« 第21回 東京フィルメックスのラインナップ発表! | トップページ | 台湾のテレビアワード 2020電視金鐘獎、『想見你(時をかける愛)』が長編ドラマ賞、柯佳嬿(アリス・クー)2度目の主演女優賞! »

2020/09/26

2020台湾映画上映&トークイベント「台湾映画の"いま"〜進化する多様性」第5回『孤独なあなたたちへ(致親愛的孤獨者)』オンライン開催! 観客に響いた新しい試み!

0902flier2000年以降の台湾映画の新しい流れがどのように台湾映画の"いま"に繋がってきたのか、そして"いま"何が起きているのかをお届けする台湾文化センターとアジアンパラダイス共催のイベントシリーズ、今年は新型コロナウイルス感染症の影響を鑑み、オンラインでの開催に変更しています。
この上映イベントは2000年以降の台湾映画の新しい流れがどのように台湾映画の"いま"に繋がってきたのか、そして"いま"何が起きているのかをお届けし、5年目を迎えました。今年は全て新作と未公開作品で台湾映画の「進化する多様性」を伝えていきたいと思っています。
ラブ・ファンタジー、シリアスな社会派、アクション・サスペンス、ドキュメンタリー、短編、青春映画、コメディなど、ここでしか見られない話題作と注目作を集めました。
第5回は、"孤独"をテーマに3人の女性を描いたオムニバス『孤独なあなたたちへ(致親愛的孤獨者)』を上映しました。

短編映画をあまり見る機会がないことや、こういう形のオムニバスは珍しいこともあり、観客の皆さんも色々な視点から見て下さったようで、色々な反応がアンケートでわかりました。
「3編とも面白かった。この3編を1本の長編にまとめられているのも素敵。書店や本をテーマにして、作家が語るプロローグとエピローグで結ばれ、1冊の本を読み始めて読み終えたよう気持ちになった」「孤独をテーマとしたそれぞれの作品を楽しめた。セクハラ、大陸問題、受刑者慰問といった暗部を孤独という観点でまとめた点がユニークたど感じた」「短編映画は普段あまり観ないのでどうかなぁと思っていたが、とても面白かった。それぞれ違う切り口で、様々な感情で見ることができた。短編という限られた時間の制約の中で、3本とも主人公の家庭環境が見え隠れするところから彼女たちの孤独へとつながるところが、監督と脚本の手腕を感じた」「駱以軍の言葉を、美しい日本語に訳してくださってありがとう。胸に響きました」

本作の解説は作品の理解を深めるのにお役に立ち、台湾での短編映画事情は、短編映画の位置づけと役割が皆さんに届き、とてもうれしく思いました。
「この短篇ができるまでのことや、『書店の影像詩』など関連作品の解説がとても興味深く、短篇映画からの名監督たちの誕生など、今回もとても勉強になった。台湾書店巡りがしたくなった」「分かりやすい解説と深い解説がうまく融合して映画の余韻が素晴らしい時間になった。また台湾映画事情は希少情報なので次回も楽しみ」「映画を一度観ただけではわからない事を知ることができ、更に作品に対する理解が深まった」「短編映画から巨匠になる台湾の映画監督がこんなにいるとは…改めて台湾映画界の監督の層の厚さを知った」「解説を聞けたことで、考える糸口をもらったように感じた」「短編には隠れた原石がたくさん。これからは金穂賞にも注目したい」

本作は、舞台とドラマ、小説、映画で展開しているプロジェクトの映画版です。
ご覧いただいた映画版は、台湾の作家・駱以軍(ルォ・イージュン)のモノローグで始まり、エンドロールで語られるメッセージは、見る者の心に残ります。映像と文学の融合のトライアルとして、とても貴重な作品になっています。
この映画は2019年の9月に台湾で公開されましたが、実はこのうち2作は独立した短編映画として、台北電影節で上映されているのです。
2つめの『凱涵』は2019年の台北電影節で『破窗效應』 Broken Windows Theory というタイトルで上映。
3つめの『小薰』は『2923』というタイトルで2018年の台北電影節と、2019年の大阪アジアン映画祭で上映されました。そして大阪アジアン映画祭では「芳泉短編賞/スペシャル・メンション」を受賞しています。(トーク映像ではW受賞と紹介しましたが、これでひとつの賞ということになります。たいへん失礼しました。)

