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2020/05/12

台湾の傑作ドラマ『悪との距離(原題:我們與惡的距離)』インタビューシリーズ2〜脚本家呂蒔媛(ルー・シーユエン)

0816aku1台湾の傑作ドラマ『悪との距離(原題:我們與惡的距離)』DVDリリース記念として、公式インタビューを順に掲載していきます。
今日は、この素晴らしい脚本を書いた呂蒔媛(ルー・シーユエン)です。
日本ではあまり報道されていませんが、呂蒔媛は話題の映画『先に愛した人(原題:誰先愛上他的) 』のプロデューサーであり徐譽庭(シュー・ユーティン)と共同脚本を担当しています。

〇本作を執筆しようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?
「初めは台湾の大きな社会事件の影響でした。例えば八仙水上楽園爆発事故が発生した後、世論では病院の救急車が助けに行くべきかどうか、医療人員の境遇、ケガした若者の窮境やその家族の心境、主催側の思いなど…こういう重大事件に対していろいろな人の心境を知りたいと思いました。その後、無差別殺人事件の記事を読み、無差別殺人事件を関係者からの視点の脚本を書こうと決めました。」

〇死刑裁判や精神科医などフィールドワークを重ねて本作を執筆されたと聞きました。フィールドワークから得たことで、脚本に強く影響を及ぼしていることがあれば教えていただけますか?
「裁判官、弁護士、医者、統合失調症関係の団体などにインタビューしましたが、多くの人はマスコミに対して深く不満を持っています(断章取義やスピード最優先など)。それにビッグデータの分析を見ると、世間が事件を見るのはマスコミを通してだし、単一的だと思ったので、マスコミの存在を大きめにして、宋喬安も李大芝もマスコミ側の人間にしました。そして毎話冒頭のニュース映像と、事実(その後分かってくる展開)と、私たちの想像は違うことを視聴者に伝えたいと思いました。」

〇無差別殺人の事件自体を描くのではなく、その周囲の人々に着目した理由を教えてください。
今考えてみると、なかなか加害者にインタビューすることが難しく、フィールドワークで具体的な答えを見つけられなかったからですかね。自分なりに原因を考えてみましたが、そのまま書いてしまうとレッテルになってしまうと思いやめました。また、私が関心を持っているのは、事件の周囲の人々が傷を乗り越えられるか?予防する方法を見つけられるのか?ということだったので。」

〇「死刑制度」「無差別殺人」「精神病」などテーマを描いているので、慎重になったところも多いのではと思います。脚本執筆の際に、特に気を付けたことや意識したことがあれば教えてください。
「一番心配したのは当事者の二次障害になることなので、そこは特に気を付けました。」

〇宋喬安と李大芝はマスコミ、應思聰は映画監督と、主要なキャラクターを“伝える側”の人間にした理由はなんでしょうか?
「特に‘’伝える側‘’の機能を考えてはいませんでした。應思聰を映画監督にしたのは、フィールドワークをしなければいけない職業が多くて、大変で負担できなかったからで。彼の職業を映像業界にしました。自分の本業なら特に研究しなくて済むからです。
宋喬安と李大芝はマスコミの人間ですが、マスコミにも種類があります。ただ我々の判断は、一番早く出るニュースに影響されます。ドラマで表現したいのは、マスコミにもどうにもならない立場があります。例えば劉昭國の先驅報もSBCニュースと提携しなければいけないとか。深い報道をする努力をしているマスコミもいるので、我々は色んな伝達経路を判別して、客観的に事件を違う面から判断できるように努力しないと!」

〇本作ではそれぞれのキャラクターにドラマがあり、また彼らの関係は複雑に絡み合っています。そういった群像劇のような形をとったのはどうしてでしょうか?
「当初の考えは、無差別殺人事件を各面から描いてみて、傷は治るのか?予防する可能性はあるか?
そのために二種類の内容を書いてみました。一つは、理由はまだ見つからないが発生してしまった李曉明事件。もう一つは統合失調症(精神障害)による事件は予防できるか。これらを10話の中で完成させなければいけないので、こういう形の脚本になりました。群像劇については特に考えていませんでした。ですが、精神障害に対するネガティブなレッテルは社会の不理解を生み出し、さらに予防と治療の難易度を高めました。私はすべての人がこのことに関心を持たなければいけないと思います。しかも人間は、問題と答えを単純化する癖があります。でも本当は、現代社会の問題の面々はかなり複雑で一人の力で解決できるものではないとおもいます。(だから群像劇にしたのかな?これで質問に対して答えたのかな?)」

〇この物語の結末には、未来への希望が感じられます。正解のないテーマなのでどう終わらせるかは様々な可能性があったと思いますが、この結末にしたのはどうしてでしょうか?
「実は希望があるだけで、たくさんの事件(例えばマスコミの状況や精神障害の苦境)はまだまだ続いています。傷が治っても傷痕は残りますが、それでも頑張って進んでいくしかありません。実際に傷ついた家族の方々はまだ生活していますので、やっぱり希望がなければいけないと思います。希望がなければどうやって進むのでしょう。」

