2020年の中国映画を振り返る〜雑感
中国で映画館が再開して後期に大きな話題になったのは、陳可辛(ピーター・チャン)監督の『奪冠』。
金鶏賞で三冠、第93回アカデミー賞国際長編映画賞部門の中国大陸部代表作品に選ばれました。
1981年に初めて世界チャンピオンになった女子バレー中国代表チームの38年にわたる歴史を描いたもので、鞏俐(コン・リー)、黄渤(ホアン・ボー)、呉剛(ウー・ガン)、彭昱暢(ポン・ユィチャン)などが出演。
現在中国女子バレーの監督を務めている郎平(ランピン)を鞏俐が演じていますが、この郎平は現役時代スーバーアタッカーで、彼女にトスが上がるとああ、もうダメだぁと思わせるくらいの恐怖を感じた人です。
映画では現役時代は別の俳優だそうですが、監督になってからを演じる鞏俐は、見ていないけどきっと貫禄とオーラが他の追随を許さない適役なんだろうなぁ、と思います。
今年の興行収入の上位と言われる『我和我的家郷』は、2019年の国慶節に合わせて公開された映画『我和我的祖国」の姉妹篇』である国策映画。
張芸謀(チャン・イーモウ)がエグゼクティブ・プロデューサーをつとめ、寧浩(ニン・ハオ)、徐崢( シュウ・チェン)、陳思誠(チェン・スーチェン)、閆非(イエン・フェイ)と(ポン・ダーモ)監督、鄧超(ダン・チャオ)と俞白眉(ユー・バイメイ)が5つの物語を監督したオムニバスです。
『愛しの故郷』という邦題で、今年の東京・中国映画週間で上映されました。
葛優(グォ・ヨウ)、黄渤(ホァン・ボー)、范偉(ファン・ウェイ)、王宝強(ワン・バオチャン)、鄧超(ダン・チャオ)ほか人気スター総出演のヒューマンドラマだそうです。
中国神話をもとにしたアニメーション『姜子牙』が、2019年中国の年間興行収入ランキング1位を獲得した「ナタ~魔童降臨~(原題:哪吒之魔童降世主题曲)」が持つアニメ映画の単日興行収入記録3.419億元を塗り替えたそうです。
姜子牙は、日本で太公望と知られる伝説の軍師の本名であり、小説「封神演義」の主人公の一人。本作では人間的な姜子牙が神格化されるまでの過程を描いています。
進化する中国アニメ、気になります。
7月から映画館の営業が再開したところで、2019年に“技術的問題”によって上映中止になった管虎(グァン・フー)監督の『八佰』に多くの人々が映画館に足を運んだそうです。
日中戦争を描いた作品であることと、タイミング的にも多くの人にとって今年の初映画になったということでのヒットらしいです。
第二次上海事変で起こった実話をもとに、第二次上海事変における最後の戦闘「四行倉庫の戦い」で、中国国民党の守備隊・八百壮士が繰り広げた激戦を描いています。
平遙國際映画祭では、2020奨を受賞。
一方、私たちが日本の映画祭で見ることのできたアート映画にも、興味深い作品が多くありました。
東京国際映画祭で上映された『アラヤ(原題:無生)は、石梦(シー・モン)監督のデビュー作で、因果応報、無常という独特の世界観が衝撃でした。
アート映画として評価する人が多いそうですが、私的には突っ込みどころが多く、しかしどうなるのかと、長尺にも関わらず睡魔とは無縁の作品。(^O^)
現地では未公開のようです。
『兎たちの暴走(原題:兔子暴力)』も、女性監督申瑜(シェン・ユー)のデビュー作。
出奔した母との再会と、その母を助けるために裕福な同級生の身代金誘拐を企てる少女の成長物語で、2011年の実際の事件に基づくサスペンスです。
ノワールとしてはちょっと中途半端で、中国映画的な制約に従った結末の表現が残念。このあたりをうまく処理して作品のクォリティを上げるには、もう少し監督に経験の時間が必要かも知れませんね。
ただ、母親役の万茜(レジーナ・ワン)の美しさと妖しさは特筆ものでした。
そして許鞍華(アン・ホイ)の『第一炉香』は、原作の張愛鈴(アイリーン・チャン)の世界を堪能。
陰謀と打算が渦巻く1930年代後半の上流階級で生き延びる女性達のしたたかさを、見せつけられました。
久々にアクション以外の彭于晏(エディ・ポン)を見ましたが、非生産的なプレイボーイ役としてはやや色気が足らず…惜しい。
撮影はクリストファー・ドイル、音楽の坂本龍一、衣装のワダエミと豪華スタッフ陣も話題になりましたが、現地ではまだ公開されていない模様。
東京フィルメックスでは賈樟柯(ジャ・ジャンクー)のドキュメンタリー『海が青くなるまで泳ぐ』、王晶(ワン・ジン)監督の『不止不休(原題)』が上映されましたが、これは日本公開が決まっているので、年明けの別記事でご紹介します。
賈樟柯がプロデュースした宋方(ソン・ファン)監督の『平静』は、ベルリン映画祭で国際アートシネマ連盟賞を受賞。東京から越後湯沢、香港へと旅するアーティストを主人公に、友人や家族との会話の中で自己の“平静”を取り戻してゆく女性を描いた作品です。
日本から渡辺真起子も参加。
こちらもまだ現地では未公開です。
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