0926loneliness1小玉、凱涵、小薰という3人の女性それぞれを主人公にした3編のオムニバス、この映画が作られた経緯は、とてもユニークです。
少し長くなりますが、製作の背景をお伝えします。
この映画は、同じ製作会社による「書店裡的影像詩(書店の映像詩)」というドキュメンタリー映画から着想を得ています。

0926loneliness22014年に、『巷弄裡的那家書店(路地裏の本屋)』というドラマが放送されました。李威(リー・ウェイ)と謝欣穎(シエ・シンイン)が主役で文字通り路地裏にある本屋を舞台にしたラブストーリーです。このドラマの最後には、侯季然(ホウ・チーラン)監督による台湾各地のオリジナリティあふれる素敵な書店を紹介する3分の素晴らしいドキュメンタリー映像が付いていました。これが《書店裡的影像詩(書店の映像詩)》です。
この斬新なアイデアは評判となり、ドキュメンタリー映像だけをまとめて一本の作品として關島國際電影節(グアム国際映画祭)に出品し、短編ドキュメンタリー審査員賞を受賞しました。

0926loneliness3《書店裡的影像詩(書店の映像詩)》は2016年にシーズン2が作られ、その中の1編『給孤獨者書店(孤独な書店へ)』という映像から、『致親愛的孤獨者(孤独なあなたたちへ)』へと創作のバトンが渡されました。
この映画のエンディングは、『給孤獨者書店(孤独な書店へ)』の映像に駱以軍(ルォ・イージュン)のモノローグと音楽が加えられたものです。
この《書店裡的影像詩(書店の映像詩)》はYouTubeで公開され、誰でも見られるようになっていますので、興味のある方はぜひご覧になって下さい。

『給孤獨者書店』
https://www.youtube.com/watch?v=Vd0EzPKAcB4

0926loneliness4こういう複合的な展開は、文学と映像、舞台を融合させ、書店と劇場、映画館を繋ぐ夢田文創(Dreamland Image)という製作会社の試みです。
この会社の創設者で代表の蘇麗媚(スー・リーメイ)という方は、もともと三立テレビの副社長で、あらゆる芸術と文化は映画やテレビの創造の源であるはずが、マーケットの歪みからクリエイターの育成とビジネスが切り離されていることに憂慮していました。そこで、自身の理想を実現するために三立テレビを辞め、夢田文創という会社を立ち上げたそうです。
これで、ドラマのミニコーナー「書店裡的影像詩」から 『孤独なあなたたちへ(致親愛的孤獨者)』への繋がりがわかっていただけたと思います。

0926loneliness5『孤独なあなたたちへ(致親愛的孤獨者)』のパート1『小玉』は、友達がいなくて、若い教師に憧れる妄想好きな中学生の物語です。
このストーリーは、練建宏(リエン・ジエンホン)監督が、教師による性被害を受けた体験を書いた小説で話題になった作家、林奕含(リン・イーハン)の死がきっかけだそうです。早熟な少女が作家としてデビューし、心を病み、結婚・離婚を経て2017年に26才で自殺したことに衝撃を受けたということです。
もちろん映画はフィクションですが、ここで描かれた小玉の身に起きた一連の出来事は本当なのか、あるいは全て小玉の妄想なのか…最後、書棚の向こうから見える小玉の表情、これをどう受け止めるか、観客が試されているようにも思えます。

0926loneliness6監督の練建宏(リエン・ジエンホン)は、1982年生まれ。
世新大學放送・映像学科を卒業して、2012年に短編『熱線 1999』で監督デビュー。その後も短編2作が国内外の映画祭で上映され、2017年にソーシャルワーカーと低所得層の家庭を描いた『TMD天堂(TMD天国)』が、金鐘奨のミニドラマ・テレビ映画部門の監督賞にノミネートされました。

