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2022/05/21

2022台湾映画上映&トークイベント「台湾映画の"いま"〜革新と継承〜」第2回『僕たちの歌をもう一度(原題:聽見歌 再唱)』オンライン開催!感動100%、監督からは日本語のムービーメッセージ!

0422sing 2000年以降の台湾映画の新しい流れがどのように台湾映画の"いま"に繋がってきたのか、そして"いま"何が起きているのかをお届けする台湾文化センターとアジアンパラダイス共催のイベントシリーズ、第2回は台湾の原住民の子ども達の合唱団「原聲童聲合唱團」と、その指揮をとった校長の実話からヒントを得て作られた『僕たちの歌をもう一度(原題:聽見歌 再唱)』を上映しました。

本作はドキュメンタリーを撮ってきた楊智麟(ヤン・ツーリン)監督の初の劇映画で、昨年4月に台湾で公開し、8400万元という興行収入をあげ、2021年度の第4位という素晴らしい成績でした。
この年の台北電影奨で、脚本賞と主役の馬志翔(マー・ジーシアン)が主演男優賞にノミネートされました。
合唱団を作り挑戦することで、子ども達だけでなく、色々な事情や悩みを抱えたおとな達も自分と向き合い、何かを見つけ成長していく姿には、ストレートに心を打たれる作品です。

今回はこれまでより多くの方がアンケートに答えて下さり、感動の声を寄せていただきました。
「本当に名作! 素直に感動しました! ストーリーはもちろん、俳優さんたち、子どもたち、歌、風景、すべて素晴らしかった」「彼らの歌声はもちろん、その生活背景が巧みに挿入され、大人たちの思いにも触れているところにも心を動かされた」「ブヌン族の文化と歌、子供たちを取り巻く大人たちの姿が、この映画のとても大きな説得力となっていた」「台湾の美しい自然、ブヌン族の素晴らしい伝統芸術、子供たちの純粋で輝いている瞳や笑顔に心打たれた」「この映画で出会った民族の音楽・言葉・民芸などの文化の美しさに心動かされた」「歌唱シーンも山の生活シーンも、実にていねいに描かれていて、五月天の『知足』もとても効果的に使われすばらしかった」「この映画を造られた全ての人々、出演者の皆さん、モデルとなった人々、馬校長先生に心から敬意を表したい」

そして、アフタートークにも大きな反響をいただきました。
「作品への理解度が深まって、より印象に残る」「とても分かりやすく、撮影時のエピソードや実話と映画内容との違いなど、とても興味深かった」「パンフレットを一冊読んだ気になるほどの内容」「毎度丁寧な解説とここでしか知りえない情報の宝庫で、30分とは思えない濃密さ」「撮影裏話、Ellaの出演や五月天の音楽提供のエピソードがおもしろかった」「セデック・バレは有名だが、その他紹介された原住民の映画を観てみたい」「いつもながら分かりやすく、作品への愛も感じる」「作品の背景、出演者、監督のことなど大変詳細な解説」「作品の内容やその立ち位置など、今回もとてもわかりやすい解説だった」「台湾に行かれないいま、最新情報がありがたい」

また、劇場の大きなスクリーンで見てみたいという声もこれまで以上に多くありました。
この記事をご覧になった日本の配給会社の皆さま、ぜひご検討下さい!

では、ここからアフタートークの採録になります。

05211 まず、この映画のもとになった台湾の原住民の子ども達の合唱団「原聲童聲合唱團」と、その指揮をとった馬彼得(Bukut Tasvaluan)校長についてお伝えします。
山岳地帯に住む原住民の多くは、父親が都市部へ働きに出ているため、母親と子供という単親家庭です。また、両親が働きに出て、祖父母と暮らしている子供も少なくありません。
そんな環境の中で、南投縣の小学校の馬彼得校長が、退職した教員たちと協力し原住民の子供の教育を目的に、2008年に台灣原聲教育協會を設立しました。
その活動のひとつとして「原聲童聲合唱團」を作り、ブヌン族特有の合唱の技巧と文化を伝承する練習や、パフォーマンスを行っています。

