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2022/08/20

2022台湾映画上映&トークイベント「台湾映画の"いま"〜革新と継承〜」第5回短編スペシャル『旅立ち(原題:姊姊)』『ゴッドハンド(原題:手事業)』『聞いちゃいない(原題:講話沒有在聽)』見応えたっぷりの三作に絶讃の声!

0725ss 2000年以降の台湾映画の新しい流れがどのように台湾映画の"いま"に繋がってきたのか、そして"いま"何が起きているのかをお届けする台湾文化センターとアジアンパラダイス共催のイベントシリーズ、第5回は珠玉の新作短編スペシャル『旅立ち(原題:姊姊)』『ゴッドハンド(原題:手事業)』『聞いちゃいない(原題:講話沒有在聽)』を上映しました。

3作とも色合いの違う素晴らしい作品ですが、家族についての思いが込められていて、お二人の監督が「この映画を見たら家族に電話して下さい」というメッセージを皆さんに伝えていたのはちょっと驚きでした。
『旅立ち』と『聞いちゃいない』は監督ご自身の家族の物語で、『ゴッドハンド』も監督のお母さんの手がきっかけとなって作られた映画というのも、台湾の家族に対する思いの強さを感じます。

味わいの異なる3作ですが、アンケートではどれも素晴らしいという声が圧倒的で、観客の皆さんそれぞれに刺さるところが多かったようでした。
「3作品がそれぞれ個性的な魅力に溢れていて台湾映画の層の厚さを感じずにはいられない」「どれも脚本がしっかりしていて見ごたえがあった」「短編ながら俳優たちの繊細な演技、小物や衣装など細部のこだわった演出にリアリティがやどり、心に訴えかけてくる」「3作品ともクオリティが高く、台湾の生活が垣間見える」「深く考えさせられ、家族との関係を見直したいと思った」「『ゴッドハンド』の楊麗音と『聞いちゃいない』の楊貴媚の演技力にうなった」「監督のコメントにあったように、離れて暮らす家族に連絡を取りたくなった」

また、本編の解説と家族をテーマにした作品についてのアフタートークでは、作品の理解を深めるのに役立ったという声をたくさんいただきました。
「作品制作の背景、台湾の短編への取り組み方がよくわかり興味深かった」「台湾映画の変化や状況が聞けて良かった」「俳優さんや監督、映画の撮影秘話などとても興味深い」「ロケ地の紹介はいつも気になるのでうれしい」「監督の話をいつも盛り込んでくれるのがトークの一番の楽しみ」「解説の言葉が平易な表現で丁寧で、『ゴッドハンド』のような題材でも下品にならず、とても参考になる」「いつもトークを楽しみにしています。トークを見てから再度、映画を観ることもあります」

3作あると観客の好みなどで評価が偏ることが多いのですが、今回は「特に気に入った作品」としてあがっているタイトルが3作ほぼ同じ割合であったことに驚きました。

では、アフタートークの採録です。
まず、台湾の短編映画についての現状からお伝えしました。
台湾では短編映画の製作が盛んで、新鋭監督の登竜門という側面も持ち、映画ファンから熱い注目を浴びています。
金馬影展や台北電影節などでは、短編映画のチケットは秒殺でソールドアウトになる人気で、高雄電影節という映画祭は短編映画がメインとなっているほど。
何故なら劇場で公開されることがあまりなく映画祭が貴重な機会であること、新進の若手俳優や人気俳優の出演作も多く、観客は新しい才能=監督や俳優に興味津々であることです。
原石がささやかな光を見せ始める…こういうところを逃したくないので、台湾の映画ファンも私も必死にチケットを取るのです。

08202 若いクリエイターはまず製作費が少なくてすむ短編を作り、それがプロデューサーの目にとまり長編デビューへのきっかけになることが多くあります。
新作を任されるほか、優れた短編の長編映画化という例も少なくありません。
張榮吉(チャン・ロンジー)監督の『光にふれる』、黃信堯(ホアン・シンヤオ)監督の『大仏+』、許承傑(シュー・チェンジエ)の『弱くて強い女たち』など各映画祭で数々の受賞を果たし、日本でも東京国際映画祭で上映され、配信もされています。

