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2024/04/19

台湾×日本合作映画『オールド・フォックス 11歳の選択(原題:老狐狸)』蕭雅全(シャオ・ヤーチュエン)監督トークイベント

0419oldfox1 6月14日(金)より新宿武蔵野館他にて全国公開される台湾×日本合作 映画『オールド・フォックス 11歳の選択(原題:老狐狸)』の蕭雅全(シャオ・ヤーチュエン)監督が来日し、4月16日に日本橋の誠品書店でモデルの小谷美由とトークイベントを行いました。
このイベントはいわゆるライト層、台湾の文化やエンタメのビギナー向けだったようです。
しかし、「台湾映画の今昔と台湾カルチャーのいまを語る」というテーマで、『オールド・フォックス 11歳の選択』をメインに、台湾ニューシネマの果たした役割について語る蕭雅全の言葉は、年季の入った台湾映画ファンの皆さんにも一読していただきたいと思います。
また、最後の方に台湾グルメについても語るコーナーがありました。

※写真はクリックすると別ウィンドウで拡大表示します

◆『オールド・フォックス 11歳の選択』の主役の少年は11才
監督「思いやりについて撮ろうと思った時、10才の時を撮ろうと思った。
何故なら、僕は自分の子供を見ていて、10才の頃が価値観の分かれ目ではないか。どちらの道も選べる年頃だから」

◆主役の白潤音(バイ・ルンイン)
0419oldfoxbai 監督「脚本を書き終えた時に一番たいへんだと思ったのが、この少年役を探すこと。
白くんは人気の子役で、自然に演技のできる子。
最初まっ先に思い浮かんだのが彼だったが、学業に専念すると言うことだったので他を当たった。しかし、やっぱりなかなかふさわしい子役が見つからなくて、回り回って再度彼にオファーしたら受けてくれた。
彼は特別な子役で、天真爛漫だけどおとなとコミュニュケーションできる成熟した俳優だ」

◆劇中雨のシーンが多い
監督「僕でなく神が決めた。(笑い)
メインの場所である父と子の家が北部で海寄りだったので、20日間ずうっと雨だった。
本当は晴れていた方が良かったのかどうか今となってはわからないが、雨は抑圧された感じが出ていて、良かったのではないか」

◆門脇麦が台湾の撮影は休憩時間が長いと言っていた
0419oldfoxmugi 監督「おそらく商業映画ならもっと早く撮るのかもしれない。僕は人が気持ち良くできるのが良いと思ったからこのペースで撮影した。
ただ、僕は休憩時間に何をしていたか覚えていない。次はどう撮ろうかと考えたりして、食欲はなくなるし」

◆監督は料理好き
監督「僕は料理が好きで、スタッフやキャストに葱油餅(葱の入った薄いお好み焼きのようなもの)を振る舞った。
粉物は主食になるしね。
僕の作った料理を一緒に食べながら、その人がどう生きてきたのかなど話をするのが好き。それは撮影するときにとても助けになる。芝居の中での感情など、食卓を囲むとコミニュケーションしやすくなる。
僕は出演者と友達になるタイプだが、門脇麦さんとは言葉が通じないのでが残念だった」

◆本作の重要なファクターである思いやり
0419oldfox2 監督「今は、SNSの発達で相手との距離感の取り方が難しくなっている。
昔に戻るのが必ずしも良いとは思っていないけど、直接向き合って相手がどういう状況なのか見ながら話できたときは良かったと思う。
だから、僕は子供を連れて旅に出ると、子供にその土地のお店の人と話をさせる。
でも子供は携帯見ていて、こっちを見てくれと思うことがしばしばある。ネットの発達した時代だから、直に相手を見るのは難しい」

◆台湾ニューシネマ
監督「台湾ニューシネマがその前までの時代の映画と大きく違うのは、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)や楊德昌(エドワード・ヤン)らがリアルな描写を目指したところ。
台湾ニューシネマの前はメロドラマだったり荒唐無稽な活劇や教育映画が多かった。実際の生活と遠く、この時代の作品は好きではない。
それに対し、今の台湾の人や生活をリアルに映しだしたのがニューシネマ。
時代も関係するのだろうが、この時代は映画だけでなくあらゆる芸術で模範的なもの、政治的な影響もあったのではないか。
僕はニューシネマの創作者たちから大きく影響を受け、学んだのは、社会や生活と面と向かうことだ。
僕にとってはニューシネマ以降が台湾映画だと思う。
しかし、次の世代はまた違う。商業的なジャンル映画が増えて、韓国映画みたいなものやハリウッド映画のような作品がどんどん出てきている」

◆劉冠廷(リウ・グァンティン)
0419oldfoxliu 監督「劉冠廷は監督達に愛されすぎている俳優なので、どんな映画に出ても文句言われない。
だから僕は彼に、観客はみんな君に好意的だから、(評価を鵜呑みにせず)努力を怠らない方が良いかも、と言う(笑い)」