0926loneliness7「書店は啓発の場所。小玉にとっては官能小説を読み、妄想が広がり、それが心身の成長に繋がる」と、監督は言っています。
彼女は、家庭でも孤独は避けられない問題。そしてそれが人を成長させると言う監督、思春期に孤独を感じたとき監督自身は一日中書店にいたといいます。
当時12才だった主役の林慈恩(リン・ズーオン)は、脚本を見ても動揺せず、教師役の俳優から手を腰に回されたり抱かれるシーンも「大丈夫」とクールに受け止め、スタッフは精神年齢は30才くらいではないかと言っていたそうです。

0926loneliness8パート2の『凱涵』は、南部の屏東から台北の大学に来た新入生の話です。手違いで入居するはずの寮には大陸からの学生がいて宿無し、おまけに財布と身分証もなくしてネットで窮状を訴えても解決策なし、まさに八方塞がりの孤独という状況に陥ります。
大陸の学生とつかみ合いのケンカになるシーンでは、廖哲毅(リャオ・ジャーイー)監督が主役の李雪(リー・シュエ)の怒りのテンションを上げるために「お前はゴミだ」と囁いたそうです。効果はてきめんで、李雪は監督に往復ビンタを食らわせてやろうと思った、と言っていたそうです。
そして、ケンカのシーンを撮り終えたときは、スカッとしたということでした。

0926loneliness9見事なケンカシーンの演出をした廖哲毅(リャオ・ジャーイー)監督は、国立台湾大学演劇学科卒業後、2013年に自分の会社「壹玖八七國際娛樂有限公司(1987 International Entertainment)」を立ち上げて、陳心龍(チェン・シンロン)との共同監督で長編映画『時下暴力』(2014年)でデビュー、金馬影展で上映されました。
当時20代の製作チームということで話題になりましたが、この『孤独なあなたたちへ(致親愛的孤獨者)』以降のニュースが聞こえてこないのが寂しいですね。

0926loneliness10さきほどの撮影エピソードでもおわかりのように、主役の李雪はとても興味深い女優です。
高校卒業後臺北市立大學のダンス科に進み、寮住まい、両親に反対されていたストリートダンスを始めるという意志強固な女性。凱涵と通じるところがありますね。
2017年に金馬獎の短編映画奨を獲得した『亮亮與噴子』に主演、短編映画のアワード第40屆金穗獎でもグランプリ、また『2號球衣』という作品で主演女優賞を受賞しています。
独特の雰囲気を持っているので、個性派女優としてこれからが楽しみです。

0926loneliness11ところで、行くところがない主人公が図書館で座り込んでいるシーンで、「我在臺湾我正青春(私の青春、台湾)」という本がアップになります。
この本は、ひまわり運動のリーダー陳為廷(チェン・ウェイティン)と、中国人留学生で台湾の社会運動に参加する蔡博芸(ツァイ・ボーイー)の二人の大学生を追ったドキュメンタリー映画『我在台灣、我正青春(私たちの青春、台湾)』の傅楡(フー・ユー)監督の著作で、監督の人生から、民主化への歩みを書いた本です。
この本をクローズアップさせたカットは、色々な隠喩が込められているように思えます。

0926loneliness12最後のパート『小薰』は、『2923』という独立した短編として各映画祭に参加していることは冒頭でもお話ししましたが、刑務所に面会に行くという仕事をしている女性のストーリーです。
ここでは、親友と付き合う元カレのもとで働くという複雑な状況と心持ちの主人公と、受刑者「2923」の、二つの孤独が描かれています。二人の心が次第に近付いていき、それぞれの希望の光が見えてくるというラストは、このオムニバスを締める重要な意味を持つ一編となっています。

0926loneliness13この作品だけ、知名度の高い俳優がキャスティングされています。
主役の張寗(チャン・ニン)は、2013年に舞台劇でデビューし、2017年に陳宏一(チェン・ホンイー)監督の『自畫像』で初主演、ドラマでも金鐘獎の助演女優賞にノミネートされるなど、派手ではありませんが、順調にキャリアを重ねています。本作でも、難しい役をきちんとこなしていますね。
ちなみに、彼女が演じた受刑者の面会人という仕事は実在するそうです。もともと台中刑務所の周りに、面会に来られない家族や友人から受刑者への差し入れを代行する店がたくさんあり、そこから発生した仕事のようです。