08203 台湾の大きな映画賞のひとつ金穂奨は、短編映画のアワードです。
一般、学生それぞれ劇映画、ドキュメンタリー、アニメ、実験作の部門があり、受賞作は期間限定で映画館で上映されます。
いま台湾で活躍する監督のほとんどが、ここから巣立っています。
今年の金穂奨は6月11日に発表され、グランプリに選ばれたのは学生部門の劇映画でした。現役大学生の監督ふたりがこれからどんな活躍を見せるのか、楽しみです。
※参考記事
http://www.asianparadise.net/2022/06/post-bb73a9.html
 
08204 この金穂奨で審査員特別賞と美術賞、観客賞を受賞したのが、今日一番最初にご覧いただいた潘客印(パン・カーイン)監督のデビュー作『旅立ち』です。
3月の大阪アジアン映画祭でも『姉ちゃん』というタイトルで上映されました。
穏やかな家族に起きる小さなさざ波によって家族の絆を描くとても素敵な作品ですが、先ほどもお伝えしたように、これは監督自身の家族の物語だそうです。
映画に出てくる弟が監督で、お姉さんが養女だった事実を元に描きました。

08205 映画の手法として、監督自身である弟の目線からの描き方もあったのではないかと思いましたが、監督は観客がお姉さんの哀しみや苦しみ、向き合うものを観客が一緒に体験して欲しいと思い、お姉さんの視点で描いたそうです。
ラストの台北へ旅立つ主人公と、それを見送る駅のプラットフォームでのシーンが、とても味わい深くて何度見ても涙が出てきます。
監督はこのシーンをあえて長回しのワンカットで、6テイク撮りました。

08206 主人公を演じた黃珮琪(ホアン・ペイチー)はモデルで、この映画が初めての演技経験でした。
監督は喜怒哀楽をしっかり表現できることがポイントで選び、この起用は大成功だったと語っています。
本作は2021年の金馬奨でも短編映画の作品賞にノミネートされ、桃園電影節で審査員特別賞、黃珮琪は未來之星獎を受賞しています。
先ほどお話ししたラストの駅のシーンでは、6回全て違う泣き方をしたそうですが、監督は最初のテイクを採用したと言っていました。

08207 そして、映画の舞台となったとのは、台中の南に凛烈する彰化の内陸の街永靖。
素敵な日本式庭園や老街と呼ばれる古い街並みなど観光スポットもあり、実際の監督の実家がある所で、少年時代の懐かしい景色や生活をほぼ再現しました。
メインの家は監督の実家ではありませんが、小道具などどこかで見たことあるなぁと思ったら、スタッフが監督の実家から借りてきたものだったりしたそうです。

08208 そして、お気づきになった方もいるかと思いますが、予備校の主任役を鄭有傑​(チェン・ヨウジエ)監督が演じていて、この作品のエグゼクティブ・プロデューサーでもあります。
もともと潘客印監督は鄭有傑​監督と長年の付き合いで、この映画についても折りに触れて色々相談したりアドバイスをもらっていたそうです。
そして。俳優としても活躍している鄭有傑​監督に出演をオファーし、エグゼクティブ・プロデューサーを引き受けてもらったということです。

08209 鄭有傑​監督がエグゼクティブ・プロデューサーを引き受けてくれて、監督はとても心強く、それだけでなく編集の段階で悩んでいた時に、実際に編集の様々なトライアルをやってみせてくれたそうです。
鄭有傑​監督自身も、『親愛なる君へ』の製作に入っていたにも関わらず、様々なサポートをしてくれて、本当に感謝していると言っていました。
こういった編集サポートのエピソードは、他にも何人かの監督に聞いたことがあり、台湾映画界のクリエイターの皆さんの絆葉、本当に強いのですね。