05212 「原聲童聲合唱團」はCDも出していて、アルバム「唱歌吧」が第20回金曲獎の審査員特別賞を受賞しています。
そして、映画『天空からの招待状(原題:看見台湾)』で、玉山で歌う子ども達が、この「原聲童聲合唱團」です。
「原聲童聲合唱團」は国内外でコンサートを行い、上海世界博覧会で歌ったり、2018年には北海道の小樽公演も実施。アメリカやヨーロッパにも遠征しています。

05213 この物語はプヌン族の話ですが、台湾の原住民は現在全人口の約2%を占め、公式に認められているのは図に表した16の民族です。
ブヌン族の人口は約4万9500人、台湾中部と東南部の山岳地帯に暮らし、農耕と狩猟が主な生業です。
個性的な文化は各界から注目されていて、中でも八部合唱は世界的な知名度を誇っています。
これは複雑な合唱方式であるばかりでなく、タブーによる制限も多く、神秘に包まれた存在となっています。
特に花蓮県文化資産になっているアワの収穫を祈願するための「粟の豊作歌」=「パシププ」は、独特の多部合唱方式による自然なハーモニクス、常に保たれる「完全五度」の音程、そして重音技術の運用は世界で唯一の特殊な歌唱法で、西洋の音楽学者を驚かせると共に、伝統的な音楽の概念に衝撃を与えました。

05214 このような優れた音楽文化を持つプヌン族ですから、馬校長がこの資質を持った子供たちを音楽によって育む活動は本当に素晴らしいものです。
校長を退職しても校長先生と呼ばれ、多くの人たちから慕われ、尊敬される存在の馬彼得の活動を、本作の楊智麟監督が長年サポートしてきました。
そうして、この映画でも描かれている最初のコンクールに出場した「原聲童聲合唱團」との日々を記録したのが、2008年のドキュメンタリー映画『唱歌吧』です。
これは、新しい監督を発掘するアワード金穗獎で、グランプリを獲得しました。

05215 監督は公共電視などテレビでキャリアをスタートさせ、アメリカの大学院に留学。帰国した時に校長先生のサポーターの方から『唱歌吧』の劇映画化の話が持ちかけられました。
そして脚本を書き始めましたが、経済的事情で北京へ行って広告の仕事をすることになり、執筆は一時中断。
2013年に北京から戻ってきた監督ですが、台湾での仕事が順調にいかず、これもまた人生修行だと思い、とりかかったものはやり遂げようと脚本の執筆を再開します。
監督は、「校長と活動をしている時に多くの感動を経験したので、自分が何かをやり遂げてその感動を味わいたかったし、あとからなぜやらなかったのだと後悔したくなかった」と執筆再開の理由を語っていました。

05216 2014年、監督は映画『KANO 海の向こうの甲子園(原題:KANO)』を見て、そのメイキングで馬志翔が素人のキャスト達を指導している姿が馬校長と重なったそうです。
ふたりに共通するのはアスリート気質、それも柔らかくて優しい手法が特徴だと。
これは演出で導き出せるものではなく、その人の本質なので、馬志翔はこの映画の理想の主役だと思ったということです。

05217 しかし正式オファーをする前に、まずは製作の基盤である資金調達をしなければなりません。
政府の補助金の申請はもちろんですが、それ以外は校長先生のサポーターの方々が出資してくれたそうです。
校長先生とは10年以上一緒に活動をしているので、サポーターの皆さんは監督のことをよくわかっているから信頼されていたということです。
特に印象深かったのは、アメリカの華僑の方から3万ドル、日本にいる台湾の方から、初期の段階で作品の概要も聞かずに出資してくれたことだと、言っていました。

05218 実は、全ての資金が集まる前に、馬志翔からはオファーを受けてくれると快諾をもらっていました。
台湾では原住民の映画が少なく、自分もセデック族なのでぜひ出たいと、自身の作品を後回しにして出演すると言ってくれたそうです。
ただ、馬志翔にはセデック族の自分がプヌン族を演じるのはどうなのか、という迷いがありました。
民族の壁ということではなく、セデック族は大柄で、プヌン族は小柄だという身体的特徴を気にしたそうです。
監督は、校長先生に馬志翔を主役にしたいと話すと「かっこよすぎないか」と言われました。
他の関係者にも聞いてみたところ、皆背が高すぎるとは言いましたが、かっこよすぎるとは誰も言わなかったので、キャスティングは落ち着いたということです。

