台湾映画上映&トークイベント〜台湾映画の"いま" 第三回『淡水河の奇跡(原題:鮮肉老爸)』笑いと感動で大盛況!
本作は2014年から2016年にかけて製作された「台北愛情捷運」というシリーズの中の一作です。
この「台北愛情捷運」というシリーズは、『雞排英雄(ナイト・マーケット・ヒーロー)』『大稻埕(ピース、時空を超える愛)』などのヒットメーカーの葉天倫(イエ・ティエンルン)監督がプロデュースした、台北のMRTの駅を舞台にその土地の歴史や文化を盛り込み、ご自身と5人の新鋭監督による7つの愛の物語を綴った作品群です。
このシリーズで舞台になっているMRTの駅は大橋頭、淡水、西門、忠孝復興、新北投、中正記念堂の6つ。シリーズ最終作は特定の駅を設定せずに「終点」というイメージですが、よく出てくる駅は北投です。
この駅周辺は観光地も多いので、利用された方も多いのではないかと思います。
大橋頭は乾物や布地の街迪化街などの大稻埕の最寄り駅。淡水は夕陽の名所で古跡や老街のある観光地。若者の街西門、温泉の新北投、衛兵交代のある観光名所中正記念堂、忠孝復興は若者の街西門に対して大人が集まるおしゃれな「東区」と呼ばれる一帯にあります。
これらを舞台に、様々な愛が展開していくのがこのシリーズです。
そしておもしろいのが、7作のうち劇場用映画は3作、あとの4作は映画の手法で製作しテレビで放送する「電視電影」だということ。
「電視電影」は主に公共電視が製作・放送しており、監督や俳優の新人登竜門にもなっています。優れた作品は台北電影節や金馬影展という国内の映画祭で上映され、劇場用映画と同じ土俵で競い、受賞作も少なくありません。
このシリーズは公共電視ではなく、映画専門チャンネル衛視電影台で2016年の4月に放送されました。
本作の監督の高炳權も若手で、2012年に陳妍希(ミシェル・チェン)と陳漢典(チェン・ハンディエン)、倪安東(ニー・アントン)で『愛的麵包魂(邦題:パンのココロ)』で長編デビュー、東京国際映画祭で上映されました。
実はこの『パンのココロ』ももとは電視電影で、改編しキャストも替えて映画化した作品です。
監督は『淡水河の奇跡』は電視電影である、ということをインタビューでも強調していました。というのは、映画的手法であっても予算や機材が違うので、映画ではないというのが、持論のようです。
★高炳權監督ムービーメッセージ
『淡水河の奇跡』は、淡水の小吃(B級グルメ)の古い店の家族の物語です。
タイムスリップしてきた自分と同い年くらいの男が父と名乗り戸惑う息子や妹、そして中年になった妻の複雑な感情を笑いと涙で描いています。
今回は特別にオマケ映像=映画に出てくるのアイドルユニットのMVを冒頭にお見せしたところ、たいへん好評でした。
淡水には漁人埠頭というおしゃれスポットもありますが、あえて本作では小さな古い魚丸(つみれ)を商う店にしたところも味があります。
そして、少ない予算ゆえのチープさも逆手にとって笑わせていたり、監督のセンスと手腕は見事です。
主役の吳慷仁(ウー・カンレン)は映画でもドラマでも主演男優賞を受賞しているいま台湾で一番の売れっ子ですが、シリアスな役からコメディまで本当に振り幅の広い俳優です。本作では歌って踊る80年代のアイドルを楽しそうに演じています。歌も上手ですよね。これまでにも主演作の映画の主題歌やドラマの挿入歌も歌っているのですが、歌手活動はしていません。
来月から始まる台北電影節では、夏に公開の主演作がクロージング作品で、もう1本の出演作が台北電影奨にノミネートされています。
一方、ダブル主役と言っても良い息子を演じた侯彥西(ホウ・イエンシー)は、アイドルドラマを経て『あの頃、君を追いかけた(原題:那些年,我們一起追的女孩)』や『パンのココロ』『おばあちゃんの夢中恋人(原題:阿嬤的夢中情人)』に出演、2016年の大ヒット映画『樓下的房客』では全裸もいとわないオタク役を演じ、話題になりました。
監督は、彼の抜擢について、主役に吳慷仁が決まっていたので、人気スターでなくても良いと思い気心知れた侯彥西にチャンスを与えたと言っていました。それを受けて金鐘奨の助演男優賞にノミネートされるという見事な演技を見せました。
まだ新作の情報は入ってきていませんが、これからが楽しみな俳優の1人です。
つみれ店のオーナーで、突然若いままの夫の出現に戸惑う妻には受賞歴も多いベテランの苗可麗(ミャオ・カーリー)がキャスティングされています。
息子の恋人役方志友(ファン・ジーヨウ)はテレビを中心に活躍する女優で、妹役の何以奇(ホー・イーチー)は台湾語の歌手、日本でもDVDが出ている『CSIC TAIPEI科学捜査班(原題:CSIC 鑑識英雄)』ほかドラマで女優としても活躍しています。
