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2020/09/12

2020台湾映画上映&トークイベント「台湾映画の"いま"〜進化する多様性」第4回『狂徒』オンライン開催! 20代の若手監督のデビュー作に驚きの声!

0912flier2000年以降の台湾映画の新しい流れがどのように台湾映画の"いま"に繋がってきたのか、そして"いま"何が起きているのかをお届けする台湾文化センターとアジアンパラダイス共催のイベントシリーズ、今年は新型コロナウイルス感染症の影響を鑑み、オンラインでの開催に変更しています。
この上映イベントは2000年以降の台湾映画の新しい流れがどのように台湾映画の"いま"に繋がってきたのか、そして"いま"何が起きているのかをお届けし、5年目を迎えました。今年は全て新作と未公開作品で台湾映画の「進化する多様性」を伝えていきたいと思っています。
ラブ・ファンタジー、シリアスな社会派、アクション・サスペンス、ドキュメンタリー、短編、青春映画、コメディなど、ここでしか見られない話題作と注目作を集めました。
第4回は、呉慷仁(ウー・カンレン)がアクションに挑戦したクライムサスペンス『狂徒』です。

アンケートの回答には、「最後まで目が離せない、とてもスリリングな映画」「アクションもストーリーもひとひねりあって、おもしろかった」「丁寧な人物描写とテンポよい展開、台湾らしい要素がそこここに」「よく練られたアクションはもちろん、物語のテンポ、俳優のやり取り、色味など、どれも素晴らしい」「アクション映画だと思って気楽に見始めたら、シリアスでノワールでコメディでバディ物で社会派で、いろんなカラーを楽しめる濃厚な2時間」「胸アツな台詞や人間ドラマに震えた」「背景にある理不尽な社会を丁寧に描いているのはやっぱり台湾」など、台湾映画の持つ奥深さを感じていただけたようでした。

また、トークでの作品解説は、「撮影秘話が興味深かった」「監督の動画メッセージも嬉しいサプライズ」「丁寧で詳しい解説にはいつも助けられる。特に監督のこだわり、バックグランド等、面白いネタが色々」「若手監督と最新の台湾映画の傾向を知ることができた」「若手監督たちの台頭をまとめた解説が分かりやすかった」「映画を見ていて気になることや人物を全部解説してくれ、面白いしとても贅沢」等々、こちらの意図が充分に伝わったことを確認できました。
また、最新情報として伝えた高雄電影節についても興味を持つ方が多く、「紹介された高雄市電影館に行ってみたい」という声も複数ありました。

0912slide1本作は勧善懲悪の、見終わってスカッとするハリウッドのアクション映画とはかなり違う映画です。
そこは台湾映画、人間ドラマがキッチリと描かれている中に社会問題が見え隠れし、余韻のある結末となっています。
これまで、台湾でのアクション映画といえば、蔡岳勲(ツァイ・ユエシェン)監督のポリスアクションドラマ『痞子英雄(ブラック&ホワイト)』を映画化した『ハーバー・クライシス<湾岸危機>Black & White Episode 1』という作品が2012年に登場し、ビッグ・バジェットと豪華キャストで大ヒットしました。いよいよ台湾アクション映画の幕開けか、と期待したのですが、その続編が残念ながら失敗し、派手な爆発シーンや大がかりなアクションなどで製作費のかさむ作品は、それ以降作られることがありませんでした。
それから5年、一人の新人監督が新しいアクション映画を持って彗星の如く現れました。
当時まだ27才の洪子烜(ホン・ズーシュアン)です。

