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2018/07/17

2018台北電影獎授賞式レポート!

0717tff12018台北電影獎は、既報の通り『誰先愛上他的』が長編劇映画賞、主演男女優賞、メディア推薦賞、國際新導演競賽(国際新人監督コンペティション)の観客賞の五冠に輝き、大勝者となりました。
そして100万元大賞とアニメーション映画賞をダブル受賞したのは『幸福路上(邦題:オン ハピネス ロード)』。2013年に台北電影獎でアニメーション映画賞を受賞した12分の短編を長編化した作品です。
アメリカに渡って成功を収めた女性が祖母の死をきっかけにふるさと台湾の家族のもとへ戻り、子供の頃の懐かしい思い出とともに人生や家族の意味を考え始めるというストーリー。ヒロインの個人史とそこに散りばめられる台湾近代史の中で自分の幸せを探す等身大のヒロイン像が、とても素敵です。
このヒロインには宋欣穎(ツォン・シンイン)監督の実体験も反映されているそうで、アニメーションという手法を使いながらもそのリアリティーに心をつかまれます。
監督は「私はこの作品を、幸せを求めるすべての台湾人に捧げたいと思います」と語りました。

0717tff2『誰先愛上他的』はドラマの名脚本家徐譽庭(シュー・ユーティン)の初監督、邱澤(ロイ・チウ)が初の台客でゲイの役を演じることもあり、早くから話題になっていた作品でした。チケットは秒殺、上映後には観客賞のトップに踊りだし、長い間一位をキープしていました。
1人の男をめぐる妻と息子、そして不倫相手の男が繰り広げる物語ですが、さすがの徐譽庭、ストーリーの面白さは抜群でキャラクター設定やそれぞれの人物像の掘り下げ方は見事です。今回は脚本を他の人に委ねてはいるものの、100パーセント徐譽庭ワールド。修行時代に経験した舞台劇を巧妙に映画の中に取り込み、しかしその芸術性に偏ることなくアニメーションを使った笑いのポイントが娯楽性との絶妙なバランスをとっています。
メディア推薦賞を受賞しただけに、長編劇映画賞受賞の瞬間はプレスセンターが大いに沸きました。

0717tff3台北電影獎では歴史的に強いドキュメンタリー部門ですが、今年は100万元大賞に届かなかったもののひまわり学運に身を投じた2人を記録した『我們的青春,在台灣』がドキュメンタリー映画賞を受賞し、観客からも強く支持されました。
1人はひまわり学運を牽引した台湾の陳為廷(チェン・ウェイティン)、もう1人は台湾が好きな中国からの留学生蔡博藝(ツァイ・ボーイ)で、それぞれの立場からこの運動を通しての自己の記録とともにあれから何が変わったのか、何が変わらなかったのか、心の軌跡を監督の傅榆(フー・ユー)が映像に刻みました。この映画の隠れたもう1人の主役でもある傅榆は、「信念を持ち続ければ、未来を変える可能性がある」と言っていました。

0717tff4短編映画は、台湾では新人の監督や俳優の登竜門という役割も果たしているので毎年見逃せない部門です。受賞したのは『洞兩洞六』という軍隊の中のカリカチュアライズされた人間関係を、オリジナリティとユーモアで綴った野心的な一編。「映画秘宝」の愛読者から評価されそうなパワーがあります。
監督の王逸帆(ワン・イーファン)は台北芸術大学で学んでいますが、監督作品はこれが2作目。創作活動ではカメラマンとしての役割のほうが多いようです。

