« 台湾映画『刻在你心底的名字(君の心に刻んだ名前)』予告編解禁、主題歌は盧廣仲(クラウド・ルー)! | トップページ | 台湾ドラマ『あすなろ白書~Brave to Love~』8月23日からCSホームドラマチャンネルで一挙放送! キャストインタビューVol.3王淨(ワン・ジン)! »

2020/08/22

2020台湾映画上映&トークイベント「台湾映画の"いま"〜進化する多様性」第2回『楽園(原題:樂園』オンライン開催! "ここでしか見られない映画"に感動の声!

0729event2000年以降の台湾映画の新しい流れがどのように台湾映画の"いま"に繋がってきたのか、そして"いま"何が起きているのかをお届けする台湾文化センターとアジアンパラダイス共催のイベントシリーズ、今年は新型コロナウイルス感染症の影響を鑑み、オンラインでの開催に変更しています。
この上映イベントは2000年以降の台湾映画の新しい流れがどのように台湾映画の"いま"に繋がってきたのか、そして"いま"何が起きているのかをお届けし、5年目を迎えました。今年は全て新作と未公開作品で台湾映画の「進化する多様性」を伝えていきたいと思っています。
ラブ・ファンタジー、シリアスな社会派、アクション・サスペンス、ドキュメンタリー、短編、青春映画、コメディなど、ここでしか見られない話題作と注目作を集めました。
第2回は、昨年11月に台湾で公開されたヒューマンストーリー『楽園(原題:樂園』。

かなり重い映画ですが、最後に見える一条の希望の光で救われます。
私は去年台北で見て、失礼な言い方かも知れませんが"思わぬ拾いもの"と思いました。
主演の原騰(ユアン・タン)が金馬奨の新人賞にノミネートされましたが、それ以外にあまり話題はなく、ただ主演が王識賢(ワン・シーシェン)で、監督が新鋭の廖士涵(リャオ・シーハン)だということが期待のポイントではありました。
金馬奨で受賞はできませんでしたし公開規模も小さく、期間も短かかったので、これは日本の映画祭などでは見つけられない映画だろう、台湾文化センターで上映すべき作品だと思いました。

アンケートでも、「重い内容だが、このテーマは日本にも共通するので、ぜひ多くの方に観てほしい」「心の中に波紋を起こす、魅力的な作品。どんなものにも光と影が共存しており、ネガティブな面も隠さずにきっちり見せるのは貴重」「見ごたえがあり、考えさせられるテーマ」「簡単に大団円のハッピーエンドでは終わらない台湾映画の描き方が好き」「作品の世界に引き込まれ、見終わったあとは心地よい余韻があった」などと、多くの方がしっかりと受け止めて下さっているので、この作品を上映して良かったと思いました。

また、トークでの作品解説は、「気づかなかった部分を解説してくれて理解が深まった」と言う声が多く、「撮影の裏話や、新移民問題など現代台湾が抱える社会問題がよくわかった」「監督の動画コメントも嬉しかった」「出演者らの背景や過去の出演作品など細かい解説が大変参考になった」他、作品を味わうお役に立てたようで何よりです。
実話の映画化作品についても「毎回様々な切り口で作品を紹介されるので楽しい」「話が広がりとても楽しい」「『セデック・バレ』のロケセットの話や、『KANO』のリサーチの話など、大変興味深かった」「今回の映画は勿論、まだ観ていない映画へも興味を持つことができた」ほか、ありがたい感想をたくさんいただきました。

1この映画の元になった実話の主人公は許有勝(シュー・ヨウシェン)という方で、14歳で裏社会の構成員となり、30年の薬物地獄から脱け出しました。
映画では「日光農場」という名前になっていますが、実際は「向日有機農場」と言います。
映画のエンドロールで許有勝さんや実際の皆さんが映っているのが、その農場です。
台北の郊外、內湖の大湖というところに2013年に作られました。
約1000坪の農場では無農薬の野菜と果物を栽培し、イチゴとトマトのハウスがあります。
ここで、今も許有勝さんが薬物中毒から更生を目指す青少年を指導し、これまでに再び社会へ送り出したのは60〜70人だそうです。
大学のサークル活動、高校の課外授業のほか、観光農場として農業体験教室、ジャム作りDIY、、ランチ・ビュッフェなども行い、多くの観光客が訪れているそうです。

