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2021/05/22

2021台湾映画上映&トークイベント「台湾映画の"いま"〜新鋭と精鋭の挑戦」第2回『インディーズ魂〜角頭音樂の20年(原題:我不流行二十年)』オンライン開催! 映画からインディーズ音楽への興味が増大!

0522indies1オンラインによる台湾映画上映&トークイベント、新作と未公開作品で台湾映画の「精鋭と新鋭の挑戦」を伝えていく第二回は、台湾最大のインディーズ音楽レーベル角頭音樂の20年の歴史を綴ったドキュメンタリー映画『インディーズ魂〜角頭音樂の20年(原題:我不流行二十年)』を上映しました。

今回も、アンケートに回答して下さった方の中に大阪、京都、兵庫、富山、福岡などから参加して下さり、オンラインの有効性が表れています。
そして、音楽ファンはもちろん貴重な映像を堪能されましたが、インディーズ音楽に興味がなく、角頭音樂の存在すらご存じない方も主人公張四十三(チャン・スーシーサン)の中年の危機に共感したり、この映画を見たことで台湾の音楽に興味を持っていただけたようです。

「台湾音楽の危機と中年の危機、台湾音楽史と台湾音楽業界の裏側、盛り盛りの内容にガッツリ引き込まれました。角頭音樂の意義、台湾的であることについての言葉もとても印象的でした。張四十三氏の立派な顔立ちと存在感、華やかな音楽業界の裏での苦労と苦悩は主人公にふさわしくドラマチックで、若き日の五月天の録音風景やフェスでの姿はファンとしてたまらない&こそばゆかった(笑)です。」「この映画はいい形でMAYDAYなどの今の台湾のメジャー音楽と原住民音楽が取り上げられていて、原住民音楽ももう少し聞いてみようかな〜という気持ちになりました。」「非常に見応えある良い映画でした! 台湾音楽について知ることができる楽しさと、更に、業界についての内容は国や地域を問わない感じがしましたし、1人の人の人生の転換期の悩みとしても共感できるところがあり面白かったです。」「久しぶりに参加できて、見ごたえのあるドキュメンタリーに感動しました。中年の危機、年代が近いこともあり共感しました。」「台湾のインディーズ音楽になじみはなかったのですが、中年の危機には共感するところもあり。人間味あふれる音楽と美しい風景もよかったです」「台湾のインディーズ音楽は全く知らなくて楽しめるかなと思ったのですがとても興味深く拝見いたしました。張さんの苦悩や迷い、そして親身になって助言してくれる友人や仲間たち。悩みの内容は違えどどの世界で生きている人にも通じる部分があるように思いました。私も似たような年代なので何だか親近感がわきました。」

また、アフタートークでは作品の解説、これまでのインディーズ音楽と映画の関わりを具体的な作品紹介と共にお伝えし、たいへん喜んでいただけました。
「台湾のインディーズ音楽史や、映画との関係は、とても貴重で勉強になりました。」「こういう切り口でのトークで台湾映画ファン→台湾音楽に、台湾音楽ファン→台湾映画に、もっと興味を持ってもらってマーケットが広がっていくといいですね。」「監督からのメッセージも含め、丁寧な解説ありがたかったです。」「解説で、台湾のインディーズを知らない私にも解りやすくて良かったです。最新映画情報、毎回楽しみにしているのですが、今回も必ずみたいと思う映画の紹介、ありがとうございました。」「大変わかりやすい内容のトークで、自分では知りようのないディープな情報までたくさん知ることができて、本当によかったと思います。」「作品解説がとても詳しくて、映画を見終わった後に更に理解が深まりました。」「最新の映画情報や映画製作の舞台裏などを知ることができるので、毎回楽しみにしています。」「毎回トークのおかげで、知らなかった台湾のアクター、監督、作品の事も知る機会が増え、益々台湾映画、台湾への興味が深まります。」

では、アフタートークの採録をお届けします。

0522indies2会社をどこかに売って引退を考える本作の主人公張四十三(チャン・スーシーサン)。
映画を見終わって、角頭音樂はこれからどうなってしまうの?と不安になった方が多いと思います。
張四十三が角頭音樂を率いる苦労、見えない展望、引退も視野に含めた迷いを軸に作られたこのドキュメンタリーは、世界的に抱える音楽業界の問題点の縮図にも見えます。
また、音楽ファンの方々にとっては、若き日の五月天(Mayday)のメガネ阿信をはじめ、貴重な映像をたくさん見ることができ、楽しんでいただけたのではないでしょうか。