2015年に台湾で実際に起きたレインマン強盗とGPSを使った車泥棒事件に着想を得、この2つの要素を組み合わせたのが『狂徒』の始まりだそうです。
洪子烜(ホン・ズーシュアン)監督は脚本の第一稿を書き上げ、それから1500万台湾ドルの補助金を申請しました。でも申請してから2年近く投資者が見つかりません。台湾ではお金がかかり実績も少ないアクション映画は、あまり信用されないのです。でも、金馬奨のパーティでやっとこの企画に興味を持ってくれた製作会社貴金影業(Great Dream Pictures)と出会え、製作に向けて進めるようになりました。
その洪子烜監督から皆さんへのメッセージが届きました。

0912hong「こんにちは 監督の洪子烜です。
私にとって初の長編映画です。
主人公は暴力事件でチームを解雇されたバスケ選手、ある日 レインマンと呼ばれる雨の日に現金輸送車を襲う強盗犯に遭遇。この2人の数奇な運命を描いてます。
この作品はアクション映画です。
台湾映画ではこのジャンルが少なく、私とスタッフは多くの時間を費やし、台湾スタイルのアクション映画にするためアクションシーンにこだわりました。
周囲にあるものを手にして武器にするチンピラのケンカを意識してアクションシーンを撮影したので、注目してください。
本作はアクション映画ですが、罪を犯した人が差別を受ける現実も描いてます。
現代社会がかかえる問題であり、世界各国で発生している問題だと思います。
この作品を気に入ってもらえたらうれしいです。
他の作品で またお会いしましょう。
ありがとうございました」

0912slide2この映画は2018年の釜山国際映画祭の「アジアの窓」で上映され、高雄電影節のオープニングを飾り、10月に一般公開となりました。
2018年の台湾映画は、ラブストーリー『比悲傷更悲傷的故事(悲しみよりもっと悲しい物語)』やヤクザ映画『角頭2:王者再起』、昨年このイベントでも上映した人情コメディ『花甲大人轉男孩(2003年、ぼくの旅)』、ホラー映画の『人面魚:紅衣小女孩外傳(人面 魚 THE DEVIL FISH)』『粽邪』、LGBTを盛り込んだ『誰先愛上他的(先に愛した人)』ほか、多彩なジャンルの作品がヒットし、その中で『狂徒』も興行成績12位と健闘しました。

0912slide32019年の台北電影賞では視覺效果賞と藝術貢獻賞を獲得。第56屆金馬獎で6部門ノミネートされ、撮影賞とアクションデザイン賞に輝いた『狂徒』は、台湾映画界が注目する新ジャンルの成功例でした。
監督のメッセージにもあったように、罪を犯した人が差別を受ける現実。この世界的な社会問題の中で、世の中の不条理に打ちのめされたレインマン強盗は「善行を積んでもムダだ、前科者は永遠に悪人だ」と犯罪を重ね、巻き込まれたレイは最後まで「償いたい、善人になる」ともがきます。
この二人の"悪との距離"の差を、若い監督が見事に描いてくれました。

0912slide4デビュー作にして、すでに自分のスタイルを持った若い監督のプロフィル、気になりますよね。
洪子烜監督は1991年生まれの29才、大学二年で映画の道へ進む夢に向かい、海洋大學土木学科から世新大学の放送・映像学科に移ります。ここでは同級生が作るのはラブストーリーが大半でしたが、あまり好みではなく、編集も簡単ということで、洪子烜監督は編集の勉強と自分の力を発揮するためアクションというジャンルを選びました。

0912slide5この頃アクションを撮る学生はおらず、先輩の作品でも参考になるものはありません。そこで、色々なアクション映画からカット割りを研究。実際に撮影するときも、俳優の動きやリズム感、どういう順序にするか研究したそうです。
この短編2012年の『破賊SYSTEM-A』、2013年『欺逃人』、2011年『彩金獵人』は好評で、洪子烜のアクション映画の天分が認められました。『ラブ・ゴーゴー』や『祝宴!シェフ』の陳玉勳(チェン・ユーション)監督が、ロシアの武術カドチニコフ・システマを使った『破賊SYSTEM-A』を絶讃したそうです。