2許有勝さんの聞き書きの手記「向日者─戒毒逆轉勝的故事」が2019年に出版され、これを読んだマレーシア華人のプロデューサー王禮霖(ワン・リーリン)が映画化を計画しました。写真の右側の方です。
この方は金馬奨の企画マーケットでグランプリを獲得した『分貝人生(Shuttle Life)』のプロデューサーで、この作品は金馬奨で2部門ノミネートされました。これは完全なマレーシア映画ですが、『楽園』は台湾映画として製作されました。
最初はドキュメンタリーとして撮影しようと思っていたそうですが、多くのメディアがすでに許有勝さんの物語を記事にしていたので、劇映画にすることに方針を変更。
キャストとスタッフも含め、台湾とマレーシアとの合同チームで製作が開始されました。

3映画製作の出だしは、いくつかのパターンがあります。
プロデューサーが企画し、監督や脚本家に依頼するパターン。
監督が自ら考えた構想を、プロデューサーを探して製作するパターン。
脚本家が書いた脚本をプロデューサーに売り込むパターン。
本作は、最初のプロデューサーが企画し、監督や脚本家に依頼するパターンです。
『楽園』は、プロデューサーの王禮霖がまず脚本家に依頼して脚本を完成させ、その後廖士涵(リャオ・シーハン)に監督のオファーをしました。
監督は「このストーリーと、ここで語られる意義に興味をひかれた」ということで引き受けたそうです。

4さて、廖士涵監督について、ご紹介しておきましょう。
1978年生れの、42歳。
ドキュメンタリーや短編の助監督、脚本、編集などで経験を積み、2013年に公共電視のシリアスドラマ『仲夏夜府城』で監督デビュー、これが金鐘獎5部門でノミネートされるという好調な滑り出し。
この後も着々とキャリアを重ね、2016年にシリーズドラマ植劇場の『積木でできた家(原題:積木之家)』を経て、2018年に長編劇映画『粽邪』(ツォンシエ=ちまき)で高い評価を受けます。
『積木でできた家(原題:積木之家)』は、Netflixで配信されています。

5監督の知名度を一気に上げた映画『粽邪』は、台湾に伝わる除霊の儀式をベースにしたホラーで、この年の興行成績第6位というヒットになりました。
これを受けて続編『粽邪2:馗降』が作られ、9月に公開されます。
『楽園』のプロデューサー王禮霖は、こういう廖士涵監督の手腕を買って起用したのでしょう。

監督からいただいたメッセージ動画の内容は、以下の通りです。

「こんにちは、私は監督の廖士涵です。
この映画を日本で見てもらえてとてもうれしいです。
『楽園』は実話をもとにして作った映画です。
少し重い内容ですが、希望に溢れた作品だと思ってます。
この映画から何かを得ていただけたと思います。
それが ささいな事でも、そのささいな事がずっと心に残ると思います。
この映画を見てくれて本当にありがとう。」

6この映画では、薬物の誘惑を断ち社会復帰を目指す青少年と、それをサポートする主人公をめぐる様々な出来事が描かれていきます。
そしてここに、もうひとつ台湾の移民問題も見え隠れしています。祖国への仕送りを目的とした労働移民、同じように家族を助けるために台湾に嫁いでくる女性達。新移民と呼ばれるこういった人々は東南アジア出身の人が多く、この映画に登場する青少年達の何人かが新移民の家庭です。新移民は労働環境や労働条件の悪さから貧困家庭が増え、その貧困が犯罪を招くという負の連鎖が彼らを蝕んでいきます。
マレーシアのプロデューサーは、こういったところも見て欲しいという思いがあったと思います。
台湾の新移民については、他にも劇映画やドキュメンタリーでこれをテーマにした作品が多くあります。機会を改めてご紹介できれば、と思います。

