日本でも公開された『目撃者』の主役です。彼も舞台経験が豊富な演技派で、売れっ子です。『目撃者』の程偉豪(チェン・ウェイハオ)監督は、人間の複雑な感情を演じられるこの役は彼しかいない、と投資家たちを説得したほどの惚れ込みようで、その読み通り大成功しました。金馬奨で残念ながら受賞は逃しましたが、必ず主演男優賞を獲るであろう俳優です。

0421event8女優の方は柯佳嬿(アリス・クー)。2006年に映画で主役デビューして、映画とドラマで大活躍。『モンガに散る』のような儚い役から『血観音』のようなしたたかな女性まで、振り幅の広い演技で売れっ子です。
外見からちょっと近寄りがたい美人女優という印象を受けますが、実際はとても気さくな人で、10年くらい前になりますが、台北電影節の時に彼女の方から寄ってきて「日本の方ですか?」と声をかけられました。同僚と喋っていた日本語を聞きつけてということでした。高校で日本語を習っていて日本が大好きだということで、しばらく立ち話をしたことがあります。
去年俳優の謝坤達(シェ・クンダー)と結婚して話題になりました。

0421event9もう1人謝欣穎(シェ・シンイン)も、映画とドラマ両方で売れっ子です。侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『黒衣の刺客(原題:刺客聶隱娘)』では張震(チャン・チェン)の正妻役でした。
清楚な役から妖艶な役までこなし、これまで助演女優賞と主演女優賞あわせて4つ受賞しています。
彼女も気軽に声をかけてくれるフレンドリーな人で、合同インタビューの時など私の手からマイクを取って自ら持ってくれたりします。本当に気だての良い人だと、台湾の業界でも評判が高い方です。

0421event10そして、日本ではお馴染みの楊丞琳(レイニー・ヤン)も頑張っています。
『流星花園〜花より男子』から17年、女優として歌手として走り続けているすごい人ですね。アイドル時代に『TATTOO -刺青-』という映画で同性愛の役を演じて周囲を驚かせましたが、アイドルから女優へのシフトも見事で、去年は大ヒットホラー映画『紅衣小女孩2』で母親役にもトライしました。
台湾のアイドルドラマ創世記からずうっと台湾で第一線で活躍している数少ないスターです。

0421event11最新情報コーナー。
まずは、台湾での話題作の公開情報です。
5月11日から『市長夫人的秘密』。市長夫人のスキャンダルにテレビのバラエティ司会者が巻き込まれるという内容で、主役は張少壊(チャン・シャオファイ)、市長夫人を陳喬恩(ジョー・チェン)、司会者の恋人でマネージャー役に柯佳嬿、懐かしい183clubの明道も出ます。そして、馬志翔(マー・ジーシアン)が市長の役で話題になっています。監督は連奕琦(リエン・イーチー)。

0421event12そして日本では「台湾巨匠傑作選2018」が4月28日から6月15日まで、新宿K’s cinemaで開催されます。今年で3回目になるこの特集上映は、台湾ニューシネマのルーツを経て、現代の新しい監督の作品までバラエティに富んだラインナップですが、今回のトピックスは『藍色夏恋』のデジタルリマスターによるリバイバル公開です。
2016年にここ台湾文化センターで上映した時の新字幕が採用され、更にブラッシュアップしました。
『藍色夏恋』は4月30日が初回の上映になります。ぜひ公式サイトや劇場のサイトでスケジュールを確認して見に行って下さい。
ⒸARC LIGHT FILMS/PYRAMIDE PRODUCTIONS

0421event13そして、恒例のプレゼント抽選会では易智言監督からいただいたサイン入りのポスター2種類、残念ながら4月号をもって休刊となってしまった雑誌「な〜るほど・ザ・台湾」の最新号とバックナンバーを計14名の方にさし上げました。

次回は5月26日(土)に2016年に製作された吳慷仁(ウー・カンレン)主演の未公開作『淡水河の奇跡(原題:鮮肉老爸)』の上映と、トークは映画の中に出てくる80年代のアイドルから今日までの台湾アイドル史について。
近々ご案内記事を掲載しますので、ぜひお楽しみに!

台湾映画上映&トークイベント〜台湾映画の"いま" 第二回『コードネームは孫中山(原題:行動代號:孫中山)』
主催:台北駐日経済文化代表処台湾文化センター/アジアンパラダイス
協力:光在影像股份有限公司/藍色工作室/大阪アジアン映画祭
Ⓒ 2014 1 Production Film Company, Lan Se Production

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

|

« 台湾映画『52Hzのラヴソング』のBlu-ray&DVDが8月2日に発売! | トップページ | Podcast 第13回大阪アジアン映画祭大阪スターアワード受賞の杜汶澤(チャップマン・トー)インタビュー! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 台湾映画『52Hzのラヴソング』のBlu-ray&DVDが8月2日に発売! | トップページ | Podcast 第13回大阪アジアン映画祭大阪スターアワード受賞の杜汶澤(チャップマン・トー)インタビュー! »