台湾のテレビアワード 2019電視金鐘獎〜ミニドラマ・テレビ映画部門『你的孩子不是你的孩子-貓的孩子(子供はあなたの所有物じゃない-ネコの子)』を中心に
台湾のテレビアワード 2019電視金鐘獎のミニドラマ・テレビ映画部門は、連続ドラマで話数の少ないミニドラマと、映画の手法で制作されたテレビ映画を対象にした賞が設定されています。
作品賞はそれぞれ別ですが、個人賞は両方あわせて対象となっています。技術の賞はドラマ全てが対象となっているので、やや複雑な構成。
そういった中で、Netflixで日本でも見られる『你的孩子不是你的孩子-貓的孩子(子供はあなたの所有物じゃない-ネコの子)』が、テレビ映画作品賞、鍾欣凌(ジョン・シンリン)の主演女優賞、監督賞、脚本賞、美術デザイン奨の5部門を受賞しました。シリーズ全5作のうち、今回はこちらが高い評価を受けました。審査の講評は「社会問題に対する批判力が強く、それでいて暖かさがある」ということです。
ミニドラマの作品賞は『奇蹟的女兒』、文芸派の名匠鄭文堂(チェン・ウェンタン)監督作品です。
経済成長の初期である1970年代の紡績工場を舞台に、そこで働く女子工員たちが困難に向き合いながら成長していく物語。温貞菱(ウェン・チェンリン)、連俞函(リエン・ユーハン)、孫可芬(ソン・カーフェン)という期待の若手女優がメインキャストをつとめています。
鄭文堂の門下生でもあるプレゼンターの莫子儀(モー・ズーイ)からトロフィーを受け取り、受賞スピーチの最後に「音楽を担当した鄭宜農(チェン・イーノン)、ありがとう」と、愛娘に謝意を捧げていました。
監督賞を受賞した饒波、陳慧翎(チェン・フイリン)、余慧君(ユー・フイジュン)。陳慧翎は『下一站,幸福(秋のコンチェルト)』や『那年,雨不停國(あの日を乗り越えて)』などで知られる監督で、受賞も3回目となります。
ただ、本作はガンを治療しながら完成させたということもあり、受賞は感無量だったようです。
「公共電視と全てのスタッフに感謝します。あなたたちがいなかったらこの作品はなかったでしょう。あなたたちの愛と励ましがあったからこそです」
そして、陳慧翎が『下一站,幸福(秋のコンチェルト)』でデビューした吳慷仁(ウー・カンレン)を呼び、全場で台湾スタイルの鬨の声をあげました。
主演女優賞を獲得した鍾欣凌は、「このドラマのテーマである教育は、本当にたいへんなことです。私たちは自分自身と次の世代の為に愛と理解を持ち、さらに学ばなければと思います」とスピーチ。そして、天国の父と祖母、そして演劇の父と言われる恩師の李國修(リー・グォショウ)に感謝を述べました。
ある種の狂気を帯びた母親の演技に震撼させられましたが、この部門のチーフ審査員である侯季然(ホウ・チーラン)監督は、会見で「主演女優賞はとても長い時間討論しましたが、影響力とバランスの良さが決め手になりました」と言っていました。
主演男優賞は、『公視人生劇展-第一響槍』で家庭の問題を抱えるタクシードライバーを演じた吳朋奉(ウー・ポンホン)。台湾を代表する名優の1人で、金鐘獎、金馬獎、台北電影奨で受賞歴があるのですが、プレゼンターでもあったのでとても緊張するしプレッシャーも大きいと封を切ると…しばし無言。そこで、すかさず黃姵嘉(ホアン・ペイジァ)が名前を読み上げました。
侯季然監督によると、ノミネート者は名優ばかりなので、討論は長びいたそうです。
『奇蹟的女兒』での好色な工場長約で助演男優賞に輝いたのは、黃鐙輝(ホアン・ダンホイ)です。
名前を呼ばれた瞬間に目と口を大きく開け、驚き100%という表情でした。ポロポロ涙を流しながらトロフィーを受け取り、第一声はいつもサポートしてくれる恩師に「王小棣(ワン・シャオディ)監督、獲りました!」と。
そして、「『艋舺(モンガに散る)』に感謝します。この映画がなければ、演技が何かわからなかった。そして、このチャンスを与えてくれた公共電視に感謝します。コメディアンが主役になることはほとんどありませんから」と涙ながらに続けました。
王淨(ワン・ジン)や連俞函(リエン・ユーハン)など台頭する若手女優がノミネートされた助演女優賞でしたが、受賞したのは『公視人生劇展-3天2夜』の陸弈靜(ルー・イーチン)でした。説明不要の名女優ですが、審査員は姿を消した女子高生を探し寄り添う教師役は自然で軽やか、暖かい演技だと絶賛。多くの受賞歴があるせいか、短いスピーチで「自分の人生こそ最大のクリエイティブ」という言葉が印象的でした。
もともと経営するコーヒーショップの常連だった蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督の強い希望で女優の道に入り、“生活”をとても大事にする方ですが、最近ますます“生活”に重きを置いていて、以前の自分とは違うということです。
ちなみに、受賞対象となった作品は映画として台北電影節でノミネートされ、脚本賞を受賞しました。
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