そして、劇中のアイドルユニットの相方を演じているのが曹西平(ツァオ・シーピン)です。この人は80年代から90年代にかけて実際に活躍した大人気のアイドルで、劇中で歌われる「野生の青春」は彼のヒット曲です。
監督は当初、トップアイドルグループだった小虎隊の曲を考えたそうですが、権利が複雑なため断念。曹西平に声をかけたら快諾してくれたので、2人のアイドルユニットを設定して本人にも出演をしてもらうことにしたそうです。
アイドルゆえに妻や子供がいることを隠さなければならなかった本作の主人公ですが、ファンの夢を壊さないようにということで、これはいつの時代もアイドルの宿命かも知れません。
ということで、この後は台湾のアイドル事情とその変遷についてお伝えしました。
台湾アイドルグループの祖といえば、小虎隊。
日本の少年隊にインスパイアされたグループで、1988年にオーディションで選ばれた吳奇隆(ニッキー・ウー)、蘇有朋(アレック・スー)、陳志朋(ベニー・チェン)の3人で結成。デビュー曲も少年隊のカバー曲でした。あっという間に大人気で台湾中を小虎隊旋風が駆け巡りましたが、メンバーの兵役問題などで活動の一時停止の間、蘇有朋と吳奇隆はソロ活動で実力を付けていきました。兵役が明けた陳志朋が戻って小虎隊としての活動が再開されましたが、1995年に解散。単独での実績を積んでいた蘇有朋と吳奇隆はそのまま活躍を続け、今では2人とも中国大陸で俳優や監督として確固たる地位を築いています。
この蘇有朋と吳奇隆、そして金城武とともに、香港の四大天王にならい「四小天王」の1人として人気だったのが林志穎(ジミー・リン)です。映画、ドラマ、そして歌手として台湾・香港でも大人気でした。
兵役の後に人気は下落したものの、レーサーとしても活躍し、俳優としても歌手としてもずうっと続けて活動しています。
いまでもビッグスターのステイタスを保ち続けている金城武も、アイドルでした。香港のスターというイメージが強いですが、日台ハーフの台湾生まれで、デビューも台湾でした。
しかし香港映画に多く出演し、その後日本でも大活躍、最近は中国映画がほとんどですが、台湾では台東にCMで話題になった“金城武の木”と呼ばれる観光スポットも大人気。ミステリアスさも手伝って、いまだに台湾ではイケメン俳優の代表として名前が一番先に上がります。
女の子の方は、というと、ビビアン・スーですね。小虎隊の妹分として結成された少女隊の一員としてデビュー、その後単独で映画や写真集で大人気になりました。
1997年に日本でウッチャンナンチャンの南原清隆、キャイ〜ンの天野ひろゆきとブラックビスケッツを結成、たいへんな人気となりました。3年間活動して台湾に戻り、演技や音楽のほか創作活動でも才能を発揮し、今は結婚して育児中のため芸能活動は制限しているそうです。
徐熙媛(バービィー・スー)徐熙娣(シュー・シーディー)姉妹のSOSは1994年にデビューし、徐熙媛は女優として台湾アイドルドラマ創世記のスターとなり、徐熙娣は名司会者として台湾エンタメの重要なポジションを担います。
徐熙媛は大陸の富豪と結婚して芸能活動から身を引きましたが、徐熙娣は結婚して3人の娘の母となっても変わらず司会やCMで大活躍しています。
そして2000年代に入ると、なんと言ってもF4です。日本の人気コミックス「花より男子」をドラマ化した『流星花園〜花より男子』の主役に選ばれた4人、言承旭(ジェリー・イエン)、周渝民(ヴィック・チョウ)、呉建豪(ヴァネス・ウー)、朱孝天(ケン・チュウ)は、ドラマと一緒にアジアを席巻、日本でもこれが華流の始まりでした。
音楽活動に加えそれぞれ主演のドラマや映画もたくさん作られ、コンサートやファンミなどでの来日も多く、彼らの出現によって台湾を知ることになった人が激増しました。
今は、言承旭と呉建豪は主に大陸で活動、パパとなった周渝民は香港映画に出演、朱孝天は芸能界から遠ざかりました。
F4の次に人気となったのが、テレビ局が作ったタレント事務所J☆STARから出た5566。孫協志(トニー・スン)、孫協志(トニー・スン)、王紹偉(サム・ワン)、許孟哲(ジェイソン・シュー)が歌とドラマ、バラエティと多方面で活躍しました。日本デビューしていないため日本では印象が薄いですが、台湾やアジアではあっという間にF4を追い抜きました。
そして5566と一部メンバーがダブりますが183CLUBが2004年にデビュー、5人の中でも群を抜いて人気だったのが明道(ミンダオ)で、主演ドラマ『カエルになった王子様』は記録的な視聴率をたたき出しました。しかしアルバムは1枚出しただけで花火のようにあっという間に収束したグループでした。