0912slide6さて、『狂徒』に興味を持ったプロデューサーは、製作にあたりこれまでのジャンル映画の既成概念にとらわれないように、と言ったそうです。これには監督も同感だったので、大いに意欲が沸き、自由にやらせてもらえたということです。
ただ、新人監督として最も難しかったのは、コミュニケーション。学生時代はプロデュース、監督、撮影、編集など全て自分一人で行いますが、プロの映画のチームではそれぞれ役割が分担されています。100人規模のチームで自分の考えをスタッフに伝えるのはチャレンジングだったと言っていました。
クランクイン前に脚本について討論、撮影期間中はカメラマンや音楽、美術、俳優たちとのコミュニケーションで、学ぶことはとても多く、それだけに監督としての成長も早かったそうです。

0912slide7この映画の大きな要素であるアクションについて、メッセージでも台湾スタイルのアクション映画にするため、かなりこだわったと言っていましたが、ここがポイントです。
冒頭にお話しした蔡岳勲監督の『ハーバー・クライシス<湾岸危機>Black & White Episode 1(原題:痞子英雄首部曲:全面開戰)』や、魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)監督の『セデック・バレ』など、大作映画のアクションシーンはハリウッドや香港、韓国からアクションチームが参加しているので、本作でもプロデューサーから韓国や香港のアクションスタッフが必要かどうか聞かれたそうです。しかし監督は「確かに彼らは経験もスキルもありますが、もし彼らに頼んだら、それは彼らのアクションであってそこから抜け出すのは難しい。だから、台湾のアクション指導にこだわったのです」ということで、台湾の俳優でアクション指導もする洪昰顥(ホン・シーハオ)に依頼しました。

0912slide8洪昰顥は、台湾で数少ないアクション監督で、自らスタントもこなし、『ハーバー・クライシス 都市壊滅(原題:痞子英雄2:黎明再起)』でハリウッド、香港、韓国のアクションチームに参加、成龍(ジャッキー・チェン)のワークショップで学び、台湾映画やドラマのアクションシーンのほとんどを担当しています。
そして、本作では台北電影獎と金馬奨でアクション・デザイン賞を獲得しました。
洪昰顥もまだ30才ですから、洪子烜監督との若手コンビのこれからはますます楽しみです。

0912slide9アクションシーンは事前の準備がたいへんですが、監督が準備の時に心がけたのはアクションのデザインとキャラクターの融合だそうです。映画によってはそれほど必要ではないのにアクションを見せたがりますが、それは避けたい。アクションがあまり好きでない観客にも受け入れてもらえるようなアクションにしたいというのが、監督の考えだと言っていました。
そういう心配りからでしょうか、アクションの中にも厨房の調理器具や電話の受話器で反撃するなどコミカルな部分があります。これは脚本段階から書かれていたのかどうか気になって、聞いてみました。
そうしたら、大部分は現場でアクション監督と俳優とのリハーサルの時に思いつき、アクションの段取りに反映させたということでした。

0912slide10さて、キャストのご紹介にいきましょう。
主役の吳慷仁(ウー・カンレン)、もう皆さんご存じですよね。今、台湾映画界を牽引する俳優のひとりで、映画でもドラマでも主演男優賞を受賞しています。
シリアスな役からコメディまで本当に振り幅の広い俳優で、最近では社会現象にもなったドラマ『悪との距離(原題:我們與惡的距離)』の人権派弁護士の役が高い評価を得ています。
本作では銀行強盗の役ですが、監督はレインマン強盗のイメージはこれまでのような悪党ではなく、むしろ特別な印象を与えないようなキャラクターにしたかったので、吳慷仁がピッタリだと思ったと言っています。そして、まだこういう役柄を演じてなかったのも幸いしたということです。

