アジアンパラダイス

映画作りを夢見るふたりの青年が、ひょんなことから脚本を見た黒社会のボスから愛人をヒロインにすることを条件に投資を受け、待望の製作スタートとなるのですが、様々なアクシデントに見舞われる…というストーリー。破天荒な部分もありながら、いわゆる旧正月のコメディとは一線を画した笑いは全世界共通のツボを押さえています。これも、監督の洗練された“笑いのセンス”によるところが大きいでしょう。

暉峻PDが「予算に恵まれたカメ止め」と表していますが、台湾公開時も『カメラを止めるな！』との相似点についてあちこちで言われ、監督は「この脚本は2013年に完成していました。撮影が終わってから『カメラを止めるな！』が公開されたので、偶然です」と説明。
主演の邱澤は、『先に愛した人（原題：誰先愛上他的）』でも台客の舞台演出家を演じて高い評価を受けましたが、今回のプロデューサー役も、かつてのアイドルドラマのかっこいい主役とは全く違う台客ぶりであらたな魅力をたっぷり感じさせてくれます。

監督役の黃迪揚（ホアン・ディーヤン）はデビュー10年目にしての大役。これまでは舞台やドラマ、映画でキャリアを積み、地道な努力が実って本作のプロデューサーに抜擢されました。
台北芸術大学で李啟源（リー・チーユエン）監督に師事しただけあって、しっかりした演技力を持っていす。
高炳權監督は『淡水河の奇跡（原題：鮮肉老爸）』で吳慷仁（ウー・カンレン）とほぼ対等なポジションで侯彥西（ホウ・イエンシー）をキャスティングしたように、今回はスター邱澤とガッツリ組む相手として、黃迪揚を配置。監督という役柄だけに、高炳權自身をも投影しているのではないかと思われます。

また、姚以緹（ヤオ・イーティ）のこれまでの役とは全く違う複数キャラを演じた弾けっぷりは本当に見事で、金馬奨ノミネートも納得の演技です。
金馬影展の上映後Q&Aでは、事前にかなりの時間をかけて多くのキャラクター設定を準備し、身につけた引き出しから現場の雰囲気やセット、背景に合わせて全てのキャラクターを演じたと語っていました。

主題歌は今大人気の李英宏（リー・インホン）の『無經驗可』、最近の台湾映画の多様性を味わっていただく、絶好の一作です。
2回目の上映は、3月15日（日）10:30からABCホールで行われます。

『ギャングとオスカー、そして生ける屍（原題：江湖無難事）』
監督：高炳權（ガオ・ピンチュアン）
出演：邱澤（ロイ・チウ）、黃迪揚（ホアン・デイーヤン）、龍紹華（ロン・シャオホア）、姚以緹（ヤオ・イーティ）、黃尚禾（ホアン・シャンホー）、梁赫群（リャン・ハオジュン）

◆ストーリー
映画作りを夢見るふたりの青年が、ひょんなことから脚本を見た黒社会のボスから愛人をヒロインにすることを条件に投資を受け、待望の製作スタートを開始。
ところが事故でボスの愛人シャネルが死んでしまい、このままだと映画製作どころか自分たちの身が危なくなる。そこで2人は、シャネルにそっくりなドラッグ・クィーンを身代わりにして映画製作を続行させる。シャネルの死体と身代わりと共に日本ロケに向かうのだが、黒社会の抗争に巻き込まれてしまう。
果たして彼らは映画を完成させることができるのか…。

※これまでの『江湖無難事』に関する記事

2019/12/31
2019年の台湾映画を振り返る！
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2019/12/post-b9cb20.html

2019/11/16
金馬影展 台湾映画『江湖無難事』Q&A
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2019/11/post-c95cde.html

2019/09/24
邱澤（ロイ・チウ）主演映画『江湖無難事』記者会見 in 台北！
http://asian.cocolog-nifty.com/paradise/2019/09/post-106d5c.html

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