このほか、Typhoon、K one、女の子グループの7Flowersほかいくつものアイドルユニットや、ソロで大人気になった王心凌(シンディー・ワン)が所属していましたが、次第に精力が衰え、現在は5566の創設メンバーでしたが体調を崩して表舞台から去った小刀(シャオトー)が作り成功した会社に吸収されています。
私がラジオ局にいた頃、このJ☆STARの唯一の来日ファンミーティングを主催したことがあります。
F4を生んだプロダクションが、J☆STARに対抗して2005年に送り出したのが飛輪海。吳尊(ウーズン)、汪東城(ジロー)、炎亞綸(アーロン)、辰亦儒(ケルビン)の4人が歌って踊い、ドラマも次々製作されF4の次のアイドルグループとして日本デビューも果たしました。
J☆STARの衰退と反比例して華やかな活躍をしていましたが、2011年、吳尊の脱退に伴いグループとしての活動は減っていき、今はほぼ解散状態です。現在は一番若いアーロンがドラマでの活躍が目立ちます。
女の子グループで息の長い人気で活躍しているのが、S.H.Eです。
F4のデビューから1年後に登場、Selina、Hebe、Ellaの3人がグループとしてもそれぞれのソロとしても安定の人気です。
結婚や出産などもありグループ活動は減っていますが、Hebeはソロ歌手として台湾を代表するひとりになり、Selinaは司会者、アイドルドラマで主演していたEllaは女優として確固たる地位を築きました。たまに3人で歌う機会があると、たいへんな盛り上がりになります。
テレビのバラエティ番組から飛び出したアイドルもいました。
2006年にChannel [V] の「模範棒棒堂」というアイドル発掘・養成番組がスタートし、台湾各地から応募した男の子達が番組で歌やダンスで競い、その中からLollipopが誕生しました。7人のイケメン男子たちは結成1年で台北アリーナ公演を行うほどの大人気。
その後4人のLollipop@Fと3人のJPMというグループに分かれ、JPMの方は日本デビューもしましたが、ブレイクには到らず、Lollipop@Fも2017年に解散しました。
現在目立った活躍をしているのはJPMの王子(プリンス・チウ)がアイドルドラマの現役として、Lollipop@Fの敖犬(アオチュエン)が映画で頑張っています。
歌、踊り、演技のアイドルグループと平行して、俳優としてのアイドルも続々と登場しました。
邱澤(ロイ・チウ)、鄭元暢(ジョセフ・チェン)、賀軍翔(マイク・ハー)、郭品超(ディラン・クォ)、林依晨(アリエル・リン)、楊丞琳(レイニー・ヤン)、張鈞甯(チャン・チュンニン)、柯佳嬿(アリス・クー)などがアイドルドラマ全盛時代を牽引しました。
いまはもうみんな30代になり、活動の場を映画に移したり大陸に行ったりしています。
そして、以前のような爆発的人気を呼ぶアイドルグループも出てこなくなりましたし、アイドルドラマ枠の主役陣も世代交代しました。時代の流れと共に視聴者や観客の求めるものの変化により、エンタメ界も様変わりしつつしているということでしょう。
最後に最新情報を2つお知らせしました。
まずは、台湾現地の話題。
5月31日から臺北文學.閱影展(台北文学映画祭)が開催されます。これは内外の文学の秀作の映画化作品を上映する活動で、今年はボブ・デイランと三島由紀夫の二大特集に加え、俳優の莫子儀(モー・ズーイ)の短編集「失眠的人」の中から自らが選んで映画化し出演している「3260」など17作が上映されます。6月14日まで光點台北電影院で上映、6月3日には莫子儀が登壇する講座もあるそうです。
そして日本では、今日上映した『淡水河の奇蹟』が8月2日にDVD発売されることになりました。価格は、3800円+税。
特別封入のブックレットには、高炳權監督のインタビューほか、淡水の観光スポット紹介なども載っていて街歩きにも便利なサイズなので、台湾旅行のお供にピッタリです。
このシリーズ全7作は毎月順にリリースされますので、ぜひご覧になって台北の街の別の顔を見つけて下さい。
恒例の抽選会では、発売中の雑誌「台湾エンタメパラダイスvol.20」と、大阪アジアン映画祭での『血観音』の楊雅喆(ヤン・ヤージャ)監督と謝駿毅(シエ・ジュンイー)監督のサイン入りリーフレット、そして次回『星空』の優先招待を含め全8名の方にプレゼントしました。
次回6月23日(土)は、いま全国で公開中の『星空』。トークは、作品解説とロケ地紹介第二弾です。
6月4日(月)昼12時より申し込み受付開始ですので、台湾文化センターのホームページよりお申し込み下さい。
http://jp.taiwan.culture.tw
★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。
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