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2023/09/30

短編スペシャル『ドラゴンの反乱』、『父の映画館』、『Good Day』若手監督ながらクオリティの高さに観客は高い満足感!

0930shortfilm 2016年から始まりました台湾文化センターとアジアンパラダイス共催の台湾映画上映イベント「台湾映画のいま」、今年は会場+オンラインのハイブリッド形式で開催しており、第6回は短編スペシャルとして『ドラゴンの反乱(原題:龔囝)』、『父の映画館(原題:父親的電影院)』、『Good Day(原題:詠晴)』を上映しました。
伝統文化をモチーフにした青春映画、映画と父へのオマージュを味わい深く描いた作品、そして台風の中でユーモアを交えた中年男の物語と、バラエティに富んだ内容で、今回はそれぞれの監督のメッセージを作品の前に見ていただくというスタイルにしました。

日本の皆さんには馴染みの薄い短編映画ですが、台湾の短編映画事情とともに高いクオリティへの驚き、若い才能への期待を感じていただくことができました。
(以下、アンケート回答からの抜粋)
「若い才能をより堪能できるラインナップでどれも完成度が高く面白かった。特に『ドラゴンの反乱』はこれをベースにした長編作品が観たいと思った」「どれも短編とは思えない完成度、充実した内容に驚き」「『ドラゴンの反乱」の若者のピュアな感じがとても好ましく『父の映画館』は映画館と父への想いに溢れる素敵な作品。特に、なぜ重そうな荷物を背負ったまま作業しているのだろうと思っていたら、それが遺骨だとわかった時に胸に迫るものがあった。『Good Day』のユーモアがとてもおもしろく、体を張った主役がプロの俳優ではないと知って驚いた」「『父の映画館』はそのまま記録映画としても永遠に残しておいて欲しい素晴らしい記録映像で、監督の映画館そのものへの愛も伝わってきた」「『Good day』は何度か笑わされてしまったが、親の身勝手で引き離される父子の愛情が伝わってきた。特に電話を切るシーンは、なんとも言えない感動」「『ドラゴンの反乱』は対立する価値観の間で、壊れることのない友情に救われつつも、少年たちのその後が気になる。主役のふたり、特に胡智強の演技と存在感ががすばらしかった」「どの作品も若さとエネルギーを感じる素晴らしい作品で感動」

0930event アフタートークでは、作品解説に加え、いま活躍する監督達によるこれまでの優れた短編映画を紹介したことで、さらに短編映画への興味を深めていただき、台湾映画界の現状の理解にも役立てたようです。
(以下、アンケート回答からの抜粋)
「監督、作品の背景や、台湾短編映画事情がよくわかった」「短篇映画から次の台湾映画の才能が見いだされてきていることも非常に納得した」「各作品の監督や俳優のプロフィールや制作秘話などが聞けて、作品の理解がさらに深まった」「わかりやすい解説と台湾映画界の今をきけて楽しい」「それぞれの作品への理解も深まり、俳優たちの知らなかった情報も知ることができて大変ありがたい」「台湾での短編映画の位置づけや、今注目されている監督たちの紹介もとても興味深かった」「以前の短編作品なども取り上げて、とても丁寧なトークだった」「製作の経緯や背景が三者三様なのが興味深い。製作者の経験や体験がきっかけということを理解した上で、もう一度それぞれの作品を鑑賞してみたい」「制作秘話を聞くと親近感もわく」「活躍中の監督の短編をさかのぼって見たくなった」「映画の歴史や最近の情報を知ることができる貴重な機会」

※写真はクリックすると別ウィンドウで拡大表示します

09301 台湾では短編映画の製作が盛んで、新人監督の登竜門という側面も持ち、映画ファンから熱い注目を浴びています。
金馬影展や台北電影節などでは、短編映画のチケットは秒殺でソールドアウトになる人気で、高雄電影節は短編映画が大きく扱われているほど。
なぜ短編映画が人気なのか、それは劇場で公開されることが少なく映画祭が貴重な機会であること、新進の若手俳優や人気俳優の出演作も多く、観客は新しい才能を持つ監督や俳優に興味津々であることです。
原石がささやかな光を見せ始める…こういうところを逃したくないので、台湾の映画ファンも私もチケットゲットに必死なのです。