0926loneliness14そして、受刑者「2923」役は、いま旬の俳優、劉冠廷(リウ・グァンティン)です。
ドラマ『お花畑から来た少年(原題:花甲男孩轉大人)』で一気に知名度を上げ、昨年『ひとつの太陽(原題:陽光普照)』で金馬奨の助演男優賞を受賞しました。
そして、初主演となる陳玉勳(チェン・ユーシュン)監督の新作映画『消失的情人節(消えたバレンタインデー)』が、いま台湾で公開中。
心を閉ざした受刑者の内なる変化を、無機質な表情で表す演技力は、有名監督の俳優発掘育成プロジェクトで磨いてきただけのことはあります。

0926loneliness15監督は、1985年生まれの于瑋珊(サニー・ユィ)。
淡江大學放送学科卒業後、張作驥(チャン・ツォーチ)の会社で修行し、以来多くのドラマや映画の助監督を経験しました。2013年に脚本を書き始め、2015年に最初の脚本・監督作品『小孩(The Kids )』が国内外の映画祭で評価され、東京国際映画祭と大阪アジアン映画祭でも上映されました。
監督は、孤独について、この様に語っています。
「孤独を恐れる必要はありません。孤独は、自分自身を見つめ、見直し、別の自分に出会えることもあります」

0926loneliness16この映画は、映像と文学が融合している作品だということを最初にお話ししましたが、このオムニバス3作全てに書店と図書館が出てきたことに気づかれたと思います。
最後の「小薰」では、主人公が受刑者「2923」に刺激されて本屋に行くシーンがあります。
このおしゃれな書店は、松山文創區の、煙草工場をリノベーションしてできた文化施設にある閱樂書店です。観光地でもあるので、行かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

0926loneliness17ここは煙草工場時代の保育室の跡地で、夢田文創(Dreamland Image)が2013年にドラマ『巷弄裡的那家書店(路地裏の本屋)』のロケ地として作った書店です。撮影後もそのまま残し、2016年に書店とカフェを併設したアートスペースとして正式に開業。松山文創區の入り口にある池の畔に建つ、木造の緑色の日本建築です。
様々なワークショップやイベント、ライブなども行われていますので、台北に行かれたら、ぜひ立ち寄ってみて下さい。

0926loneliness18この映画の製作のきっかけとなった侯季然(ホウ・チーラン)監督のドキュメンタリーシリーズ「書店裡的影像詩(書店の映像詩)」は、YouTubeで公開されていることは最初の方でお話ししましたが、シリーズ1は日本語字幕付きの映像も公開しています。
これは、「書店本事 台湾書店主43のストーリー」という日本語訳の書籍が出版された時に、あわせて映像の日本語字幕版も見られるようになりました。
『書店本事』翻訳出版プロジェクトの、クラウドファンディングによる功績です。

0926loneliness19ここからは、台湾の短編映画事情をご紹介します。
台湾では、短編映画は新人監督の登竜門と言っても良いでしょう。
大学で映画を学ぶ学生は、まず卒業制作として短編映画を撮ったり、金穂奨という政府が主催する短編映画のコンペティションや台北電影節、高雄電影節に応募したり、政府の補助金システムへの申請と併せていくつかのスタート方法があります。

0926loneliness20少ない製作費で作ることができる短編は、多くの映像作家を目指す者にとってのファーストステップです。
そして、そうした作品群と人材を注視している台湾のプロデューサーが、若い芽を見出し、商業映画に起用することがしばしばあります。前回このイベントで上映した『狂徒』もそうですね。
では、その登竜門のことからお話ししていきます。

