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2021/08/21

2021台湾映画上映&トークイベント「台湾映画の"いま"〜新鋭と精鋭の挑戦」第5回『Mickey On The Road(中文題:迷走廣州)』オンライン開催!新人監督とフレッシュな主役ふたりに大いなる期待の声!

0821mickeyオンラインによる台湾映画上映&トークイベント、新作と未公開作品で台湾映画の「精鋭と新鋭の挑戦」を伝えていく第五回は、台湾南部の少女2人の愛と友情、成長を描いたロードムービー『Mickey On The Road(中文題:迷走廣州)』を上映しました。

台湾の伝統文化、発展する中国、そのギャップの中で傷つきながらも成長していくするふたりの女性がとても瑞々しく、ストーリーの展開にやや荒削りなところもありますが、それをもって余りある新人監督の意気込みを感じていただけました。
「全編にわたって映し出される台湾ローカルな風景と人々が素敵で心に染みた」「台湾から見た中国、中国から見た台湾人の視点のどちらもが興味深く新鮮だった」「重い話だなと思いながら観ていたが、若い女性たちの成長譚として清々しさが残るラスト」「主演の俳優さん達の演技がフレッシュで、最後のシーンはとてもよかった」「社会における女性の怒りについては大変リアルに描かれていると感じた」「台湾と広州の対比がとても良く、二人の主人公が成長して行く姿もとても良かった」「主人公2人と、それぞれが志している踊りの設定、特に最後の八家将の舞がよかった」

また、本作の解説は作品の理解を高めるのに役立ち、そこに描かれる社会背景も台湾を知る上で参考になったようです。
そして、コロナ渦における台湾映画界の様子を取材してお伝えしたトークの後半は、現状把握と共に台湾のしっかりした感染防止対策も知ってもらう機会となりました。
「映画や俳優たちのことはもちろん、社会的な背景までがわかった」「一つの作品を鑑賞し終えてすぐにこれほど丁寧な解説、監督の言葉などが聞けるのは大変ありがたい」「台湾の今の状況を知ることができる貴重な機会」「ロードムービーの歴史が勉強になった」「台湾の映画情報のみならず、コロナ禍においての映画産業に携わる方々の話も聞けてとても面白かった」「内容豊富な情報をありがとう」「台湾映画の最新情報や現地の状況を伺えて大変貴重だった」「台湾のローカル文化や、台湾と中国の関係など映画の背景がわかってとても良かった」「コロナ禍の台湾映画業界の様子を知ることができ、勇気づけられた」「台湾映画業界も思った以上に大変だということが分かり、日本よりずっと厳しいから感染防止はできているのだと納得した」

 

08211この映画は、台湾では昨年2020年11月に公開され、今年韓国のプチョン国際ファンタスティック映画祭やシンガポールの中国語映画祭、カナダの女性映画祭、アメリカのミネアポリスセントポール国際映画祭などで上映されました。
監督は、これが長編劇映画デビューとなる陸慧綿(ルー・フイミエン)。
フレッシュな主役は葉寶雯(イエ・バオウェン)と張雅玲(チャン・ヤーリン)。
張雅玲は、これで金馬獎の助演女優賞と台北電影奨の主演女優賞にノミネートされました。
監督は、女性が家を出て自分が求めている答えを探し出すという物語を作りたいと思ったので、最初からロードムービーという形を考えていたそうです。
旅の途中で様々な人に出会い、良いことも悪いことにもぶつかりながら成長していくロードムービーは、世界中で多くの名作がありますね。

08212では、まずこの映画の製作の経緯からお伝えしましょう。
監督が父親を探しに中国へ行く女の子の物語の発想を脚本として書き始めたのは、2011年、大学時代の先生だった有名プロデューサーの葉如芬(イエ・ルーフェン)に相談すると、全面的に応援すると言ってくれたそうです。
しかし商業的な映画ではないため、なかなか投資者を見つけることができず、政府の補助金が主な製作費でした。
そしてこの物語を撮ることを夢見ながら、脚本を書き準備を進めつつ、クランクインまでにの間2本の短編を撮ったということです。