09302 若いクリエイターはまず製作費が少なくてすむ短編を作り、それがプロデューサーの目にとまり長編デビューへのきっかけになることが多くあります。
新作を任されるほか、優れた短編の長編映画化という例も少なくありません。
張榮吉(チャン・ロンジー)監督の『光にふれる』、黃信堯(ホアン・シンヤオ)監督の『大仏+』、許承傑(シュー・チェンジエ)監督の『弱くて強い女たち』など各映画祭で数々の受賞を果たし、日本でも東京国際映画祭で上映され、配信もされています。

09303 台湾の大きな映画賞のひとつ金穂奨は、短編映画のアワードです。
一般、学生それぞれ劇映画、ドキュメンタリー、アニメ、実験作の部門があり、受賞作は期間限定で映画館で上映されます。
いま台湾で活躍する監督のほとんどが、ここから巣立っています。
今年の金穂奨は5月13日に発表され、グランプリに選ばれたのはアニメーション。また、今年の大阪アジアン映画祭で上映された『できちゃった(原題:有了?!)』が脚本賞を受賞しました。

09304 その金穂奨で2022年のグランプリを獲得したのが、『ドラゴンの反乱(原題:龔囝)』です。
学生の映画製作コンペティションの「青春影展」でグランプリ、その年の金馬影展でワールドプレミアとして上映されました。
本作は台北芸術大学の卒業制作で、監督は林治文(リン・ズーウェン)、劉澄雍(リウ・チェンヨン)の2人。
劉澄雍は、台湾の伝統芸能である龔囝(龍の舞)を描いた作品はこれまでにないということと、自身の経験からこれを卒業制作のテーマにしました。

09305 劉澄雍は台北芸術大学で監督コースではなく、俳優コースで学んでいたので、卒業制作は俳優として出演することが必須でした。
そこで、一年先輩の林治文に共同監督のオファーをしたそうです。
しかし林治文の作風は侯孝賢(ホウ・シャオシェン)や是枝裕和監督に近く、本作のような躍動感溢れる青春映画とは全く違います。
ではなぜオファーをしたかというと、全く作風の違う2人だからこそ何か新しいものが生まれるのではないかと考えたから。
そして、林治文もこれまでにない考え方への挑戦ができるのではないかと思い、オファーを受けたと言っていました
そのために、林治文はすでに自分の卒業制作も終えていたのですが、この映画の為に留年を決意。後輩のために留年するなんて、驚きですね。

09306 そして、同じく俳優コースの胡智強(フー・ジーチャン)、撮影の盧學航(ルー・シュエハン)、録音の林暉閔(リン・フイミン)、編集の葉廷麒(イエ・ティンチー)に声をかけてチームを作りました。
卒業制作とはいえ、その製作費は学校から出るのではなく、全て自分たちで集めなければなりません。
台湾には政府の補助金制度があるので、まずそれを申請して資金を確保し、残りは普通の映画のように色々な所から集めたそうです。
映画を学ぶ学生は全て、資金集めというプロデューサーとしての仕事もここで身を以て習得するのです。

09307 俳優として出演する劉澄雍は、自らの企画を脚本として完成させ、撮影の一ヶ月前から俳優に専念し、監督は林治文に任せるというルールを作りました。
二人は1年前くらいから一緒にリサーチしたり色々話し合いをしていたので、作品の方向性が決まり、こういった分業を果たせたということです。
龍の舞は1チーム9人で、クライマックスのシーンは多数の出演者が必要になります。そのため龍の舞には体育大学の学生に協力してもらい、訓練をして撮影に臨みました。

09308 この映画で劉澄雍ともう一人、重要な役がいます。教師や周りからあいつとは関わるな、と言われる金髪のラーという生徒。でも龍の舞にかける思いは同じで、チームにとっては大切な仲間です。
劉澄雍は、自分が所属していたチームにもみんなを悩ませてしまう生徒がいたので、それを本作のキャラクターとしても登場させました。
若い時はそれぞれ色々な悩みや苦悩を抱えていて、その中でもがいています。その姿を映し出したいというのが、劉澄雍の狙いです。