7さて、主人公を演じたのは王識賢。日本ではあまり馴染みがないかも知れませんが、歌手でもあり、台湾では知名度の高い人気俳優です。
台湾で主役を張れる50代の俳優は、戴立忍(ダイ・リーレン)と王識賢くらいではないかと思います。
モンスター級の視聴率を誇る大河ドラマ『甘味人生』や、大ヒット映画『角頭2:王者再起』の主役のほか、多くの映画やドラマに出演しています。

8

王識賢を日本で見られるのは、ドラマ『台北ラブストーリー〜美しき過ち(原題:罪美麗)』(2012年)や『CSIC TAIPEI科学捜査班(原題:CSIC 鑑識英雄)』、Netflixで配信中の『次の被害者(原題:誰是被害者)』、映画は大阪アジアン映画祭で上映された『逆転勝ち(原題:逆轉勝)』(2014年)と今年上映された『君の心に刻んだ名前(原題:刻在你心底的名字)』。『角頭2:王者再起』もNetflixで配信中です。

9この映画での王識賢の演技も高い評価を受けていますが、監督は「とても自然だし、ベストキャスティングでしょ、直感で彼に決めました。彼はとても気持ちの良い人柄で、チームを信頼してくれる。これには感激しましたね」と語っています。
撮影前には、実在の許有勝がどういう人物かとじっくり話し合い、彼が娘とどうコミュニケーションをとったかという経験を重視したそうです。ここが父親としての彼を描くのに大事だったからだと言っていました。
確かに、青少年達のサポートをしながら、自分は娘とどう向き合ったら良いか悩む姿は、リアリティにあふれていました。

10もう一人の主役と言っても良いでしょう、日光農場に入ってきて波紋を起こす青年鼠仔を演じた原騰、彼はマレーシアの人です。マレーシアで映像を学び、撮影や音声、編集のアシスタントを経て俳優デビュー。短編映画やドラマに出演しています。この『楽園』が実質的なスクリーンデビューとなり、金馬獎で新人賞にノミネート、上海國際電影節では新人賞を受賞しました。

11原騰は、「王識賢はプロ中のプロだけど、みんなが言うようにプライベートではとても親切です。いつも僕に演じる時の気持ちの作り方を教えてくれました」と、プレミアの時に語っています。
監督は、彼の持つ雰囲気が起用の理由で、「最初は発音に問題があったので躊躇しましたが、彼の努力が私たちの考えを変えました」と言っています。

12王識賢の娘を演じたのは、許安植(シュー・アンジー)。吳慷仁(ウー・カンレン)を育てた李啟源 (リー・チーユエン)監督の教え子で、國立台北藝術大學では蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督作品でお馴染みの女優陳湘琪(チェン・シアンチー)に演技を教わっていました。
ですから演技力は確かで、2015年に『悄悄』という短編映画で台北電影奨の新人賞を獲得しています。この時の名前は葳薾森でしたが、昨年改名しました。

13劇中で彼女は王識賢に叩かれるシーンがありますが、ものすごく痛くて、カットがかかった瞬間泣いてしまったそうです。そしたら、王識賢は抱きしめてなぐさめてくれたと言っていました。
この演技力を買われてでしょう、9月に台湾で公開される廖士涵監督の新作『馗降:粽邪2』にも出演しています。

14さて、ここからは実話を映画化した作品を5つご紹介します。
まずは、1931年に台湾から甲子園の決勝に進出した嘉義農林を描いた映画『KANO~1931海の向こうの甲子園~』です。
プロデュースと脚本は魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)、監督は馬志翔(マー・ジーシアン)、数々の映画賞を受賞し、興行成績は台湾映画史上第6位という作品。

15主役の近藤兵太郎監督を演じた永瀬正敏は、金馬奨で外国人として初めて主演男優賞にノミネートされました。これ以降台湾では大人気で、出演映画の舞台挨拶はいつも満員です。
近藤兵太郎監督はすでに亡くなっている為、クランクイン前に資料やご家族、教え子たちへの綿密な取材とリサーチなど1年以上かけて準備し、永瀬正敏が演じたこの役は多くの台湾人の心を掴みました。

