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2021/12/30

2021年の香港映画を振り返る〜ドキュメンタリーが映す現状と映画人たちの奮闘!

1230hk_20211230172701 2021年の香港は、コロナのパンデミックがやや落ち着いたものの、製作本数は激減、香港電影金像奨の授賞式は中止となり、2022年に2年分の作品を対象に授賞式が行われる予定となっています。
香港電影評論學會大獎はオンライン(録画)で各賞が発表され、作品賞はドキュメンタリー『理大圍城』が受賞しました。
これは香港の民主化運動を記録した作品で、台湾国際ドキュメンタリー映画祭で上映され、山形ドキュメンタリー映画祭では大賞を受賞。
そして、同じく民主化運動のドキュメンタリー『時代革命』が東京フィルメックスで上映、台湾の金馬奨でドキュメンタリー映画賞に輝きました。
この2作は、もちろん香港では公開はおろか上映もできませんが、国外で上映され受賞を果たしたことで香港問題が広く世界に伝えられたことは、大きな意義があったのではないでしょうか。

0303dennis1 12月29日に、何韻詩(デニス・ホー)が逮捕されたというニュースが飛び込んできました。
彼女の活動と生き方を追ったドキュメンタリー『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』は香港映画ではありませんが、今年日本で公開され、千葉県柏のキネマ旬報シアターと岡山のシネマ・クレールで近日公開予定となっています。
お近くの方は、ぜひご覧になって下さい。
公式サイト;http://deniseho-movie2021.com

※12月31日、ご自身のSNSで保釈されたと伝えられました。

さて、いまの社会を反映した先述の2作以外にも、アクションやノワール、コメディ、ヒューマンドラマなど香港映画人達の意欲的な作品が作られ、日本でも一般公開や東京国際映画祭、東京フィルメックス、大阪アジアン映画祭はじめとする上映の機会もあったことは、本当にうれしいです。
上記の映画祭で注目作品がほぼ見られたので、未見ながら期待作の紹介を含めて今年香港で公開された10作を振り返ります。

0408tidf1 香港人が自由を取り戻そうとする闘いを記録した一作『理大圍城』は、2019年11月、香港理工大学における学生達の抵抗運動に対し、警察が放水車や裝甲車で大学を包囲、正門を突破して武力で制圧しようとして流血の抗争となった事件の記録です。
政府からの報復を回避するため、個人の名前を明かさず「香港紀錄片工作者」と表記している制作者チームは、2020年にも同様の『佔領立法會』を撮り、金馬奨でドキュメンタリー映画賞を受賞しています。
※参考記事
http://www.asianparadise.net/2021/04/post-9d8bc4.html

1230jidai もうひとつの民主化運動のドキュメンタリー『時代革命』は、2015年のオムニバス映画『十年』の中の「焼身自殺者」を手がけた周冠威(キウィ・チョウ)監督が、実名で発表。
金馬奨での「この作品が良心と正義を持ち、香港に涙を流したすべての香港人のものであることを強く願っています(一部引用)」という受賞コメント映像に、胸が熱くなりました。
※参考記事
http://www.asianparadise.net/2021/11/post-d914b8.html

0313oaffnight さらに、同じく『十年』に参加した郭臻(クォック・ジョン)監督の短編『夜番』が、大阪アジアン映画祭で上映され増した。
警察とデモ隊の激しい衝突を背景に、タクシードライバーのある一日の夜シフトで出会った客や街の様子を繋いでいく構成です。
劇中の警察や市民の行動をどのように撮影したのか、インタビューでお聞きしました。
※参考記事と監督インタビューのPodcast音声
http://www.asianparadise.net/2021/03/post-4a0864.html
http://asianparadise.sblo.jp/article/188501128.html

0205oaff1 同じドキュメンタリーでも、許鞍華(アン・ホイ)監督を追ったドキュメンタリー映画『映画をつづける(原題:好好拍電影)』は、大阪アジアン映画祭で上映された後に、『我が心の香港~映画監督アン・ホイ』という邦題で11月に日本で公開されました。
美術監督・衣装デザイナーとして、多くの監督と仕事をしてきた文念中(マン・リムチョン)が初メガホンで、許鞍華の仕事場と生活に密着し、記録しています。
多くの資料映像や許鞍華を知る映画人たちのインタビューは、彼女の創作世界しか知らない観客にとっては、とても興味深く、とてもドラマチックです。
※参考記事と監督インタビューのPodcast音声
http://www.asianparadise.net/2021/03/post-e86272.html
http://asianparadise.sblo.jp/article/188466944.html