0912slide11吳慷仁にとっても初めての本格アクションでしたが、なんと今回スタントは不要と言ったそうです。本来は俳優の安全を踏まえてスタントを使うのが基本ですが、監督は、吳慷仁の動きはとても素晴らしく、3分のアクションシーンのリハーサルに1週間かけ、安全を充分考慮した上で判断したと言っていました。ですから、スタンバイしてもらった吳慷仁のスタンドインに退屈だと言われたそうです。
そして、監督は「彼の演技はとても魅力的です。光る魅力が見る人を喜ばせる俳優で、共演する相手を刺激します。そして全体の演技の質を向上させるところがすごいですね」と語っていました。
アクション以外でも、吳慷仁は、社会に溶け込んであまり目立たない悪党という監督の意図に見事に応えたキャラクター作りを成功させているのは、さすがです。

0912slide12ダブル主役と言っても良い、バスケ界から追放されたレイを演じた林哲熹(リン・ジャーシー)は、オーディションで決まりました。監督は「多くの俳優を考えましたが、林哲熹の外見は個性的で、いわゆる典型的なイケメンとは違います。オーディションの時も色々アイデアを出してくれたので、これは彼だな、と思いました」と、キャスティング理由について語っています。
すでに主演映画は3作ありましたが、注目されたのは、本作の後に放送が始まったドラマ『悪との距離』。金鐘獎の助演男優賞にノミネートされました。

0912slide13さて、撮影中、新人監督にとって思いもかけない試練が降ってきました。
海鮮料理屋のアクションシーンで、林哲熹がビール瓶で頭を殴られる時、小道具なので問題ないはずだったのが、頭を7針も縫うケガを負ってしまったのです。夜中に救急搬送され手当を受けたのですが、新人監督にとっては最大の心理的プレッシャー。「どうしようかと思った。彼が心配だし、映画を撮り終えることができるのかと、不安でいっぱいになった」と、監督は現場で混乱した様子を語っていました。
それでもずうっと吳慷仁と共演を希望していた林哲熹は元気に現場復帰。吳慷仁は演技面だけではなく色々面倒見てくれたそうです。

0912slide14吳慷仁演じるレインマン強盗のパートナー役は、謝欣穎(シエ・シンイン。侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督に発掘され、2006年の第二作『アリスの鏡(原題:愛麗絲的鏡子)』でなんと金馬奨の助演女優賞を獲得し、以来『黒衣の刺客(原題:刺客聶隱娘)』や日台合作の『パラダイスネクスト(原題:亡命之途)』ほかずうっと売れっ子の女優です。
本作では、ミステリアスで、終盤アッと驚かせる展開もあり、台詞が少ない分眼差しや雰囲気で表現するところが多い難しい役どころを的確にこなしています。
三度目の共演となる吳慷仁からは、「ますます色っぽくなったね」とプレミアの時に言われていました。

0912slide15林哲熹の相手役である理学療法士役の李千那(リー・チエンナ)も、音楽と演技の両方で活躍する人気女優です。
2010年の『ジュリエット(原題:茱麗葉)』で金馬奨の新人賞、2017年のドラマ『通靈少女』では金鐘賞の助演女優賞を獲得。去年は金鐘奬の司会者を務めるなど大活躍です。
高雄で撮影中、寒い日に監督のコートが盗まれたことがあり、李千那はすぐにコートを買って監督にプレゼントしたというエピソードがあります。劇中では犯罪に巻き込まれるレイをなんとか助けようとする役ですが、こういう暖かい心が演技にも溢れていたと思います。

0912slide16この他、警察官役の施名帥 (シー・ミンシュアイ)、高捷(ガオ・ジエ)、黒社会のボス役李洺中(リー・ミンジョン)が、それぞれいい味を出しています。
性善説で容疑者と向き合う班長役の施名帥、性悪説で犯人逮捕に臨むたたき上げの刑事高捷のコントラストが捜査と逮捕劇をより盛り上げていました。
香港出身という設定の黒社会のボス役を演じた李洺中は、実はマレーシアの俳優です。これで台北電影奨の助演男優賞にノミネートされました。吳慷仁との広東語のやりとり、なかなかでしたね。