05219 ここで、馬志翔のプロフィルをご紹介しておきます。
1978年生まれのセデック族。2000年にテレビドラマで俳優デビュー、2001年に『鹹豆漿』でスクリーンデビュー、『20 30 40』(04)『ORZboyz』(08)『セデック・バレ』(11)『百日告別』(15)、『1秒先の彼女(原題:消失的情人節)』ほかに出演。
本作では2021年の台北電影賞で主演男優賞にノミネート、金馬奨では『月老』で助演男優賞にノミネートされました。
2007年からテレビドラマ6作の監督・脚本を手掛け、金鐘獎の脚本賞と監督賞を受賞。2014年の『KANO 海の向こうの甲子園(原題:KANO)』は劇場用映画の初監督作品で、そり年の台北電影賞で新人監督賞を受賞しています。

052110 監督として先輩の馬志翔は、絶妙な形でサポートしてくれたそうです。
問題が起きた時の解決方法などは話し合いましたが、クリエイティブに関する事は一切触れず、監督としての自分を尊重してくれた、とても感謝していると言っています。
そして、馬志翔は素人の子ども達との架け橋となり、先生が打ちひしがれているときに子ども達が迎えに行くシーンでは、自然の流れでできあがったということです。

052111 監督が馬志翔と校長先生のイメージが重なってキャスティングしたわけですが、実はこのふたりはとても縁がありました。
馬志翔はバスケット、校長は長距離走の選手経験があるアスリートであること。
そして馬志翔の父は校長で、辺境の子ども達の教育に関わってきた方です。
さらに、馬校長が大学時代に学んでいた陸上競技の教科書に載っていた模範選手の写真は、なんと馬志翔の父。
ということで、この映画の主人公には、馬志翔のお父さんの要素も含まれているそうです。

052112 音楽教師役のEllaは、脚本を渡すと翌日にOKをくれたそうです。
脚本が気に入ったと言われて、これは社交辞令だろうと思ったそうですが、Ellaはこういうところが良いと細部まで言ってくれたので感動したと、監督は言っていました。
Ellaのような有名で経験豊富な女優がこんなにスムーズに決まるなんて良いのか、とも思ったそうです。

052113 そのEllaのキャリアをご紹介します。
2001年から台湾のアイドルグループS.H.Eのメンバーとして活躍し、一世を風靡しました。
中でもコメディセンスが人気のEllaは、台湾のアイドルドラマのヒロインとして『薔薇之恋 ~薔薇のために~(原題:薔薇之戀) 』『花ざかりの君たちへ〜花樣少年少女〜(原題:花樣少年少女) 』『君には絶対恋してない!〜Down with Love(原題:就想賴著妳) 』などで大活躍。
ドラマと平行して多くの映画に主演、日本で上映されたのは、大阪アジアン映画祭の『欠けてる一族(原題:缺角一族)』に続き、本作が2作目になります。
一児の母でもあります。

052114 Ellaにとってはこれまでの役柄と違いますが、アイドルでスタートしてキャリアを積んできた彼女は、常に挑戦し続けたいという気持ちが強くありました。
今回は劇中でピアノを弾く必要があるため、同じく全く経験のない馬志翔とふたりで特訓したそうです。
特にEllaは音楽教師なのでピアノが巧くなくてはならないので、とても頑張って習得しました。
登場人物の中で唯一この役は創作した架空の人物なので、監督はEllaと二人で色々話し合って人物像を創り上げたそうです。

052115 監督にとってEllaの演技で特に印象的だったのは、最初のコンクールのシーン。
子ども達も指揮者の先生も自信がなくてピアノ伴奏者に頼るところなので、カメラは子ども達と指揮者を撮っています。
その、あまり自分が写らないシーンでの演技も丁寧で、編集の時に良い役者は本当に全力で芝居をして助けてくれるのだなぁと思った、と監督が絶讃していました。
さらに、「馬志翔は1を100にする、エラは0を1にする。彼女の演技がなければ、この作品の説得力はなかった」と言っています。