082010 次の『ゴッドハンド』は、短編で数々の受賞歴を持つ李宜珊(リー・イーサン)監督の新作です。
2021年の金穗獎で、劇映画部門の作品賞、監督賞、そして主演の楊麗音(ヤン・リーイン)が俳優賞を受賞しました。
前作『亮亮與噴子』は2018年の金穗獎で作品賞と主役の李雪(リー・シュエ)がパフォーマンス賞を獲得し、2017年の金馬奨の短編部門にノミネートされています。

082011 海辺の道路脇で檳榔店を営む3人の女性のたくましい生命力に圧倒される本作は、監督がお母さんの手はなんでもできるということから思いついた作品だそうです。
監督は十分な教育を受けさせてもらったのに解決できないことがあり、あまり教育は受けていないお母さんに教えてもらうということを経験し、母親の知見や知識、そしてそれを行う手の技に敬意を表するとおっしゃっていました。
そうして、色々なものの修理やメイク、ボクシング、男性を喜ばせる技ほか、様々なゴッドハンドを持つこの映画の主人公の音(イン)にその思いを投影したのです。

082012 主人公の音を演じたのは楊麗音、舞台出身の名女優で、多くの侯孝賢(ホウ・シャオシェン)映画にも出演、最近では『先に愛した人(原題:誰先愛上他的)』や『瀑布』ほか。ドラマも文芸作からアイドルドラマまで数え切れないほど出演していますので、どこかで見た顔だと思った方も多いと思います。
先ほどもお話ししたように、本作で金穗獎と桃園電影節の俳優賞を受賞、ドラマアワードの金鐘獎でも主演女優賞の受賞歴があります。
この映画では色々トラブルの多い人生ですが、正面から立ち向かう逞しさとその裏にある哀しみの表現に心を打たれます。

082013 事故で夫を亡くし保証金ももらえず、専業主婦から娘とビンロウ店を営む女性の役は潘麗麗(パン・リーリー)、台湾の伝統芸能「歌仔戲」の有名な女優です。
「歌仔戲」というのは、台湾で知られているおもしろい民間伝説をもとにした時代劇を、台灣語で演じ歌うもので、日本の大衆演劇をイメージしてもらえるとわかりやすいと思います。
ドラマは文芸作や家族劇に多く出演し、映画は本作含めて6本出演しています。
監督は、楊麗音と潘麗麗と一緒に仕事をしたいとずうっと思っていて、今回の共演に当たっては、周りの人たちから台湾版『テルマ&ルイーズ』のようだねと言われたそうです。さすがに見事なコントラストでした。

082014 もう一人、ビンロウ店の看板である夢夢役の李亦婷(リー・イーティン)は、なかなか検索してもヒットしないと思っていたら、監督によるとこれが初めての演技だそうです。
実は、彼女のお姉さんは張作驥(チャン・ツォーチ)監督の『愛が訪れる時(原題:當愛來的時候)』で鮮烈なデビューをし、2019年に『野雀之詩』で台北電影賞の主演女優賞を獲得した李亦捷(リー・イージエ)。
監督は最初李亦捷にオファーをしたのですが、この役なら妹の方が合っていると紹介されたのが李亦婷だったそうです。
ベテラン2人にフレッシュな新星のアンサンブルは、とても良い効果を出していましたね。

082015 この映画が撮影されたのは、台湾中部の苗栗です。
監督は一貫して社会の低層で生きる人々を描いてきましたが、その舞台となるのは都市部ではなく、地方の街がふさわしいと思っているそうです。仕事で台北から南部に行くことが多く、いつも海と山のある苗栗を通るとき高速道路から見える大神像が気になっていて、ここで撮影することになりました。
映画の最初の方で音が見上げて拝むあの男性の神像として使われており、五穀宮にある農業と薬の神様です。
そしてこの神様は女性もいて、車で10分ほどの距離にある「龍鳳宮」に鎮座する住民を守る神様。監督の前作『亮亮與噴子』に出てきます。