0912slide17台湾でアクション映画の若き担い手として期待される洪子烜監督、この期待にどう応えていくのか聞いてみました。
「アクション映画の予算は少なくありません。だから台湾でアクション映画を作るときはアメリカや日本、韓国、大陸、香港のスタイルとどう差別化するかを考えるのが重要だと思います。自分たちのスタイルでやろうとトライする為には、コスト面での打開策を見つけなければいけないですね」
と、こだわりと問題点をきちんと把握しているのは、とても頼もしく思えます。

0912slide18洪子烜監督にかける台湾映画界の期待は、今年の台北電影節でよくわかります。
毎年気鋭の監督を起用して作られるPR動画を任され、映画祭大使の陳庭妮(アニー・チェン)によるアクション・ショートムービーを製作。
そして金馬創投會議(投資者を募るプロジェクト)に入選した新作『96分鐘』は90%高鐵(台湾新幹線)でのアクションだそうですが、コロナ渦の影響で予定が大幅に遅れ、。今のところ来年初めにクランクインできればと思っているそうです。
そして、他にもアクションコメディと犯罪ドラマの企画が進んでいるそうです。

0912slide2029才で台湾映画界の一ジャンルを担う期待の監督洪子烜の他にも、台頭する若手監督達がいますので、その中から5人ご紹介します。
まずは、昨年の金馬奨で新人監督賞を受賞した『返校』の徐漢強(シュー・ハンチャン) 監督です。
これまで短編やドラマは撮ってきましたが、人気ゲームを映画化した台湾でも数少ない白色テロを大きく扱った初長編映画『返校』がメガヒット、多くの賞も獲得して一躍時の人になりました。
テレビドラマでは2005年に金鐘奨の単発ドラマ部門で監督賞を受賞していますが、金馬奨での受賞はことのほかうれしそうで、
「躓いたり転んだりを繰り返した10年でした。別の道に転向した方が良いのではないかと何度も思いましたが、ほかに才能がなかったので…。この映画は特別な物語ですから、子供の頃からのゲーム好きが大きな助けになりました。」と、語っていました。

0912slide21そして、今年の台北電影奨で『返校』は百萬元大賞と長編劇映画賞、王淨(ワン・ジン)の主演女優賞、美術賞、音声賞、視覚効果賞の6部門を受賞。
この映画のヒットの要因は色々報道されていますが、単に人気ゲームの映画化というだけでなく、台湾の歴史の暗部が描かれていることによりこの時代を知らない若い世代が口コミで映画館へ足を運んだということも大きいそうです。
自分たちの歴史を知ることの重要性、そして今の台湾の民主と自由は決して誰かから与えられたものではなく、多くの犠牲と流された血によって自分たちが勝ち取ったものであることを、徐漢強が描くこの映画で再確認したのでしょう。

0912slide22次は、8月22日にこのオンラインイベントで上映した、『楽園(原題:樂園)』の廖士涵(リャオ・シーハン)監督。
ドキュメンタリーや短編の助監督、脚本、編集などで経験を積み、2013年に公共電視のシリアスドラマ『仲夏夜府城』で監督デビュー、これが金鐘獎5部門でノミネートされるという好調な滑り出し。
この後も着々とキャリアを重ね、2016年にシリーズドラマ植劇場の『積木でできた家(原題:積木之家)』を経て、2018年に長編劇映画『粽邪』(ツォンシエ=ちまき)で高い評価を受けます。
『積木でできた家(原題:積木之家)』は、Netflixで配信されています。