0717tff5さて個人賞のほうですが、主演男優賞発表の瞬間、隣の徐譽庭監督と顔を見合わせ、震える唇、みるみる涙が満ちてくる邱澤の表情にテレビの前の多くの方がもらい泣きしたのではないでしょうか。
これまでドラマ中心に活躍してきて“新視聴率男”と呼ばれるほどの実績があるものの、ドラマアワードの金鐘獎ではノミネート止まりで受賞はしていません。
しかし『誰先愛上他的』ではこれまでのイメージや自身の殻を大きく破る役にチャレンジ、今まで見たことのない演技に驚かされました。美しいビジュアルに邪魔されがちな演技力の発芽を促したのも、徐譽庭ならではかもしれません。
受賞スピーチでは簡潔ではありながら心のこもった謝意を述べ「僕は本当に演技することが好きです」という言葉が強い印象を残しました。
アイドルから脱皮し、役者になったロイくんにプレスセンターでの囲み取材のあと「おめでとう!」と声をかけると「ありがとう、日本のみんなに伝えてね」と、言っていました

0717tff6舞台の大スター謝盈萱(シェ・インシュアン)は、意外なことに初の主演女優賞を映画で受賞という結果になりました。
夫を奪われた上に保険金までとられ、怒りと悲しみで相手の男の所へ乗り込んでいくエキセントリックな妻という役柄を、見るものに不快感なくパワフルにそして時に繊細にみせる演技に圧倒されました。この主演女優賞に異論を唱える人はいないのではないでしょうか。それぐらいの素晴らしさです。
「私は舞台の人間ですが、今は映画も大好きになりました」と、とても嬉しそうでした。

0717tff7監督賞を受賞したのは、オープニングを飾った『范保德』の蕭雅全(シャオ・ヤーチュエン)。前作『第36個故事(邦題:台北カフェストーリー)』から8年ぶりの新作で、自身の体験から主人公と父と息子という3世代の関係と絆を描いた作品です。今回は美術賞と音楽賞も獲得しましたが、その作家性の強さから監督署は納得の受賞です。
「この映画に出てくれた俳優たちは、すべて私の最優秀男優賞であり最優秀女優賞です」と、出演者たちをねぎらっていました。

0717tff8助演男優賞の鄭人碩(チェン・レンシュオ)は、『角頭2:王者再起』が対象作品。本作は黒社会の人間模様を描いた台湾では珍しいやくざ映画ですが、自分のポジションを的確に把握した役の個性の表現力と、高い潜在能力が評価されました。
2015年にも『醉·生夢死』で同賞をを獲得していますが、以来多くの作品に出演し新しいバイプレーヤーとして活躍中です。
今回の受賞は「息子の最高の誕生日プレゼントになった」と大喜び。カメラマンからのリクエストに答え、何度もジャンプしていました。

助演女優賞は『血觀音』の文淇(ウェン・チー)でしたが欠席。新人賞には『阿莉芙』の舞炯恩(ウージョンアン)が選ばれましたが、こちらも宜蘭でのライブのため来られなかったのが残念です。

プレゼンターは、去年の主演男女優賞に輝いた吳慷仁(ウー・カンレン)と尹馨(イン・シェン)をはじめ、黃健瑋(ホアン・ジェンウェイ)、柯佳嬿(アリス・クー)、温貞菱(ウェン・チェンリン)ら売れっ子に加え、お久しぶりの張鈞甯(チャン・チュンニン)と陳意涵(チェン・イーハン)、そして張孝全(チャン・シャオチュアン)、許瑋甯(アン・シュー)などが登壇しました。
また、司会は陳竹昇(チェン・ジューシェン)、蔡燦得(ツァイ・チャンダー)がつとめ、パフォーマンスゲストとして范逸臣(ファン・イーチェン)とスミンが『海角七號』の「無樂不作」や『太陽的孩子』の「不要放棄」などを歌いました。

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2018/06/29
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2018第20屆台北電影節 特別上映作品発表!
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2018/05/14
2018第20屆台北電影獎ノミネート発表!
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2018/05/13
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第20屆台北電影節のオープニングは蕭雅全(シャオ・ヤーチュエン)監督の『范保德』、クロージングは吳慷仁(ウー・カンレン)主演『引爆點』に決定!
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2018/05/01
第20屆台北電影節のイメージムービーは黃信堯(ホアン・シンヤオ)監督が!
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