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2022/10/23

2022台湾映画上映&トークイベント「台湾映画の"いま"〜〜革新と継承〜」第7回『阿修羅/アシュラ(原題:該死的阿修羅)』構成と展開のおもしろさに絶讃の声!

0922asura1 2000年以降の台湾映画の新しい流れがどのように台湾映画の"いま"に繋がってきたのか、そして"いま"何が起きているのかをお届けする台湾文化センターとアジアンパラダイス共催のイベントシリーズ、第7回はある無差別殺人を通して罪とは何か?を問うサスペンス『アシュラ/阿修羅(原題:該死的阿修羅)』を上映しました。

本作は数々の受賞歴を誇る樓一安(ロウ・イーアン)監督が、ジャーナリストの書いた無差別殺人に関する3つの記事に触発されて作った最新作で、6人の登場人物が織りなす物語が3つのパートで構成され、様々な思いが複雑に絡み合っていきます。
教育、ネット社会、格差、マスコミの功罪など様々な社会問題を通してなぜこの事件が起きたのか、そして人の心に隠れている阿修羅…考えされられることの多い作品です。

好みが分かれる作品かも知れないと思ったのですが、アンケートに回答して下さった方のほとんどが気に入って下さったようでした。
「わかりやすい切り口だと油断してるとストーリーが進むにつれ「えっ!?なに!?なに!?」と脳内のHDの処理が追いつかなくなってくる展開にどんどんひきこまれていく作品」「状況によって誰の中にもあらわれうる阿修羅の姿を俳優たちが魅力的にかつ自然に演じていてとてもおもしろかった」「予想を裏切る内容がとても面白く、物事を多角的に見る監督の視点がとても好ましい」「多面的で重層的な社会や人間関係がしっかり描かれていて、よく作られた映画」「展開についていけず、え?え?となっていましたが解説を聞いて納得。面白かった」「本当に面白かった。大好きな莫子儀がこの映画でも素晴らしい演技で魅力的」「面白かった!もう一回、観たい」「テンポよく物語が進み、どんどん引き込まれていった」

複雑にからまる人間関係や、三章構造などに戸惑う要素があるため、トークではその部分を丁寧にお話ししたところ、皆さんの理解に役立ったようでした。
「最終章で、ん?となってしまいました。アフタートークで詳細がを知り納得出来た」「3部作の構成が分かりにくかったが、アフタートークの解説で理解できた」「監督や出演俳優についての解説が非常にありがたい」「疑問点が解消されたので良かった」「かゆいところに手が届いた丁寧な解説」「毎回、映画の背景や俳優について、じっくり解説してくれるので、有り難い」「映画を見たあとに調べようと思うことを全部教えてくれ、映画や映画にまつわる背景までがわかり本当に贅沢で、勉強になる」「俳優やスタッフの情報が盛りだくさんで、毎回聞くのが楽しみ」

また、映画祭の季節にちなんでお伝えした日本と台湾の映画祭情報も、ご好評をいただきました。
「各映画祭情報がありがたかった」「映画祭情報、移動面も教えてくださり参考になった」「映画祭によって作品選定の趣向が違うお話はとても興味深い」「映画祭情報はタイムリーで参考になる」

その他、今年度の最後ということで、来年も続けて欲しいというご要望や、全国で見られるオンライン方式の継続のご希望などがたいへん多くありました。

10221 この映画は昨年の金馬影展で上映されて映画ファンから熱い支持を受け、今年3月に台湾で一般公開されました。
女子高生を演じた王渝萱(ワン・ユーシュアン)は昨年の金馬奨と今年の台北電影賞で助演女優賞をダブル受賞、台北電影賞では脚本賞と音楽賞を獲得しました。
そして、来年のアメリカのアカデミー賞外国語映画賞に台湾代表としてエントリーされました。