09309 撮影にはたいへんな苦労もありました。
クライマックスの龍の舞のシーンで、劉澄雍が転んで足を怪我してしまったのです。
そのため撮影は中断、回復を待って撮り直しとなりました。
そういった苦労を乗り越え、金穗獎でグランプリを獲得、。ラーを演じた胡智強は、ベストアクターに選ばれました。
テレビアワード金鐘奨でも短編映画がミニドラマ・テレビ映画部門にノミネートされることもあり、今年はテレビ映画賞、胡智強(フー・ジーチヤン)が助演男優賞の候補に入りました。
発表は10月ですが、結果が楽しみですね。

093010 次にご覧いただいた『父の映画館(原題:父親的電影院) 』は、2021年にこの上映&トークの短編スペシャルで紹介した『猫とハエ(原題:貓與蒼蠅)』の曹仕翰(ツァオ・シーハン)監督の新作です。
この作品は2年前、コロナ禍で映画の製作が止まっていた時に、高雄市電影館が3人の監督による3つの短編を製作するプロジェクトを立ち上げ、そのひとりに選ばれたことから始まりました。
高雄市電影館というのは高雄市政府による映画製作サポートプロジェクトを実施する機関で、展示や上映、イベントなどを行う映画資料館としても充実しています。
今回のプロジェクトは、政府のコロナ対策の規範にのっとり、高雄の土地や文化をより多くの人に伝える映画を製作するというものでした。

093011 監督は、今回コロナ禍で多くの映画館が休業になったり廃業になっている現状の中で、映画館を舞台にした父と子の物語を描こうと思いました。
舞台となる映画館はいくつか候補がありましたが、建物内部の倒壊の危険があったりなどなかなか難しかったそうです。そんな中でプロデューサーが見つけて来た高雄市の郊外にある昌樂戲院が、監督がまさに自分を待っていたのだと思ったというほどピッタリでした。
そしてその映画館は、少し前に映画館の歴史をドキュメンタリー映画として撮影されたことがあり、内部の手入れもされていたそうです。
ただ、台風によって天井に大きな穴が空き、そこから外の光が差し込んだのを見た監督は、その風景に一瞬にして魅了され、ここだ!と思ったと言っていました。

093012 この映画館の持ち主はもともと映写技師で、1960年代の映画全盛時代に念願叶って自分の映画館を開業しました。
しかし台湾の映画産業の衰退とともに経営が難しくなり1990年代に閉館したそうです。
監督はこのオーナーの娘さんからこの話を聞き、その経緯はまさに台湾映画の歴史の縮図であると感動したと語っていました。
そしてこの土地の再開発計画によりこの映画館は取り壊されるので、映画人として昌樂戲院の記録を残さなければいけないと思い、ここを撮影場所に決めたそうです。

093013 コロナ禍での撮影はとてもたいへんで、毎日の検温やマスクの着用、定期的なPCR検査、俳優はマスクなしでどうやって撮影すれば良いのか。
撮影場所の映画館はすでに廃業していたので、水も電気も止まっていて、外部から引き込まなければなりません。
そして撮影中は音を遮断するためにクーラーや扇風機は使えず、暑さと湿気、そしてダニ対策も必要でした。
スタッフ全員のそういった困難を乗り越え、監督はそれこそが創作の魅力なのだと映画を作る喜びをあらためて感じたということです。

093014 さて、この映画の唯一の出演者、李淳(リー・ジュン)のキャスティングについてお伝えします。
監督は、自分と父、撮影場所にした映画館昌樂戲院の創設者の娘の父への思いと映画館を描こうと思っていたので、出演者も映画と深い関係がある人が良いと思っていました。
李淳は、ご存知のように世界的な名匠李安(アン・リー)監督の息子です。
監督の父は建築家で、李淳とは成功した父と葛藤や苦しみを抱えながら努力をしている息子という共通点がありました。
李淳は脚本をとても気に入ってくれ、彼がこれまで映画とどういう関わり方をしてきたか、映画から受けた影響などを話し、この主人公にふさわしいと思い決定しました。

093015 実は、父と子がテーマなので父親役も登場させたいと思い、監督は名優陳以文(チェン・イーウェン)をオファーしていました。
しかしコロナ禍で映画界にも陽性者が多く出て、ふたりの俳優に演技してもらうにはリスクが大きいため、李淳ひとりで父との関係性や思いを表現するという方向に変えたそうです。
李淳はひとりで台詞もなく、光や風、空間と対話しながら表現し、出会った歴史ある映画館の見えない力のようなものも働き、監督は素晴らしい作品ができたと思うということです。

