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2025/04/02

大阪アジアン映画祭 台湾映画『イエンとアイリー(原題:小雁與吳愛麗)』林書宇(トム・リン)監督インタビューとQ&A

0323lin1 大阪アジアン映画祭で上映された台湾映画『イエンとアイリー(原題:小雁與吳愛麗)』の3月21日の上映後に林書宇(トム・リン)監督によるQ&Aが行われ、最終日にインタビュー(Podcastリンクは下部)をしました。
本作は、母と娘である2人の女性が自らの運命と向き合う姿を描いた作品で、2022年「第44屆優良電影劇本」で優秀賞を、2024年の第29屆釜山國際映画祭でキム・ジソク賞(Kim Jiseok Award)を受賞。そして楊貴媚(ヤン・グイメイ)が金馬奨はじめ助演女優賞を撮りまくりっています。

※写真はクリックすると別ウィンドウで拡大表示します

まず、3月21日のQ&Aの様子です。

ご挨拶
0402linqa1 監督:「このような映画を見て気持ちが重たくなったと思いますが、これから楽しいこともあるでしょうから落ち込まないように。実は友人から、ラストシーンで母と娘が語り合いながら歩くシーンがありますが、これは決して二人が和解したわけではないと思いましたが、ふたりの魂は近付いたのではないかという感想をもらいました。それはとてもうれしい評価でした。皆さん、映画を見に来てくれてありがとうございます」

Q:モノクロを選択をしたのはなぜか、今後もモノクロの作品を撮るのか
0402linqa2 監督:「私はこれまでたくさんの映画を見てきて、映画を作る側になったら一度はモノクロの映画を撮ってみたかった。なぜならモノクロの持つ力を実感していて、チャレンジしてみたかったから。そして、脚本を書いているときに、この物語はモノクロがふさわしいのではないかと思いました。観客の皆さんに集中して見てもらいたい、色がない分演技に注目してくれるのではないかと言う計算もありました。俳優の演技を見ながら何かを感じ取ってもらえれば、狙い通りです。母と娘の情感や葛藤など、感情表現の演技にたぶん引きこまれていくだろうと、そのように作りました。
今後については、今のところなんとも言えませんが、難しいでしょう。というのも、これまで5作作ってきましたが、この映画が一番資金集めに苦労したからです。今の観客はあまりモノクロ作品を見たくないだろうと、投資する人がなかなかいない、売れないだろうと。でも、もし今後モノクロにふさわしい題材があればもう一度撮ろうかなとは思います」

Q:主演の夏于喬(シア・ユーチャオ=キミ・シア)とはどんな話をしたのか
0214yen 監督:「誤解の無いように先に申し上げておきますが、夏于喬は私の妻です。(場内から拍手)でも、彼女の為に書いたのではありません。妻と知り合ったのは仕事ではなく、友人の紹介でした。ずうっと一緒に仕事をしようと思っていたものの、お互いに忙しくてなかなか実現しませんでした。でもコロナ禍でみんな仕事が止まってしまったので、ではそろそろ考えようかと話し合い、彼女にどういう役がやりたいか聞きました。そうすると母と娘の話が良いと言い、なぜかというと、実際彼女は母との関係が複雑で難しいということからです。そして、ストーリーの構想中にちょうど大きなニュースがありました。それは映画の中でも描きましたが、台湾で子供が親を殺したという事件です。ただ映画では母親を助けるために娘が父親を殺すのですが、実際には父親を殺したのは息子でした。その時に思ったのは、その息子が服役してその後出所したときに、母親とどのように暮らしていくのかな、ということです。そこで、息子を娘に置き換えてみてはどうかと考えたのがスタートでした。
そこから家で脚本を書いていき、都度妻に見てもらい、色々助言をもらいました。母と娘のケンカについては、へたねぇ、母娘のケンカはこんなものじゃない、とダメ出しが出ました。じゃあどんな風なのか聞くと、自分と母親のケンカの動画をスマホで見せてくれました。クレジットでは私が脚本と出ていますが、本当はは妻とその母親なのです。(場内笑い)」

Q:主人公が多くの男性から注目される人物にした理由と、その中でも二人の男性の存在がどういう役割を果たしたのか
監督:「脚本の段階で主人公は妻が演じることに決まっていて、妻は美しいです。(場内笑い)その美しさを無視するわけにいきませんので、このように描きました。時々主人公が美しいのにそうではない描き方の映画がありますが、私の妻は美しいので(場内笑い)彼女に惹かれる男性がいないとおかしいと思い、そのようなキャラクターにしました」

何度も「美しい妻」を連発する監督の愛妻ぶりが、微笑ましかったです。

0323lin2 そして、3月23日の午前中に、単独インタビューを行いました。
監督とは昨年の金馬影展ですれ違いざまにひと言二言交わしただけだったので、落ち着いてお話しを伺う機会ができて良かったです。
映画祭のポスターを見て「これ、シネ・ヌーヴォだよね、ここの2階で『星空』のトークした覚えがある」と、なつかしそうにおっしゃっていました。2012年ですから、13年も前になりますね。2020年の『夕霧花園』の時はコロナ禍でしたので来日はならず、オンラインでインタビューしました。

今回は、Q&Aで語られなかった主役でプロデューサーも務めた夏于喬(シア・ユーチャオ=キミ・シア)との創作について、キャスティング、撮影に『夕霧花園』に続いてカルティク・ヴィジャイを依頼した理由ほか色々お聞きしています。
毎回違うテーマや作風でどれも素晴らしい作品を見せてくれる監督ですが、やはり長編デビュー作の『九月に降る風(原題:九降風)』には特別な思いがあるということを、今回の張捷(チャン・ジエ)の起用についてのお答えでもよくわかりました。
このインタビューはPodcast配信しましたので、こちらからぜひお聞き下さい。

http://asianparadise.sblo.jp/article/191304601.html

『イエンとアイリー(原題:小雁與吳愛麗)』
監督・脚本:林書宇(トム・リン)
出演:夏于喬(シア・ユーチャオ=キミ・シア)、楊貴媚(ヤン・グイメイ)、曾國城(サム・ツェン)、黃奇斌(ホアン・チービン)、張捷(チャン・ジエ)

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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