2023台北取材Day3〜話題の『五月雪』と魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)監督の新作『BIG』
『五月雪』は、2020年の金馬奨で最優秀新人監督賞を受賞したマレーシアの張吉安(チャン・ジーアン)監督による、マレーシア、台湾、シンガポール合作映画です。
513事件とは、1969年に行なわれた総選挙を発端としたマレーシア史上最悪の民族衝突事件で、死者196人、負傷者439人を出す惨事となりました。
映画は二世代の女性を軸に展開し、マレーシアの女優 蔡寶珠(ツァイ・バオチュウ)と、歌手で女優の萬芳(ワン・ファン)を主役にし、台湾から鄭人碩(チェン・レンシュオ)も参加しています。
舞台はクアラルンプールのプエルタ、「酬神戲」と呼ばれる伝統オペラを母と見に行っていた少女が、突然の暴動事件で近くの映画館へ逃げ込みます。
49年後、少女はあの事件で離ればなれになった父や兄の遺骨を探しに出た旅で、ある人と出会う…というストーリー。
メタファーとして登場する象や神による幻想的なシーンと、血なまぐさいリアルな描写が織りなす不思議な世界観に頭がクラクラします。
そして、暴動という事件の描き方に、"こういう表現があったのか!"と目ウロコのシーンがとても印象的でした。
(日本で見られる機会があったら、と思い、このような表現にとどめておきます)
これを体現する「酬神戲」のスターを演じた蔡寶珠は、後半の墓地での萬芳とのシーンでも味わい深い演技を見せてくれています。
日本で一般公開する作品としてはなかなか厳しいと思いますが、映画祭や上映会などの機会があることを願っています。
さて、もう1本の『BIG』は、小児がんと向き合う7人の子供とその親たち、医師や看護師の人間模様を描いた魏徳聖監督の新作です。
今回は公開前だけどこの映画を見たい、監督に話を聞きたい、というのも大きな目的のひとつでした。
冒頭に書いたように、11月初めから毎日貸し切り上映を行っていて、多い日は全台湾で20箇所も開催されたこともあったそうです。
そんな中、製作会社の計らいにより保険会社の貸し切り上映に席を確保していただき、西門町の映画館で見ることができました。
小児がんの子ども達とその家族、というと、悲観的なベクトルが動いてしまいそうですが、実際に見てみるとそこは魏徳聖映画、生と死をテーマにしながらも笑いあり涙あり、五月天(Mayday)の「恋愛ing」ほか音楽たっぷりでファンタジー要素も楽しめます。
病室をひとつの教室として描く子ども達の日々、もちろん辛い治療や哀しみに直面せざるを得ないことも多いですが、その中で友情や初恋などこの年頃ならではの出来事も綴られ、心が暖まります。
作品については以前の記事(http://www.asianparadise.net/2023/07/post-8789ee.html)もご覧いただくとして、魏徳聖監督ならではのキャティングについてお伝えします。
まず、7人の子ども達が凄い!
一番年上の中学生の女の子を、于卉喬(ユー・フイチャオ)。2012年にネットで泣き顔が可愛いと人気沸騰し、『KANO 1931海の向こうの甲子園(原題:KANO)』で永瀬正敏の娘を演じた喬喬(チャオチャオ)なのです。
もう16才になるんですねぇ、びっくりの美少女。
本来の優しさをあまり表に出さず、ちょっと斜に構えたところがある役を魅力的に演じています。
そして、後から入院してくる范逸臣(ファン・イーチェン)と田中千絵が演じるセレブ夫婦の息子役の子が超イケメン。
さすが『KANO』で曹佑寧(ツァオ・ヨウニン)を見つけて来た魏監督、今回も期待を裏切りません。
郭大睿(グォ・ダールイ)という子ですが、調べて見ると鍾孟宏(チョン・モンホン)監督の『瀑布』やドラマにもたくさんにも出ていました。
ビジュアルだけでなく雰囲気もあり、これからが楽しみです。
魏徳聖監督のお話しについては次回、ご期待下さい。
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