093016 そして、この作品の最後に廃業した映画館のスクリーン写し出される映画は、曹仕翰監督が高雄で初めて制作した2018年の短編映画『春の夢』です。
本当は、主演の李淳が子供の時に初めて映画に出演した李安監督の『ウェディング・バンケット』にしたかったのですが、権利がクリアできず諦めたそうです。
そこでプロデューサーから監督自身の『春の夢』にしてはどうかと提案され、それはちょっとナルシズムがすぎると思われるため最初は抵抗したそうです。

093017 建築家の父から映画を職業にすることを反対されていた監督は、なんとか認められたいと努力を続けてきて、『春の夢』が完成した時に父に見てもらいたいと思っていました。
しかし、残念ながらそれは叶いませんでした。映画の完成を待たずに、監督のお父さんは病気で他界。
監督は『春の夢』が高雄で初公開されたとき、亡き父のためにVIP席を用意したそうです。
人生には色々な心残りがありますが、この短編は父と子を描く作品なので、お父さんに見てもらえなかった映画を使うことで、この短編を完成させることができたと、監督がしみじみ語っていました。

093018 最後の『Good Day(原題:詠晴)』は、2021年の金馬奨で最優秀短編劇映画賞、2022年の金穗獎で最優秀劇映画賞、同年の台北電影獎でも最優秀短編劇映画賞を受賞した作品です。
テレビアワード金鐘奨でも、ミニドラマ・テレビ映画部門の監督賞と音声デザイン賞にノミネートされました。
監督の張誌騰(チャン・シータン)はカメラマンとしてキャリアをスタートし、26才で張作驥(チャン・ツォーチ)監督の『酔生夢死(原題:酔・生夢死)』により金馬獎の撮影賞にノミネート、2018年に『春之夢』、『亮亮與噴子』、『愛在世界末日』の短編3作で金穗獎の撮影賞を受賞しています。
そして『Good Day』は、監督デビュー作となります。

093019 この映画は監督自身が子供の頃に両親が離婚し、父親は全然努力をしない人だったと聞かされていたものの、どんな人だったのか理解をしたいと思っていたそうです。
家族はそう言っても、何か努力をしていたのではないか、もしかしたら台風の日に家族を守ろうとしていたかもしれないという思いから、この映画を作ったということでした。
劇中で台風の日に父と息子が断水の中で少ない水をかけ合いながら身体を洗うシーンは、監督自身の体験を盛り込んだそうです。

093020 そして、この主人公は、屋上でミニセグウェイに乗って洗濯物を干しています。とてもユニークなので、これも監督或いは周りの誰かの体験なのか聞いてみると、全くの創作だということでした。
主人公は少年の心のまま大きくなり、台風でも誘われればゴルフに行こうとしたり、家庭を持つようなおとなに成長していないというキャラクター設定で、家事も遊び心満載でミニセグウェイを使うということにしたそうです。
主人公の離婚の原因は浮気が原因のように描かれていますが、それは引き金であって、こういった日常の子供っぽさが、妻にとっては積み重なるストレスとなっていたのかも知れません。

093021 その浮気について、この映画では友人との電話でおもしろい表現が使われています。
「俺は軽い気持ちで牛乳を買っただけ。だがお前は乳牛ごと家に連れ帰った」
英語字幕では「俺はただ他の女とデートした。お前は女を家に連れ込んだ」という訳になっていますが、今回は中国語字幕のおもしろさをお伝えしたいため、こちらを訳出しました。
あまり悪気を感じていないところも、キャラクター設定として効果的なポイントですね。

093022 この主人公を演じたのは、同じカメラマンの胡世山(フー・シーシャン)。
日本でも公開された『台北セブンラブ(原題:相愛的七種設計)』などの撮影を担当しています。
キャスティングにあたり、監督はこの年代の俳優を知らないし、胡世山はとても個性的でおもしろいので、この人に演じてもらいたいと思ったそうです。
オファーされた胡世山は驚いたようですが、監督が新しい才能、新しい組み合わせへのチャレンジだと話すと快く引き受けてくれたということです。
監督が演技経験がないことについてはまったく不安を感じなかったと言っているように、その存在感、雰囲気、この役はこの人しかできないだろうと思わせる素晴らしさですね。