082016 そして最後にご覧いただいた『聞いちゃいない(原題:講話沒有在聽)』は、多くのドキュメンタリーや劇映画の編集でキャリアを積んだ李念修(リー・ニエンショウ)監督初の劇映画監督作品です。
監督デビューしたのは2016年『河北臺北』というドキュメンタリーで、お父さんの半生を描き、台北電影節や台灣國際女性映画祭で短編映画賞を受賞し、日本の山形国際ドキュメンタリー映画祭にも出品されました。
今回の初の劇映画もまた、監督のお父さんの最期の日を描き、ご自身の体験をもとに笑いと涙と感動の物語となっています。

082017 この映画は、前作のドキュメンタリーで15年かけて作ったもののお父さんはその完成を待たずに亡くなり、監督にはやり遂げられなかったという思いがあり、その気持ちを別の形で描こうと思って作った作品なのだそうです。
前作から6年のブランクがあるのは、監督が悲しみを昇華し次へ進むための時間だったと言っています。
破天荒でドラマチックな人生を送ったお父さんだったので、それを反映するために死という悲しい出来事をブラックユーモアを込めて描きたいと思ったということです。

082018 この家族の物語を描くあたり、ご家族の反応がどうだったのか気になり監督に聞いてみました。
生前のお父さんも含めて、みんな監督の仕事をよく理解できず、特にお母さんは前作のドキュメンタリーを見た時にも「仕事を変えた方が良い」と言われたそうです。
映画作りへの情熱や努力を解ってもらえずにとても悲しい思いをしたそうですが、今になるとそれもまた苦労する娘への愛なのだということが理解できるようになったとおっしゃっていました。
それでも、今回は豪華キャストで、お母さんは自分の役を楊貴媚(ヤン・グイメイ)が演じると聞いて嬉しそうだったということです。

082019 キャストについては、本当に豪華な名優が顔を揃えていて、短編映画ではとても珍しいことです。
監督はお父さん役の金士傑(ジン・シージエ)とお母さん役の楊貴媚のキャスティングをプロデューサーに話したところ、当然無理だろうからプロデューサーはBプランは?と聞いたそうです。
でも監督は「ない」と言い、ダメもとでオファーしたところ、なんと二人とも脚本が気に入り承諾してくれました。

082020 金士傑は、舞台と映像で活躍する名優で、台湾ニューシネマの時代から楊德昌(エドワード・ヤン)監督や侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督はじめ台湾の名作はもちろん、香港の王家衛(ウォン・カーワイ)監督の『グランドマスター(原題:一代宗師)』や中国の『ブレイド・マスター(原題:繡春刀)』ほか多くの作品に出演する国際的な俳優です。
今回監督は、金士傑から実際のお父さんの口調などを再現する必要があるかどうかを聞かれたそうですが、金士傑ほどの名優ですからこの役の深さと広がりを演じてもらえればそれで十分だと答えたとおっしゃっていました。

082021 一方のお母さん役の楊貴媚もまた、1980年代から映画やドラマ第一線で活躍する輝かしい受賞歴を持つ女優で、台湾ニューシネマの巨匠たちの名作のほか、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)作品のほとんどに出演しています。
最近では、昨年日本でも公開された『無聲 The Silent Forest(原題:無聲)』の校長先生役が印象深いですね。
本作では、ユーモアとペーソスの表現の見事なバランスで、作品を支えています。

082022 そのほか息子と2人の娘が登場しますが、実際には監督は三姉妹。
でも、予算の関係で娘を2人にして三姉妹を融合させたということです。
上の娘を演じたのは、張詩盈(チャン・シーイン)。舞台出身の演技派で、映画やドラマで活躍しています。
2010年に『父の初七日(原題:父後七日)』で台北電影賞の助演女優賞、2019年には『我的靈魂是愛做的』で金馬奨の助演女優賞を受賞。
妹役の梁舒涵(リャン・シューハン)はドラマの出演が多く、2019年に金鐘獎で新人賞を獲得しています。
兄を演じた竺定誼(ジュー・ディンイー)は舞台俳優で、警官役の張再興(チャン・ザイシン)は映画とドラマで売れっ子のバイプレイヤー。
みんな個性的で良い味を出していましたね。