05221この映画は2019年11月に金馬影展で上映され、チケットが秒殺でソールドアウト。この反響を受けて2020年の3月に台湾の6都市で1回ずつの限定公開されました。
金馬影展でチケットをゲットできた私は、張四十三が角頭音樂をたたんで引退しようという衝撃的な始まりに驚かされました。
ましてや、中国に売る、という話も出てきて気が気ではありません。
最後は大丈夫なのかな…どうなんだろう…というエンディングでしたが、いますぐに角頭音樂がなくなってしまうわけではない、ということだけはわかりました。

05222台湾のインディーズ音楽についてあまりご存じない方もいらっしゃると思いますので、まず角頭音樂についてお話しします。
台湾にはソニー、ユニヴァーサル、ワーナーなど国際的メジャー、台湾メジャーの滾石唱片(ロックレコード)、相信音樂(Binミュージック)、華研國際音樂(HIM)などの他、インディーズの会社もたくさんあり、角頭音樂は、台湾最大のインディーズレーベルです。
1998年に創立され、台湾語音楽、原住民音楽、客家音楽、童謡、民謡、映画のサントラなど広いジャンルで、約70枚のアルバムを出版、金曲獎で20の授賞を果たしています。
中には、沖縄のミュージシャンのアルバムや、当時の総統陳水扁はじめ国会議員や高雄市長、市議会議員、作家たちが歌うコンピレーションアルバムも出しています。
そして専属というシステムはなく、一枚ごとに一緒にアルバムを作るというコンセプトと、25㎝の大きな紙ジャケットと個性的なデザインが特徴です。ショップでもとても目立ち、一目でわかリます。

05223また、角頭音樂は若いバンドやグループを発掘し世に送り出していて、五月天(Mayday)がその代表です。
五月天を見出した人物というとまず搖滾唱片の大物プロデューサー李宗盛(ジョナサン・リー)の名前があがりますが、彼は五月天がメジャーで生きていく為に育てた人。そこにいたるまで、アマチュアからプロへの成長を導いたのは角頭音樂の張四十三でした。
この他、董事長樂團(チェアマン)、四分衛(クォーターバック)など、多くのバンドやアーチストがここから巣立っています。

05224さらに、貢寮國際海洋音樂祭(ホーハイヤンミュージックフェスティバル)を2000年にスタート。
毎年7月に台北の東、基隆と宜蘭の中間にある福隆海水浴場の砂浜にステージを設置し、新北市政府の補助を受けて行う無料の音楽フェスです。
音楽祭と、バンドオーディションが同時に開催される、ビッグなイベントで、蘇打綠(ソーダグリーン)、Tizzy Bac、旺福、スミンのバンド圖騰(トーテム)、盧廣仲(クラウド・ルー)ほか、多くのロックバンドやアーチストを輩出しました。

05225この他、2010年には映画、音楽、舞台のコラボによる音樂劇を制作。紀暁君(サミンガ)、陳建年(チェン・ジエンニエン)、胡徳夫(フー・ダーフー)はじめ原住民のアーチストが出演し、音楽の記憶を探し求める物語を斬新な手法で表現した作品として、高い評価を得ました。
2015年の映画版『很久沒有敬我了你(On the Road)』は、指揮者の視点で描いた物語で、吳米森(ウー・ミンセン)が監督、戴立忍(ダイ・リーレン)と、日台ミックスの加藤侑紀が主演しました。

05226このように幅広く、かつ立体的に音楽事業を展開する角頭音樂の代表で、この映画の主役でもあるプロデューサーの張四十三。四十三という珍しい名前は芸名ですが、母親が43才の時に生まれた子ということでこの芸名にしたそうです。
1967年、台南、雲林で生まれ育ち、メジャーのレコード会社の企画担当からキャリアをスタートしました。その後アマチュア・ラジオ局を経営した後、1998年に音楽業界に戻り「角頭音楽」を創立。
自身も台湾語の歌手として2枚のアルバムを出しています。