16実話の映画化においてリサーチというのはとても重要な仕事で、私もこのリサーチ段階からスタッフとして参加し、主に近藤監督を担当していました。しかし、一番たいへんだったのは、甲子園大会に出場する各校のユニフォームの帽子や靴下の線の色の確認です。資料映像や写真はこの頃はまだ白黒でしたから、実際の色がわかりません。
そこで担当スタッフは、一校一校電話して当時のユニフォームの色がわかる資料はないか、またそれを知っている人を紹介してくれないかとお願いする、というのを繰り返しました。
それでもわからなかったところは、白黒写真から想像してユニフォームを作りました。

17次は、同じスポーツ映画の『ジャンプ!アシン(原題:翻滾吧!阿信)』、体操選手の実話ストーリーです。
2004年に台湾で公開されて大ヒット、日本でも公開された「ジャンプ!ボーイズ(原題:翻滾吧!男孩)」という映画、覚えていらっしゃるでしょうか。林育賢(リン・ユーシェン)監督の実兄である体操選手林育信(リン・ユーシン)がコーチとなって少年達を育成している日々を描いたドキュメンタリーです。

18この続編でコーチの林育信の選手時代を劇映画として描いたのが、『ジャンプ!アシン』。
家庭の経済状況によって好きな体操を諦めざるを得なくなった阿信が、宜蘭で家業を継ぎながら喧嘩三昧の日々を送るうち、トラブルに巻き込まれて故郷から親友と二人で逃亡。台北での荒れた生活の末、親友を失った阿信は一切のケリをつけて体操の世界にもどる決心をする・・・というストーリーです。

19この映画、台北電影奨では観客賞とメディア推薦賞を受賞、主役のコーチ役は彭于晏(エディ・ポン)ですが、この親友を演じた柯宇綸(クー・ユールン)が助演男優賞を獲得しました。
柯宇綸はお父さんが有名監督で、子役からスタートし、「牯嶺街少年殺人事件」にも出演、個性的なバイプレーヤーとして台湾映画では貴重な存在です。
最近では、昨年このイベントで上映し、配給も付いて一般公開された『あなたを、想う。(原題:念念)』の演技が味わい深いですね。

20そして、この映画は2017年にシリーズ3作目が制作されて三部作となりました。三作目のタイトルは『翻滾吧!男人』。一作目の『ジャンプ!ボーイズ』の、成長した体操少年を記録したドキュメンタリーです。
『ジャンプ!ボーイズ』から15年、7人の少年のうち5人はその後も体操を続けていて、中でも李智凱(リー・チーカイ)と黃克強(ホアン・カーキョン)は様々な困難を乗り越え、再びコーチの林育信(リン・ユーシン)のもとで体操選手として今年予定されていた東京オリンピックを目指し日々奮闘していました。
二枚の写真を見ると、コーチは15年経ってもあまり変わりませんが、東京オリンピックを目指す2人の少年時代はどの子か…探すのは難しいですね。
それにしても、三部作の中の1本が劇映画として製作されるというのはほかに例を知りません。

21_20200822205401続いては『あの頃、君を追いかけた(原題:那些年,我們一起追的女孩)』、台湾映画史上第4位の興行成績を記録した青春映画です。
台湾の人気作家九把刀(ジウバーダオ Giddens)が自身の体験を元にした原作を自ら脚色、監督した作品。1993年を舞台に、主人公とその仲間達がみんなで憧れていた一人の女の子を中心に展開する恋と友情の物語です。

22九把刀の高校生時代を柯震東(クー・チェンドン)が演じ、大ブレイクしました。監督はこのキャスティングにはものすごくこだわって、「自分よりかっこいいということ。背が高くなくてはいけない、自分より絶対に良い役者を使わなければならないと思っていた」と、当時のインタビューで語っていました。
そして柯震東について「すごく可愛い子で、どちらかちというあまり自分に自身がないタイプの男の子だけど、僕の役だから自信過剰な役を演じなくてはならない」…なるほど、新人だった柯震東はさぞたいへんだったでしょう。