0926loneliness21まずは、新人の発掘と育成を目的に、政府が運営する金穂奨。
これは、応募者の枠を一般と学生に分け、それぞれ劇映画、ドキュメンタリー、アニメ、実験作のジャンルでコンペ形式で各賞と賞金が用意されています。
ここから飛び立ったのは、李安(アン・リー)、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)、柯一正(クー・イージャン)、魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)、易智言(イー・ツーイエン)、楊力州(ヤン・リージョウ)、鍾孟宏(チョン・モンホン)、鄭文堂(チェン・ウェンタン)、戴立忍(ダイ・リーレン)、林孝謙(ギャビン・リン)、姜秀瓊(チアン・ショウチョン)、黃信堯(ホアン・シンヤオ)、程偉豪(チェン・ウェイハオ)、徐漢強(シュウ・ハンチャン)、宋欣穎(ツォン・シンイン)、謝庭菡(リンゴ・シエ)、趙德胤(チャオ・ダーイン)、王逸帆(ワン・イーファン)はじめ、いま台湾映画界を支える監督や期待の新鋭達です。

0926loneliness22では、個別に2000年以降の比較的新しい監督と作品をピックアップしてみましょう。
まずは2001年の金馬奨で受賞した鄭有傑(チェン・ヨウジエ)監督の『石碇的夏天(シーディンの夏)』。田舎へ帰省した青年のひと夏の経験と成長を描いた青春映画で、監督25才の時の作品です。
2002年の東京国際映画祭で上映され、2003年に一般公開されました。
『他們在畢業的前一天爆炸(太陽を見つめた日々)』『太陽的孩子(太陽の子)』に続く『新作『親愛的房客』は、10月に台湾で公開されます。

0926loneliness23次は林書宇(トム・リン)監督の『海巡尖兵(海岸巡視兵)』です。2005年の金馬奨では惜しくも受賞を逃しましたが、高い評価を得て、2006年に日本のアジア海洋映画祭イン幕張で上映されました。
兵役に就いている3人の若者の一夜に起こる緊張感あふれるドラマで、林書宇(トム・リン)監督の体験に基づいたもの。退役したばかりの鄭有傑(チェン・ヨウジエ)が、俳優として出演しています。30分という短い時間の中に凝縮された、濃厚なテーマで、とても印象に残っている作品です。
『九降風(九月に降る風)』『星空』『百日告別』と、全て日本公開されている林書宇監督の新作『夕霧花園』も、来年公開予定です。

0926loneliness24続いては、姜秀瓊(チアン・ショウチョン)監督の『跳格子』。昨年のこのイベントで上映し、来日した監督に色々お話しを伺いました。憧れの人のために駐車スペースを確保するレッカー車の作業員のハートウォーミングなストーリーは、この日の観客の皆さんからも高い評価をいただきました。
2008年の金馬奨で短編映画賞と、主演のスミンが新人賞も受賞。
ドキュメンタリー『風に吹かれて−キャメラマン李屏賓の肖像(原題:乘著光影旅行)』、日本映画で初めて台湾人監督としてメガホンを取った『さいはてにて やさしい香りと待ちながら』などの長編のほかに、優れた短編も引き続き撮り続けています。

0926loneliness25ドキュメンタリーから、短編、そして長編映画へと進んできたのが、張榮吉(チャン・ロンジー)監督。
2008年に金馬奨と台北電影奨で受賞した『天黑(暗闇を抜けて )』は、視覚障害の天才ピアニストとダンサーを夢見る少女の二人の友情と成長物語です。これを2年かけて同じ黄裕翔(ホアン・ユーシャン)と張榕容(チャン・ロンロン)で長編にしたのが、『逆光飛翔(光にふれる)』。
それ以降『共犯』や中国映画の『夏天19歳的肖像(夏、19歳の肖像)』も続けて日本公開され、最新作の『下半場』は、今年の台北電影奨で監督賞と観客賞を獲得しました。

0926loneliness26短編から長編になった有名な映画は、黃信堯(ホアン・シンヤオ)監督の 『大佛普拉斯』(大仏+)』もあります。大仏の製造工場の警備員が社長の車のドライブレコーダーを友達と二人で盗み見して、その音声からそこで何が起きているかというのを楽しむうちに、衝撃の事実が発覚する…という内容です。
短編は2014年の金馬奨で受賞、長編もまた2018年の金馬奨と台北電影奨を総ナメにするという快挙。東京国際映画祭と、このイベントでも上映しました。
新作『同學麥娜絲』が今年の金馬影展のオープニングを飾るということで、話題になっています。