08213そうして2019年に脚本が完成しました。
舞台は高雄の左營、新幹線の終点としてご存知の方も多いのではないでしょうか。
高雄は台湾第二の都市とはいえ、ローカル色も豊かです。
左營は監督のお母さんの故郷でもあり、ここを主人公ふたりの生まれ育った街という設定にしたそうです。
監督は宗教の中で表されている女性のからだを表現したいと思い、主人公ふたりの女性の職業を、廟の神事に関わる八家将とポールダンスに設定しました。

08214この二つのダンスについて、説明しておきましょう。
まず、ミッキーが目指す八家将というのは、民間信仰の神様の家来のこと。主神を守り、人間界の悪霊の駆除と逮捕という役目を担っています。
歌舞伎のような隈取りの色使いや紋様は、八人それぞれの特性、役割、出身などを表し、折々の神事の時に舞います。
この八家将パフォーマーは、それぞれの廟に属しているグループもあり、独立したグループが廟に呼ばれることもあります。
ミッキーが練習しているのは、廟専属の八家将のようですね。

08215一方のポールダンスは、インドが発祥の地と言われ、ショーダンスにとどまらずエクササイズや競技として世界的な広がりをみせています。
台湾では、特に南部で廟のお祭りや結婚式、お葬式などで重用され、「電子花車」と呼ばれる派手な電飾の車の上でダンサーが踊り、パレードする様子は、映画の中でも出てきましたね。
あまりのセクシーさに、人によっては低俗と思うかも知れませんが、伝統的な八家将と同じく神事に関わるパフォーマンスであります。伝統と新しさが混在するのは、台湾の廟の神事のおもしろさとも言えます。

08216八家将を目指すミッキーは、外見は中性的ですが、男性ができることができないという問題を抱えています。
逆にジンジンは可愛くてフェミニンすぎるため、周りから安く見られてしまうというのが悩み。
じゃあ女性はいったいどうしたら良いのか、というのが、監督が伝えたかったメッセージでもあるのです。
そして、ふたりは閉塞的な日常を飛び出し、仕事で帰ってこない父と恋人に会うため、広州へ向かいます。

08217なぜ広州なのか。
それは、1990年代から中国の工業発展に力を入れる政策により、沿岸地域に外国から働きに行く人が増えました。
その第一陣で世界の工場と言われる広州に多かったのが、台湾人なのだそうです。
それに伴い、台湾ではミッキーのような父親不在の家庭が次々に出てきました。
その後政策が変わり、台湾からの労働者は減りましたが、やはり一定数のシングルマザーの家庭は存在しているのが現状。
広州では特にメイドインチャイナの服を作る工場が多かったので、ミッキーの父親の仕事を、補縫製工場に設定したそうです。

08218ジンジンの恋人は、はっきりした職業は表されていませんが、広東省における金融センターとして機能している広州はIT産業やバイオテクノロジーにも力を入れているので、おそらくチャイナ・ドリームを求めて行ったのでしょう。
広州に着いたふたりはその発展ぶりと煌びやかさに圧倒され、台湾のスマホが使えないことも知らないお上りさん。
さっそくスーツケースを盗まれてしまいますが、そのゲームセンターで知り合った男女のグループのひとりが働いているスパに泊めてもらうことになります。

08219このスパ、実は広州ではスタンダードなもので、これ以下のランクはないのだと監督が言っていました。
それでもあの大きさと内装ですから、高級スパはどれほどのものか、と想像が難しくなります。
高雄と広州は緯度も同じ、天気も湿度も同じなのにこんなにも違うということを表現したかった、と、監督が言っています。
実際にロケハンに行ったとき、一般人が行くようなところではない夢のようなところだとびっくりし、ふたりが子供のようにお風呂で遊ぶ姿を撮ったそうです。

082110さて、恋人に会えたジンジンですが、そこでの大きな裏切りに傷つきながらも誇りを保ち、きっぱりと別れを告げる演技は見応えがあり、台北電影奨と金馬奨でノミネートされたのも納得です。
その前のミッキーとのやりとり…何故バスの中で知り合いふたりを助けてくれた男が自分ではなくミッキーに興味を持ったのかと素朴に不思議がる可愛いだけの自分とも決別。
大きな成長の瞬間でした。