052116 最初は合唱団に否定的だったものの、土砂崩れの道でショベルカーを出動させる徐詣帆(シュー・シーファン)は、タロコ族。『セデック・バレ』の花岡一郎役で金馬奨の助演男優賞を受賞し、歌手としても活躍しています。
学校の給食を担当する張惠春(Saya)は、台湾のディーバ張惠妹(チャン・ホイメイ)の妹で、プユマ族。歌手として、俳優として活動しています。
足が不自由な父親役の撒基努(Sakinu)は、パイワン族の俳優。
台湾のレゲェグループMatzkaの初期メンバーでしたが、今は俳優・司会者として活躍しています。

052117 子ども達は、ロケ地となった学校がある南部のプヌン族の居住地の周辺の6〜7校から集めた演技経験のない小学生。
ロケに使ったのは、2つの学校でした。
子ども達にとっては、これは撮影ではなくて生活。撮影が終わって宿舎に帰って一緒に片付けをしたり、馬志翔もEllaも俳優ではなくみんなにとって映画の役柄のままの先生だったのです。

052118 撮影の時に子ども達を導いていたのは監督ではなく、この2人の先生馬志翔とEllaでした。
子ども達は先生の言うことを聞いて動き、だから自然な演技に見えているのだそうです。
この環境を作る為にスタッフも全員先生になりました。だから子ども達の前で煙草は吸わない、生活の中で色々ルールを決めてそれをきちんと守ったそうです。
また、監督は、脚本の段階では台詞を極力少なくすることを心がけたと言っています。
何故なら、台詞を覚えるのに必死になると自然な演技にならないから。

052119 劇中に実際の出来事を取り入れたエピソードがいくつかあります。
冒頭の、先生が蜂に刺されて子ども達の尿を被るところ。
先生がピアノができなくて過去に怒られた経験がある。
後半の土石流で道が塞がれてショベルカーを使ったところ。
でも、実際は最初のコンクールで入賞したのですが、映画では後半のエピソードへと展開する為に受賞できなかったという設定にしたそうです。
そして、Ellaが演じる先生の誕生日祝いをするバーベキューでモモンガの内臓を食べるのは、校長先生ではなくて監督の体験でした。
これを食べるとブヌン族の勇者になれると言われ、食べたそうです。
 
052120 合唱曲に使われた五月天(Mayday)の「満ち足りた想い出(原題:知足)」は、監督が馬校長との活動の中で、あるコンサートがあり、そこで身体にハンデを持つ人たちが歌ったこの曲を聞いてなんと素晴らしい曲だと感動したから、だそうです。
その時は五月天の曲とは知らなかったそうですが、国民的バンドの曲と聞いて、この使用料は相当高いだろうと心配しました。
ところが、交渉してみると五月天はこの映画を応援したいからと、とても友好的な使用料にしてくれて感謝している、ということです。
また、合唱の声は、現場の子ども達と合唱団の声をミックスして使っています。最初は現場の子ども達の割合を多くし、歌の成長を表すために徐々にその割合を変えていったということでした。
 
052121 撮影中の苦労は、なんと言っても天気。山は雨や霧が多く、台風も襲来しました。
中でも監督が印象に残っているのは最終日、すでに馬志翔とEllaはクランクアップして現場にいなかった時、7人の子ども達が焼き肉を食べるシーンの撮影。
久々に太陽が出て暑くなり、子ども達はこの晴天におおはしゃぎしました。
監督は、あまり駆け回ると体力を消耗するからと注意したのですが、「僕たちは原住民だから大丈夫」と言っていうことを聞かず、その結果5人が熱中症でダウンしたそうです。
その時はつくづく馬志翔とEllaがいかに子ども達をコントロールできていたかを再認識した、と言っていました。
 
052122 色々な苦労が実り、8400萬元という興行成績をあげたことは、本当にスタッフとキャストのみんな、そしてこの映画をサポートしてくれた皆さんのおかげだとに感謝している、と監督は言います。
ただ、残念なのは、コロナの影響で公開期間が1ヶ月しかなかったこと。
もっと続けられたら、さらに多くの人たちに見てもらえたのに残念だと言っていました。
 
052123 多くの人からの反響があり、関係者一同とてもうれしかったそうですが、特に辺境の地で教師をしている方達から、自分たちの努力を見つけてくれてありがとう、孤独な奮闘ではないことがわかってうれしいという声を聞き、それは本当に嬉しかったと語っています。
そして、多くの親たちが自分の子供を連れて見に来てくれたこと。
これがその子にとって初めての映画体験と聞き、人生初の映画がディズニーでも洋画でもなくこの台湾映画だということが嬉しく、達成感を感じた、と監督がしみじみ語っていました。