10222 この映画の発端は、台湾で起きた実際の無差別殺人事件の報道を監督が読んで、冷血な殺人犯と伝えられるこの人のもともとの姿を見せることはできないのか、という考えからでした。
2016年にある無差別殺人犯の死刑が執行され、その時は死刑について台湾の人々が誰が死刑になるべきで、誰がそうでないかという議論があちこちで起き、監督はみんなが悪魔と呼ぶ人の実際の姿を知りたいと思ったそうです。
そして、この映画のタイトルである『該死的阿修羅』、英語に訳すと「該死的」というのは罵りの言葉になりますが、中国語では「〜ねばならない」という意味で、「阿修羅は死ぬべきだ」というタイトルだということです。

10223 監督はなぜこのタイトルにしたかと言うと、劇中に出てくる3部構成の漫画の中のひとつを「該死的」、「〜死ななければならない」という言葉にしようと思っていて、何が死ぬべきだという部分を、暴力や怒りを意味する神様がいないかなぁと周りに聞いて阿修羅というのを教えてもらったそうです。
そして色々調べていくと日本に「阿修羅」という人気ゲームがあり、主人公の少年は日本の文化に強く惹かれていることから、この少年と友達が書く漫画のタイトルにするのはとても理にかなっていると思った、ということです。
そして、主人公の少年詹文(ジャン・ウェン)が阿修羅で、彼は死ぬべきだということで、全体のタイトルになりました。

10224 この映画は三話からなる構成ですが、最初は第二話までで、異なる結末である三話目は後から追加したそうです。
冷血な殺人を犯した少年が、実は純粋な部分があるのではないかということを表したくて、加えることになりました。
第三話は「三途の川に架かる橋」というタイトルで、人が死んで三途の川を渡ると転生して別の人生が始まるということを表しています。登場人物が別の選択をしたことで、全く異なる結果になるということを描きたかったということです。

10225 こうして最終的に三話の構成になり、それぞれのタイトルは少年達が書く漫画のタイトルになっています。
事件が起きる前に書いたのが「怒れる零」、この零は数字のゼロではなく仏教に由来する「無」のようで、「怒りの根源は逃れられない無」と解釈できます。
第二話は事件が起きた後、殺人犯の少年は死ぬべきかというテーマで「阿修羅は死ぬべきか」。
第三話の「三途の川に架かる橋」は先ほどお話ししたように、別の時空の物語で無差別殺人事件は起こりません。
監督は時間はループ、輪になっていて、途中で何か起こると、そこからまた別の物語が発生していくという考えで、これが3つのパートを設定した意図であり概念だと言います。

10226 この脚本は5年前に書き始め、13稿が決定稿になったそうですが、6稿めまではシンプルに殺人事件となぜそれが起きたかということを書いていたのですが、7稿めから第三話を加えたそうです。
そして、監督の作品は陳芯宜(チェン・シンイー)監督との共同執筆が多く、基本的には実際に監督をする方がメインで書くというスタイルです。今回は最初は意見を聞く程度で、11稿か12稿あたりから正式に参加してもらい、彼女によって作品に暖かさが加わりました。

10227 また、エンドクレジットに「脚本協力」として莫子儀(モー・ズーイ)の名前があります。脚本も書く莫子儀ではありますが、監督と莫子儀は『一席之地』や『台北歌手』ほか一緒に仕事をすることが多く、今回は俳優として役作りの話し合いでここはこういう台詞の方が良いなど色々提案してくれ、監督はじゃあ任せるよ、ということで莫子儀が演じるジャーナリストの部分はほとんど彼自身が考えた台詞で演じたそうです。
台詞だけでなく、外見や性格なども彼の提案をもとに一緒に創り上げていったので、クレジットに名前が載りました。

10228 では、改めて監督のプロフィルをご紹介します。
2002年から短編やテレビ映画を撮り始め、2009年莫子儀主演の『一席之地』で長編劇映画デビュー。この年の台北電影奨で陸弈靜(ルー・イーチン)の助演女優賞、美術デザイン賞、観客賞を受賞しました。
2016年のサスペンス映画『失控謊言(英題:White Lies, Black Lies)』、2018年に舞台劇の手法で話題になったドラマ『台北歌手』が金鐘賞で脚本賞を獲得。
脚本家としても数々の秀作を手がけ、俳優として映画『悪の絵(原題:惡之畫)』やドラマ『おんなの幸せマニュアル2 (原題:俗女養成記2)」などに出演もしています。