082111そして、ミッキーは父を刺して逃げるというクライマックスになりますが、監督は刺した後のことは、はっきり描かないようにしようと、編集マンと話し合って決めたそうです。
広州での出来事はすべて夢の中のことのようだ、という演出で、観客の想像にまかせることにしたと言っていました。
でも、ミッキーが父を刺すという行為は現実で、これまでの色々なものを断ち切るという象徴になっています。
工場経営に失敗し、広州の妻のおかげで生活できている父親には、ミッキーの行為を受け入れる=つまりそれを犯罪にしないことでしか愛情を示せなかったのではないか、と私は想像しました。

082112こうしてふたりの旅は終わり、ラストは廟での八家将の舞のシーン。
ミッキーが踊っていますが、数えてみると周りに8人います。つまりミッキーは八家将ではなく、それを飛び越えて神の役となったのか!?と思い、監督に聞いてみました。
そうしたら、「その通り。これまでの自分を超越して、八家将を引き連れて方向を示す神という役割になったのです」という答えでした。

082113このふたりを演じた葉寶雯(イエ・バオウェン)と張雅玲(チャン・ヤーリン)は、どちらもオーディションで選ばれました。
監督はプロの俳優とも会ったそうですが、この二人を見た時に直感的にこれだ、と思ったと言っていました。
二人とも似たような環境で育ち、性格も似ていて、出会ってすぐにずうっと前から知っていたように仲良くなったそうです。
だから、演技は初めてというふたりですが、化学反応が楽しみだったと、監督が言っていました。
そして監督は、ふたりの服や髪型、ネイルなど細かいディティールまで考え抜き、弱くもありあり強くもある、勇敢で、見た目ではない美しさを持った女性を描くことにこだわったそうです。

では、陸慧綿(ルー・フイミエン)監督からムービーメッセージが届きましたので、内容をお伝えします。

0823lu◎陸慧綿監督ムービーメッセージ
「こんにちは  監督の陸慧綿です。
今回は私の作品を上映してもらってとても光栄です。
皆さんが気に入ってくれたらうれしいです。
創作者はとても孤独で寂しいので、もし皆さんが感想や伝えたいことがあったら、映画の公式FBなどSNSでいただければうれしいです。
もう一度 映画を見ていただきありがとうございました」

082114ここで特別付録です。
台湾のロードムービーをいくつかご紹介します。
まずは、代表的な1本、2007年の『練習曲』。
自転車での台湾一周ブームの火付け役となった映画で、2007年のナンバーワンヒット作です。
聴覚にハンディキャップのある大学生が、自転車で台湾一周する途中に出会う様々な人とのふれ合いを描いた本作は、美しい海岸線の風景の中に人の心、台湾が抱える問題なども見え隠れして、とても味わい深いロードムービーです。
主演は、東明相(イーストン・ドン)で、実際に聴覚にハンデがありますが、この後も俳優として活躍しています。

082115同じ年、2007年に桂綸鎂(グイ・ルンメイ)と莫子儀(モー・ズーイー)主演の、『遠い道のり (原題:最遙遠的距離)』という作品がありました。
録音技師の青年が「音」を求めて東へ旅をして、別れた恋人にその「音」を録音したをカセットテープを送り続けます。でもその恋人は引っ越していて、受け取った新しい住人はその音に惹かれ、「音」をたどって旅に出るという物語で、東京国際映画祭で上映されました。
台湾の東海岸の美しい自然、莫子儀が自然の中で音を録る風景、そして登場人物の心の旅も味わい深い映画です。