052124 監督は、次回作について色々考えているそうですが、映画製作は縁だ、とも言っていました。
実は、いま馬校長の原聲音楽学校の設立というプロジェクトを手伝っていて、当面はこれに力を注ぐということです。
馬校長の活動はさらに広がり、監督もこれまでのようにボランティアとして関わっていくというのも、素晴らしいですね。
冒頭の監督のご挨拶は、監督ご自身で日本語を練習し、語ってくれたものです。
「馬志翔とEllaがピアノであれだけ頑張ったのだから」ということでしたが、本当に監督のお人柄を感じました。
原聲音楽学校の設立プロジェクトが成功し、新作を撮ってくださることを願ってやみません。

052125 さて、先ほど楊智麟監督が台湾には原住民を扱った映画が少ないとおっしゃっていましたが、数少ないけれど名作が多いのも事実です。
ここからは原住民を描いた作品をご紹介していきたいと思います。
まずは、一番有名なのが2011年の魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)監督の歴史大作『セデック・バレ(原題:賽德克、巴萊』ですね。
1930年に台湾の霧社で起きた日本統治時代後期最大の抗日蜂起事件を描いたこの映画は、台湾映画史上最高の7億元(約26億円)という製作費をかけた大プロジェクトで、2011年の金馬奨で作品賞はじめ6部門を制覇。
前後編が歴代興行成績の2位と8位というメガヒット作です。

052126 本作は、“文化”と“信仰”の衝突という視点で、「霧社事件」を起点に、セデック族の人々を襲う悲劇と多大な犠牲が、憎しみや恨み、家族愛、苦悩、葛藤などさまざまな感情の交錯をまじえながら、描かれます。
主役のモナ・ルダオを演じた大慶(ダーチン)と林慶台(リン・チンタイ)はタイヤル族で、『僕たちの歌をもう一度』の馬志翔ほか数名本物のセデック族もいますが、色々な部族で出演者が構成されています。
ドラマチックなストーリーとアクションに加えて、セデック族の文化や風習も味わえますので、未見の方はぜひご覧になってみてください。
日本ではいま、多くのプラットフォームの配信で見られます。

052127 次は、鄭有傑(チェン・ヨウジエ)監督と勒嘎.舒米(レカイ・スミ)監督の『太陽の子(原題:太陽的孩子)』。
こちらは、台湾東部を舞台に若い人達が台北などの都会へ出て行ってしまうため農業の継承者がおらず、リゾート開発の波により先祖代々の土地が売られていく現実を、アミ族のある家族を中心に描いています。
2015年に台湾で公開され、ジャーナリストの野嶋剛さんにより、2016年に日本で全国上映が行われました。一般的な映画会社による配給ではなく、個人の思いが活動となって広がった珍しい例です。

052128 主役は、演技は初めての歌手阿洛‧卡力亭‧巴奇辣(アロウ)で、その他のほとんどがアミ族の素人キャスト。
同じくアミ族のシンガーソングライターの舒米恩(スミン)による主題歌「不要放棄」は、この年の金曲奨で最優秀楽曲獎に輝きました。
台湾文化センターで行った上映会には、鄭有傑監督や主役のアロウがそれぞれ自腹で来日し、トークや素晴らしいミニコンサートを行ったことも忘れられません。
現在は、日本で見ることができないのは、とても残念です。

052129 2017年に台湾公開、東京国際映画祭で上映され、2021年「台湾巨匠傑作選」と福岡の「台湾映画祭」で全国公開となった『アリフ・ザ・プリン(セ)ス(原題:阿莉芙)』は、パイワン族のゲイの青年と彼の生き方や彼を取り巻く仲間、家族の人間模様、性差を超えた人間のアイデンティティーを笑いと涙で描き出しています。
さらに、原住民である主人公の頭目継承問題という台湾の歴史も盛り込まれていますが、ストーリーはわかりやすく、登場人物が多くてもそれぞれのキャラがきちんと立っていて、さすが王育麟監督、という交通整理の巧さです。