10229 次にキャストについてご紹介します。
無差別殺人の犯人の少年を演じたのは、映画『先に愛した人(原題:誰先愛上他的)』で注目を浴びた黃聖球(ホアン・シェンチョウ)です。いま19才の大学生。
この映画が初主役となりますが、監督はオーディションで子犬のような純粋な目がこの役にピッタリだということで起用したそうです。今回のエンディングに使っているのが、守夜人 Night Keepersというグループの「犬のように純粋な目(原題:狗一般純潔的眼)」という曲なので、これは決まり!ということになりました。
本来は明るい性格だそうですが、監督のアドバイスにより父親からのプレッシャーに押しつぶされる内向的な少年をしっかり演じています。

102210 ジャーナリスト役の莫子儀は、舞台と映画を中心に活躍し、早くから若き演技派と呼ばれていましたが、いまや熟成期。2018年に本作の樓一安監督のドラマ『台北歌手』で金鐘獎の脚本賞、2020年の映画『親愛なる君へ(原題:親愛的房客)』では台北電影賞と金馬奨で主演男優賞に輝いています。(トーク映像で金鐘獎の主演男優賞と言っていますが、脚本賞の間違いです。お詫びして訂正します)
私も何度かインタビューしていますが、本当に細かいところまでこだわる役者魂を絵に描いたような俳優で、今回のジャーナリスト役も独特な記者像を創り上げていました。
夜市で殺人を目撃し、犯人を捕まえて激しく殴打するシーンは、正義感の裏に阿修羅の顔がのぞくというこの映画の大事なテーマを見事に体現していました。
監督は、そういうこだわりで今回は彼にとってもこれまでに演じたことのないキャラクターになっていると、絶讃しています。

102211 被害者の婚約者を演じたのは、こちらも樓一安監督と縁の深い黃姵嘉(ホアン・ペイジア)。
大阪アジアン映画祭で上映された『ポーとミーのチャチャ(原題:寶米恰恰)』や『逆転勝ち(原題:逆轉勝)』に主演したので、ご覧になっている方もいらっしゃるかも知れませんね。
大阪アジアン映画祭で新人賞、樓一安監督の『台北歌手』で金鐘獎の主演女優賞を受賞しています。
この映画では仕事が忙しくて婚約者にも大きな声で苛立ちをぶつける役で、これまでの可愛かったり上品な役から一転した演技で監督の期待に応えました。
来年も、主演映画が公開を控えています。

102212 樓一安監督の2016年のサスペンス映画『失控謊言(英題:White Lies, Black Lies)』でデビューした王渝萱(ワン・ユーシュアン)は、この映画で昨年の金馬奨と今年の台北電影賞で助演女優賞をダブル受賞する快挙を成し遂げました。
監督は、彼女の演技を見て前作からの驚くべき成長を目の当たりにしたそうです。そのひとつの例が、母親からワインの瓶を投げつけられるシーン。演出通りの演技の後、彼女はもうひとつのパターンをやってもいいですか?と言い、静かに哀しみと戸惑いを表現して、監督は震えるほどの衝撃を受けたと言っていました。
この後公開待ちの作品が二作あるという、楽しみな若手俳優です。

102213 主人公の少年の友人を演じた潘綱大(パン・ガンダー)は、もともとの役のイメージとは全然違ったのですが、監督はキャスティング担当からぜひ彼の演技を見て欲しいと言われたそうです。そうしたら確かに素晴らしい演技だったので、即決定。キャラクター設定を彼に寄せて直すことになりました。
さらに、この阿興(アシン)は詹文(ジャン・ウェン)の両親を監禁するという行為に走りますが、監督はこれには強い理由が必要だと思い、詹文への愛という設定を加えたことも明らかにしてくれました。
長編映画はこれが2作目ですが、金馬奨でも台北電影賞でも新人賞にノミネートされました。

