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2022/12/31

2022年の台湾映画を振り返る

1231tw_20221231153101 2022年の台湾映画はジャンル映画の中でもホラー花盛りで、興行収入で一億超えはトップの『呪詛(原題:咒)』のみですが、ベスト10内に合わせて4作ランクインしました。
しかし、トップの『呪詛(原題:咒)』と二位の『我吃了那男孩一整年的早餐』は1億台湾ドルの差があり、社会派作品『流麻溝十五號』は二位の半分、以下は大きな差がないという状況です。
年々製作数が減ってきている青春映画が二位で善戦していることはうれしいことですが、ベスト10の中で金馬奨や台北電影奨でトロフィーを多数獲得しているのは『アメリカから来た少女(原題:美國女孩)』だけ。
金馬奨で評価の高かった『哈勇家』は興行成績12位と健闘しましたが、受賞と興行成績がリンクしている作品が少ないことが残念です。

もうひとつ残念だったのは、東京国際映画祭で台湾の新作が上映されなかったことです。
もちろんエントリーの数は例年と変わらなかったと想像するのですが、選ばれなかった…。
でも、台湾が誇る巨匠楊德昌(エドワード・ヤン)監督の『エドワード・ヤンの恋愛時代(原題:原題:獨立時代)[レストア版]』が上映され、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督の特集上映が東京フィルメックスとのコラボで開催されたのはとてもうれしく思いました。

そして、大阪アジアン映画祭では例年通り短編映画を含め新作とデジタル・リマスターされた貴重な作品が上映されました。
作品一覧のところに取材記事と監督のインタビュー音声Podcastのリンクを貼ってありますので、ご参照下さい。

日本では旧作含め台湾ホラーの公開や配信が多く、ちょっとしたブームになり、私もELLEに原稿を書かせていただいたりしました。
ホラー映画をきっかけに、台湾映画の他のジャンルにも興味を持ってくれる方が増えることを願っています。

また、俳優の柯震東(クー・チェンドン)が『黑的教育』 で監督デビューして、金馬奨の新人監督にノミネートされたことはうれしい驚きでした。

★2022台湾映画興行成績ベスト10

1『呪詛(原題:咒)』
1231incantation 3月に台湾で公開され1.7億台湾ドルを売り上げ、2022年唯一の一億超え作品。
実話をもとにした台湾の民間伝承と母性を融合させた台湾ホラーの王道に、カルト信仰やSNSが盛り込まれている。
監督:柯孟融(ケビン・コー)
出演:蔡亘晏(ツァイ・シュアンイエン)、高英軒(ガオ・インシュアン)、、黃歆庭(ホアン・インティン)
※Netflixで配信

2『我吃了那男孩一整年的早餐』
0208breakfast2 ネットで人気のTrueストーリーをもとにしたラブコメ。人気シンガーソングライター周興哲(エリック・チョウ)が映画初出演にして初主演で話題を呼んだ。
監督:杜政哲(トー・チェンジャ)
出演:周興哲(エリック・チョウ)、李沐(リー・ムー)、何思靜(ジーン・ホー)、宋柏緯(エディソン・ソン)
※参考記事
http://www.asianparadise.net/2022/02/post-4e1e0a.html

3『流麻溝十五號』(上映中)
0930kff2 台湾で初めて女性の政治犯を扱った実話映画。緑島にある収容所へ連行された年齢も身分も違う3人の女性…高校生、ダンサー、若い母親が、名前を消され、番号に置き換えられた日々を描く。
監督:周美玲(ゼロ・チョウ)
出演:余佩真(ユー・ペイチェン)、連俞涵(リエン・ユーハン)、徐麗雯(シュー・リーウェン)
※参考記事
http://www.asianparadise.net/2022/09/post-bcfdb7.html

4『少年吔』
1231xiaonian 『モンガに散る(原題:艋舺)』『角頭』シリーズに続くギャング映画。出獄して更生を目指す青年の無力感と運命を描く。
監督:顏正國(イエン・ジェングォ)
出演:顏正國(イエン・ジェングォ)、黃尚禾(ホアン・シャクホー)、李千那(リー・チエンナ)、張寗(チャン・ニン)

5『民雄鬼屋』
1231minxioan 台湾の伝統文化をモチーフにしたホラー映画。清明節の墓参で行方不明になった娘と母を探すシングルマザーの苦闘を描く。民雄鬼屋とは民雄鬼屋のことで、台湾にはいくつか有名なこういう心霊スポットがある。
監督:劉邦耀(リウ・ポンヤオ)
出演:楊謹華(シェリル・ヤン)、沛小嵐(ペイ・シャオラン)、麥語彤(マイ・ユィタン)

6『頭七』
1231funeral 台湾の伝統文化をモチーフにしたホラー映画。祖父が亡くなり娘を連れて初七日に行った主人公が、実家の恐ろしい秘密を知り…。頭七とは初七日のことで、中華圏では死者は死んでから七日目に家に戻ってくると言われている。
監督:沈丹桂(シェン・タングイ)
出演:任家萱(セリーナ・レン)、陳以文(チェン・イーウェン)、納豆(ナードゥ)

7『素還真』
0127pili4 30年以上親しまれている「霹靂布袋戲」シリーズの主人公素還真の少年時代を描いた作品。2000年の『聖石傳説』、2015年の『古代ロボットの秘密(原題:奇人密碼-古羅布之謎)』に続く布袋戯映画作品。
監督:黃強華(ホアン・チャンホア)
※参考記事
http://www.asianparadise.net/2022/01/post-be2fd5.html

