2020大阪アジアン映画祭 台湾映画『ノーボディ(原題:有鬼)』
大阪アジアン映画祭で上映された『ノーボディ(原題:有鬼)』、ネタバレを避けて書くのが難しいので、上映終了後のご紹介になります。
LGBT先進国の台湾では映画でも優れた作品も多いのですが、今年も真正面から見据えたものからエピソードとして組み込まれているものまで4作品上映されています。
その中で、ほとんど現地でも情報の出ていない『ノーボディ(原題:有鬼)』は、事前知識ゼロで見ることができて本当に良かったと思います。
バスの中でツバを吐き出したり人の言うことに全く耳を貸さず、近所の住民達からも嫌われ“怪人”と呼ばれる老人が主人公。
勝手に老人の家に上がり込んで父親の浮気現場の証拠動画を撮る少女との出会いから、徐々に老人の秘密が明かされていくという内容で、出演者はほとんど無名。
しかも主役の老人役の簡扶桑(ジエン・フーサン)をネットで検索すると、YouTubeで『扶桑花 New Life』というドキュメンタリーがヒットし、彼女の激動の人生が記録されていました。
演技は未経験のようですが、そうとは思えないような存在感に驚きます。
彼女自身の並々ならぬ苦労の人生がそのままこの“怪人”に反映され、既存の俳優ではでないであろう不思議な説得力を感じました。
女性という"性"を受け入れられない少女に老人は次第に心を開いていくのですが、方向は違ってもそれは同じ痛みを持つ人間としての共感であり、外界を遮断して生きていくことを選択した決意は、多くの人は距離を置いて見るしかありません。
監督はアニメーションで評価を受けている林純華(リン・チュンホア)、劇映画は瞿友寧(チュウ・ヨウニン)監督の映画『殺人計畫』(2002年)と2017年の『請愛我的女朋友』の脚本を担当しています。
この長編劇映画デビュー作が台湾での公開はもちろん、、大阪アジアン映画祭を皮切りに各国の映画祭で上映され、多くの人に見て欲しいと思います。
『ノーボディ(原題:有鬼)』
監督:林純華(リン・チュンホア)
出演:簡扶桑(ジエン・フーサン)、吳亞鄀(ウー・ヤールオ)
◆ストーリー
近隣の住民たちから「怪人」と呼ばれ忌み嫌われている独り暮らしの老人。彼の住む部屋に、ある日一人の少女が侵入する。ジェンジェンという名のその少女は、老人の部屋の向かいに暮らす女と自分の父親の不倫をビデオカメラに収めるために、老人に近づくのだった。初めは老人を嫌悪していたジェンジェンと、彼女を一向に受け入れようとしなかった老人だったが、徐々に二人の間に奇妙な絆が生まれていく。それを知ったジェンジェンの母親や近隣の住民らは、二人の関係が不適切なものだと勘ぐり、老人を激しく非難する。しかし老人には、長い間抱えてきた誰にも言えない秘密があり……。
(大阪アジアン映画祭の公式サイトより)
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