0926loneliness27最近の若い監督も、短編で認められて長編デビューするケースが増えています。
前回上映した『狂徒』の洪子烜(ホン・ズーシュアン)監督もそうなのですが、こちらはアーカイブのトークでご覧下さい。
2009年の短編第二作『狙擊手』で注目された程偉豪(チェン・ウェイハオ)監督は、2015年の『保全員之死(警備員の死)』が台北電影節と金馬奨の両方で短編映画賞を受賞しました。
転落死したビルの警備員の死因を巡って捜査が混乱、さてその真相は…という内容ですが、その展開とオチがものすごくおもしろかった作品です。
この若き才能に着目したプロデューサーから2016年に初長編ホラー『紅衣小女孩』の監督を依頼され、続く続編『紅衣小女孩2』ともどもメガヒット。2017年の『目撃者 闇の中の瞳』も好成績で、ジャンル映画の旗手と期待されています。

0926loneliness282017年の金馬奨を受賞したのは、今日ご覧いただいた『孤独なあなたたちへ(致親愛的孤獨者)』のパート2『凱涵』の主役、李雪(リー・シュエ)主演の『亮亮與噴子』です。
18才の誕生日を迎えたのに家族はみんなそれに気づかず、兄の赤ちゃんの子守を押しつけられたヒロイン、みんなに一矢報いる為にとった行動とは…という内容で、李雪(リー・シュエ)のキャラクターがパワー全開の作品。大阪アジアン映画祭で上映されました。
監督の李宜珊(リー・イーシャン)の新作は、長編ドキュメンタリーだそうです。

0926loneliness292018年の台北電影奨を受賞、金馬奨にもノミネートされた『洞兩洞六(0206)』は、王逸帆(ワン・イーファン)監督が大学在学中に作った作品です。兵役に就いた若者たちが体験する不条理で血なまぐさい事件を、ブラックユーモア満載で描き、その色彩も衝撃的でした。
卒業制作の『伏魔殿』は今年の大阪アジアン映画祭で上映され、今年初長編映画『逃出立法院』が、台北電影節の特別招待作品として上映され、8月に台湾で一般公開されました。

0926loneliness30去年の台北電影奨では、短編ドキュメンタリーの『去年火車經過的時候(去年列車が通過したとき)』 が短編映画賞に加えて最高賞の百萬元大賞を受賞して話題になりました。海外の映画祭での受賞も合わせるとと6タイトル獲得。
モノクロの車窓の風景に抽象化された心象を映したような、とても不思議な世界観の映像です。
黃邦銓(ホアン・パンチュアン)監督はフランスの大学で映画を学び、この作品はニューヨークのMoMA Doc Fortnight 2019でも上映されました。

0926loneliness31そして今年の台北電影奨の受賞作とノミネート作は、こちらでした。
受賞したのは羅晨文(ルォ・チャンウェン)監督の『幽魂之境』。戦闘中に亡命を試みた12歳の陸軍少年兵が捉えられ、重病の兄を犠牲にして食料を手に入れるか、一緒に刑務所で餓死するかという選択を迫られ…というミャンマーの子供兵の歴史的事実に基づいた物語です。
その他のノミネート作を含めて、この中から次世代を担うクリエイターが出てくることを期待したいですね。
『主管再見』監督:林亞佑(リン・ヤーヨウ)
『家庭式』監督:游珈瑄ヨウ・カーシュアン)、郭語彤(グォ・ユイタン)
『第一鮪』監督:孫介珩(ソン・ジエハン)
『蟾鳴』監督:游翰庭(ヨウ・ハンティン)

0926loneliness32では、台湾の最新情報をお伝えします。
今回は、近々台湾で公開される2本の映画です。
最初は9月30日に公開の『刻在你心底的名字(君の心に刻んだ名前)』。今年の大阪アジアン映画祭と台北電影節で上映され、たいへん話題になった映画です。
優れたLGBTを扱った作品が多い台湾で、またひとつ新しい青春映画がそこに加わりました。1988年、戒厳令解除直後の男子高校生ふたりの友情から愛情に変化していく心の揺れを、時に激しく時に静かに描いた作品です。

