2024年の中国映画を振り返る
2024年における中国での映画興行収入が400億元(1元:約20.8円)を突破し、観客動員数も延べ9億人を超えたと、人民日報が伝えています。
年間興行成績トップとなった『熱辣滾燙』は、春節にコメディアンヌの賈玲(ジャー・リン)が『你好、李煥英』に続いて監督を務めた2作目の作品で、日本映画『百円の恋』が原案。この映画をきっかけにボクシングに注目が集まり、連休後には多くのスポーツジムやフィットネスクラブに新規入会者が殺到したそうです。
2位も春節映画で韓寒(ハン・ハン)監督の『飛馳人生2』、3年連続で春節商戦に張藝謀(チャン・イーモウ)監督が参戦した『第二十条』は4位。
夏休みには若者中心にコメディ『抓娃娃(抓娃娃(じゅあわわ)ー後継者養成計画ー)』やサスペンスの『黙殺(黙殺~沈黙が始まったあの日~)がヒットし、国慶節にあわせた陳凱歌(チェン・カイコー)監督の国策映画『志願軍:存亡之戦』がベスト10にランクインするなど、監督は巨匠から新鋭まで、幅広いジャンルの作品が公開されました。
しかし、市場はかつての勢いに翳りが出ています。昨年はコロナ禍からの回復傾向が見えていましたが、今年はすでにピークは過ぎ、実は夏休み興行はかなり低迷したとも伝えられています。
日本では東京・中国映画週間でランクインしたヒット映画のいくつかが見られますが、東京国際映画祭や東京フィルメックスなどでは、上記のような興行成績とはあまり縁のない作品がほとんどです。
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★2024中国映画興行成績ベスト10
1.『熱辣滾燙』
日本映画『百円の恋』をリメイクした、賈玲(ジア・リン)が監督・主演した2本目の作品。さえない人生を送っている女性がボクシングをきっかけに人生の転機を迎える。
監督:賈玲(ジア・リン)
主演:賈玲(ジア・リン)張小斐(チャン・シャオフェイ)雷佳音(レイ・ジャーイン)
2.『飛馳人生2』
日本でも公開された前作から5年ぶりの続編。自動車教習所で講師を務める元人気レーサーが知り合いに誘われてぎこちない仲間たちとチームを組み、ラリーにチャレンジする物語。
監督:韓寒(ハン・ハン)
主演:沈腾(シェン・トン) 范丞丞(ファン・チョンチョン)尹正(イン・ジェン)
3.『抓娃娃(抓娃娃(じゅあわわ)ー後継者養成計画ー)』
夏休み映画の大ヒットコメディ。すべての希望を一人息子に託す親が、とんでもない教育法を実施する様子を描く。
監督:閻非(イェン・フェイ)彭大魔(ポン・ダーモー)
主演:沈騰(シェン・トン)馬麗(マー・リー)史彭元(シー・ポンユェン)
2024東京・中国映画週間で上映
4.『第二十条』
中年の検察官が、あるセンセーショナルな事件に巻き込まれ、自らもまた人生の試練に直面するという物語。春節映画商戦で成功した。
監督:張藝謀(チャン・イーモウ)
主演:雷佳音(レイ・ジャーイン)馬麗(マー・リー)趙麗頴(チャオ・リーイン)
5.『熊出没·逆転時空』※アニメーション
春節アニメの定番、中国東北部の山林地帯に住む熊の兄弟と木こりとのかけがえのない日々を描く中国の名作アニメシリーズ「熊出没」シリーズの10作目。熊たちを救うために、木こりがタイムトラベルの冒険に旅立つ。
監督:林滙達(リン・ホイダー)
主演(吹替): 徐芸(シュー・ユン)万秦(ワン・チン)蒋琳(ジャン・リン)
6.『黙殺(黙殺~沈黙が始まったあの日~)
いじめを受けた女子生徒が自殺を図ったことをきっかけに始まる連続殺人事件を描いた社会派サスペンス。監督はマレーシア出身の若手。
監督:柯汶利(サム・クワー)
主演:王伝君(エリック・ワン)/張鈞甯(チャン・チュンニン) 呉鎮宇(フランシス・ン)
2024東京・中国映画週間で上映
7.『志願軍:存亡之戦(志願軍 ~雄兵出撃~)』
1951年5月に、中国人民志願軍第63軍団が国連軍の4つの師団と新たな戦闘を繰り広げる様子が描かれる、国慶節映画「志願軍」シリーズの第2弾。
監督:陳凱歌(チェン・カイコー)
主演:朱一龍(チュー・イーロン)辛柏青(シン・バイチン)張子楓(チャン・ズーフォン)
2024東京・中国映画週間で上映
8.『末路狂花銭』
余命10日と告げられた「ケチ男」が生涯貯めてきた大金を一気に使おうと決意する物語。監督は内蒙古出身の若手女性監督、烏日娜(ウリナ)。
監督:烏日娜(ウリナ)
主演:賈冰(ジア・ビン)譚卓(タン・ジュオ)小瀋陽(シャオシェンヤン)
9.『九龍城寨之圍城(トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦)』 1980年代、無数の黒社会が野望を燃やし覇権を争っている香港の九龍城砦(きゅうりゅうじょうさい)での命を賭けた戦いを描くアクション。
監督:ソイ・チェン(鄭保瑞)
出演:古天樂(ルイス・クー)、洪金寶(サモ・ハン)、任賢齊(リッチー・レン)
