大阪アジアン映画祭 タイ映画『フンパヨン 呪物に隠れた闇』ポンタリット・チョーティグリッサダーソーポン監督アフタートークレポート
3月10日に大阪アジアン映画祭で上映されたタイ映画『フンパヨン 呪物に隠れた闇』のポンタリット・チョーティグリッサダーソーポン監督のアフタートークの模様をお届けします。
本作は、出家した兄に会うためドンシンタム島を訪れた青年が、奇怪な事件に巻き込まれていくサスペンス。
今日本でたいへんなブームのタイBLドラマ『Lovely Writer The Series』や『Step by Step』などに出演しているプーンパット・イアン=サマン、『The Gifted Graduation』や『Fish Upon the Sky』などに出演するプーウィン・タンサックユーンが主演しています。
劇中には伝承魔術やその象徴的な人形や土偶など、タイの風習・伝説が盛り込まれ、ホラー映画と呼ばれることもあるようですが、サスペンとした方が良い気がします。
監督のお話にあるように、実際に古式魔術が伝わるところで撮影されたということで、見ているだけで不思議な世界へ誘われます。
今回は収録した音がPodcastで配信するには厳しい音質のため、テキストによるアフタートーク採録です。
司会は川井美波さん、通訳は高杉美和さん。
司会 日本での上映を終えていかがでしょうか。
監督 ほんとにいまワクワクしていますし、こうやってたくさんの皆さんに来ていただいて光栄に思います。
すごく暖かい雰囲気で。帰ってから映画製作をするのに大きなパワーをいただきました。
司会 監督はホラーコメディのイメージが強かったのですが、今回シリアスな方向に振り切った理由を教えて下さい。
監督 そもそものきっかけはロケ地と出会ったことで、この映画は実際の場所で撮影しています。ここでは実際に人間の形の像に遺骨を入れていて、それぞれの像の気持ちが映画の中に現れています。
劇中で呪文を唱えて像に力を入れますが、このようにリアルに描きたかったので実際の場所で撮影しました。
ただ儀式のシーンはフィクションの部分もあります。
司会 いま日本でも空前のタイドラマブームですが、テー役のアップさんとターム役のプーウィンさんは人気の俳優さんです。監督から見て二人はどういう俳優さんでしょうか。
監督 もともとアップの作品も知っていたし演技も好きだったのですが、彼が私の求めているキャラクターになりきれるかどうかを知りたくて、オーディションに来てもらいました。すぐに彼に脚本を渡したわけではなくて、自閉症の役をどう演じるかという課題を与えると、彼は一生懸命準備をして演じてくれました。その後脚本を渡して、改めて演じてもらい、ワークショップも行いましたし、実際に自閉症の子供にも会ってもらったんです。彼の努力は素晴らしいものでした。
観客 この映画を見て人って恐いな、と思いました。監督は何が恐いですか?
監督 一番恐いのは幽霊ではないです。この映画のどのキャラクターも好きですが、特にテーは最初は可愛らしいけれど一番恐ろしい。ただ彼の恐ろしさには理由がちゃんとありました。
人間が幽霊より恐いのは、人間は何かを隠しているところがある。最初は可愛かったテーが人を殺せるということが発覚したように。だから私にとって一番恐いのは人間です。
観客 テーは本当に自閉症だったのでしょうか。テーは何故この島の寺に来たのかなど背景が一切描かれていません。彼は自分を守る為に自閉症のふりをしていたのでしょうか。
監督 設定上は本当に自閉症です。ただ、彼が攻撃するのは自分にひどいことをした人だけです。例えばいつも虐待されていた人には報復したり、自分よりも身体の大きな人にもやり返しています。でも自分に良くしてくれる人には危害を与えません。
観客 撮影中に何か霊にまつわるエピソードがあったら教えて下さい。
監督 ありました。スタッフが撮影の時役者に持たせるフンパヨンは、本物を用意しました。それは役者にリアルに感じて欲しかったから。ニックが仏様を首にさげて呪文を唱えるところがあるのですが、その時にうすら寒く感じたそうです。体調が悪いのかと思ったら機嫌が悪い。なぜ機嫌が悪かったのかというと、撮影が終わってニックがホテルの部屋に帰ったら鏡とかテレビの画面に人影が映っていたそうです。部屋にはニックと友人の二人だったのに、3人居ると思ったそうです。恐くなってトイレに入ったら、そこにも人影があった。もうこんな所にはいられないと、荷物をまとめて私の泊まっているホテルに来ました。
本物のフンパヨンに本当の呪文を唱えたので、フンパヨンを起こしてしまったようで、ニックは本当に幽霊がいるのだと実感したのです。
でも、それは良い方のフンパヨンでした。
司会 この映画は今年の夏、全国公開が決まっています。監督、最後にひと言お願いします。
監督 今回日本に来たのは初めてで、自分の映画が日本で上映されるのも初めてです。本当に感動して、会場に来て並んでいる皆さんを見て、私の映画を楽しんでもらえるかな、と気になっていましたが、このように満席で皆さんに心を開いて見ていただき、これからの映画作りに大きな力をもらいました。
海外で皆さんに気に入ってもらえたということを、アップとプーウィンにも伝えます。
『フンパヨン 呪物に隠れた闇(英題:Hoon Payon)』
監督: ポンタリット・チョーティグリッサダーソーポン
出演:プーンパット・イアン=サマン(アップ)、クナティップ・ピンプラダブ(ニック)、プーウィン・タンサックユーン(プーウィン)、タソーン・クリンニウム(エミ)、プーリパット・ウェーチャウォンサーデーチャーワット(ジェームス)
<ストーリー>
出家した兄のティーに会うため、旅に出たタム。ドンシンタム島の寺院で、ティーが住職を殺して消えたという噂を耳にする。人形に妄信的な信仰を寄せる村人たち。やがて村を恐怖に陥れる奇怪な出来事が起こっていく。
(大阪アジアン映画祭の作品紹介より)
★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。
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