〇脚本を執筆している段階でイメージしていた俳優はいますか?
「振り返ってみると、ウー・カンレンとゾン・ペイツーですかね。ウー・カンレンをイメージしたのは、もともと彼と親しいからです。ゾン・ペイツーは、以前ほかのドラマで一緒に働いたことがあり、彼女は私がイメージした應思悅にふさわしいと思ったので。
キャラクターで違いを作りたかったのは、三人の女性主人公(李大芝、應思悅、宋喬安)は、それぞれ20代、30代、40代の女性像と、彼女たちが背負っているものを表現しています。キャストにこの差を作って頂きたかったです。」

〇本作に出演した俳優で印象に残っている方はいらっしゃいますか?その理由も教えてください。
「シエ・チョンシュアン(李大芝の母親役)!簡単なセリフでも、彼女が言ったらとても力強くなり、彼女が出たらいつも泣きそうになります!あとウー・カンレンの、第五話の酔っ払いながらのスピーチ。なんと見ても泣きます!」

〇演出を担当されたリン・ジュンヤン(林君陽)さんとのお仕事はいかがでしたか?
「リン・ジュンヤン監督はとても理性で優しくて、そして撮影もできる人。この専門分野出身だから分かりませんが、チームの雰囲気を重視し様々な意見を尊重している方です。台湾ではとても珍しいタイプの監督です。」

〇実際に完成した作品をみて、印象に残ったシーンは?
「映像的には李大芝の両親が土下座をしながら記者に囲まれる様子を、カメラが上から撮ったシーン(※日本のキービジュアル)!初めて見たときに鳥肌が立ちました。」

〇脚本家として、本作の名台詞を選ぶなら?
「私たちみんないい人なのに、なぜこうなったの?神様は一体何を学んでほしいの?」

〇社会現象になるほど大きな反響を呼んだ「悪との距離」ですが、どのようなところが人々の心を掴んだと思いますか?
「まさか台湾がこんなにシリアスで敏感なジャンルをドラマ化にするなんて!口コミから見ると「真摯でリアルで視聴者の共感を呼んだ」というところですが、個人的には素晴らしい制作チームと魅力的なキャスト陣がいることだと思います!」

〇第2シーズンが決定されたそうですが、どういった内容になるか可能な範囲で構いませんので教えていただけますか?
「今はまだフィールドワークの途中なので、何とも言えないですね。自分がいつ諦めるか、方向性を変えるかもしれないので。(原則がない脚本家だね!)」

〇台湾ドラマにとってエポックメイキングな作品になったと言われる「悪との距離」ですが、
ルー・シーユエンさんから見て、台湾ドラマは今後どのようようになっていくと思いますか?
「ちょっと怖い称号だと思いました!
映像業界の資金は常に変化しています。過去と比べると資金はどんどん充実していきます(が、製作費に対する要求もどんどん高くなる)が、やはりコンテンツの本質に戻ったほうがいいと思いますし、お金に誘拐されず(難しい!)、台湾ならではのジャンルを見つけて、諦め‘’させられ‘’ないで、影響‘’され‘’ないで。そうしたほうが長く続けられると思います!」

〇これから「悪との距離」を見る日本の視聴者へメッセージをお願いします。
「脚本を書いていた時に、日本で出版した本やドラマを拝見させて頂きました。日本の出版業界、映像業界の多元性に感謝で、遠い台湾にいる私もとても勉強になり感動しました。「悪との距離」を気に入って頂ければ幸いです!」

インタビュー・テキスト&写真提供:SPO

0512lo◆呂蒔媛(ルー・シーユエン)プロフィル
中國文化大學で映像制作を学び、台湾電視で脚本家、プロデューサーとして活躍。
2010年『牽紙鷂的手』、2015年の『出境事務所』に続き、本作で2019年の金鐘獎において三度目の脚本賞を受賞。
映画は『黑暗之光』(1999年)、『美麗時光』(2002年)、『誰先愛上他的』(2018年)で脚本を担当し、『誰先愛上他的』は金馬奨でノミネートされた。
『きらめきの季節/美麗時光(原題:美麗時光)』『酔生夢死(原題:醉‧生夢死)』などの張作驥(チャン・ツォーチ)監督夫人でもある。

※これまでの『悪との距離(原題:我們與惡的距離)』に関する記事

2020/05/11
台湾の傑作ドラマ『悪との距離(原題:我們與惡的距離)』インタビューシリーズ1〜林君陽(リン・ジュンヤン)監督
http://www.asianparadise.net/2020/05/post-5bdf54.html

2020/02/27
台湾の傑作ドラマ『悪との距離(原題:我們與惡的距離)』5月にDVDリリース決定!
http://www.asianparadise.net/2020/02/post-03fedf.html

2019/12/24
今年一番話題の台湾ドラマ『悪との距離(原題:我們與惡的距離)』1月27日より衛星劇場でアンコール一挙放送!
http://www.asianparadise.net/2019/12/post-a8fd7c.html

2019/10/06
台湾のテレビアワード 2019電視金鐘獎〜長編(連続)ドラマ部門『我們與惡的距離(悪との距離)』を中心に&『我們與惡的距離(悪との距離)』釜山国際映画祭のマーケットで脚本賞獲得!
http://www.asianparadise.net/2019/10/post-924b66.html

2019/08/16
台湾ドラマ『我們與惡的距離』が『悪との距離』との邦題で今日8月16日よりU-NEXTで配信開始!
http://www.asianparadise.net/2019/08/post-f849b3.html

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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