052130 こちらの主人公も、パイワン族のミュージシャン舞炯恩.加以法利得(Utjung Tjakivalid)が俳優に初挑戦し、女性に性転換して父の跡を継いでパイワン族の頭目となるシーンでの美しいプリンセス姿が話題になりました。
頭目の継承儀式は実際に撮影されたもので、これを映画の中に収めたのは初めてだそうです。
頭目の仕事は時代を経て以前とは違いますが、変わらないのは性別を問わないということ。
さすが台湾、400年前からジェンダー問題の先駆者だったわけです。
そして、長年一人の男を一途に愛するドラァグクイーン・パブのオーナーを演じた陳竹昇(チェン・ジューシェン)は、この年の金馬奨で助演男優賞を受賞しています。

052131 2018年に東京国際映画祭で上映された『海だけが知っている(原題:只有大海知道)』は、台湾東部にある離島・蘭嶼の少年を中心にヤミ(タオ)族の生活と現状を描いた作品です。
教師役の黃尚禾(ホアン・シャンホー)以外は、主役の少年はじめ、全て素人キャスト。
開幕時のレッドカーペットでは来日キャストたちが民族衣装で登場し、凛々しいタオ族の褌姿でウォーキングした主役の少年を見て、福士蒼汰がサムズアップしたというニュースが台湾で報道されていました。

052132 2016年の台北電影獎で100万元大賞と長編劇映画賞、監督賞、新人賞、編集賞の5冠に輝いた『只要我長大』は、
タイヤル族の子ども達と家族、生活を描いた作品です。
自身もタイヤル族である陳潔瑤(ラハ・メボウ)監督が、その製作者魂、丁寧な演出で笑わせたり泣かせてくれました。
本作や先ほど紹介した『海だけが知っている』、『太陽の子』、そして『僕たちの歌をもう一度』も、親が都市部へ働きに行き、高齢者と子供だけの生活を描いています。
監督達が映画を通して伝えたい原住民の現実、これは台湾の社会問題でもあることを私たちはしっかりと受け止めなければならないでしょう。

052133 では、台湾の最新情報をお伝えします。
6月23日から7月9日まで開催される2022台北電影節のイメージキャラクターが、劉冠廷(リウ・グアンティン)になりました。
イメージキャラクターは映画祭の顔としてPRの旗頭となるのですが、例年旬の若手俳優が選ばれます。
劉冠廷はここ数年良作への出演が続き、2018年のドラマ『お花畑から来た少年(原題:花甲男孩轉大人)』で金鐘獎の助演男優賞、2019年の『ひとつの太陽(原題:陽光普照)』で金馬奨の助演男優賞、昨年の『詭扯』では台北電影賞と金馬奨の助演男優賞をW受賞しました。
劉冠廷の2022台北電影節のイメージフィルムは、アジアンパラダイスにもリンクを貼りましたので、ぜひご覧になってください。

052134 この劉冠廷が出演するHBOアジア制作のサスペンスドラマ『トリニティ・オブ・シャドウ:3つの影(原題:第三佈局 塵沙惑)』が、いま日本で配信中です。
台湾の新北市の女性刑事が、3年前に起きた殺人事件の手口が23年前に自身を巻き込んだ事件と類似していることに気づく。さらにその2つの事件に関わる人々が運命の糸に手繰り寄せられるように集まり、闇に葬られた真実が次第に明らかになっていく──というストーリー。
監督は洪伯豪(ホン・ボーハオ)、女性刑事に張榕容(チャン・ロンロン)、市議会議員に莊凱勛(カイザー・チュアン)、劉冠廷は警察官を演じています。
配信プラットフォームはWATCHAです。

このアフタートークは、映像として10月31日までアーカイブ配信します。
https://v.classtream.jp/tw-movie/#/player?akey=84ad895d36dc71478ee46bafd67b9044

楊智麟(ヤン・ツーリン)監督ムービーメッセージも公開します。
https://v.classtream.jp/tw-movie/#/player?akey=ca71af3bd0a51f34a41b0e9b526e67a9

また、今回お話しを伺った楊智麟(ヤン・ツーリン)監督のインタビュー音声は、5月23日(月)からPodcastで配信予定です。

そして、次回は6月18日(土)14時から。
車の爆発事故を発端に、様々な人間模様が展開するミステリー『俺の中の奴ら(原題:複身犯)』です。
5月27日(金)に告知記事を掲載します。
どうぞ、お楽しみに!

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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