0912slide23監督の知名度を一気に上げた映画『粽邪』は、台湾に伝わる除霊の儀式をベースにしたホラーで、この年の興行成績第6位というヒットになりました。
この手腕を買われて『楽園(原題:樂園)』の監督に起用されたのでしょう。薬物の誘惑を断ち社会復帰を目指す青少年と、それをサポートする主人公をめぐる様々な出来事が描かれる重いテーマながら、希望に溢れた作品として見事に仕上げました。
新作『粽邪2:馗降』は、いま台湾で公開中です。

0912slide24続いては、『紅衣小女孩』で台湾ホラーのジャンルを確立した程偉豪(チェン・ウェイハオ)監督。
輔仁大学で広告やマーケティングを学び、その後国立台湾芸術大学で本格的に映画を勉強。2008年に初めての短編『搞什麼鬼』が、北京電影学院の国際学生映画&ビデオフェスティバルや南方映画祭で評価されました。
2009年の短編第二作『狙擊手』で更に注目され、3作目の『保全員之死(警備員の死)』は2015年の台北電影節と金馬奨の両方で短編映画賞を受賞。

0912slide25この若き才能に着目したプロデューサーから2016年に初長編ホラー『紅衣小女孩』の監督を依頼され、大ヒット。これを受けてすぐに続編『紅衣小女孩2』も手がけ、この年の台湾映画興行収入トップとなりました。
日本でも公開された『目撃者 闇の中の瞳』も台湾で大ヒット、2017年の国内映画興行成績ベスト10の上位にランクイン。海外では日本のほかに香港、マカオ、マレーシア、シンガポール、韓国、北米に版権が売れました。
今年は大陸で新作を撮ったそうですが、早く台湾に戻ってきて欲しいものです。

0912slide26今年の台北電影節のオープニング作品に選ばれた『無聲』は、柯貞年(クー・チェンニエン)の映画初監督作品です。これは公共電視と瞿友寧(チュウ・ヨウニン)監督がエグゼクティブ・プロデューサーで、聴覚障害の少年がスクールバスの最後列で見つけた「ゲーム」から始まる物語です
「みんな撮影前に多くの時間を費やして役作りと手話の学習をしましたが、中でも教師を演じる劉冠廷(リウ・グァンティン)は、現場での変更にも対応しました。潘親御(パン・チンユー)の役は物語のキーとなる人物なので、細かい表現にまでこだわりました」と、監督が語りました。

0912slide27柯貞年監督は世新大學時代に制作した短編映画『無名馬』が金馬奨にノミネートされ、2015年に『溺境』が台北電影奨で最優秀短編映画賞を受賞、2016年のドラマ『天黑請閉眼(邦題:暗闇は目を閉じて)※Netflixで配信中』で注目されました。
サスペンスタッチで描く中で人間性をあぶり出していくという手法は『無聲』にも使われ、今の台湾のニーズにとてもよく合っているスタイルと言えるでしょう。

0912slide28最後は、洪子烜よりも若い王逸帆(ワン・イーファン)監督です。
國立臺北藝術大學電影創作學在学中に、軍隊の中のカリカチュアライズされた人間関係を、オリジナリティとユーモアで綴った野心的な短編映画『洞兩洞六』で台北電影奨を受賞、金馬奨にもノミネートされました。
そして、今年の大阪アジアン映画祭で上映された短編『伏魔殿』は、6日間で撮った卒業制作作品。

0912slide29その王逸帆の初長編映画『逃出立法院』は、ゾンビに襲われる国会を背景に、荒唐無稽ながら政治問題の核心を突く物語。4月の金馬奇幻影展(ファンタスティック映画祭)で上映予定でしたが、コロナの影響で中止。台北電影節の特別招待作品として上映され、8月に台湾で一般公開されました。
ちなみに、プレミアと記者会見は台北市の本物の立法院(国会)で行われ、立法委員(国会議員)5人も出席したそうです。