082023 さて、映画の中で川の流れの音が時を告げる時計が出てきて、次女が「トイレの音と思った」と言うシーンがあります。
そして、最後にいつも散歩していたという川縁の道を、亡くなったお父さんを車椅子に乗せて家族が歩くシーンも心に沁みますね。
監督は、人生は長い川のようで、人は死んで肉体はなくなってもそれで終わりではなく、その人の言葉や書き残したもの、家族との記憶はずうっと残され流れ続けていくという考えを川の音と川の風景で表現したそうです。

今回ご覧いただいた3作は、短編とは言えとても濃い内容の作品で、監督にお聞きした興味深い話がたくさんあります。
8月21日から順にPodcastでノーカットインタビューを配信しますので、ぜひお聞き下さい。
そして、最初の短編映画事情の時に、長編化された作品についてお話ししましたが、なんと今日ご覧いただいた『旅立ち』と『聞いちゃいない』は長編化の予定があります。
どちらもまだ準備段階ですが、どんな風に物語がふくらんでいくのか、とっても楽しみです。
進捗状況がわかりましたら、アジアンパラダイスでお知らせします。

082025 では、ここからは台湾の生活と習慣が見える家族を描いた映画をご紹介します。
台湾での旧正月映画は、台湾ローカルの生活や人々を描いた作品が多く公開されていました。
その多くは家族で見て楽しめるコメディですが、最近はこれがかなり減ってきています。
旧正月映画の顔であった大人気のコメディアン豬哥亮(ジュー・ガーリャン)が亡くなったこと、ホラーやサスペンスのブーム、家族の映画でも社会問題を背景にした作品の評価が高くなり、台湾映画界の様相も変わってきました。

082026 そんな中で、時を経ても色あせない秀作。まず最初は『聞いちゃいない』でも出てくる台湾の地方の葬儀をテーマにした王育麟(ワン・ユーリン)監督の『父の初七日(原題:父後七日)』。
台北で働く主人公が父の訃報を聞き帰郷、葬儀を仕切る道士に言われるまま弟と二人で葬儀をめぐる喧騒と混乱を、涙あり笑いありで描いています。
台湾の地方ならではの風習は厳粛でありながら滑稽さも同居し、野辺送りまでの怒濤の7日間が過ぎ、突然襲ってくる喪失感と父への思い…愛する人の死を受け入れ、明日への一歩を踏み出していくヒロインの姿に、いつしか見ている自分も感動の涙が落ちてくるのを気づきます。
日本での権利が切れているのが、とても残念です。

082027 『ゴッドハンド』でメインキャストの一人が伝統芸能「歌仔戲」の女優だとご紹介しましたが、この家族を中心に構成されている歌仔戲の劇団の人間模様を描いたのが、同じ王育麟(ワン・ユーリン)監督の『天龍一座がゆく(原題:龍飛鳳舞)』です。
看板スターがケガをしたためそっくりな清掃員を身代わりに仕立て上げた一座の、夫婦愛や浮気、嫉妬やいがみ合いなど色々な人間模様が笑いと涙で展開されます。
伝統芸能の裏側と、お寺や廟、街の広場などで公演する移動劇団の暮らしぶりが生き生きと描かれたハートフル・コメディです。
2017年にこの上映イベントで見ていただき、2020年には「台湾巨匠傑作選」の一作として日本各地で上映しました。

082028 次にご紹介するのは、日本では上映も公開もされていないのですが、『逗陣ㄟ(英題:Get Together)』という作品です。
1970年代の台北を舞台に、ある一家とその街の人々の悲喜こもごもを描いた人情劇で、台湾版「Always 三丁目の夕陽」とも言えるしみじみした作品です。
おかっぱ頭の女の子が毎日友達を引き連れて路地を駆け回っている様子や、ちょっとしたことで大騒ぎになるご近所さんのてんやわんやの中で、頼りない男達を叱咤激励するしっかり者のお母さんは、『ゴッドハンド』で監督が描きたかった女性像そのものでした。

