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2020/12/31

2020年の台湾映画を振り返る〜一億超えのメガヒットが2本!

1231tw新型コロナウィルスの感染防止に成功している台湾では、少しの間映画館で席数を半分にしていた時期はありますが、ほぼほぼ通常通りといううらやましい状況です。
7月に政府の指導のもと国産映画を盛り上げるプロジェクト「國片起飛一起拚」が発足し、映画館、配給会社、製作会社あわせて13社が一丸となってキャンペーンを張り、見事に成功していると言えましょう。
台北電影節も金馬影展&金馬奨も通常開催され、興行収入のランキングもきちんと出ています。
そして今年は『弱くて強い女たち(原題:孤味)』が約1,8億台湾元、『君の心に刻んだ名前(原題:刻在你心底的名字)』が1.2億台湾元と、一億超えのメガヒット作が2本という素晴らしい成績を上げました。

1119guwei3トップの東京国際映画祭でも上映された『弱くて強い女たち(原題:孤味)』は、許承傑(シュー・チェンジエ)監督のデビュー作。
台南で夫に出奔され蝦巻を揚げながら3人の娘を育てあげた女性が、70才の誕生日パーティの日に夫の訃報がもたらされ、慌ただしく進める葬儀の準備の中、3人の娘たちとその家族、そして夫を看取った愛人らの人間模様が描かれます。
金馬奨では陳淑芳(チェン・シューファン)が主演女優賞を受賞、謝盈萱(シエ・インシュアン)、徐若瑄(ビビアン・スー)、孫可芳(ソン・カーファン)、丁寧(ディン・ニン)ほかの好演、それぞれの役とエピソードが過不足なくきちんと書き込まれた脚本、そして映画の"行間"が素晴らしい作品です。
暖かくて気持ちの良い涙が流れ、何度でも見たいと思う秀作です。
参照記事:http://www.asianparadise.net/2020/11/post-cbd52d.html

0821yourename2第2位は、大阪アジアン映画祭で上映され、先ごろNetflixで配信が始まった『君の心に刻んだ名前(原題:刻在你心底的名字)』。
1988年、戒厳令解除直後の男子高校生ふたりの心の揺れを、時に激しく時に静かに描いた作品です。
瞿友寧(チュウ・ヨウニン)監督がプロデュースと脚本を担当し、柳廣輝(リウ・クァンフイ)の監督デビュー作で、陳昊森(エドワード・チェン)と、昨年の『返校』でデビューしてこれが二作目という曾敬驊(ツェン・ジンホア)という超フレッシュな2人のイケメンが主役。
そして、盧廣仲(クラウド・ルー)が歌う主題歌の切ない歌詞とメロディーが、ふたりの濃密な心模様に寄り添います。
また、中年になった二人を戴立忍(ダイ・リーレン)と王識賢(ワン・シーシェン)が演じ、これで戴立忍は大阪アジアン映画祭の助演男優賞に輝きました。
LGBT映画で1億超えとなったのは、本作が初めてです。
参照記事:http://www.asianparadise.net/2020/03/post-a35c1c.html

1016jinma23位の『可不可以,你也剛好喜歡我』は、夏休みに若い層を動員して8000万台湾ドル近い成績をあげました。
『我們與惡的距離(悪との距離)』で一躍注目された陳妤(チェン・ユー)と、『KANO(KANO1931 海の向こうの甲子園)』でデビューし俳優として活躍する曹佑寧の青春映画で、決して目新しくはないものの、王道のラブストーリーがさわやかに展開されます。
主役の魅力と、脇を固める黃健瑋(ホアン・ジエンウェイ)、楊謹華(シェリル・ヤン)、大鶴(ダーハー)、程予希(ルゥルゥ・チェン)といった演技派と期待の新世代俳優たちのアンサンブルの相乗効果で成功しています。

1231horror4位と5位はホラー映画で、『縄の呪い2(原題:馗降粽邪2)』と『呪われの橋(原題:女鬼橋)』。
『馗降粽邪2』は廖士涵(リャオ・シーハン)監督のヒット映画の第二弾、過去を引きずる道士が霊能力に苦しむ少女と悪霊に取り憑かれた叔母を助けるため、壮絶な闘いに挑むという内容。李康生(リー・カンシェン)が主役です。
『女鬼橋』は心霊現象が起きるという都市伝説がある女鬼橋を渡る肝試しで起きた学生たちの行方不明事件を、孟耿如(モン・ガンルー)演じるニュースキャスターが事件の真相を追う物語。
どちらも、Netflixで配信中です。
参照記事:http://www.asianparadise.net/2020/01/post-7502f3.html

0525wusheni1台北電影節のオープニングを飾り、東京フィルメックスで上映された柯貞年(クー・チェンニエン)監督の『無聲』が、暗く重い内容ながら6位にランクイン。
聴覚障害を持つ生徒達が通う学校で起きた陰惨な事件を描き、見る人に衝撃を与える作品です。
若手実力派の売れっ子俳優 劉冠廷(リウ・グァンティン)が教師役なのですが、きっと仮面をかぶっているに違いない…という予想を裏切り、最後まで良い熱血先生でした。(^O^)
これも瞿友寧(チュウ・ヨウニン)がプロデューサーで、プロデュース作品が2作ベスト10に入るというのはすごいです。
金馬奨では、陳姸霏(チェン・イェンフェイ)の新人賞と音響効果賞を受賞しました。
参照記事:http://www.asianparadise.net/2020/05/post-49410b.html