093023 この映画のタイトル「詠晴」は台風の名前ですが、主人公の妻の名前でもあります。
世界各国で台風に女性の名前が付けられることが多いですが、この映画では主人公が立ち向かわなくてはならない2つのものを象徴しています。
劇中ではほんの一瞬しか映りませんが、妻の詠晴を演じているのは、『亮亮與噴子』や去年この短編スペシャルで上映した『ゴッドハンド(原題:手事業)』の監督李宜珊(リー・イーサン)です。
仕事仲間ということでの出演ですが、この映画の編集も担当しています。

093024 そして、この映画のポスター、とてもおもしろいですよね。主人公の顔に鍼灸のツボ図のような文字が書かれています。
これは、監督が街を歩いているときに目にしたほくろ占いの図だそうです。よく見ると、「幸」とか「富」「長命」「財運」など悪いことが全く書かれていないのです。
そして、頭にゴルフボールが載っていて、タイトルの字の所にも潰れた蚊や鍵という映画の中のキーアイテムがデザインされています。
これ全部、監督のアイデアだそうです。

093025 さて、ここからは、優れた短編映画列伝として、ここ10年のおすすめの作品をいくつかご紹介します。
まずは、『僕と幽霊が家族になった件(原題:關於我和鬼變成家人的那件事)』や『紅い服の少女 第一章 神隠し/第二章 真実(原題:紅衣小女孩/紅衣小女孩2)』などの程偉豪(チェン・ウェイハオ)による『保全員之死』。
この映画は警備員の不審死を描いた3作目の短編になりますが、2015年の台北電影節と金馬奨の両方で短編映画賞を受賞。監督が得意とするサスペンスとユーモアを融合させた、とてもおもしろい作品で、きっとこの監督は大成するだろうと誰もが思った逸材でした。
その予想通りこの若き才能に着目したプロデューサーから『紅い服の少女』シリーズの監督に抜擢され、今日に到っています。

093026 次は、今日ご覧いただいた『Good Day(原題:詠晴)』の編集と出演もした李宜珊(リー・イーサン)監督の『亮亮與噴子』と『ゴッドハンド(原題:手事業)』。
2018年の金穗獎で作品賞と主役の李雪(リー・シュエ)がパフォーマンス賞、金馬奨で最優秀短編賞に輝いた『亮亮與噴子』は、2018年の大阪アジアン映画祭で上映されました。
誕生日デートなのに子守を押しつけられた18歳の主人公が、なんとか自由を取り戻そうと奮闘する姿を描いた作品。
昨年のこの上映&トークで上映した『ゴッドハンド』は、海辺の道路脇で檳榔店を営む3人の女性のたくましい生命力に圧倒される映画です。2021年の金穗獎で、劇映画部門の作品賞、監督賞、そして主演の楊麗音(ヤン・リーイン)が俳優賞を受賞しました。
監督がこの2作で描くエネルギー溢れる女性達は、とても魅力的です。

093027 2020年に台湾でナンバーワン・ヒットを飛ばした素晴らしいヒューマンドラマ『弱くて強い女たち(原題:孤味)』は、2017年の短編を長編化したものです。許承傑(シュー・チェンジエ)監督がニューヨークに留学していた時の卒業制作で、監督の母方のお婆さんがお爺さんの葬儀を、お爺さんの恋人と執り行ったという、特別な経験をもとにしたそうです。
長編と違いお婆さんと孫の2人で展開されますが、完成度の高さに監督の才能を感じます。
それより前、2015年に造られた『ロブスターキッド(原題:龍蝦小孩)』は、同じ年に東京と横浜で開催されたSHORT SHORTS FILM FESTIVAL & ASIAで上映されました。
少女と僧侶という不思議な組み合わせの2人によるアクションと冒険を描き、監督の若さとあふれ出る情熱を感じます。
どちらもニューヨークで撮ったからでしょうか、台湾の賞にはエントリーしていませんが、賞レースに参加していたら、きっと受賞していたのではないかと思います。