05227さて、次は監督についてご紹介します。
龍男.以撒克.凡亞思(ロンナン・イサク・ファンガス)監督はアミ族で1975年生まれ 。
國立台灣大學社會学部卒業後、ドキュメンタリー映画製作の仕事に就き、2009年アメリカのテキサス・システム大学で映画を学び、多くのドキュメンタリー作品を撮っています。
角頭音樂の貢寮國際海洋音樂祭(ホーハイヤンミュージックフェスティバル)を記録した『海洋熱』が、2004年台北電影節評審團特別獎と観客賞を授賞、2009年、初めてプロデュースした黃信堯(ホアン・シンヤオ)監督の『沈沒之島』が台北電影節の100万元大賞とドキュメンタリー映画賞を獲得しました。

05228では、なぜこの映画が作られたのか、監督に伺った経緯をお話します。
長い付き合いの張四十三から、角頭音楽の20年のドキュメンタリーを作りたいと相談があった時、実は少し悩んだそうです。
角頭音楽がやってきたことはよく知っているので、ただそれを紹介するだけでは作る意義を見いだせず、あまり積極的になれなかったということです。
でも、張四十三と色々話しているうちに、彼には中年の危機や会社を売りたいという悩みがあることがわかり、それを切り口にしてはどうかと提案。張四十三も反対はしなかったので、その方向でトライすることになりました。

05229張四十三が引退を考えていることを全く知らなかった監督は驚き、角頭音樂のアルバムもイベントも大好きなファンでもある監督にとって、角頭音樂がなくなるのはもったいないし、中国に売ってしまうことになったら悲しすぎる。
だから、彼がひとりで苦しむのではなく、一緒に何かサポートできれば、という思いもあり、引き受けることにしたそうです。
そして、張四十三が角頭音樂創設当時の人々に会いに行くというアイデアを提案。
ただ、張四十三は最初自分が出演することには消極的だったそうです。なので、監督は撮っても使うかどうかわからないから、とりあえずやってみよう…と、騙し騙し進めました。

052210ところが、撮り始めたら張四十三はその状況をだんだん楽しむようになり、台東へ行く汽車のチケットを買う時、ここも撮った方が良いかな、とか、部屋で煙草を吸うシーンではこっちを向いた方がいいかもしれないなど提案をしてくれるようになったそうです。
また、畑の手入れをするシーンは、こういう予定があるけどどうか、と提案されたり、かなり出番が増えることになりました。
そして、金馬影展で上映されることになった時、主演男優賞にエントリーしたらどうか…などと言うまでになりましたが、ドキュメンタリー映画部門には主演男優賞はないので、それを知ってがっかりしていたそうです。

052211今回、上映会のメインビジュアルとして使っているこの白黒写真、とっても良いと思いませんか?
この写真は張四十三が撮った写真だそうで、角頭音樂の自由な雰囲気が現れている、と監督も言っていました。
映っているのは角頭音樂を代表するアーチスト陳建年(チェン・ジエンニエン)と彼の音楽プロデューサーで、角頭音樂にとって陳建年と彼のスタッフが台湾の音楽界に与えた意義や果たした功績はとても大きいので、角頭音樂のファンの一人でもある監督はこの写真を選んで使ったそうです。

052212さて、この映画の中で使われている音楽ですが、角頭音樂にはたくさんの素晴らしい曲があり、この映画のために特別に作る必要がないので、特に音楽担当は置かず監督自身が選んだそうです。
ただ1曲だけ角頭音樂の楽曲ではないものがあります。
張四十三のラジオ番組の最終回で流れる「愛的箴言(Proverbs of Love)」です。これは羅大佑の名曲で、色々な人がカバーしていますが、張四十三も羅大佑が大好きで、リスナーへの最後のメッセージとしてぴったりだったので、この曲を弾き語りしたのだそうです。映画制作にあたり版権処理もできたので、このまま使った、と言っていました。

052213そして、なんと言っても気になる角頭音樂の今後。張四十三は本当に会社を手放して引退してしまうのか…。
監督の考えを聞いてみました。
「色々なところで必ずこの質問が出て、その張四十三の答えを綜合すると、売りたいと思う気持ちは本当。20年走り続けてきて、いまは仕事だけをするという精神状態ではない。家で仕事以外に没頭している彼を見ると、その気持ちの置き場所が変わってきているのだと思う。良い方法で会社の経営を誰かに任せることはできないかと思っていることは確かだ。