◆台湾のお茶文化とコーヒー
監督「僕はコーヒーが好きなので、お茶の善し悪しがわからない。
でも、台湾のウーロン茶はおいしいと言われているから。海外の土産にすることは多い。
僕はCMディレクターでもあるのでお茶や車のCMを撮ることがある。どちらもよくわからないけど、CMは撮っている(笑い)
僕の師匠である侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督は映画『珈琲時光』を撮ったが、何を飲むか、ではなくそのひとときが大事なのだと思う。
僕は料理が美味しいかどうかわからないし、好きだけどコーヒーの味もわからない。でも大事なのはその時の人との時間。高いワインを気に入らない人と飲むより、友達と安ワインを飲む方がうまい」

◆台湾グルメ
監督「僕は妻と子供2人の4人家族で、一番美味しい台湾グルメは何と聞くと妻は牡蠣オムレツ、息子はルーローファン、娘は台南の麺。僕は葱油餅。
タピオカミルクティーは僕はまぁまぁだけど、ほかの家族は好きだ」

◆最後にひとこと
監督「この映画は台湾で作ったが、時や土地を超えて多くの人に見てもらいたい。
日本での公開を期待していたので、ぜひ見て下さい。思いやりを考える時間となればうれしい」

このようなトークでしたが、ひとつだけお伝えしておきたいことがあります。
台湾ニューシネマを語っているときに、その前の時代のメロドラマや荒唐無稽な活劇などの娯楽映画、教育映画、セリフが台湾語で作られた作品に触れています。
監督は「実際の生活と遠く、この時代の作品は好きではない」とおっしゃっていますが、台湾映画の歴史上とても興味深い時代と作品群です。
1960年代。“台湾のハリウッド”と呼ばれた温泉地・北投(ベイトウ)で、台湾語の映画作りに夢をかけた人々が、その作品群を作っていたのです。

2014年の大阪アジアン映画祭で「台湾語映画、そして日本」という小特集が組まれ、『温泉郷のギター(原題:温泉郷的吉他)』、『台中州高砂族の内地観光(原題:台中州高砂族内地観光)』『台北の女学生』に加え、北村豊晴監督と蕭力修(シャオ・リーショウ)監督による当時の映画製作現場を舞台にした2014年の新作『おばあちゃんの夢中恋人(原題:阿嬤的夢中情人)』が上映されました。
『温泉郷のギター(原題:温泉郷的吉他)』は、1960年代の日活アクション小林旭の『ギターを抱いた渡り鳥』を台湾風にアレンジした作品で、台湾映画の歴史を知る上でなかなかおもしろかったです。

日活が1960年代末期にニューアクションからロマンポルノへ移行したため、多くの中堅監督達が香港や台湾に活躍の場を移して、かつての日活アクション映画の香りを残す映画を撮っていた時代があります。
このことについては語り出すとキリがないのでこの辺にしておきますが、台湾語映画が多くの台湾人に愛されたものの、製作母体は零細企業が多かったため長続きせず、台湾ニューシネマが台頭してくるという変遷です。

台湾ニューシネマに大きな影響を受け、CMディレクターとして時代に寄り添う蕭雅全監督の『オールド・フォックス 11歳の選択』は、まごうことない名作だと思います。
ぜひ劇場でご覧になって下さい。

『オールド・フォックス 11歳の選択』
0209oldfox2 プロデューサー:侯孝賢(ホウ・シャオシェン)、林逸心(リン・イーシン)、小坂史子
監督:蕭雅全(シャオ・ヤーチュエン)
出演:白潤音(バイ・ルンイン)、劉冠廷(リウ・グァンティン)、陳慕義(アキオ・チェン)、門脇麦、劉奕兒(ユージェニー・リウ)
原題:老狐狸/英題:OLD FOX/2023年/台湾・日本/112分/シネマスコープ/カラー/デジタル/字幕翻訳:小坂史子
配給:東映ビデオ 
HP:https://oldfox11.com/ 
公式X:@OLDFOX0614
6月14日(金)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

※本作に関するこれまでの記事

2024/04/18
台湾映画『オールド・フォックス 11歳の選択(原題:老狐狸)』蕭雅全(シャオ・ヤーチュエン)監督と門脇麦舞台挨拶
http://www.asianparadise.net/2024/04/post-5b4479.html

2024/02/09
台湾映画『オールド・フォックス 11歳の選択(原題:老狐狸)』6月14日(金)より全国公開!
http://www.asianparadise.net/2024/02/post-900c65.html

2023/11/09
2023東京国際映画祭 台湾映画『Old Fox』Q&A
http://www.asianparadise.net/2023/11/post-4227a6.html

2023/09/29
台湾映画『老狐狸』が東京国際映画祭において『Old Fox』の邦題でワールドプレミア!
http://www.asianparadise.net/2023/09/post-3a3a12.html

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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