東京国際映画祭、香港映画祭で上映
10.『好東西』
若手女性監督による、シングルマザーと恋愛に冷静な2人の女性、彼女たちを取り巻く男性たちのラブコメ群像劇。
監督:邵藝輝(シャオ・イーホイ)
主演:宋佳(ソン・ジャー)鐘楚曦(チョン・チューシー)章宇(ジャン・ユイ)趙又廷(マーク・チャオ)
◆東京国際映画祭上映作品
『小さな私』(原題:小小的我) フィクションとドキュメンタリー双方で活躍するヤン・リーナーの監督作品。障がいを持ちながらも力強く生きる若者を、その母、祖母との関係のなかに描く。
監督:杨荔钠(ヤン・リーナー)
出演:易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)、林晓杰(ダイアナ・リン)、 蒋勤勤(ジャン・チンチン)
『わが友アンドレ』(原題:我的朋友安德烈) 『山河ノスタルジア』(15)等で知られる俳優ドン・ズージェンが出演も兼ねた監督デビュー作。父の葬儀のため故郷の街に向かった男と少年時代の友人との奇妙な再会を描く。
監督:董子健(ドン・ズージェン)
出演:刘昊然(リウ・ハオラン)、董子健(ドン・ズージェン)、迟兴楷(チー・シンカイ)
『チャオ・イェンの思い』(原題:乔妍的心事) スター女優として活躍するチャオ・イェンのもとに、長年連絡が途絶えていた姉が訪ねてくる。それをきっかけに、彼女は隠していた過去に脅かされる。ミャンマー出身の映画作家ミディ・ジーが中国で撮影した最新作。監督:趙德胤(ミディ・ジー)
出演:趙麗穎(チャオ・リーイン)、辛芷蕾(シン・ジーレイ)、黃覺(ホアン・ジュエ)
『ブラックドッグ』(原題:狗阵) 第77回カンヌ映画祭「ある視点」部門最優秀作品賞受賞!さらに、同映画祭にてパルムドッグ審査員賞受賞! 孤独な青年と黒い犬との絆を描く、ヒューマン・ドラマ。
監督:管虎(グァン・フー)
出演:彭于晏(エディ・ポン)、贾樟柯(ジャ・ジャンク―)、(佟丽娅トン・リーヤー)
『陽光倶楽部』(原題:阳光俱乐部) 上海国際映画祭コンペティションで上映され、母親を介護する青年を演じたホァン・シャオミンが男優賞を受賞した作品。主人公が入会している「陽光倶楽部」の総帥役を、ジャ・ジャンクーが怪演。
監督:魏书钧(ウェイ・シュージュン)
出演:黄晓明 (ホァン・シャオミン)、陆小芬(ルー・シャオフェン)、祖峰(ズー・フォン)
『怒りの河』(原題:怒江) 娘を自殺に追い込んだ、いじめの中心となっていた女子高生の行方を追い、中国の雲南省から国境を越えてミャンマーに向かう父親を描くパワフルなドラマ。平遥国際映画祭オープニング作品。
監督:刘娟(リウ・ジュエン)
出演:王砚辉(ワン・イェンフイ)、邓恩熙(ダン・エンシー)、 杨皓宇(ヤン・ハオユー)
『千里江山図』(原題:只此青绿) 北京の故宮博物院に収蔵されている北宋時代の名画「千里江山図」にインスパイアされた舞踊劇「只此青緑」を映画化した作品。美しいダンス・シーンが全編に展開する。
監督:周莉亚(ジョウ・リーヤー)、韩真(ハン・ジェン)
出演:张翰(チャン・ハン)、孟庆旸(モン・チンヤン)、谢素豪(シエ・スーハオ)
『九龍城寨之圍城(トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦)』
※ベスト10の項参照
◆東京フィルメックス上映作品
『新世紀ロマンティクス』(原題:風流一代)
約20年の歳月と共に一人の女性が自立していく姿を、彼女の元を去った一人の男性との関係を軸に描いたヒューマンドラマ。
監督:賈樟柯(ジャ・ジャンクー)
出演:趙涛(チャオ・タオ)李竺斌(リー・ジュウビン)潘剣林(パン・ジェンリン)
『愛の名の下に』(原題:以愛之名)
香港系アメリカ人監督エリザベス・ローの長編2作目のドキュメンタリー。プロの「別れさせ屋」とその依頼者、依頼者の夫、愛人との交渉を追った作品。
監督:羅寶(エリザベス・ロー)
『未完成の映画』(原題:一部未完成的電影)※製作国はシンガポール、ドイツ
10年ぶりに未完成の映画製作を再開するも、コロナ禍で撮影が中止になりホテルに隔離された俳優とスタッフらクルーの模様がドキュメンタリーのように始まるフィクション。
監督:婁燁(ロウ・イエ)
出演:秦昊(チン・ハオ)曾劍(ツェン・ジエン)富康(フー・カン)
◆大阪アジアン映画祭上映作品
『未来の魂(原題:渡)』(オーストラリア、中国) 脳性麻痺の叔父を大切に思い足繁く見舞いに通う妊娠中期の女性。ある日彼女は、おなかの子に先天性疾患の可能性が高いことを知る。義父や夫の反対を前に彼女が下した決断は? 命の選択を巡る人間の尊厳と愛の物語。
監督:周洲(ジョウ・ジョウ)
出演:池韵(チー・ユン)、王楠(ワン・ナン)、陳雅琳(チェン・ヤーリン)、鲍成顺(バオ・チョンシュン)、金年勝(ジン・ニエンション)
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