0309oaafdance 大阪アジアン映画祭で上映された『狂舞派3』は、7年ぶりの続編。
汗と涙のどストレートの青春ダンス映画から7年という時間は香港を大きく変え、プロデューサー陳心遙(サビル・チャン)と黃修平(アダム・ウォン)監督がいま撮らなければならない作品として、この映画を発表したことは、とても意義深いと感じました。
かなり重い負荷を負いながら歩む主人公たちの姿、ラップとダンスのカタルシスは見事でした。
※参考記事と監督インタビューのPodcast音声
http://www.asianparadise.net/2021/03/post-152c6d.html
http://asianparadise.sblo.jp/article/188521254.html

1230drifting 台湾の金馬奨に作品賞はじめ12部門にノミネートされ、脚色賞を獲得した『濁水漂流』は、実話に基づいたホームレスの人々を描いた社会派作品です。
監督の李駿碩(ジュン・リー)は、2018年の『トレーシー(原題:翠絲)』で長編デビューした30才の新鋭。
私は未見ですが、映画ライターの杉山亮一さんによると、社会派映画だけどハートウォーミングでちょっとクスッと笑えるところもある優れたエンターテインメントだということですので、映画祭などの機会に見られることを祈っています。
出演:吳鎮宇(ン・ジャンユー)、謝君豪(ツェ・グァンホウ)、李麗珍(ロレッタ・リー)

0307elisa 香港政府による新しいクリエイターの発掘・育成を目的としたプロジェクト「首部劇情電影計劃」で入選した馮智恒(アラン・フォン)監督の『エリサの日(原題:遺愛)』は、大阪アジアン映画祭で上映されました。
定年退職間際の警察官が出会った、麻薬運搬で逮捕された若い女性の過去と現在を描いた切ないヒューマンドラマです。
刑事役の鄭中基(ロナルド・チェン)がノーギャラで新人監督をサポートするという、最近の香港映画の傾向に基づいた意欲作。胡子彤(トニー・ウー)安定のチンピラ役は、誠実さとやるせなさを見事に表現していました。
※参考記事と監督インタビューのPodcast音声
http://www.asianparadise.net/2021/03/post-fa66d9.html
http://asianparadise.sblo.jp/article/188508870.html

これぞ香港ノワール!という陳健朗(チャン・キンロン)監督の『0209hand手捲き煙草(原題:手捲煙)』も、大阪アジアン映画祭でが上映してくれました。
1997年の返還を機に変わっていく香港を、元イギリス軍兵士の視点で描き、香港ノワールの世界に浸りながらも歴史や人種問題、社会問題も考えさせらる力作です。
主役の林家棟(ラム・カートン)は、これまで首部劇情電影計劃に出演してきた多くの有名俳優と同じく、ノーギャラで参加。
昨年の金馬奨で作品賞、主演男優賞、新人監督賞など7部門にノミネートされたので、金像奨でも目玉作品になるのではないでしょうか。
※参考記事と監督インタビューのPodcast音声
http://www.asianparadise.net/2021/03/post-483f77.html
http://asianparadise.sblo.jp/article/188529651.html

今、一番見たいのが『梅艷芳』。
2003年に亡くなった、香港ポップス界&映画界を代表するスーパースター梅艷芳(アニタ・ムイ)の生涯を描いた映画で、交流のあった人々がひとりを除いて実名で登場するそうです。
アニタ役の王丹妮(ルイーズ・ウォン)はこれがデビュー作だそうですが、ポスターや写真を見るとなかなか雰囲気ありますね。
監督は『コールド・ウォー(原題:寒戰)』シリーズの梁樂民(リョン・ロクマン)なので、しっかりしたエンターテインメントになっているのではないかと想像します。
どこかの配給会社さん、買って下さい!
監督:梁樂民(リョン・ロクマン)
出演:王丹妮(ルイーズ・ウォン)、劉俊謙(テランス・ラウ)、廖子妤(フィッシュ・リウ)、古天樂(ルイス・クー)、林家棟(ラム・カートン)、楊千嬅(ミリアム・ヤン)、楊祐寧(ヤン・ヨウニン)

1230linbo 東京国際映画祭のガラ・セレクションで上映された『リンボ(原題:智齒)』は、さすが鄭保瑞(ソイ・チェン)監督!というおもしろさ。
タイトルの「智齒」は「親知らず」という意味ですが、とてもうまいネーミング。香港のスラム街で起こる猟奇的な連続殺人事件を追う刑事を、林家棟(ラム・カートン)と李淳(メイソン・リー)が演じています。
モノクロの映像と雨、凝った美術、スリリングな展開と切なさに胸を締めつけられる結末…。
TIFFのオンラインインタビューで監督が質問に答えていたのですが、この作品、最初はカラーで撮ってあとから何かちがう、と思いモノクロに変換したのだそうです。
こちらも劇場公開を希望!
※東京国際映画祭の作品紹介(監督Q&A動画リンクあり)
https://2021.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3403GLS07

ますます厳しい状況になっていく香港。
香港映画人たちの闘いをその作品を見る、ということでしか応援できないのがとても歯がゆいです。
でも、見て、感じ、考え、それを伝えていくということを続けていきたいと思います。

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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