中国映画『シャドウプレイ【完全版】』とメイキング『夢の裏側』は無限ループになりそうだ
◆見事に時代を描く映像と音楽
広州の再開発地区における実際の立ち退き賠償問題をベースに、その場所で、その時しかない風景の中に俳優たちを置き、本物の生活感の中でスピード感溢れる住民達の激しい抵抗(暴動)の冒頭のシーンは、ドキュメンタリーを見ているような迫力です。
そして、30年という時の流れを彩るファッションや音楽も重要な役割を果たしています。
この音楽にも中国、香港、台湾の当時のヒット曲が散りばめられ、エンディング曲は監督が好きだと言う王傑(デイブ・ウォン)の「一場戯一場夢」が使われ、心に沁みます。
パンフレットには、この映画の字幕翻訳の樋口裕子さんが時代と場所について書かれていて、音楽については関谷元子さんが解説されていますので、ご覧になった後にお読みいただくと、さらにこの映画と婁燁監督の狙いがわかります。
◆トークイベントではメイキング『夢の裏側』を中心に
1月22日に新宿K’s cinemaで、婁燁監督作品が大好きだという矢崎仁司監督と狗飼恭子さんのトークイベントが行われ、矢崎仁司監督はロッテルダム映画祭で『天安門、恋人たち』を見て衝撃を受け、帰国してから『ふたりの人魚』など過去作を見始めたということでした。
狗飼恭子さんの婁燁監督作との出会いは『ふたりの人魚』。
お二人は『シャドウプレイ【完全版】』についてより、婁燁監督の作風や魅力というお話しが中心で、メイキングで今回同時上映されている『夢の裏側』へ展開していきました。
◆婁燁監督のこだわり
この『夢の裏側』は、監督夫人で脚本家の馬英力(マー・インリー)が撮影からポスプロまでを記録したドキュメンタリーで、アクションシーンや大勢による暴動シーンなど大がかりな撮影の様子から、照明やサウンド、美術、メイクほか細部にわたる監督のこだわりが明らかになっています。
矢崎仁司監督がおっしゃっていた、役としてのリアルさを求め、俳優のメイクもとことんこだわったり、この場所でしか撮れないロケ地へのこだわりが、『夢の裏側』で見せつけられます。
◆心を揺さぶる作家魂
私も本編の後に『夢の裏側』を見ましたが、このシーンはこのように撮られたのか…というメイキング映画ならではの醍醐味はもちろん、様々な問題やトラブルが起きてもブレない婁燁監督の完璧な映像作りへの探求は、本当に感動します。
特に、検閲による修正命令の繰り返しは、作品の核に対する監督の確固たる"思い"=作家魂の長き闘いに心を揺さぶられました。
このメイキングを見たら、もう一度本編が見たくなり、おそらくその後にはまたメイキングが見たくなるという無限ループにはまりそうな気がします。
ぜひ、ひとまわりで良いので『シャドウプレイ【完全版】』とメイキング『夢の裏側』を"体験"していただきたいと思います。
新宿K‘s cinema、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺他で公開中、その後全国順次公開。
(『夢の裏側』の上映館は、各劇場サイトでご確認下さい)
『シャドウプレイ(原題:風中有朶雨做的雲)【完全版】』
監督:婁燁(ロウ・イエ)
出演:井柏然(ジン・ボーラン)、秦昊(チン・ハオ)、張頌文(チャン・ソンウェン)、馬思純(マー・スーチュン)、陳妍希(ミシェル・チェン)、陳冠希(エディソン・チャン)
2018年/中国/129分/北京語・広東語・台湾語/DCP/1.85:1
『夢の裏側』
監督:馬英力(マー・インリー)
出演:婁燁(ロウ・イエ)、井柏然(ジン・ボーラン)、秦昊(チン・ハオ)、張頌文(チャン・ソンウェン)、馬思純(マー・スーチュン)、陳妍希(ミシェル・チェン)、陳冠希(エディソン・チャン)
2019年/中国/94分/北京語・広東語・台湾語/DCP/1.77:1
公式サイト:https://www.uplink.co.jp/shadowplay/index.html
※『シャドウプレイ(原題:風中有朶雨做的雲)【完全版】』『夢の裏側』に関するこれまでの記事
2023/01/16
婁燁(ロウ・イエ)監督の中国映画『シャドウプレイ(原題:風中有朶雨做的雲)【完全版】』1月20日(金)より公開!
http://www.asianparadise.net/2023/01/post-576d10.html
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