金馬影展 日本映画『よこがお』の深田晃司監督合同インタビュー!
深田晃司監督は、2016年の『淵に立つ』が第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞し、今日本で公開中の『よこがお』はフランスとの合作です。
台湾でのタイトルは直訳で『側顔』、2回上映されてどちらも監督との活発なQ&Aが行われました。
この上映に先がけて映画祭主催の合同インタビューが行われ、台湾の3メディアと一緒に作品について色々伺いました。
本作は、ある事件をきっかけに〈無実の加害者〉に転落した女性が、運命を受け入れ、それでも生きていくと決意するまでの絶望と希望を描くヒューマンサスペンスです。
まず、ヒロインの筒井真理子さんに監督が演出上気にかけたことについて。
「筒井さんはベテランで脚本を読み込む力がある方なので、こちらから役作りについて伝えることはありませんでした。市子というキャラクターをどうアウトプットするかを見させてもらった感じで、私が気にかけたのは社会的な立場を失っていってだんだん疲弊していくという流れがきちんとできているかどうか、ということだけでした」
そして、マスコミの暴力の描写については、次のように答えていました。
「日本でも台湾でもそうだと思いますが、SNSで攻撃されるという現象が見ている人の意識とリンクするように作りました。
実は市子の家に押しかける大勢のマスコミの中で、一人執拗に追いかける記者を設定して撮ったのですが、“個対個”よりも“個対全体”、つまり姿の見えないマスコミ全体に追い込まれる怖さが出たほうが良いと思い、その部分はカットしました」
この映画で“孤独”が強く表されていることについて。
「私は、自分が最も信じられることをモチーフにしようと思っています。絆というよりも、家族であっても恋人であってもそこにある“孤独”が生きることの本質だと思っているので、絆より孤独を描くことを優先しています。
人間誰しもいつかくるそういう時の予行演習のような映画になるといいなと思います。私の好きな作家バルザックが“人間は誰でも孤独である、ただ孤独であることを話し合える友人がいるのは良いことだ”と言っています。ですから、この映画が孤独について共感できる作品になれば良いなと思います」
ヒロインがなぜ自分の気持ちを爆発させる行動を踏みとどまったのか、について。
「日本人は比較的意見や感情を表に出さない、それは出る釘は打たれるということわざにもあるように目立つことは避けるという傾向があります。そして、自分の意見や気持ちを言わないことでストレスを抱えている。
日本での反応の中で時々『ジョーカー』と比較されることがあります。社会的に理不尽な事によってひとりの人間が追い詰められていく。でもほとんどの人がジョーカーになれない。ジョーカーになれるのは特別な選ばれた存在であって、多くの人はジョーカーになれません。だから、登場人物に感情を爆発させてそれによるカタルシスを得てスッキリするのはあまり意味があるとは思いません。むしろ鬱々としたものを抱えたまま生きていくしかない、そのことと向き合っていくしかないということを考えてもらおうと、ああいう選択にしました」
日本映画の国際マーケットへ向けた状況について。
「優れた監督はたくさんいますし、今回もこの映画祭に大勢招聘されています。また若い才能も次々と出てきていますが、海外に向けた作品というのはまだ限られていてとても少ないです。その理由の一つとして、多くの日本映画が社会性が薄いということだと思います。社会的な問題と繋がっているという作品が、やや薄い傾向にあります。それは、社会を見る前に市場と向き合わなければならないからです。日本は欧米に比べて公的な助成金が少ないし、民間企業の芸術へのサポートが少ないのです。ですから私たちはビジネスとして、市場原理的に映画を作らなくてはいけません。
日本の興行収入というのは、年間約1000億円で、その8割を東宝・東映・松竹という三大映画会社が占めています。インディペンデント映画に残された市場は2割しかないといういびつな状況です。そうすると資金的に国際的名競争力を持つ作品が生まれにくくなってしまいます。日本で受け入れられやすいものが優先され、アート映画として求められる作家性がどんどん鈍いものになっていってしまいます。それが、日本映画が海外へ出ていかれない原因の一つだと思います」
この他、フランスとの合作において国民性の違いで変更した部分はあるのか、文学を専攻していた監督の文学と映画の関係性などのお話しも聞くことができました。
ノーカットでのPodcast配信を予定していますが、決まりましたらお知らせします。
『よこがお』
監督・脚本:深田晃司
出演:筒井真理子 / 市川実日子 池松壮亮 / 須藤蓮 小川未祐 / 吹越満
全国公開中
公式サイト:https://yokogao-movie.jp/
★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。
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