2020台北電影奨 授賞式!
中国語圏の作品が競う金馬奨と違い、台北電影奨は台湾映画だけのアワード。長編映画だけでなく、ドキュメンタリーや短編、アニメーションにも最高賞の100万元大賞を与えています。そしてその多くが台湾の社会や人を描き、いわゆる台湾アイデンティティを表現した作品が多いと感じます。
そんな中で、今年は白色テロを題材にして歴史と向き合う『返校』が最高賞である100万元大賞と長編劇映画賞はじめアウト・オブ・コンペを含むと7つのトロフィーを獲得しました。
授賞理由は「台湾の様々なプロの技術を結合し、台湾映画の新局面を開いたと同時に、台湾の歴史・映画史上に意義深い作品を作り上げた。この時代の台湾の姿勢を見せている」というものです。
また、審査委員長の吳念真(ウー・ニエンチェン)は「今年の審査員はある共通認識を持っている。我々は台湾の未来、可能性を見つけたい。だから100万元大賞に『返校』を選んだ」と語りました。
アウト・オブ・コンペの観客賞に選ばれた『下半場』は、昨年8月の公開時に大きな話題を呼んだわけではないのですが、台北電影節では多くのファンの心を掴みました。
ノミネートは最多14部門で、張榮吉(チャン・ロンジー)の監督賞と撮影賞を受賞。
「限られた条件の中で高難度のシーンを完成させ、映画の正確なリズム、スポーツ映画におけるスピード感と躍動感を完璧に出した。真摯なキャラクターの感情表現など、演出力を十分に発揮した」という授賞理由です。
話題の主演男優賞は、李康生(リー・カンシェン)と莫子儀(モー・ズーイ)という名優に、若い范少勳(ファン・シャオシュン)、曾敬驊(ツェン・ジンホア)、吳念軒(ウー・ニエンシュアン)がどう挑むのかが注目でしたが、結果は莫子儀が圧勝。デビュー24年にして初受賞です。
彼ほどの実力を持った俳優が何故?と不思議ですが、作品とのマッチングやタイミングだったのでしょう。ご本人も「これまでノミネートの数は凄くて、A4で2枚にわたるほど」と自嘲気味に言っていましたが、「尊敬する俳優がたくさんいるし、僕はたいした俳優ではありません。ほんの少しの運とこれまでの努力のおかげだと思います』という謙虚なスピーチでしたが、奥に秘めた喜びは大きかったと思います。
授賞理由は「キャラクターの人生に自身を投入し、豊かな感情で見る者に感動を与えた」というものでした。
主演女優賞は激戦だったそうで、新世代の王淨(ワン・ジン)がベテラン呂雪鳳(ロー・シュエフォン)に競り勝ちました。
プレゼンターの張榕容(チャン・ロンロン)が「彼女きっと泣くわ、王淨『返校』!」と言った通り、まさか?え?私?という感じで誰よりも驚き、涙をこらえきれないままトロフィーを受け取りました。
「愛を求めるあまり魂を売るという少女を、ジャンル映画に必要な効果を表現しただけでなく、独特の気質とインパクトを持つキャラクターを創り上げた」という授賞理由です。
審査委員長の吳念真は「複雑な役柄をよく理解し、これまでの作品に比べて大幅に進歩した」とも言っていました。
『那個我最親愛的陌生人絲』で李英銓(リー・インチュアン)が射止めた助演男優賞は、『下半場』の朱軒洋(チュウ・シュアンヤン)と決選投票になり1票差だったそうです。13歳の助演男優賞は台北電影奨史上最年少。しかしながら、昨年の金馬奨でも助演男優賞にノミネートされており、その演技力への評価は以下の授賞理由からもわかります。
「細部まで役柄が咀嚼された演技で、感情表現も豊か。キャラクターの品を保ちつつ見せることに成功した」
助演女優賞に輝いたのは、『江湖無難事』の姚以緹(ヤオ・イーティ)、大ベテランの陳淑芳(チェン・シュウファン)に競り勝ちました。全く違うキャラクター3役をこなし「性別が変わる役でも、身体の動きなどの転換も見事で説得力がある。多元的で難度の高い役を見事に完成させた」と、評価されました。
姚以緹は「この映画は初めてのコメディですが、これが最後ではありません。俳優の道は長くゆっくり流れる細い河のようです。引き続き愛と情熱を持ち歩んでいきたいと思います」と語っていました。
新人賞は『主管再見』の15歳の李曆融(リー・リーロン)が獲得。『下半場』の朱軒洋(チュウ・シュアンヤン)と范少勳(ファン・シャオシュン)と三つ巴の闘いだったそうですが、金馬奨で新人賞を受賞した范少勳を退けての受賞です。
「内面と演技と外見の見せ方を豊富な表現で見せ、独特の個性と可能性を持っている」という授賞理由。
トロフィを受け取る姿も初々しく、慣れないスピーチで名前を言っただけで帰ろうとしてしまい、プレゼンターの曾之喬(ツェン・ズーチャオ)から「感謝している人とかいるでしょ」と促され、恥ずかしそうに両親や監督にお礼を述べました。
今年の授賞式はプレゼンターの顔ぶれの豪華さが話題になっていましたが、幕開けの林志玲(リン・チーリン)の登場には驚かされました。
超ビッグなサプライズ!
昨年6月の結婚発表以来、公式の場に出たのはこれが初めてです。
「今日、台北電影節は様々な困難を克服して挙行されます。私たちは繊細でこだわりのある映画人を応援しなければなりません。心を一つにして一緒に前進しましょう」と言い、授賞式の幕が切って落とされました。
そして、黃子佼(ミッキー・ホアン)が司会者をつとめることは事前に発表されていましたが、これもまた林志玲に続いての当日サプライズで、柯佳嬿(アリス・クー)がパートナーとして登場。
柯佳嬿にとっては初の司会でしたが、見事にこなしていました。
オープニングのドレスと台北電影節のシンボルである蝶の髪飾りも素敵で、プロの司会者にはない雰囲気が新鮮です。
そして、パフォーマンスゲストの家家(ジアジア)が、『下半場』の「飛」、『逆轉勝』の「牙關」、『KANO』の「勇者的浪漫」という主題歌を聞かせてくれました。
本来ならばオリンピック・イヤーになったはず…だからでしょうか、台湾のスポーツ映画の映像が流れる中のパフォーマンスでした。
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