2019下半期の台湾映画紹介〜後編
6月〜7月に台北電影節でいち早く上映された作品が、秋から冬にかけて一般公開される予定です。
中でもお薦めが、11月1日からの『傻傻愛你,傻傻愛我』です。
ダウン症の青年の初恋を通して、ハンディのある子供の家族や社会との関わり、愛と勇気を描いたハートウォーミングな映画で、俳優の藍正龍(ラン・ジェンロン)が初監督。脚本はドラマ『ぼくらのメヌエット(原題:妹妹)』などで縁の深い徐譽庭(シュー・ユーティン)です。
主人公の初恋の女性を演じた郭書瑤(グォ・シューヤオ)も難しい役どころを演じきり、主演女優賞にノミネートされました。
こちらの記事で詳細をご覧下さい。
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2019/07/post-3422ef.html
公開日が前後しますが、10月25日に始まる『陪你很久很久』は、中国の人気作家の短編を映画化したもので、こちらも賴孟傑(ライ・モンジエ)監督の長編初作品。
主演は李安(アン・リー)の息子でハリウッド映画にも出演している李淳(メイソン・リー)、ヒロインに売れっ子邵雨薇(シャオ・ユーウェイ)。いつまでも幼稚で大人にならない男子と、あっという間に追い抜いて成長していく女子という構図は『あの頃、気味を追いかけた』をはじめとする青春映画の定番ですが、本作もまた様々なエピソードを笑いで綴る伝統的な青春映画です。
詳細はこちら。
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2019/07/post-f567a5.html
國際新導演競賽(新人監督コンペ)で観客賞、主役の蔡嘉茵(ツァイ・ジャーイン)が新人賞を獲得した『大餓』は、10月末公開予定。
ぽっちゃりしていて何が悪い!社会の価値観で決めつけなくてもいいじゃないか、私は私なのだから、という主人公のポリシーが揺らぐとき、そしてそれを支えるものを失ったとき、さににそこから再生する姿に胸を打たれ勇気をもらえます。
またひとつ新しい台湾映画を生み出した新人監督謝沛如と、新星蔡嘉茵の今後がとても楽しみです。
詳細はこちら。
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2019/07/post-9d0ad3.html
主演女優賞を受賞した李亦捷(リー・イージエ)の『野雀之詩』は年末予定。
8年前に『當愛來的時候』で新人賞を獲った李亦捷は、息子を田舎の母に預けて一人都会でホステスとして働くシングルマザーの揺れる心を、深く掘り下げた演技が評価されました。
決して斬新なテーマではないですが、山村に暮らす祖母と孫、李亦捷の地方と都会の狭間を漂う若い母親の心模様の表現に素晴らしい成長を感じます。
同じく年末予定の『蚵豐村』は、牡蠣の養殖が盛んな嘉義県の東石鄉を舞台にした父と息子の物語。
侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督たちのニューウェイブを思い起こす、台湾映画の王道と言ったところでしょうか。伝統と近代化という二極を人間と環境の両面で力強く描き、父親役の喜翔(シー・シャン)が主演男優賞にノミネートされました。
台北電影節で上映された作品以外では、麻薬に手を染め、服役した主人公の更生を描いた『樂園』が10月予定。昨年『粽邪』でスマッシュヒットを放った廖士涵(リャオ・シーハン)監督の新作です。主演は、映画やドラマで根強い人気の王識賢(ワン・シーシェン)。
年末予定の『叱咤風雲』は、周杰倫(ジェイ・チョウ)プロデュース、范逸臣(ファン・イーチェン)、曹佑寧(ツァオ・ヨウニン)らによるカーレーサーの物語です。
10月にはあの社会現象にもなったカルト・ムービー『台北物語』のTony役で一躍人気になった邱志宇(チウ・ズーユー)主演のLGBT映画『我的靈魂是愛做的』も予定されています。
そして、服役していた張作驥(チャン・ツォーチ)監督の復帰作『那個我最親愛的陌生人』が年末予定となっています。
『醉·生夢死』の呂雪鳳(ルォ・シュエフォン)が認知症の母親を演じるそうですが、刑務所の中で制作した受刑者と母親を描いた短編『鹹水雞的滋味』が素晴らしい出来だったので、この新作も期待できそうです。
もう一人の大物監督、鍾孟宏(チョン・モンホン)3年ぶりの新作『陽光普照』は10月25日公開で、9月のトロント国際映画祭がワールドプレミアになると今日発表されました。
平凡な家庭が、犯罪に関わった息子の収監により崩壊していく…という内容だそうです。陳以文(チェン・イーウェン)、柯淑勤(クー・シュウジン)、巫建和(ウー・ジエンハー)、劉冠廷(リウ・グァンティン)という個性的な俳優がどんな人物像を見せてくれるのか、楽しみです。
この他、まだ発表されていない作品もあると思いますが、これまでの情報で劉冠廷(リウ・グァンティン)と邵雨薇(シャオ・ユーウェイ)が複数の作品に出演していて、台湾映画界の期待を背負っている感があります。
金馬奨を核とした台湾映画の下半期、目が離せません。
★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。
| 固定リンク
コメント