082116『練習曲』で火が付いた自転車の台湾一周ですが、日台合作で日本と台湾のサイクリングロードを舞台にした映画が2014年に作られました。
『南風』という作品です。
黒川芽以、台湾の黄河(ホアン・ハー)と紀培慧(テレサ・デイリー)がメインキャストで、自転車旅行を通じて育まれる恋や友情、そして青春をコメディタッチで描いています。監督は、日本の萩生田宏治。はぎうだ こうじ
仕事も恋愛も崖っぷち状態の出版社で働く女性が、日月譚で開催されるサイクリングイベントの取材を任されて台湾に来ます。そこで出会った女子高生やサイクリストの青年と共にツーリングをすることになる、というストーリー。
台湾では九份、淡水、日月譚、冨貴灯台、竜騰断橋跡、鹿港の九曲港ほか数々の台湾の風光明媚なスポット、日本で初めて海峡を横断できる自転車道、愛媛県の「しまなみ海道」がロケ地となっています。

082117ロードムービーというと、青春、友情、恋、成長というモチーフが多いのですが、一風変わった作品もあります。
鍾孟宏(チョン・モンホン)監督の『ゴッドスピード(原題:一路順風)』 です。
2016年に公開され、東京国際映画祭でも上映されました。
麻薬を運ぶ客を乗せたタクシーが南下するうちに、黒社会の親分の葬儀に出くわし、運命共同体となった客とドライバーがとんでもない事件に巻き込まれていく…というストーリーで、タクシードライバーを香港の許冠文(マイケル・ホイ)、客を納豆が演じました。
その他にも戴立忍(ダイ・リーレン)や陳以文(チェン・イーウェン)はじめ、鍾孟宏作品でお馴染みのくせ者揃いの豪華キャストが、独特のブラックユーモアの世界を展開します。
台北から台中、雲林、台南、嘉義と、抜群のセンスの映像で見せる台湾の西側。いつか、ロケ地巡りをしてみたいですね。

082118そして、今年も期待のロードムービーがありました。
魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)監督がプロデュース、香港の黃千殷(ドリス・ウォン)監督のデビュー作『轉彎之後』です。
台湾の若手有望株の張庭瑚(チャン・ティンフー)、香港の『狂舞派』の顏卓靈(チェリー・ガン)、中国の黃堯(ホアン・ヤオ)と柏智杰(ボー・ツージエ)がメインキャスト。
香港から来たヒロインが、旅の途中で出会った台湾や中国の若者と一緒に自転車で台湾一周する中、台湾との深い繋がりを知る、という物語です。

082119この他、2016年の作品で、大阪アジアン映画祭でも上映された『1万キロの約束(原題:一萬公里的約定)』というのもあります。
実在のランナー林義傑(ケヴィン・リン)の体験をもとに、ご本人と周杰倫(ジェイ・チョウ)が共同プロデュースした映画で、主演は若手俳優黄遠(ホアン・ユエン)、その兄に王大陸(ワン・ダールー)、コーチが頼雅妍(メーガン・ライ)という配役です。
この映画は中南米やシルクロードなど大がかりなロケを行い、台湾は九份だけなので、台湾のロードムービーという枠を超えています。
こういう作品もあるということで、ご紹介しておきます。

082120ここからは、コロナ渦の台湾での映画状況についてお伝えします。
日本は、東京などが感染爆発で厳しい状況になっていますが、いまのところ映画館も通常営業しています。
台湾ではどうなっているのか、業界の友人達にメールでリサーチしました。
まず、映画館は5月18日に警戒レベル第3級になってから休業。
7月13日から新北市と桃園市以外の地域は営業再開しましたが、全館飲食禁止と飛び石席という条件付き。
7月28日からは警戒レベルが下がったので、台湾全土の映画館が再開しました。

082121しかし感染経路の調査により、感染可能期間の前後に訪れた記録がある劇場は、1~3日間の営業停止&全面消毒になるので、再開しても小規模の営業停止になる劇場が続々と出ているそうです。
劇場も観客も、様子を見ながらという感じで、友人のまわりの30~40代の多くは劇場に行くのにまだ抵抗があり、どうしても見たい作品があれば感染対策をして行くという人が多い気がする、ということです。
ある映画館では感染者の立ち寄りスポットだったことが発覚し、3日間の閉館という報道を見て、そこへ行きたいと思っていた気持ちが折れたという友人もいます。
台湾の皆さんは、かなり慎重ですね。