082029 次は、まだ日本でも配信などで見られる陳玉勳(チェン・ユーシュン)監督の『祝宴!シェフ(原題:總舖師)』。
台南を舞台に伝統的な宴席料理を作る出張料理人總舗師(ツォンポーサイ)による"人々を幸せにする究極の料理"を巡って繰り広げるコメディです。
亡き父がレシピノートに残した“料理に込めた想い“に心を動かされたヒロインが、時代の趨勢で衰退の一途をたどっている宴席料理の返り咲きをかけ、全国大会へ出場する物語で、食文化を通して見えてくる台湾の魅力が満載です。

082030 最後は、2019年にこの上映イベントで上映した『2003年ぼくの旅(原題:花甲大人轉男孩)』。
2017年に大ヒットしたドラマ『お花畑から来た少年(原題:花甲男孩轉大人)』を、同じスタッフ・キャストで映画化して、台湾で2018年の旧正月に大ヒットした人情コメディです。
人気シンガーソングライター盧廣仲(クラウド・ルー)が主役で、旧正月映画なのでその他のキャストも趙豪華。
主人公の結婚話から始まり、15年前にタイムスリップして巻き起こす大家族の騒動は、三合院という伝統的な建築スタイルの家や、ゆる〜い雰囲気の味わい深い生活感に彩られ、台湾ロスのいま、また無性に見たくなる映画です。
こういった台湾の生活と習慣が見える家族を描いた映画の製作数が、また増えると良いですね。

082031 最新情報です。
この上映会で上映した『Hig hFlash 引火点』『よい子の殺人犯』の莊景燊(ジャン・ジンシェン)監督の新作『科學少女』が、9月16日から台湾で公開になります。
病気で母を亡くした少女の家庭に、エンジニアの父親が亡き妻とそっくりのロボットを作り、2人の娘の面倒をみてもらおうとするのですが、果たして娘達はロボットの母を受け入れられるのか…というストーリー。
主人公の少女は子役出身の盧以恩(ルー・イーオン)、母親役の姚以緹(ヤオ・イーティ)はロボットの二役を演じ、父親は王傳一(ワン・ジュアンイー)、主人公の友達役で『星空』の林暉閔(リン・フイミン)が出演しています。
家族とAIを題材に、どんな世界が広がるのか、とても興味深い作品です。

082032 日本では、台湾ホラー映画の大ヒット作『紅衣小女孩』シリーズ二作が、『紅い服の少女 第一章 神隠し/第二章 真実』の邦題で9月30日(金)よりシネマート新宿・シネマート心斎橋ほか全国公開されることになりました。
本作は台湾の都市伝説を元に作られ2016年に台湾で興行成績第一位となり、このヒットを受けてすぐに続編『紅衣小女孩2』が製作され、2017年も続けて台湾映画興行収入トップとなりました。
一作目の主役黄河(ホアン・ハー)と許瑋甯(アン・シュー)は、この年の台北電影獎で主演男優賞と主演女優賞を獲得しています。
監督は、これが長編第一作の程偉豪(チェン・ウェイハオ)。この後、日本でも公開された『目撃者 闇の中の瞳』や、Netflixで配信中の『Soul: 繋がれる魂(原題:緝魂)』と、ヒットを放ち続けています。
この映画はホラーではありますが、家族を描いた映画でもあります。

このアフタートークは、映像として10月31日までアーカイブ配信します。
どなたでもご覧になれますので、ぜひどうぞ。

https://v.classtream.jp/tw-movie/#/player?akey=1d142548b7eaf314a75c333e7ba495fb

監督のメッセージ動画はこちらからどうぞ。
https://v.classtream.jp/tw-movie/#/player?akey=ee3b99990f6a60043f00f77c4ee1cc0f

次回は9月17日(土)14時から。
大学時代から10年後の男女3人の愛と友情を描いた青春ラブストーリー『もう一度君を追いかけて(原題:跟你老婆去旅行)』です。
トークは本編解説、家近年減少する青春映画・恋愛映画と観客のニーズ。

詳細は8月22日に台湾文化センターとアジアンパラダイスでお知らせします。
どうぞ、お楽しみに!

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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