052214でも、実際買い手が現れてそれが高額であっても、彼はまたそこで悩むと思う。本当のこのお金が必要なのか、本当に売るべきなのか、スタッフを守りながら経営する方法はないのだろうか、必ず考えると思う。それは、この映画のテーマになっている中年の危機ではなく、社長としての苦悩だろう。義理と人情を重んじる彼だから、スタッフのことを考えると、かなり悩むだろうと思う。いまは会社の経営も悪くないので、積極的に売ることは考えていないだろうというのが、私の推察」
ということでした。

0522longnan_20210522105701監督からメッセージ動画をいただきましたので、その内容です。

監督の龍男.以撒克.凡亞思(ロンナン・イサク・ファンガス)です。
今回この映画が上映されることになり、うれしいです。
皆さんはもしかしたら角頭音樂や台湾の音楽についてあまりご存じないかも知れません。
また若い方には中年の危機というものがわからないかも知れません。
でも ご両親やご家族が経験するかも知れないことです。
また若い人もその年になったら経験するかも知れません。
困難や挫折に直面した時どうやって乗り越えるのか、
この映画では例えば友達が一緒になって考える事の大切さなどを描いています。
角頭音樂を売るかどうか 台湾音楽の未来がどうなるのか、この映画を見た皆さんが人生の中で台湾音楽の素晴らしさとともに困難をどうやって突破していくかを、感じてもらえれることを祈ります。
この映画を皆さんに気に入ってもらえればうれしいです。

052215では、ここからはインディーズ音楽と映画についてお話しします。
日本と比べると、台湾はメジャーとインディーズの差があまりないという印象を受けます。
そして、日本では映画の主題歌はレコード会社とのタイアップが多いのですが、台湾映画ではあまりそういう例はありません。あくまでも、作品に合わせた音楽を使い、さらにインディーズが使われることもかなり多くあります。

052216まず、この映画にも出てきた角頭音樂の代表的アーチスト陳建年。
彼はプユマ族の警察官で、2000年にファーストアルバムで金曲奨の男性歌手賞部門で香港の張學友(ジャッキー・チュン)、王力宏(ワン・リーホン)、陶喆(デビッド・タオ)、庾澄慶(ハーレム・ユー)という人気スターアーチストを退けての受賞という快挙でした。
さらに、紀暁君(サミンガ)に提供した「神話」で作曲賞も受賞しています。
そして映画音楽は、『セデック・バレの真実(原題:餘生-賽德克巴萊)』ほか5作を担当しました。

052217同じく角頭音樂と縁の深い四分衛樂團(Quarterback)は、台湾のロック創成期から25年にも及ぶ活動を続けていて、彼らが長年サポートしている、ハンディのある子供を持ったお父さんたちのバンドが、大きなフェスに出演するまでを記録したキュメンタリー映画『一首搖滾上月球(Rock Me to The Moon)』が2013年に公開されました。リードボーカルの阿山が作詞作曲した主題歌「I Love You」は、その年の金馬獎でオリジナル楽曲賞を受賞しています。
さらに、最近は阿山が俳優として『先に愛した人(原題:誰先愛上他的)』(2018)や『我沒有談的那場戀愛(I Missed You)』(2021)、ドラマ『歩道橋の魔術師(原題:天橋上的魔術師)』(2021)ほかに出演しています。

052218同じくドラマ『歩道橋の魔術師(原題:天橋上的魔術師)』(2021)に出演している滅火器(FireEX.)のリードボーカル楊大正は、『搖滾樂殺人事件』(2018)のメインキャストをつとめました。
滅火器は台湾を代表するロックバンドとして君臨し続けるバンドのひとつで、2014年太陽花學運(ひまわり学生運動)の時に学生達から依頼されて作った曲『この島の夜明け(島嶼天光)』は、民主台湾を象徴する曲として歴史に残る曲になっています。
そしてベテランポストロックバンド阿飛西雅(アフェイシア)が担当した鄭文堂(チェン・ウェンタン)監督の『サマーズ・テイル 夏のしっぽ(原題:夏天的尾巴)』のサントラには、滅火器として参加しています。