082122映画館がこういう状況なので、公開スケジュールが大幅に狂った配給会社は、昨年の日本と同様に苦境に立たされています。
もともと宣伝が進んでいた映画も、映画館が休業になった5~6月に公開される予定だった作品も、新しい公開日がまだ決まらない状態だそうです。
夏休み向けの作品や、9月に延期になった台北電影節はじめ10月の高雄電影節、金馬影展など、秋の映画祭ラッシュの前に公開したい作品なども、待機せざるを得なくなり、映画館も配給会社も頭抱えてる状態だそうです。

082123制作の方も、警戒レベル第3級の5月18日〜7月27日の間は完全にストップし、皆さんステイホームでした。
俳優さんたちも家で映画見たり脚本読んだり、ジムでトレーニングしたり、中にはお料理に励んでいた人もいるようです。
このオンライン上映でも、6月の『逆走♡ONE WAY LOVE(原題:可不可以,你也剛好喜歡我)』の時に、ステイホーム中の曹佑寧(ツァオ・ヨウニン)が、インタビューに応じてくれました。
警戒レベルが下がった7月28日からは、一部で撮影再開になったようで、FBで吳慷仁(ウー・カンレン)がその様子をポストしています。少しずつ動き出したようですね。

082124気になっているのが、魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)監督の『台湾三部曲』です。
超大規模のプロジェクトなのですが、スタッフの友人によると、まだ再開が決まっていないということです。
でも、それぞれがオンライン会議やステイホームでできることを進め、再開の日に備えているそうです。
監督は、少人数で投資会議をしたり、自らオフィスの電球を変えている様子が公式FBで伝えられています。
そして、友人曰く「監督は、相変わらず前向きです」と。
台風でセットを流されて誰もが中止を提言したにもかかわらず、続行して成功させた『セデック・バレ』のことを考えると、今回もきっとこの困難を乗り越えるのでしょう。

082125ステイホーム時の映画鑑賞は、DVDや配信ということになりますが、配信を視聴する層がかなり増えたという情報がありました。NetflixやAmazonプライムで見ている人が多いようです。
友人のひとりは、Netflixでは主に韓国ドラマやオリジナル作品、Amazonプライムは日本の古い作品やアートムービー、台湾ローカルのプラットホームでは、台湾や中国の映画、そして上映延期になったハリウッド作品などを見ていると言っています。
ただ、23日から台湾人はほぼオリンピックしか見ていない気がする、とも言っていました。

082126このオリンピックですが、開催期間中、映画人のほとんどがSNSでの話題がオリンピック。9割くらいだそうです。
リスクを負って映画館に行くよりも、家でオリンピックの中継を追いたいっていう声もよく聴いたとか。
台湾では視聴率が1%あれば、大ヒット。
国民的行事である金馬奨や金曲奨の授賞式もおおよそ3~5%。
ところが、台湾選手が金メダルを取ったバドミントン決勝戦生中継は、18.2%だったそうです。
同時視聴人数は約550万人、台湾の人口が2300万人ですから、4人に1人が見ていたことになりますね。
また、あん馬個人で銀メダルを獲った李智凱(リー・チーカイ)選手は、2005年に台湾でヒットし、日本でも公開された『ジャンプ!ボーイズ』の少年の一人。オリンピックを目指すドキュメンタリー映画『翻滾吧! 男人』も公開されましたので、特に映画界で盛り上がったようです。
もしかしたら、映画館が営業していても、オリンピック中継の影響を受けていたかも知れませんね。

082127業界の友人達が受けた影響も少なくありません。
『ThunderboltFantasy東離劍遊紀』でお馴染みの霹靂国際マルチメディアのプロデューサーである友人は、布袋戯の作品を撮影しているスタジオでは影響は出ていないものの、新しいプロジェクトの準備が遅れているそうです。
雑誌の編集をしている友人は、映画の紹介ページが、映画館の閉鎖により配信で見られる作品の紹介に切り替えざるを得なくなり、平常時でも映画館にとって脅威の配信作品をピックアップするのは心が痛むと言っていました。