102214 夜市で撃たれて死ぬ公務員は、賴澔哲(ライ・ハオジャ)。これまでドラマに4作出ていましたが、映画は本作が初めてです。忙しい婚約者から相手にしてもらえず、ゲームユーチューバーとして発散する小市民の姿は、リアリティたっぷりでした。
監督は別の現場に陣中見舞いに行ったときにたまたま出演していた彼を見て、ちょうど書き上げた小盛(シャオシェン)の役にピッタリだと思い、直接オファーしたそうです。彼は暖かさやコメディ要素も備えていて無垢なところが気に入り、そういうところが観客から好感を持たれ、第一話では被害者ですが、第三話では女子高生の琳琳(リンリン)を殺してしまう意外性を与えるという効果も狙ったようです。

102215 このメインの6人を脇で支えるのが、実力派の丁寧(ディン・ニン)と張詩盈(チャン・シーイン)です。二人とも舞台や映画、ドラマで活躍し、台北電影賞や金馬奨の主演女優賞ホルダーです。
殺人犯の少年詹文の母親役の丁寧は、最近では東京国際映画祭で上映されNetflixで配信中の『弱くて強い女たち(原題:孤味)』で味わい深い愛人役が印象的でした。本作でも離婚で離ればなれになった息子への愛と微妙な距離感の表現が見事です。
張詩盈が演じた女子高生琳琳の母親は、DVのせいで酒に依存するものの、屋台を引いて娘を案ずる親心を丁寧に見せてくれました。

102216 そして、第三話が終わって映画のタイトルが出た後に、琳琳とお母さんの心温まるシーンが挿入されています。
第三話で琳琳は殺されてしまうのに、なぜまたここで別展開のシーンなのか、と気になり、監督にその意図を聞いてみました。
監督の作品はこれまでも多くが残酷な結末です。今回も第三話で良い結末を迎えるのかと思いきや、最後にみんなが突き落とされるような展開になります。そこで監督は、こんなにも希望のないエンディングで良かったのか、と考え、このシーンを加えることでもしかしたら琳琳が殺されたのは阿興が書いた漫画の世界だったのか、とも思えるような温かさを感じてもらおうと思ったからだと言っていました。

102217 最初は死刑制度を考えることで始まった構想が、善と悪の定義はどうなのか…と掘り下げていった監督は、こう語っています。
「人には色々な面があり、加害者も被害者もその周辺の人々もその事件に関する一面だけでなく、その他の多様な面も見せて行きたい。そして、誰もが阿修羅になる可能性がある。
何か起こすときも、その人なりの理由がある。もしかしたら阿修羅にもほかの面があるのではないか、そういうことを問いかけたくてもの作品を作った」

102218 ここからは秋の映画祭シーズンということで、日本と台湾の映画祭情報と、作品の選定傾向などについてお話ししました。
まずは、明後日10月24日から11月2日まで開催される東京国際映画祭情報です。
今年は上映会場の拡大、上映本数の拡大、海外ゲスト招へいの拡大という3つの柱が打ち出され、プログラマーの交代による部門改変も行われました。
上映本数は主要9部門の上映本数が昨年の86本から110本へと増え、コロナ禍であまりできなかった海外からのゲスト招へいが本格的に再開されます。

102219上映会場は、TOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズシャンテ、東京国際フォーラム、有楽町よみうりホール、角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、シネスイッチ銀座、丸の内 TOEIほか日比谷・有楽町・銀座一帯の映画館やホールです。
一昨年までの六本木はシネコンのTOHOシネマズ六本木がメインで、移動が比較的楽でしたが、昨年からは移動時間を加味して効率よくスケジュールを組むようにしなければならなくなりました。
(アフタートーク映像では昨年から会場が変わったと言っておりますが、一昨年からの間違いです。お詫びして訂正します)