23そして、ヒロインを演じた陳妍希(ミシェル・チェン)は、実際のマドンナに雰囲気が似ているので、九把刀は脚本を書いた時からすでに彼女をイメージしていたそうです。ただ、投資家達からはほかの女優さんでという話もあったそうで、ともかくヒロインだけは自分で選びたかったということで、そのために九把刀自身が出資したと言っていました。そうなんです、映画もお金出している人の発言権が一番強いのです。

24ほかの出演者も全て自分の友人や家族ですから、キャスティングのポイントは、個性と話し方だそうです。特に郝劭文(ハオ・シャオウェン)が演じた阿和(秀才タイプ)は体型からしゃべり方までそっくりだと言っていました。
ご自身の大切な想い出の青春ストーリーですから、色々とこだわりがあったようです。

25次は、鄭有傑(チェン・ヨウジエ)監督と勒嘎.舒米(レカイ・スミ)監督の『太陽の子(原題:太陽的孩子)』。
これはもともと勒嘎.舒米(レカイ・スミ)監督が作ったドキュメンタリー映画『海稻米的願望』に感動した鄭有傑(チェン・ヨウジエ)監督が、共同監督という形で劇映画として制作した作品です。

26勒嘎.舒米監督のお母様がリーダーシップをとった、アミ族の先祖代々伝わる水田を復活させる活動を通して、そこに根ざす人々の生活と社会、アイデンティティを描いています。
キャストは、主役の阿洛‧卡力亭‧巴奇辣(アロウ)は歌手、企業との土地の仲買人を演じた徐詣帆(シュー・イーファン)は俳優ですが、それ以外はすべて素人。しかし、素人とはいえ演技経験が豊富な人ばかりだそうです。

27実は、勒嘎.舒米監督のお母様はアミ族の演劇集団も主宰していて、皆さんは各地で公演を行い、そのクオリティはかなり高いと鄭有傑監督が言っていました。このメンバーが本作に出演しているので、プロではないけれど「演技経験の豊富な素人」なのです。

28この映画は2015年の台北電影節で観客賞を受賞し、金馬奨では主題歌賞を獲得。スミンが歌うこの主題歌「不要放棄」は、金曲奨で楽曲賞に輝きました。
しかし監督は言います。「最初は誰も知らない映画でした。台北電影節で観客賞もらっても、メディアからは見て見ぬ振りをされていました」。つまり、原住民を扱った映画はメディアの関心が薄く、なかなか広まらないのがこれまでの通例だったそうです。本作も例外ではなかったようですが、監督たちの"伝えたい気持ち"と努力がこの常識を破っていきました。

29原住民を扱った映画でも、特例があります。それが台湾映画史上第2位の興行収入を誇る『セデック・バレ(原題:賽德克、巴萊)』です。
※第二部は7位
魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)監督による、1930年に台湾の霧社で起きた日本統治時代後期最大の抗日蜂起事件を描いた歴史大作で、金馬獎で作品賞など5部門を受賞しました。
この映画で描かれた霧社事件は、最初にご紹介した『KANO~1931海の向こうの甲子園~』とは、1年も離れていない時期に起きていることに、あらためて驚かされます。
そもそも、『セデック・バレ』のリサーチをしている時に、魏徳聖監督は嘉義農林のこの話を知り、『セデック・バレ』完成後に『KANO』の製作に取りかかりました。

30こういう歴史大作においては、時代考証がとても重要ですが、霧社事件については色々な資料もありますし、当事者の子孫への取材など史実の検証にはそれほど困難ではなかったようです。でも、一番たいへんなのは、当時を再現する場所です。
台湾中の山を歩いたのではないかというほどのロケハン、史実にできるだけ当時の様子を忠実に描くには大規模なセットを作る必要がありました。