082128字幕翻訳と通訳をしている友人は、字幕の仕事は変わらないけれど、公開できていない作品が多い為、このまま未公開作品が溜まっていくと、秋冬頃の依頼件数が減るのではないかと、少し心配だそうです。
通訳の方は、海外からのゲストが来ないこと、上半期の台北電影節が延期になったため仕事が激減。開催できた映画祭のティーチインは主にリモート形式や事前収録の映像を使っているようですが、ここで感じた違和感について語ってくれました。

082129この気づきを、ご本人の文章のままお伝えします。
「映画祭で外国人ゲストのティーチインの醍醐味は「交流」だと思っています。
現場でゲストとお客さんの交流はもちろん、通訳とゲストの間でも、事前の雑談は情報を交換できる貴重なチャンスでした。
例えば「前作は台湾でとてもヒットしました」「あのシーンはここでもウケてます」
「台湾にもこういう風習があります。皆さん理解してると思います」
「台湾はいま同性が結婚できるので、あのシーンの解釈はどうなるか気になりますね」
「台湾ではこういう職業は女性の場合が多いと思います。逆にあのセリフが日本的な表現かもしれません」
などなど。

082130しかしリモートでは、雑談の時間がほぼなくなっています。
お互いセッティングの状況を確認して、軽く画面に出る人たちで挨拶して、それから本番。本番が終わったら退室する、というプロセスがほとんどでした。
アクセスしたタイミングでみんな仕事モードに入っていますし、色んな関係者が同時にいるので、とても軽く雑談できる状況ではないですね。
ティーチインは、一方的なリモート取材の動画をみんなで見る時間になってると感じています。
そういうのを何回か経験して、雑談でより深い文化交流ができる環境の大切さを痛感しています。」
ということでした。
とても共感できます。コロナが落ち着いて、早くリアルな交流ができるようになって欲しいですね。

082131では、最後に最新情報をお伝えします。
昨日8月20日から、『恋の病 〜潔癖なふたりのビフォーアフター〜』がシネマート新宿・心斎橋ほか全国で公開になっています。
この映画は、出かける時はレインコートにマスク、手袋で完全武装する重度の潔癖症の男女が出会い、はじめて理解し合える相手ができ、お互いにサポートしながら生きていくのですが、その恋の行方は…というストーリー。
世界中の映画祭で数々の賞を受賞。また、金馬奨で、新人監督作品ながら林柏宏が主演男優賞、謝欣穎が主演女優賞を含む6部門でノミネートされました。

082132監督は、『あの頃、君を追いかけた(原題:那些年,我們一起追的女孩)』や『六弄咖啡館』などの執行監督をつとめた廖明毅(リャオ・ミンイー)が、その経験を生かして監督・脚本・撮影・編集のすべてを担当しました。
執行監督というのは、メインの監督をサポートする役割で、監督の指示により動く助監督とは違い、同等の立場になります。
主役は金馬奨で助演男優賞に輝いた林柏宏(リン・ボーホン)と、金馬奨や台北電影奨で受賞歴の多い謝欣穎(シエ・シンイン)。
9月に延期された台北電影奨ではデザイン賞と、謝欣穎が主演女優賞にノミネートされています。
全編iPhoneで撮影され、ビビットな色彩とレアな設定の物語、そこで問われる愛の本質を、ぜひ劇場で体感していただきたいと思います。

次回は、すでにお知らせしていますように、9月25日(土)14時から。
『猫とハエ(原題:貓與蒼蠅)』 『ロブスターキッド(原題:龍蝦小孩)』『弱くて強い女たち(原題:孤味)』の短編3作です。
『弱くて強い女たち(原題:孤味)』は、昨年のナンバーワンヒット作で、いまNetflixで配信している長編のもととなった作品です。多様な3本の短編、どうぞ、お楽しみに。

このアフタートークは、映像として10月31日までアーカイブ配信しています。

https://v.classtream.jp/tw-movie/#/player?akey=2b55bd7740437ff7a593156d991e8a45

また、陸慧綿(ルー・フイミエン)監督のインタビュー音声は、8月23日(月)からPodcastで配信予定です。
どうぞ、お楽しみに!

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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