0529achoo27位は6年かかってようやく公開になった『ハクション!(原題:打噴嚏)』です。
2014年10月に公開予定でしたが、主演の柯震東(クー・チェンドン)が大麻事件で大陸で逮捕・収監された為にお蔵入りになっていました。
原作者の九把刀(ギデンズ)が、柴智屏(アンジー・チャイ)の協力のもと権利処理して、ようやく公開にこぎ着けたという作品です。
施設で育った少年が姉のような憧れの女性の為ヒーローを目指すという、格闘技とラブストーリーが融合された物語で、ヒロインは林依晨(アリエル・リン)が演じました。
まだ台湾にいた王大陸(ワン・ダールー)や、久々の呉建豪(ヴァネス・ウー)も出演、配信中のNetflixで見られます。
参照記事:http://www.asianparadise.net/2020/07/post-81f0e4.html

0703kuaitai2全編iPhoneで撮影したという台湾では初の試みの『怪胎』が、8位につけています。
『あの頃、君を追いかけた(原題:那些年,我們一起追的女孩)』や『六弄咖啡館』などの執行監督をつとめた廖明毅(リャオ・ミンチー)が、その経験を生かして監督・脚本・撮影・編集のすべてを担当しました。
若手の売れっ子である林柏宏(リン・ボーホン)と、台湾を代表する女優のひとり謝欣穎(シエ・シンイン)が初共演、強迫性障害の男女のラブストーリーです。
ニューヨーク・アジアン映画祭で「アンケージドアワード」の特別賞を受賞しました。
参照記事:http://www.asianparadise.net/2020/07/post-c5c2a5.html

0617tenant19位は、鄭有傑(チェン・ヨウジエ)監督の『親愛的房客』です。
愛する人の母が亡くなった後、恋人の忘れ形見である少年と暮らそうとする主人公でしたが、周囲の疑いの目に襲われるというストーリーで、エグゼクティブ・プロデューサーを楊雅喆(ヤン・ヤージャ)監督が務めました。
主役の莫子儀(モー・ズーイ)は、これで台北電影奨と金馬奨で主演男優賞を、お婆さん役の陳淑芳(チェン・シューファン)は金馬奨で助演女優賞を獲得しました。
鄭有傑(チェン・ヨウジエ)監督は、日本のファンのために日本語字幕版の予告編をYouTubeで公開してくれました。
参照記事:http://www.asianparadise.net/2020/07/post-b7606c.html

0810jinma3まだ正確な数字が出ていないため、同じく9位とされているのが黃信堯(ホアン・シンヤオ)監督の『同學麥娜絲』です。
行きつけのドリンク店で喋ったりカードゲームをする4人の仲間の、人生の浮き沈みを描く作品。
プロデューサーは前作『大仏+(原題:大佛普拉斯)』と同じ鍾孟宏(チョン・モンホン)で、中島長雄名義の撮影も同様です。
去年金馬奨で助演男優賞に輝き、売れっ子の劉冠廷(リウ・グアンティ)、台湾映画界の中軸を担う鄭人碩(チェン・レンシュオ)、鍾孟宏作品の常連の納豆(ナードゥ)、そして映画、ドラマ、舞台で活躍する施名帥(シー・ミンシュアイ)がメインキャスト。
金馬奨では、納豆の助演男優賞と美術デザイン賞を受賞しました。
参照記事:http://www.asianparadise.net/2020/11/post-3a6b95.html

0725missing2そして10位は今年の金馬奨の覇者『消失的情人節』。
作品賞、陳玉勳(チェン・ユーシュン)の監督賞と脚本賞、編集賞、視覚効果賞を受賞しました。
葉如芬(イエ・ルーフェン)と李烈(リー・リエ)という台湾の二大女性プロデューサーが、『祝宴!シェフ(原題:總舖師)』や『健忘村』に続いて送り出すコメディ。
“消えたバレンタイン”を巡る、これまでに誰も観たことのない、ファンタジックなラブストーリーで、劉冠廷(リウ・グァンティン)と李霈瑜(リー・ペイユー)が主役です。
2021年初夏に東京・新宿ピカデリーほか全国で公開が決まっていますが、まだ邦題が発表されていません。
参照記事:http://www.asianparadise.net/2020/07/post-504790.html

なお、このランキングは最終ではないことをご了承下さい。

1117leg6この他、クリスマスから公開になった桂綸鎂(グイ・ルンメイ)と楊祐寧(ヤン・ヨウニン)の『足を探して(原題:腿)』は、2021年のランキング対象になるのかどうかわかりませんが、こちらも話題作ですし東京国際映画祭で上映されたので、取り上げます。
敗血症で亡くなった男の妻が、切断され行方不明になった夫の右足を探すというブラックユーモア・テイストの作品で、『同學麥娜絲』と同じ制作会社のためプロデュースと撮影が鍾孟宏(チョン・モンホン)ということもあり、一緒に宣伝活動をしたりしています。
これまでとは違う桂綸鎂を体験できるというポイントも、貴重です。
参照記事:http://www.asianparadise.net/2020/11/post-94da2f.html

他にも新鋭監督によるゾンビが国会を襲う『逃出立法院』、伝統文化と少女の成長物語のロードムービー『迷走廣州』、アジアを席巻した台湾の漫画家鄭問(チェン・ウェン)の人生を追ったドキュメンタリー『千年一問』なども紹介したいのですが、長くなったのでこれはまた別の機会に。

それにしても受賞と興行成績がリンクしているのは、以前から力説していますが、台湾の観客が"誰が出ているかではなく、おもしろいから見に行く"という健全さを表す証しだと思います。
感染防止対策の成功、一致団結して国産映画を盛り上げようという政府と映画業界、見事!としか言いようがありません。

今年一年、アジアンパラダイスをご愛読いただき、ありがとうございました。
皆さま、健康で新しい年を迎えられますよう、お祈りしています。

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