052219『搖滾樂殺人事件』のエンディング曲「瘋人(Numbness)」は、ロックバンド董事長樂團(チェアマン)の曲です。
彼らは角頭音樂からファーストアルバムデビュー、その後もはアルパムごとに自分たちのレーベルを含め色々なレコード会社から出していて、どことも専属契約をしていません。
金曲奨では2007年に台湾語アルバム賞、2018年はバンド賞を受賞しています。
社会活動にも積極的で、原発反対運動や香港の香港民主化デモを応援するコンサートにも滅火器と共に参加しています。

052220社会活動と言えば、オリエンタル・メタルバンド閃靈樂團(ソニック)がその先鋒と言えますね。
社会派監督の鄭文堂(チェン・ウェンタン)監督は、2017年に制作した『衝組』では閃靈樂團と組み、音楽だけでなくリーダーでベーシストのドリスはメインキャストで脚本にも参加、全メンバーが本人役で出演しています。
ボーカルの林昶佐(フレディ・リム )はひまわり学生運動をきっかけに旗揚げした革新政党「時代力量」の創設メンバーとなり、国会議員に当選、2019年には無所属で二選を果たしました。
明確な台湾アイデンティティを、音楽にも政治にも反映し、活動を続けています。

052221ドキュメンタリー映画の第一人者、楊力州(ヤン・リージョウ)監督は、『明日へのタッグ(原題:拔一條河)』『青春走傱』『台湾、街角の人形劇(原題:紅盒子)』と続けて拍謝少年(Sorry Youth)の曲を使っています。
拍謝少年は台湾語のスリーピース・オルタナロックバンドで、ライブは伝統芸術を意識して、台湾独特の生活と文化を表現。
台湾の伝統楽器を使うのも特徴で、これによる「契囝 (Child of God)」という曲が『台湾、街角の人形師(原題:紅盒子)』のMVになり、布袋戯とロックのコラボはとても新鮮です。

052222台湾青春映画のレジェンド『藍色夏恋(原題:藍色大門)』の中にも、当時人気だったインディーズバンド1976が、主人公がデートする海辺のフェスで登場しています。使われていた曲「愛的鼓勵」は、いまはなきインディーズレーベルの老舗水晶唱片からリリースされたものです。
また、2010年の『モンガに散る(原題:艋舺)』でも「街頭之星」が使われ、息の長い活動を続けています。
台湾大学のそばにあるライヴハウス&カフェ「海邊的卡夫卡」を経営していて、一時邱澤(ロイ・チウ)がここでDJをやっていたことがあります。彼らと仲の良い邱澤は、1976のゲストメンバーとして演奏したこともありました。

052223昨年台湾で公開され、いまNetflixで配信中の『同級生マイナス(原題:同學麥娜絲)』では、濁水溪公社(LTKコミューン)のボーカルでギターの柯仁堅(クー・レンチェン)が音楽を担当し、劇中で多くの曲が使われています。
このバンドは1989年にスタートし、社会問題や庶民の生活をラジカルに表現し続け、昨年解散しました。
そして、映画ではエンディング曲「卡通手槍」が流れる中、監督自身のナレーションで、濁水溪公社(LTKコミューン)への謝辞と紹介が語られています。

052224インディーズバンドのリードボーカルを集めてメインキャストにしたのが、魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)監督の『52Hzのラヴソング(原題:52赫茲我愛你)』です。様々なカップルのラブストーリーを、素敵な音楽で綴った音楽映画。
いまやメジャーになりましたが、宇宙人のメインボーカル小玉(シャオユー)、もと綿花糖の小球=荘鵑瑛(ジョン・ジェンイン)、インディーズといって良いのかどうか微妙ですが、圖騰(トーテム)のスミン、そして小男孩樂團(Men Envy Children)の米非=陳美恵(ミッフィー=チェン・メイホイ)。
さらに、『海角7号 君想う国境の南(原題:海角7号)』の馬念先(マー・ニエンシェン)、小應(應蔚民=イン・ウェイミン)、民雄(ミンション)といったインディーズ出身のアーチストも出演していました。