31台風によりマヘボ社のセット流されてしまい、そこからの復帰、本物の街を作ってしまった霧社街セットなど、この映画の撮影をめぐるエピソードには事欠きません。
このあたりの詳細は、昨年のイベントでお話ししてアジアンパラダイスにも掲載してありますので、ご覧いただければと想います。
http://www.asianparadise.net/2019/06/post-86fa2d.html

32この映画の美術は、世界的に活躍している種田洋平さんにオファーして、見事なセットができあがりました。
そして、細かい広告の看板などにまでそのこだわりが現れています。映画を見ていると壮大なストーリーや心奪われ、アクションに見とれてしまいますが、映るか映らないかくらいのものまで丁寧な作業が行われました。
私は山の中のロケ地には行かれませんでしたが、平地に降りてきての撮影の時に現場に行き、それを目の当たりにしました。
美術チームのセットデコレーターを担当された、これまた国際的に活躍されている美術監督の赤塚佳仁さんが、スタッフと一緒に自らセットに登ってサンドペーパーで"汚し"と言われる古びた感じを出す作業をしたのには驚きました。
実話の映画化、『セデック・バレ』は特に歴史大作がどれだけたいへんかという例の、集大成とも言えるでしょう。

33では、台湾の最新情報をお伝えしましょう。
実話の映画化の話の続きになりますが、『セデック・バレ』や『KANO』を作った魏徳聖監督の壮大すぎる新作、『臺灣三部曲』の製作が進んでいて、先日クラウドファンディング開始の記者会見が行われました。
この映画は17世紀の大航海時代を舞台に、オランダ人、明朝の漢人、スペイン人、日本人,そして原住民が織りなす台湾誕生序曲の物語。
魏徳聖監督の「私たちはどこから来たのか、そしてどこに向かうのか」という、永遠のテーマを追求する大プロジェクトのひとつです。

34この壮大すぎるプロジェクトには莫大な製作資金が必要で、『台湾三部曲』は今年9月からセットの製作を開始し、撮影開始の2021年8月前までに、第一段階の複数のセットの製作を完成させる予定。
その第一段階の製作費、主にセットの建設費をクラウドファンディングで募集しています。
個人の皆さんには約700円から38,000円まで(送料別)、リターンには様々な映画グッズが用意されています。
日本語ページもありますので、お気持ちとお財布の兼ね合いでお選びいただき、ご参加・ご支援いただければ、と思います。
https://taiwantrilogy.com
※参考 アジアンパラダイスの記事
http://www.asianparadise.net/2020/08/post-07ece2.html

このトークはアーカイブとして11月末まで残し、公開することにしました。
(映画をご覧になっていない方にとってはあまり有用ではないかも知れませんが…)
https://v.classtream.jp/tw-movie/#/player?akey=06af5fd844fd09e6736c59b7c2a09403

次回は、すでにお知らせしていますように、8月29日(土)14時から。
花蓮に住む2人の貧困家庭の少女の成長を追ったドキュメンタリー『ここからの未来(原題:未來無恙)』!です。
続く第4回は9月12日(土)14時から、吳慷仁(ウー・カンレン)がアクションに挑戦したクライムサスペンス『狂徒』。
申し込みは8月31日(月)午前11:00より。時間が変わりましたので、ご注意下さい。

主催:台北駐日経済文化代表処台湾文化センター/アジアンパラダイス
協力:滿滿額娛樂股份有限公司

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

|

« 台湾映画『刻在你心底的名字(君の心に刻んだ名前)』予告編解禁、主題歌は盧廣仲(クラウド・ルー)! | トップページ | 台湾ドラマ『あすなろ白書~Brave to Love~』8月23日からCSホームドラマチャンネルで一挙放送! キャストインタビューVol.3王淨(ワン・ジン)! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 台湾映画『刻在你心底的名字(君の心に刻んだ名前)』予告編解禁、主題歌は盧廣仲(クラウド・ルー)! | トップページ | 台湾ドラマ『あすなろ白書~Brave to Love~』8月23日からCSホームドラマチャンネルで一挙放送! キャストインタビューVol.3王淨(ワン・ジン)! »