0912slide30台湾の期待の若手監督たち、まだまだいますが、ご紹介しきれません。
そして、今年このオンライン上映でお届けする作品のほとんどが、若手監督です。
第一回の『ぼくの人魚姫(傻傻愛你,傻傻愛我)』の藍正龍(ラン・ジェンロン)監督は人気俳優ですが、監督デビュー作。次回の『孤独なあなたたちへ(原題:致親愛的孤獨者)』の3人の監督、練建宏(リエン・ジエンホン)、廖哲毅(リャオ・ジャーチー)、于瑋珊(サニー・ユィ)、『よい子の殺人犯(原題:最乖巧的殺人犯)』の莊景燊(ジャン・ジンシェン)もこれが長編2作目。
そして『ギャングだってオスカー狙いますが、何か?(原題:江湖無難事)』の高炳權(ガオ・ピンチュアン)監督はすでにキャリアと実績を重ねていますが、まだ30代。
今年のテーマである「進化する多様性」は、この若手監督達が創り出しているのです。

0912slide31台湾の最新情報をお伝えします。
台湾の映画祭というと、金馬影展、台北電影節が有名ですが、三番目に大きいのが高雄電影節です。
台湾第二の都市、南部の高雄は観光地としても人気なので、行かれた方も多いと思います。
高雄は二期前の市長陳菊さんの時から映画産業に力を入れ、撮影の誘致や資金補助などを積極的に行ってきました。台湾映画のクレジットで「高雄人」というのを見たことがあると思います。これが、高雄で撮影する映画に補助金を出すという高雄市電影館と高雄市政府が2007年から始めた映画製作サポートプロジェクトです。
今日ご覧いただいた『狂徒』もそうで、2018年の高雄電影節のオープニング作品となったことは、冒頭でもご紹介しました。

0912slide32毎年秋に開催される高雄電影節は、年度ごとに決めたテーマの作品を世界各国から集めて上映しています。
今年のテーマは「タイムトラベル〜美しい時代を超えて」。その他にも世界各国から新作や話題作の上映もありますので、とても楽しみです。
もうひとつの目玉、国際短編映画コンペティションは2011年からスタートし、台湾最大の短編映画祭りです。今年のノミネート作品が先日発表され、111の国内外からエントリーされた2,447本の中から68本が選ばれました。このコンペはワールド部門、台湾部門、VR部門、子供審査員部門に分かれ、それぞれで競います。

0912slide33今年は10月16日から11月1日まで高雄市立圖書館、高雄市電影館、港にある駁二藝術特區(ピア2アートセンター)ほかで開催される高雄電影節ですが、日本から行く事はまだ難しいかもしれませんね。
でも、もし自由に観光で行かれるようになったら、映画祭は見られなくても最初にお話しした映画製作サポートプロジェクトを行っている高雄市電影館は、無料で入館できるので、映画ファンにはお勧めのスポットです。
私も高雄に行ったら必ず寄ります。

0912slide34期間を設定した展示や上映、イベントなども行われているので、今度高雄に行った時は、ぜひ訪れてみて下さい。
カフェやグッズショップも良い感じです。
午後1時半から夜9時半まで、月曜は休館です。
愛河のそばなので、夜景もきれいです。
https://www.kff.tw/TW

このトークはアーカイブとして11月末まで残し、公開することにしました。
映画をご覧になっていない方にとってはあまり有用ではないかも知れませんが、監督のムービーメッセージや後半の台頭する若手監督たちについては、お楽しみいただけると思います。
https://v.classtream.jp/tw-movie/#/player?akey=6aa5e7a7617f470c57f0bbee32d19355

次回は、すでにお知らせしていますように、9月26日(土)14時から。
"孤独"をテーマに3人の女性を描いたオムニバス『孤独なあなたたちへ(致親愛的孤獨者)』です。
申し込みは9月14日(月)午前11:00より 。※時間が変わりましたので、ご注意下さい。

主催:台北駐日経済文化代表処台湾文化センター/アジアンパラダイス
協力:貴金影業伝媒股彬有限公司

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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