052225この『52Hzのラヴソング』のように、メジャーなのかインディーズなのかわからないバンドやアーチストが多いのも、台湾音楽界の幅と奥行き、そして懐の深さかも知れません。
金曲奨という台湾最大の音楽アワードでも、楽曲賞やアルバム賞、ボーカル賞というメインの賞を受賞するのにメジャーとインディーズという境界線がありません。
草東沒有派對や茄子蛋(EggPlantEgg)、先日『我沒有談的那場戀愛(I missed you.)』にメインキャストとして出演した9m88などいま人気のバンドやアーチストにそういう区分けが必要なのか、疑問に思えてきます。

052226また、ラップを中心にした新しいインディーズレーベル「顔社(Kao)」からもどんどん才能あるアーチストが出てきています。中でも李英宏(リー・インホン)は2018年の『先に愛した人(原題:誰先愛上他的)』、2019年の『ギャングだってオスカー狙いますが、何か?(原題:江湖無難事)』の音楽を担当して、『先に愛した人』の主題歌「峇里島」では金馬獎の映画楽曲賞を受賞しています。
こういう新しい波の登場も、張四十三が角頭音樂の行く末を考えるのに影響を及ぼしているのかも知れませんね。

052227では、台湾の最新映画情報をお伝えします。
いま『台湾三部曲』を製作中の魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)監督がプロデュースした映画『轉彎之後(New Turn)』が、5月14日から公開になっています。
これは、香港から台湾に来た黃千殷(ドリス・ウォン)監督のデビュー作で、脚本を読んで心を動かされた魏徳聖がプロデュースを引き受け、台湾で撮影したものです。
魏徳聖が他の人の作品をプロデュースすることはとても珍しいのですが、黃千殷監督が『52Hzのラヴソング(原題:52赫茲我愛你)』のカメラマンと結婚して台湾に来たという縁だそうです。

052228メインキャストは、台湾の若手有望株の張庭瑚(チャン・ティンフー)、香港の『狂舞派』の顏卓靈(チェリー・ガン)、『THE CROSSING ~香港と大陸をまたぐ少女~(原題:過春天)』で平遥国際映画祭の最優秀女優賞を獲得した中国の黃堯(ホアン・ヤオ)、そして中国の柏智杰(ボー・ツージエ)です。
そして、陳淑芳(チャン・シューファン)や應蔚民(イン・ウェイミン)、黃嘉千(ホアン・ジアチエン)、楊一展(ヤン・イージャン)、金士傑(ジン・シージエ)という豪華な脇役陣も楽しみ。
自転車で台湾一周する青春ロードムービーということで、台湾ロスの私たちにとっては、とても魅力的ですね。
※参照記事 http://www.asianparadise.net/2021/04/post-d9eba9.html

052229日本では、初夏から夏にかけて台湾映画の公開ラッシュになります。
順にお伝えしますが、まずは6月25日から公開の『1秒先の彼女』。
これは『熱帶魚』や『ラブ・ゴーゴー(原題:愛情來了)』、『祝宴!シェフ(原題:總舖師)』などの陳玉勳(チェン・ユーシュン)監督の新作映画で、“消えたバレンタイン”を巡って時間の流れが異なる男女が織りなす、オリジナリティ溢れるファンタジックなラブストーリーです。
昨年の金馬奨では作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞、視覚効果賞の5部門を獲得しました。

052230細かいところまで計算された構成と展開にうならされ、主演コンビの劉冠廷(リウ・グァンティン)と李霈瑜(リー・ペイユー)は共に金馬奨の主演男女優勝にノミネートされたものの残念な結果になりましたが、どちらも受賞に値する好演でした。
そして、かつて台湾でアイドル人気の高かった周群達(ダンカン・チョウ)が、そのイメージを一掃するような役で登場。2018年の『High Flash〜引火点(原題:引爆點)』の悪役に続き、多彩な演技を見せてくれます。
また、特別出演の林美秀(リン・メイショウ)や馬志翔(マー・ジーシアン)に加えて、林書宇(トム・リン)監督の演技も楽しんでいただけます。
6/25(金)から 新宿ピカデリーほか全国公開です。
公式サイト https://bitters.co.jp/ichi-kano/

このアフタートークは、映像として10月31日までアーカイブ配信しています。
良かったら、ご覧下さい。
https://v.classtream.jp/tw-movie/#/player?akey=b420119c102cf566ea9365dfa1608829

また、龍男.以撒克.凡亞思(ロンナン・イサク・ファンガス)監督のインタビュー音声は、近々Podcastで配信予定です。

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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