« 2020 台北電影獎ノミネート、審査員の顔ぶれと雑感 | トップページ | 2020台北電影節、オープニングは『無聲』、クロージングは蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督の『日子』! »

2020/05/21

2020台北電影奨「楊士琪電影卓越貢獻獎」に映写技師の江泰暾(ジャン・タイトゥン)!

0521tff1先日各賞のノミネートが発表された2020台北電影奨で、昨日20日に 「楊士琪電影卓越貢獻獎」の受賞者が映写技師の江泰暾であることが発表されました。
「楊士琪電影卓越貢獻獎」とは、映画記者の楊士琪(ヤン・シーチー)が映画製作に関わるスタッフにフォーカスを当てて讃える賞です。
今回は、50年にわたり映写技師として活躍してきた江泰暾(ジャン・タイトゥン)が受賞することになりました。

0521tff2江泰暾は16ミリや35ミリのフィルム時代から4K、8Kのデジタルまで一貫して映写の研鑽に励み、どんな場所でも最高の映像を観客に提供できる方法を模索し努力してきました。
1990年代は国産映画の復興を目指し、魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)はじめ若い監督育成を目的とした「純16影展(16ミリ上映会)」をサポート。
そして、台北電影節や金馬影展、高雄電影節などの映画祭で大型屋外上映の現場で、大スクリーンでの上映を観客達に楽しんでもらいました。

彼は監督達からの信頼も厚く、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)が2002年に撮った『不散(邦題:楽日)』の時に乞われて劇中の舞台となる福和戲院での撮影からプレミア時の映写を担当し、2009年の『臉(邦題:フェイス)』では数百キロの35ミリ映写機を持って全台湾巡映を敢行。
また、魏徳聖監督の『賽德克‧巴萊(邦題:セデック・バレ)』の総統府前での屋外プレミアや、2013年の齊柏林(チー・ボーリン)監督の『看見台灣(邦題:天空からの招待状)』での映画館と遜色のない一万人屋外プレミアに初挑戦。その技術で屋外上映の常識を突破しました。

0521tff31998年から台北電影節で映画館ではない中山堂などでの映写をはじめ、2017年にはプールや西門紅樓での屋外上映も成功させ、ファンたちに素晴らしい夏の思い出を提供しました。
「映画祭で何か問題があったら、二度とその映画は見られなくなります。映画祭の企画の意図を観客に伝え、映画制作者の努力を尊重することは、映画文化に貢献することです」と語る江泰暾に、彼と一緒に仕事をした映画製作に携わる人々は、彼への深い感謝と尊敬を今回の賞に込めているそうです。

日本では、フィルムによる上映では国家資格のある映写技師が必要でした。しかし、デジタル化が普及した現在では誰もが扱えるようになりました。
そんな中、緊急事態宣言が解除され再開に向けて準備を進める近畿圏の映画館で、大阪のシネ・ヌーヴォはフィルムを続けています。ここにも、生き残りをかけて頑張る日本の映画館の心意気が感じられます。
台北電影節の映写技師が受賞する素敵な出来事を通して、これまであまり多く語られることのなかった"映写"について、そして台湾を始めアジア映画を公開してくれる日本のミニシアターにあらためてエールを送りたいと思います。

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

|

« 2020 台北電影獎ノミネート、審査員の顔ぶれと雑感 | トップページ | 2020台北電影節、オープニングは『無聲』、クロージングは蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督の『日子』! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 2020 台北電影獎ノミネート、審査員の顔ぶれと雑感 | トップページ | 2020台北電影節、オープニングは『無聲』、クロージングは蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督の『日子』! »