102220 上映作品を決めるプログラミング・ディレクター は、東京フィルメックスを立ち上げてディレクターを務めていた市山尚三さんが、2021年から東京国際映画祭情報のプログラミング・ディレクターに就任しています。
アジア部門のプログラミング・ディレクターは2007年から石坂健治さんが担当していますが、2020年から役職名がシニア・プログラマーになりました。
この他、作品選定アドバイザリーボードとして早稲田大学名誉教授の安藤紘平さん、映画ジャーナリストの金原由佳さん、関口裕子という外部専門家が協力しています。

102221 そして今年は、台湾映画特集や香港映画特集というカテゴリーがなく、中華圏の作品は台湾映画が蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督をFocusした特集上映で短編を含む8作と『エドワード・ヤンの恋愛時代(原題:原題:獨立時代)』のレストア版。香港映画は『消えゆく燈火(原題:燈火闌珊)』と『神探大戦(原題:神探大戰)』の2作、中国映画は『へその緒(原題:脐带)』のみ。
蔡明亮特集やエドワード・ヤンの恋愛時代(原題:原題:獨立時代)』のレストア版が上映されるのはうれしいですが、やはり台湾の新作がラインナップされていないのはとても残念です。

102222 10月29日から11月5日まで開催される東京フィルメックスは、アジアを中心に世界から新進気鋭の監督たちの作品を集め、ここでしか観られない注目作品がラインナップされる映画祭ですが、昨年からプログラム・ディレクターが神谷直希さんに変わりました。
こちらのメイン会場は有楽町朝日ホールで、例年と変わりません。
運営に関してはとても厳しい状況にあり、クラウドファンディングによる支援を呼びかけていました。

102223 東京フィルメックスを立ち上げた市山尚三さんが東京国際映画祭のプログラミング・ディレクターに就任したため、開催時期や特集企画のコラボレーションが始まり、今年は、「ツァイ・ミンリャン監督デビュー30周年記念特集」が共催となります。
フィルメックスでは、『ふたつの時、ふたりの時間』『西瓜』『ヴィザージュ』が上映されます。
そして、中華圏では香港の『ホテル』がクロージング作品として上映されますが、残念ながら台湾映画の新作はありません。

102224 日本の映画祭ではどのように上映作品が選ばれるのか、皆さんとても興味をお持ちだと思います。
エントリーシステムをメインに、選定は事前に外部の識者など複数の人が行い、最終的にプログラミング・ディレクターが決定します。
作家生を重視するので、映画祭が注目する監督の作品は、新作が発表されるると継続的に上映することが多いです。
また、東京国際映画祭では日本初上映、アジア初上映作品であることが重要視されます。直前に釜山国際映画祭があるので、選定も色々たいへんでしょう。


102225 そして、選ぶのは人ですから、傾向が違うこともあります。
例えば、東京国際映画祭のアジア作品を選ぶ石坂健治さんは東南アジアに強く、その前のプログラミング・ディレクター暉峻創三さんは東アジアの作品も充実した作品がラインナップされていました。
暉峻さんは2009年から大阪アジアン映画祭のプログラミング・ディレクターとして活躍されているので、東アジアはもとよりアジア全域から素晴らしい作品を揃えてくれます。
来年も3月10日から19日に開催と日程が発表されているので、楽しみですね。

102226 一方台湾では、いま高雄電影節、高雄映画祭が10月30日まで開催中です。
この映画祭は年度ごとに決めたテーマの作品を世界各国から集めて上映しています。今年は「惡宇宙(邪悪な宇宙)」ということで、反戦を描いた作品が8作上映されています。
その他多くのカテゴリと特集がありますが、高雄は撮影の誘致や資金補助などを積極的に行っており、高雄政府が補助金を出した新作の上映も特徴のひとつです。
そしてもうひとつの目玉として、国際短編映画コンペティションは2011年からスタートし、台湾最大の短編映画祭りです。このコンペはワールド部門、台湾部門、VR部門、子供審査員部門に分かれ、それぞれで競います。

