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2022/10/30

蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督・李康生(リー・カンシェン)メディア交流会 in 台湾文化センター

1030cai1 東京国際映画祭と東京フィルメックス、台湾文化センター共催のツァイ・ミンリャン監督デビュー30周年記念特集で来日した蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督と李康生(リー・カンシェン)のメディア交流会が、11月27日に台湾文化センターで行われました。
当日は、東京国際映画祭のシニア・プログラマーシニア石坂健治氏の司会で、台北駐日経済文化代表処の謝長廷・駐日代表、東京国際映画祭プログラミング・ディレクター市山尚三氏、東京フィルメックスプログラム・ディレクター神谷直希氏が顔を揃えました。

1030xie まず、謝長廷・駐日代表の挨拶では、1998年から2005年まで高雄市長をつとめていた時に蔡明亮監督が『西瓜(原題:天邊一朵雲)』を高雄で撮り、1000萬元の補助金を渡したことに触れ、「ベネチア国際映画祭の銀熊賞を獲得し、台湾の映画がとても有名になり、映画界に貢献をしてくれた。これにより、台湾はとても豊かな芸術性のある作品を、民主的に開かれた状況で世界に送り出したことでも感謝している」と述べました。

1030cai2 続いて蔡明亮監督の長いご挨拶。
「台湾映画は世界に知られるようになったが、なかなか興行収入面では難しい。それでも作り続けていくことができた。私は、世界にこれまで見たことがないような映画を見せることができたと思っている。
台湾映画は欧米だけではなく、日本でもたいへん人気があり、8作の台湾映画が日本で公開された時もあった。
台湾政府は、提出した脚本が良ければ助成金を出してくれるという形で映画製作を応援したくれたことが大きい。
更に、国際的な評価を受けた作品に対しても助成金を出してくれ、特に若いクリエイターは興行的には成功しなくても制作をつづけていくことができた。
時間が経つのは本当に早く、私も60才を超えましたが、こういうサポートがなければ、映画を撮り続けることは難しかったでしょう。
この人生は無駄では無かった、生きてきた良かったと思います。
先日ニューヨークの近代美術館で私の回顧展をしてくれましたが、今回東京国際映画祭と東京フィルメックス共催の特集をしてくれることは、たいへん光栄です。
台湾と日本、そして両国の観客にお礼を申し上げます」

1030li 次は李康生のご挨拶です。
「私たちの映画が日本で上映される機会はとても多かったと思います。映画祭や劇場公開などで、たくさんのファンの方が応援してくれます。
大阪アジアン映画祭で上映された『カム・アンド・ゴー』、『ホテルアイリス』、その他日本との合作の作品に出ることも多く、今年は日本の蔦哲一朗監督の『黒い牛』に主演しています。夏に池袋で撮影し、来年は四国で撮影予定です。日本の女優さんと共演することもいくつかありましたので、映画製作は文化交流の非常に重要な場だと思います。
日本の観客の皆さんに心から感謝します』

その後はメディアとの質疑応答になりました。
1030cai3 Q観客について
蔡明亮「私のファンは、一緒に歩いてきてくれた。今回アメリカの4つにの都市に行き、現地のファンと交流しました。イベントはいつも満員で、若い人からお年寄りまで、色々な年齢層の方がいました。
昔から私の作品を見てくれているファンの方が大好きです。私が創作スタイルを買えても、ずうっと見てくれて共に歩んでくれました。
私が探求しているのは、映画をいかに自由に開放的に撮るか、その一点です。
いま台湾の劇場で公開されるのはジャンル映画がほとんどで、なかなか幅が広がっていないと思います。
ヨーロッパとアジアの観客は違い、ヨーロッパの観客は色々なものを受け入れますが、アジアの観客は商業的な作品に興味があるようです。
ヨーロッパの観客は普段から美術館の活動と結びついた見方をしていルので、様々なジャンルを受け入れる素地を持っています
私の最近の制作の傾向は、美術館のアートフィルムに向かっています。
何故かと言うと、美術館の観客を映画ファンに育てていこうという考えがあるからです。
日本の観客は、ヨーロッパの観客に似ていると思います。
日本の多くの監督達は世界に影響を与え、台湾にも影響を与えました。黒澤明、小津安二郎、大島渚などがそうですね。
そしてうれしいのは、台湾の監督が日本の観客に影響を与えていると思う。
日本における私のファンも幅広い年齢層の方がいますが、中でも一番は黒澤明監督のスクリプターをつとめていた野上照代さんですね。
また、私の『楽日(原題:不散)』に出ている三田村恭伸と言う青年は私のファンで、いつも最前列で私の映画を見ていました。
この様に、私と日本の観客の繋がりは深いのです」

Q新作について
蔡明亮「私の新作は『ウォーカーシリーズ(原題:行者)』の9作目をパリで撮る予定です。これまでは短編でしたが、今度は長編です。完成したら日本の皆さんに見てもらいたいと思います」

Q今後の創作について
蔡明亮「私の制作は非常に受動的で、機会が与えられれば撮る、そしてお金があり、李康生が出演でき、自由があるならば撮ってみたいと思います。
そして、李康生が60才になった時に長編を撮りたいと思っています」

1030anon ここで蔡明亮監督が、一緒に登壇した俳優を紹介しました。
蔡明亮「2020年の『日子』に出たアノンです。ラオス人で、タイで知り合いました。彼の生活に興味を持ち、だんだん一緒に仕事をするようになり、主役も演じるようになりました。
彼は潜在的な能力を持っていて、歌も上手で絵も書くますが、まだ花開いていない状態なので、彼を芸術家に育て上げたいと思っています。
さきほどお話ししたパリで撮る作品にも出演しています。
彼はまだ若いので、彼が加わってくれたことで若い刺激を与えてくれ創作意欲が沸いてきます」

1030wang 続いてプロデューサー王雲霖(ワン・ユンリン)の紹介です。
「『西瓜』から私のプロデューサーをやってくれている王雲です。
最初は小道具係りでしたが、ここ数年は制作を担当してくれ、彼がいなかったら、私はどうやって生きていこうか…という感じです」

1030cai4 Q今の台湾の作品について、今回東京国際映画祭に新作が上映されない原因は?
蔡明亮「最近の台湾映画界は活発ですが、視点が市場(マーケット)を向いて商業的な作品が多くなっています。この方向は、私のような年代の監督とは違います。
興行成績も上がり、みんなが台湾映画を見るようになったが、創作力として弱いのではないかと思う。
一方日本は優れた新世代の監督が出てきている。深田晃司監督の作品は素晴らしいと思った。
そして濱口竜介監督が『ドライブ・マイ・カー』を撮って国際的にも非常に評価が高く、こういった創作力という面において新しい豊かなものを提示していると言える。ぜひ台湾も頑張って欲しいと思う」

1030cai5 質疑応答が終わると、当日が蔡明亮監督の誕生日だったため、ケーキが登場。
記念写真を撮った後は、ケーキを切り分けて参加者に振る舞ってくれました。
ケーキを食べながら参加者達が自由に話したり、メディアは取材したりという、一瞬ここは台北か?と錯覚するくらいのとても"台湾な"フレンドリーなひとときでした。

なお、今回は音声の収録環境が良くなかったため、記事のみにてお伝えしました。

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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