0926loneliness33この映画は、プロデューサーである瞿友寧(チュウ・ヨウニン)が、長年の仲間である2000年代のアイドルドラマを数々手がけてきた柳廣輝(リウ・クァンフイ)に、そろそろ自分の物語を映画にしたら、と提案し、監督デビュー作になりました。
脚本も瞿友寧(チュウ・ヨウニン)が書き、柳廣輝監督を全面サポート。主役のふたりはデビュー4年目の陳昊森(エドワード・チェン)と、昨年の『返校』でデビューしてこれが二作目という曾敬驊(ツェン・ジンホア)、超フレッシュな2人のイケメンです。
また、このふたりの数十年後を戴立忍(ダイ・リーレン)と王識賢(ワン・シーシェン)が演じ、戴立忍はこれで大阪アジアン映画祭の薬師真珠賞を受賞しました。
そして、主題歌は盧廣仲(クラウド・ルー)が歌うことも、大きな話題になっています。
詳しい紹介や台湾でのプレミア、予告編など、アジアンパラダイスに掲載してありますので、ご参照下さい。

2020/07/06
2020台北電影節『刻在你心底的名字(君の心に刻んだ名前)』台湾プレミア!
http://www.asianparadise.net/2020/07/post-4e8d61.html

2020/08/21
台湾映画『刻在你心底的名字(君の心に刻んだ名前)』予告編解禁、主題歌は盧廣仲(クラウド・ルー)!
http://www.asianparadise.net/2020/08/post-cd5d8d.html

0926loneliness34もう1本は、10月8日公開のドキュメンタリー『千年一問』です。
これは、アジアを席巻した台湾の漫画家鄭問(チェン・ウェン)の人生を追った記録で、彼の作品の中の孤独、才能と情熱を浮かび上がらせています。
鄭問は、日本でも『東周英雄伝』など6作の翻訳が出版されており、ゲームソフト『鄭問之三國誌』でキャラクターデザインを担当するなど、漫画以外のジャンルでも活躍した作家です。

0926loneliness35東洋的な水墨画と西洋絵画の技法を融合させたタッチで人気を集めた鄭問は、1991年に外国人として初めて日本漫画家協会賞の優秀賞を獲得しています。
監督は、2017年にこの台湾文化センターと東京国際映画祭で上映された『擬音』の王婉柔(ワン・ワンロー)。台湾, 日本, 香港、中国を回り、50人以上の証言を集めたそうです。
そしてポストプロダクションや宣伝の為の費用をクラウドファンディングで募集し、公開にこぎ着けました。

このトークはアーカイブとして11月末まで残し、公開することにしました。
映画をご覧になっていない方にとってはあまり有用ではないかも知れませんが、後半の台湾の短編映画事情については、お楽しみいただけると思います。
https://v.classtream.jp/tw-movie/#/player?akey=9e4f4e9415060916cf13ec9894a32223

次回は、すでにお知らせしていますように、10月10日(土)14時から。
2004年に大ヒットした純愛青春ドラマの時代を、1987年に移して映画化した『アウトサイダー(原題:鬥魚) 』です。
当時郭品超(ディラン・クォ)主演のドラマを見た方は必見、と言いたいです。
申込みは明後日、9月28日午前11:00より 。※時間が変わりましたので、ご注意下さい。

主催:台北駐日経済文化代表処台湾文化センター/アジアンパラダイス
協力:夢田影像股份有限公司

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

|

« 第21回 東京フィルメックスのラインナップ発表! | トップページ | 台湾のテレビアワード 2020電視金鐘獎、『想見你(時をかける愛)』が長編ドラマ賞、柯佳嬿(アリス・クー)2度目の主演女優賞! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 第21回 東京フィルメックスのラインナップ発表! | トップページ | 台湾のテレビアワード 2020電視金鐘獎、『想見你(時をかける愛)』が長編ドラマ賞、柯佳嬿(アリス・クー)2度目の主演女優賞! »