102227 11月2日から20日までは台湾最大の映画祭、金馬影展、金馬映画祭が開催されます。
こちらは台湾作品と海外作品が数々のカテゴリと特集上映が展開される大規模な映画祭です。
今年で59回目を迎える歴史のある映画祭で金馬奨のノミネート作品はじめ、新作そのほか上映作品数も多く、関連イベントも活発です。
今年はオープニングは詹京霖(ジャン・ジンリン)監督の家族の愛憎を描いた『一家子兒咕咕叫(Coo-Coo 043)』、クロージングは程偉豪(チェン・ウェイハオ)監督の爆笑コメディ『關於我和鬼變成家人的那件事(Marry My Dead Body)』です。
会場は台北の西門の映画館をメインにしており、時には東の信義地区のシネコンを使うこともあるので、台北の西から東への移動はけっこう苦労します。

102228 この金馬影展とリンクしているのが、金馬奨です。さきほどもお話ししたように、金馬奨のノミネート作品は全て上映され、授賞式は映画祭の閉幕直前に行われます。
今年もすでにノミネート作が発表され、台湾映画と香港映画が拮抗する形になっているのが今年の特徴だと思います。発表会見では、今日ご覧いただいた『阿修羅/アシュラ』で2021年に金馬奨で助演女優賞を獲得した王渝萱(ワン・ユーシュアン)と、2019年に新人賞にノミネートされた曾敬驊(ツェン・ジンホア)が進行役を務めました。

102229 今年の最多ノミネートは、昨年東京国際映画祭で上映された香港のサスペンス映画『智齒(リンボ)』で14部門、続く台湾のホラー映画『咒(呪詛)』とヒューマンドラマの『一家子兒咕咕叫』が13部門となっています。
個人賞では主演男優賞に張繼聰(ルイス・チュン)、林家棟(ラム・ガートン)、黃秋生(アンソニー・ウォン)と香港3人、台湾は張孝全(チャン・シャオチュアン)と游安順(ユー・アンシュン)という顔ぶれで、どういう結果になるのか楽しみです。
そして新人監督賞に、俳優の柯震東(クー・チェンドン)が『黑的教育』でノミネートされ、注目を集めています。

102230 さて、日本では台湾映画界のレジェンド的フォーリーアーティストと呼ばれる音響効果技師と台湾・中国映画の舞台裏を描き出した王婉柔(ワン・ワンロー)監督のドキュメンタリー映画『擬音 A FOLEY ARTIST』が11/19(土)よりK’s cinemaほか全国順次公開が決定しました。
本作は音の職人である胡定一(フー・ディンイー)の仕事にフォーカスを当てながらも、総合芸術である映画の様々な役割を果たしている撮影や編集、監督ほか多くのプロフェッショナルに取材して、そこから台湾映画全体を描き出した記録です。

102231 この映画で描かれるフォーリーアーティストの胡定一は、2017年の台湾公開時に金馬奨で年度台湾映画傑出製作者賞を受賞、この台湾文化センターとアジアンパラダイス共催の上映イベントでも上映しました。
実はその当時から私も日本公開に向けて色々動いており、少し時間はかかりましたが、いよいよ一般公開されることになり、本当にうれしく思います。
映画の登場人物の動きやシーン、雰囲気を追いながら、想像もつかないような道具と技を駆使してあらゆる生の音を作り出す職人と台湾映画史の記録。ぜひ劇場でご覧下さい。

このアフタートーク映像と樓一安(ロウ・イーアン)監督メッセージは、以下にアクセスしていただくと、10月31日までどなたでもご覧いただけます。

アフタートーク
https://v.classtream.jp/tw-movie/#/player?akey=7ac0100436b20b87fb444b46ac28789f

樓一安(ロウ・イーアン)監督メッセージ
https://v.classtream.jp/tw-movie/#/player?akey=49c3bc46828e8c937424a77065c5d716

また、樓一安(ロウ・イーアン)監督のロングインタビュー音声は、10月24日(月)にPodcast配信します。

これで今年の上映は終わりましたが、これからも素敵な台湾映画をご紹介していくことができれば、と思います。
ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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