台湾ポップス揺籃期の貴重なSP音源のCD「V.A./蓄音臺灣 ~日本統治時代の台湾音楽 1917–1943」3月29日リリース!
CDプレーヤーで再生される1曲目の「陳三寫詩」(陳三の詩)から、心臓がどくんと音をたてました。
なんだこれは!
この懐かしさは…。
もちろん自分が生まれる前の聞いたことのない曲だけれど、そこから五感に伝わって来るものは知らない感覚ではありませんでした。
個人的な経験になりますが、私はラジオ局に務めていた頃に日本の戦前の流行歌を浴びるほど聞いていました。そして、日本統治時代の台湾音楽からこれらの曲と共通するものがビシビシ伝わって来たのです。
それもそのはず、本アルバムに収録された貴重な音源の多くは、歌手たちがわざわざ海を渡って日本で録音され、さらに日本でプレスされ、出来たレコードを台湾に送って、売られていたものだからです。
多くの曲は、音楽的にいえば、台湾的な要素を備えていますが、そこに日本と西洋音楽の要素が加わり、素晴らしい融合音楽を生み出しているゆえの感覚なのです。
昭和歌謡創生期の歌手は、当時"歌う"ということのプロである芸者さんが多かったように、台湾でも芸妓の方々がレコーディングしているのも同じですね。
今回、選曲・音源提供・詳しいデータを提供してくれたのは台湾の音楽学者・林太崴(リン・タイウェイ)さん。日本統治時代、台湾人と日本人の共同作業の中で、数々の素晴らしい音楽を生み出し、リリースしていたことを、ぜひとも日本の皆さんに知ってもらいたいという想いを、林さんと親交がありこの時代の音楽に興味を持つ音楽評論家の関谷元子さんが受け止めて、このCDができあがったそうです。
先述の「望春風」「雨夜花」は、陶喆(デイヴィッド・タオ)やテレサ・テンはじめ多くのシンガーによってカバーされているので、ご存じの方も多いでしょうが、これをオリジナルの純純(スゥンスゥン)の歌声で聞ける感動はたまりません。
原住民音楽の合唱曲と太鼓などの合奏曲、日本人による台湾語の学習音源もあり、私がタイトルだけで興味を持った「大稻埕行進曲」という曲は、なんと日本語で歌われています。
ここから、戦後の日本の歌謡曲の台湾語カバー全盛時代、民歌(フォークソング)、羅大佑(ロー・ターヨウ)や李宗盛(ジョナサン・リー)らの時代を経て多くの才能と名曲を生み出してきた台湾ポップスの流れを頭の中でメロディと共に辿る楽しさ…。
詳しい解説・データは資料としても素晴らしく、貴重な写真満載の40数ページのブックレット付き。
台湾音楽に興味ある方はもちろん、音楽好きの皆さんにも聞いていただきたいCDです。
本アルバムには収録されていませんが、台湾語映画はなやかなりし頃の劇伴も同じように作られていたそうですから、これもいつの日かまとめてCDにしていただけないかなぁ、と願っています。
「V.A./蓄音臺灣 ~日本統治時代の台湾音楽 1917–1943」
発売元:ディスコロヒア
型番:DISCOLOGIA-020
価格: 2,700 円(税抜)+税
※予約販売
トラックリスト
1. 清香、碧雲「陳三寫詩」(陳三の詩)
2. 高砂族の合唱「日月潭の杵唄」
3. 高砂族の合奏「日月潭の杵音」
4. 名北則武「南國節」
5. 水野春次「台灣語對譯」(台湾語の学習)
6. 小紅緞「天女散花」(天女の花が散る)
7. 秋蟾「烏貓行進曲」(トレンディ・ガール・マーチ)
8. 純純「桃花泣血記」(桃色の女の子)
9. 江添壽「大稻埕行進曲」
10. 靜韻「江上夜月」(河の夜月)
11. 陳寶貴「君薄情」(薄情な君)
12. 純純「望春風」
13. 純純「雨夜花」
14. 純純「月夜愁」
15. 純純「蓬萊花鼓」(蓬萊音頭)
16. 純純「摘茶花鼓」(茶摘み音頭)
17. 純純「觀花花鼓」(月見音頭)
18. 純純「我愛你」(あなたを愛す)
19. 純純「你害我」(あなたは私を悲しませる)
20. 芬芬「美麗島」
21. 鶯鶯「日日春」(毎日が春)
22. 根根「白牡丹」
23. 清香「英台賞花」(英台が花を愛でる)
★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。
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