093028 次は、若い感覚が炸裂する作品です。
王逸帆(ワン・イーファン)が國立臺北藝術大學在学中に、軍隊の中のカリカチュアライズされた人間関係を、オリジナリティとユーモアで綴った野心的な短編映画『洞兩洞六(02-06)』。台北電影奨で最優秀短編賞を受賞しました。
その映像と色彩、シュールさにKOされ、これはただ者ではない新人監督だと確信しました。
そして2年後、2020年の『伏魔殿(ふくまでん)』は、台湾の街角にたたずむ小さな寺院“伏魔殿”を舞台に、過剰な暴力に彩られながら、若者達が破滅と救いをめざして疾走していく物語。
大阪アジアン映画祭で上映され、観客達に衝撃をもたらしました。
2021年にはゾンビが国会を襲う長編映画『逃出立法院』を発表、プロレス技を駆使した闘いのテンポの良さ、監督のシュールなセンスが爆発、メインキャスト達の奇演好演もハンパなく、超絶おもしろい映画に仕上がっています。
大阪アジアン映画祭では原題のまま、この上映&トークでは『家へ帰ろう〜国会大脱出(原題:逃出立法院)』、そして『ゾンビ・プレジデント』のタイトルで一般公開になりました。

093029 潘客印(パン・カーイン)監督のデビュー作『姊姊』は、大阪アジアン映画祭で『姉ちゃん』、昨年のこの上映&トークでは『旅立ち』というタイトルで上映しました。
何気ない日常のディティールから家族の暖かさを見事に描いたヒューマンストーリーで、2022年の金穗獎で観客賞、美術賞、審査員特別賞を受賞しています。
そして、今年も第二作『できちゃった?!(原題:有了?!』が大阪アジアン映画祭で上映され、芳泉短編賞スペシャル・メンションを受賞、金穗獎では脚本賞を受賞しました。
妊娠騒動を男性の視点から描き、ユーモアにあふれた家族愛の物語です。
一貫して家族を描きながらも、切り口やテイストを変えて見せてくれ、次回作が楽しみです。

093030 最後は、こちらも昨年のこの上映&トークで上映した李念修(リー・ニエンショウ)監督の『聞いちゃいない(原題:講話沒有在聽)』。2022年の金馬奨で最優秀短編賞に輝きました。
家族の死と、慌ただしくとりかかる葬儀の準備の様子がユーモアを交えて描かれる、監督自身の体験をもとにした笑いと涙と感動の物語です。
それまでドキュメンタリーを手がけてきて、本作も最初はドキュメンタリーとして撮り、6年後に劇映画として作ったもの。
ユーモアの中にも監督の死生観がくっきりと浮かび上がります。
そして、さらに長編劇映画として制作中。完成が楽しみでなりません。

093031 では、最新情報をお伝えします。
台湾では、10月7日から22日まで、高雄電影節が開催されます。
年度ごとに決めたテーマの作品を世界各国から集めて上映しますが、今年のテーマは「耽美主義」。『ベニスに死す』4Kデジタル修復版をはじめ、台湾、韓国、日本、デンマーク作品が参加します。
その他にも世界各国から新作や話題作の上映、2011年からスタートした国際短編映画コンペティションでは、ワールド部門、台湾部門、VR部門で競われます。
オープニングは日本でもNetflixで配信されたホラー映画『呪われの橋(原題:女鬼橋)』の続編『女鬼橋2:怨鬼樓』、クロージングが青少年の犯罪とその背景を描いた『壞男孩(The Young Hoodlum)』に決まりました。

093032 日本国内でも、秋の映画祭シーズンが到来。
まず、毎日新聞社主催の「台湾映画祭」のご紹介です。
毎年福岡で開催されるこのイベント、今年は10月27日(金)~10月29日(日)の3日間、福岡市美術館1F「レクチャールーム」で『ガッデム!阿修羅』、『擬音 A FOLEY ARTIST』、『星空』、『ゾンビ・プレジデント』が上映されます。
中でも林書宇(トム・リン)監督の『星空』は今年初めに日本での上映権が切れたのですが、権利元の特別なご厚意で、上映が可能になりました。
おそらくこれが日本で見られる最後の機会だと思いますので、お近くの方はぜひご覧になってください。


このアフタートーク映像を公開しました。
https://v.classtream.jp/tw-movie/#/player?akey=42ec6f1552d04210b9cf05923b68d28d

また、今回の3作品の監督達のインタビューは順にPodcast配信しますので、ご期待下さい。

093033 次回は今年度最後、10月21日(土)に会場とオンラインで性暴力事件を通して様々な人間模様が描き出される『童話・世界』を上映します。
詳しいことはこちらでご確認ください。
http://www.asianparadise.net/2023/09/post-39f3d0.html

皆さまのご参加をお待ちしています。

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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