8『アメリカから来た少女(原題:美國女孩)』(年跨ぎ)
0924america 2003年のSARSが流行した台湾を舞台に、アメリカから帰国した母と娘、家族が織りなすヒューマンドラマ。金馬奨や台北電影奨で数々受賞。
監督:阮鳳儀(ルアン・フォンイー)
出演:林嘉欣(カリーナ・ラム)、莊凱勛(ジュアン・カイシュン)、方郁婷(ケイトリン・ファン)
※参考記事
http://www.asianparadise.net/2022/07/post-de4122.html

9『罪後真相』
1231posttruth 近年増えている犯罪ミステリー。恋人殺しの罪で投獄された期待のアスリートが、取材に来たニュースキャスターを人実にした。彼の目的は?
監督:陳奕甫(チェン・イーフー)
出演:張孝全(チャン・シャオチュアン)陳昊森(エドワード・チェン)方郁婷(ケイトリン・ファン)

10『噩兆』(年跨ぎ)
1231deified 「魔鬼東北角」と呼ばれる台湾東北方貢寮一帶で起きた事件の実話を基にしたホラー映画。レポーターが行方不明の娘を探す父親の捜索を追うと、次々に奇怪な現象が起きる。
監督:劉龍雄(リウ・ロンシャン)
出演:關何(グアン・ハー)、李國禎(リー・グォティン)、張寧(チャン・ニン)

◆大阪アジアン映画祭上映作品(テレビシリーズは除外)

『凪』
0315nagi 高雄の居酒屋で働く香港女性と日本人男性、恋が始まったふたりを通して香港、台湾、日本の立ち位置を見事に描いた短編。
監督:祝紫嫣(サーシャ・ジョク)
出演:祝紫嫣(サーシャ・ジョク)、松㟢翔平
http://www.asianparadise.net/2022/03/post-643e58.html
http://asianparadise.sblo.jp/article/189460763.html

『姉ちゃん(原題:姊姊)』
0323_20220323095006 何気ない日常のディティールから家族の暖かさを見事に描いたヒューマンストーリーの短編。
監督:潘客印(パン・カーイン)
出演:黃珮琪(ホアン・ペイチー)、朱羿銘(チュウ・イーミン)、高伊玲(ガオ・イーリン)
※台湾映画上映&トークイベントでも『旅立ち』のタイトルで8月に上映。
http://www.asianparadise.net/2022/08/post-4e5a26.html
http://asianparadise.sblo.jp/article/189763607.html

『三月的南国之南』
0326offsanyue 1947年に台湾で二二八事件が起きた当時、高雄の高校生たちによる白色テロに抵抗した高雄中學自衛隊を描いた短編。
監督:李尚喬(リー・シャンチャオ)
出演:陸弈靜(ルー・イーチン)、林玉書(リン・ユーシュウ)、陳鼎中(チェン・ディンジョン)、賴雨霏 (ライ・ユーフェイ)
http://www.asianparadise.net/2022/03/post-d61ee4.html
http://asianparadise.sblo.jp/article/189490646.html

『徘徊年代』
0317offhaikai 台湾で増え続けるアジア各国からの“新移民”と呼ばれる女性たちを描いた物語。2つの時代を前半と後半の二部構成にし、新人らしい様々な方法での描き分け方の挑戦をしている。
監督:張騰元(チャン・タンユエン)
出演:阮安妮(アニー・グエン)、江常輝(スティーブン・ジャン)、阮秋姮(グエン・トゥ・ハン)、陳淑芳(チェン・シューファン)、王莉雯(ワン・リーウェン)
http://www.asianparadise.net/2022/03/post-2fab29.html
http://asianparadise.sblo.jp/article/189479431.html

『修行』
0916echo 短編小説「妖精」の映画化で、ある夫婦の中年の危機と人生の課題を繊細で詩的な語り口により、人間の感情を伝えている。
監督:錢翔(チエン・シャン)
出演:陳湘琪(チェン・シアンチー)、陳以文(チェン・イーウェン)、黃柔閩(ホアン・ロウミン)
http://www.asianparadise.net/2022/03/post-f9b279.html
http://asianparadise.sblo.jp/article/189510350.html

『一人にしないで(原題:不想一個人)』
0323_20220323095001 社会の光のあたる所で活躍していても心の空洞を埋められない女性、陽の当たらない場所でわずかな光を求める男女が織りなすラブストーリー。
監督:范揚仲(ファン・ヤンジョン)
出演:范少勳(ファン・シャオシュン)、莫允雯(クリスティーナ・モク)、温貞菱(ウェン・チェンリン)
※台湾映画上映&トークイベントでも7月に上映。
http://www.asianparadise.net/2022/07/post-c80856.html
http://asianparadise.sblo.jp/article/189695631.html

『女子学校(原題:女子學校)』
0406offgirl1 台湾最南端の屏東の女学校を舞台に、女子生徒たちの生活や思春期の揺れ動く心情を描いた1982年の作品。台湾のフィルムアーカイヴ=国家電影中心の、修復計画の一環として2020年にデジタル・リマスターされた。
監督:李美彌(ミミ・リー)
出演:秦漢(チン・ハン)、恬妞(ティエン・ニウ)、周丹薇(チョウ・ダンウェイ)、沈雁(シェン・イェン)、林南施(リン・ナンシー)
http://www.asianparadise.net/2022/04/post-9608aa.html

今後の楽しみは、『時をかける愛』というタイトルで話題と人気を呼んだ台湾ドラマ『想見你』の劇場版が12月30日から台湾公開になり、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『悲情城市』が4Kデジタル版で2023年2月に台湾で公開されることです。
どちらも日本で見られることを願っています。

今年もアジアンパラダイスをご愛読いただき、ありがとうございました。
来年も、魅力的な映画に出会えますように…。
皆さま、健康で良い新年を迎えられますよう、お祈りしています。

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